ILC (自然リンパ球)

一行要約

ILC (innate lymphoid cell, 自然リンパ球) は系統マーカー陰性かつ IL-7Rα (CD127) を発現するリンパ球で、T 細胞のような抗原受容体をもたずサイトカイン環境に応答して即時的にエフェクターサイトカインを産生する innate な lymphocyte 集団である。Th サブセットに対応して ILC1 / ILC2 / ILC3 と細胞傷害性 NK 細胞に分類され、肺は ILC (とくに ILC2) が豊富な臓器であり、腫瘍微小環境では type 1/2/3 免疫の innate arm として抗腫瘍免疫・組織修復・炎症の双方向的調節に関与する。

表現型と分類

ILC は共通リンパ球前駆細胞由来で、lineage marker (CD3, CD19, CD14 等) 陰性・CD127 (IL7R) 陽性を共通とし、転写因子とエフェクターサイトカインで分類される:

サブセット主要転写因子エフェクター対応 Th
ILC1 / NK 細胞T-bet (NK は EOMES も)IFN-γ, 細胞傷害性 (NK)Th1
ILC2GATA3IL-5, IL-13, amphiregulinTh2
ILC3RORγtIL-17, IL-22Th17/Th22

NK 細胞 は細胞傷害性 ILC1 として位置づけられ、ヘルパー様 ILC (ILC1/2/3) は組織常在性でサイトカイン分泌により局所免疫を調整する。ILC は組織常在性が高く、各臓器のニッチ (肺・腸管・皮膚) に適応した表現型をとる。

がんにおける役割

ILC は腫瘍微小環境で文脈依存的な二面性をもつ:

  • ILC1 / NK: IFN-γ 産生・細胞傷害性により抗腫瘍的に働く (NK-cell 参照)。
  • ILC2: type 2 サイトカイン (IL-5/IL-13) で 好酸球 を動員し、文脈により抗腫瘍 (好酸球依存的) と腫瘍促進 (M2 分極・組織リモデリング) の両面を示す。IL-27 / I 型 IFN により機能が抑制される。
  • ILC3: IL-17 / IL-22 産生を介して炎症性発がん促進や粘膜修復に関与し、emergency granulopoiesis・好中球 動員と連関する場面もある。

ILC は適応免疫より早期に応答し、TME の初期免疫トーンを設定する innate な調整役として注目される。

臨床位置づけ

  • 直接的な ILC 標的療法は確立していないが、サブセット別に上流サイトカイン軸 (IL-33/IL-25/TSLP for ILC2、IL-23 for ILC3) を操作する戦略が前臨床で検討される。
  • NK 細胞 を介した細胞療法・NK engager は最も臨床的に進んだ ILC 系の応用。
  • ILC 浸潤プロファイルが腫瘍免疫トーン・IO 応答のバイオマーカーになりうるかが探索課題。

Open Questions

  • 肺腫瘍 TME で各 ILC サブセットが net で抗腫瘍的か腫瘍促進的かを決める因子。
  • ILC の可塑性 (サブセット間転換) が治療操作にどう影響するか。
  • ILC 上流サイトカイン軸の操作が抗腫瘍免疫を安全に増強できるか。