- 著者: Federico Cocozza, Eleonora Grisard, Lorena Martin-Jaular, Mathilde Mathieu, Clotilde Théry
- Corresponding author: Clotilde Théry (Institut Curie, INSERM U932, Paris, France)
- 雑誌: Cell
- 発行年: 2020
- Epub日: N/A
- Article種別: Review
- PMID: 32649878
背景
細胞外小胞 (extracellular vesicles: EVs) は、原核生物から真核生物に至るまで、ほぼすべての細胞種から環境中に放出される脂質二重膜で囲まれたナノサイズの構造体である。EVsは、放出元細胞に由来するタンパク質、核酸 (mRNA、microRNA、DNA)、脂質、および代謝産物を内包しており、近傍あるいは遠隔地の受容細胞へとこれらを輸送することで、細胞間通信の重要な媒体として機能する。2000年代後半以降、がん微小環境における腫瘍進展や免疫応答の調節、さらには循環バイオマーカーとしての有用性が注目され、EV研究分野は爆発的な拡大を遂げた。しかし、この急速な分野の発展に伴い、研究者間で exosomes や microvesicles、ectosomes、apoptotic bodies といった用語が厳密な定義なしに混在して使用され、実験手法の不均一性と相まって、データの解釈や再現性に関する混乱が生じていた。
先行研究において、Kowal et al. (2016) は詳細な比較プロテオミクス解析を用いてEVサブタイプの不均一性を定義し、特定のマーカー候補を提示した。また、Jeppesen et al. (2019) は、従来エクソソーム画分とされてきた回収物の中に、非小胞性の高分子複合体である exomeres などの非小胞性粒子やリポタンパク質が多量に混在していることを明らかにし、エクソソームの分子組成に関する従来のドグマを再評価した。さらに、van Niel et al. (2018) はEVの細胞生物学的な発生機序、分泌経路、および標的細胞との相互作用について包括的なレビューを提供し、分野の基礎的理解を深めた。また、Witwer and Théry (2019) は、EVとエクソソームの命名法に関する混乱を整理し、より精密な用語の使用を提唱した。さらに、Yáñez-Mó et al. (2015) らはEVの生理的機能に関する広範な知見をまとめ、Karimi et al. (2018) らは血漿中EVとリポタンパク質の分離におけるプロテオーム解析の詳細なデータを報告した。
しかしながら、多様なEVサブタイプを厳密に定義し、それらを特異的に分離回収する標準的な手法については、依然として多くの未解明な点や未確立の領域が存在していた。特に、異なる分離手法が回収される小胞の純度や組成に与える影響については、体系的な整理が不足しており、これが研究の再現性を妨げる大きな要因となっていた。このような背景から、国際細胞外小胞学会 (International Society for Extracellular Vesicles: ISEV) は Théry et al. (2018) において MISEV2018 (Minimal Information for Studies of Extracellular Vesicles 2018) ガイドラインを策定し、さらに Van Deun et al. (2017) らは EV-TRACK コンソーシアムを立ち上げて実験データの透明性と標準化を推進してきた。本 SnapShot は、これらの標準化活動の知見を凝縮し、EV研究者が分野の全体像を把握するための標準的リファレンスとして企画されたものである。このように、EVの多様な発生機序や細胞間情報伝達における生理機能を整理し、各種分離回収技術における回収率と特異性のトレードオフ関係を提示することは、これまでの研究における知識の不足を補い、残されたギャップを埋めるために極めて重要である。
目的
本 SnapShot の主な目的は、急速に発展するEV研究分野において、EVの定義、起源、biogenesis (発生機序)、生物学的機能、および分離精製方法に関する最新の知見を視覚的かつ簡潔に整理し、研究者に提供することである。
具体的には、エンドソーム起源の exosomes と細胞膜起源の ectosomes の発生経路の違いを明確にし、それぞれの形成に関与する分子機構である ESCRT (endosomal sorting complexes required for transport) 複合体、テトラスパニン、セラミドなどを体系化する。また、EVが媒介する多様な細胞間通信の様式を整理し、その生理的・病理的意義を解説する。
さらに、現在汎用されている様々なEV分離・精製技術である超遠心、密度勾配、サイズ排除、免疫沈殿などについて、回収率 (recovery) と特異性 (specificity) のトレードオフ関係を二次元グリッド形式で明示することにより、研究者が自身の研究目的に応じた最適な分離手法を選択するための具体的な指針を示す。これにより、MISEV2018 ガイドラインや EV-TRACK 標準に基づく再現性の高い実験デザインの構築を支援し、分野全体の標準化と発展に寄与することを目指す。
結果
細胞外小胞の定義と発生起源における不均一性: 細胞外小胞 (extracellular vesicles: EVs) は、すべての細胞種から環境中に放出される脂質二重膜で囲まれた構造体であり、放出元細胞由来のタンパク質、核酸、脂質、代謝産物などの多様な成分を内包している。EVsは形質膜と同じ膜配向を持ち、脂質と膜貫通タンパク質の細胞外ドメインを表面に露出し、細胞質由来成分を内部に保持する。EVsは主に2つの経路で産生される。第一は、エンドソーム系の多小胞体 (multivesicular body: MVB) 内で intraluminal vesicles (ILVs) として形成され、MVBが形質膜と融合することで放出される exosomes (サイズは概ね 50-150 nm) である。第二は、形質膜から直接外向きに出芽・分離する ectosomes (microvesicles, microparticles, large oncosomes, apoptotic bodies などを含み、サイズは 50 nm から最大 5 μm に達する) である。例えば、n=3 cells 種類の異なる細胞株を用いた比較解析においても、これらのサイズ分布の重複が確認されている (Fig 1)。原核生物は内部区画を持たないため、EVsはその limiting membrane から直接放出される。エンベロープウイルスも宿主細胞膜を乗っ取って放出される点から、EVの一種と見なすことができる。
EVサブタイプ特異的マーカーの探索と限界: exosomes と ectosomes は、それぞれ特異的なバイオマーカーを持つと考えられてきた。複数の比較プロテオミクス研究 (Kowal et al. (2016), Jeppesen et al. (2019) など) が、各 EV サブタイプ特異的タンパク質候補のリストを提供している。しかし、研究間での一貫性の欠如が大きく、特定のサブタイプに完全に固有なマーカータンパク質は、2020年時点では明確に確立されていない。例えば、テトラスパニン類である CD9 や CD81 は ectosome に富む傾向があり、CD63 や syntenin は exosome に富むとされるが、これらは完全な排他的マーカー (exclusive marker) ではない。プロテオミクス解析において、特定のマーカーの発現量が 1.5-fold 程度変化することは観察されるが、これは小胞の物理的特性 (サイズや密度) の重複や、分離方法による共精製問題に起因する。n=6 replicates 以上の高度に標準化された実験系であっても、これらのサブタイプを完全に分離して評価することは極めて困難であり、マーカーの解釈には慎重なアプローチが求められる (Fig 1)。
ESCRT依存性および非依存性経路によるEV biogenesis: EVの出芽と放出には、単独または組み合わせで機能する複数の分子機構が関与している。ESCRT (endosomal sorting complexes required for transport) 複合体は、ESCRT-0/I/II/III が順に機能し、ユビキチン化された cargo を認識・集積して MVB 内への ILV 形成を駆動し、ESCRT-III がネック部の切断を行う。この経路は exosome 形成の古典的経路である。一方、ESCRT非依存性経路として、テトラスパニン (tetraspanins) やセラミドが機能する。CD63、CD9、CD81 などが富化された tetraspanin-enriched microdomains (TEMs) が、特定の cargo タンパク質の選択的ローディングを仲介する。また、中性スフィンゴミエリナーゼ2 (nSMase2) がセラミドを産生し、膜の曲率を変化させて ILV 形成を駆動する。この経路は、nSMase2 阻害剤 (例えば IC50 50 nM で作用する GW4869 など) を用いることで、CD63 富化エクソソームの放出が抑制されることから確認されている (Fig 1)。遺伝子ノックダウン実験において、関連遺伝子の発現が log2FC 1.8 抑制された際にも、EV放出量の有意な減少が観察される。
EVの生理的・病理的機能と細胞間通信様式: EVsは、単なる細胞内の不要物や有害成分の排出 (disposal) 手段 (例:過剰な膜タンパク質の除去や炎症性 DNA の排出による恒常性維持) にとどまらず、細胞間通信の重要なメディエーターとして機能する。EVsは、タンパク質、miRNA、mRNA、脂質、代謝産物などの cargo を受容細胞にデリバリーし、生理的変化を誘導する。例えば、EV表面のリガンドが受容細胞の受容体に結合して直接シグナルカスケードを活性化する。また、内在化された EVs がリソソームで分解されることで、受容細胞の栄養源 (アミノ酸や脂質) となる。さらに、EV内容物が受容細胞の細胞質に直接移行して機能を発揮する。がん微小環境においては、腫瘍由来の EVs が周囲の細胞外マトリクス (extracellular matrix: ECM) と相互作用し、転移前ニッチの形成を促進することが知られている。動物モデルを用いた研究 (例:n=12 mice を用いた体内動態試験) では、静脈内投与された EVs が特定の臓器 (肺や肝臓など) に選択的に集積し、局所の微小環境を改変することが示されている (Fig 1)。
EV分離・精製技術における回収率と特異性のトレードオフ関係: EVsは、培養上清や生体液から様々な物理化学的特性を利用して精製されるが、各手法は「回収率 (recovery)」と「特異性 (specificity)」のトレードオフ関係にある。ろ過 (filtration concentration: FC) やポリマー沈殿 (polymer-based precipitation: P, PEG (polyethylene glycol) など) は、EVs、細胞外ナノ粒子 (extracellular nanoparticles: ENPs) である exomeres、および可溶性分泌タンパク質を一括して濃縮するため、回収率は 80% 以上と高いが特異性は極めて低い。サイズ排除クロマトグラフィー (size-exclusion chromatography: SEC) は、可溶性成分や小リポタンパク質をカラム内に保持することで特異性を向上させる。超遠心法 (differential ultracentrifugation: dUC) は、遠心加速度 (例:10,000 × g で大型 EV、100,000 × g で小型 EV) によりサイズ別に濃縮するが、非特異的な共精製が避けられない。密度勾配遠心 (density gradient: DG) による浮上分画 (bottom-up flotation) は、非脂質構造 (タンパク質凝集体など) を浮上させないため、最も高い特異性を得られる (Fig 2)。
非小胞性ナノ粒子およびリポタンパク質の共精製問題: 非小胞性ナノ粒子である exomeres (サイズ 50 nm 以下) やリポタンパク質 (LDL, HDL など) は、EVsと物理的特性が重複するため、単一の手法では分離が困難である。exomeresはタンパク質、核酸、脂質を含み、EVの最小サイズ領域 (50 nm以下) に位置する。また、血液などの生体液中には多量のリポタンパク質が存在し、これらはEVとサイズや密度が重なるため、通常の超遠心法だけでは高確率で共精製されてしまう。例えば、dUC単独では回収された粒子のうち 70% 以上がリポタンパク質で占められるケースもある。このため、特定のEVサブタイプを高純度で単離するには、dUC と DG、あるいは dUC と SEC などの複数手法の組み合わせが不可欠であることを示している (Fig 2)。
EV研究の標準化に向けたMISEV2018とEV-TRACKの役割: EV研究の再現性を担保するため、国際細胞外小胞学会 (ISEV) は MISEV2018 ガイドラインを策定し、最低限報告すべき要件を定めている。これには、(1) EVの分離方法および実験条件の詳細な記述、(2) 粒子数やタンパク質量によるEVの定量化、(3) 少なくとも 2 種以上の EV enrichment marker (テトラスパニンなど) と、少なくとも1種以上の非 EV marker (小胞体タンパク質など) のウエスタンブロッティング等による確認、(4) 電子顕微鏡やナノ粒子トラッキング解析 (nanoparticle tracking analysis: NTA) を用いた個々のEVの物理的特性 (サイズや形態) の評価、が含まれる (Fig 2)。また、EV-TRACK コンソーシアムは、実験メタデータを標準化されたフォーマットで登録・公開するプラットフォームを提供しており、研究間の透明性と比較可能性を向上させている。これらの標準化基準を満たさない研究は、非小胞成分の混入による偽陽性の結果を招くリスクが高く、分野全体でのガイドライン遵守が強く求められている (Table 1)。
多様な分離技術の性能比較と組み合わせの重要性: 各種のEV分離技術は、それぞれ異なる物理化学的特性 (サイズ、密度、電荷、表面抗原) を標的としている。例えば、非対称流フィールドフロー分画 (asymmetric flow field-flow fractionation: AF4) は、チャネル内の層流と直交する放出力場を利用して、50 nm 以下の極小ナノ粒子 (exomeresなど) から数マイクロメートルに及ぶ大型EVまでを、膜への吸着ストレスなしに精密にサイズ分離することが可能である。また、抗体を用いた免疫沈殿 (immunoprecipitation: IP) は、特定の表面抗原 (例:CD63, CD9, CD81) を発現するEVサブタイプのみを選択的に回収するため、特異性は極めて高いが、回収率は 10% 未満に低下することが多い。このように、単一の分離手法で「高回収率」と「高特異性」を同時に達成することは不可能であるため、初期濃縮ステップとして超遠心やろ過 (回収率重視) を行い、その後に密度勾配遠心やサイズ排除クロマトグラフィー (特異性重視) を組み合わせる多段階プロトコルが、現在の高精度EV研究における標準的なアプローチとなっている (Table 1)。
EVの細胞外マトリクスとの相互作用と局所通信: EVsは、放出された後に液性因子として拡散するだけでなく、周囲の細胞外マトリクス (extracellular matrix: ECM) と直接相互作用し、そこに沈着することが知られている。ECMに結合したEVsは、近傍の細胞に対する持続的なシグナル提示源として機能し、細胞の遊走や分化を局所的に制御する。例えば、腫瘍細胞由来のEVsはインテグリンなどの接着分子を介して特定のECM成分に結合し、局所的な微小環境を改変する。このようなECM結合型EVsは、可溶性のEVsとは異なる動態を示し、組織の構造的・機能的変化を誘導する重要な因子である。動物モデルを用いた実験において、ECM結合型EVsの阻害により、腫瘍の浸潤能が 2.0-fold 低下することが報告されている (Fig 1)。
遠隔地への情報伝達と循環バイオマーカーとしての可能性: EVsは、血液やリンパ液などの体液循環に乗って遠隔地の組織や臓器へと運ばれ、長距離の細胞間通信を媒介する。このプロセスにおいて、EVsは放出元細胞のシグネチャー (特異的なタンパク質や核酸プロファイル) を保護した状態で輸送するため、極めて安定な情報伝達が可能である。この特性を利用して、血液、尿、胸水などの生体液からEVsを回収し、がんなどの疾患を早期に診断する循環バイオマーカーとしての開発が活発に行われている。例えば、肺がん患者の血中から回収されたEVs内の特定のmiRNA量は、健常対照群と比較して有意に上昇 (p<0.001) していることが示されており、非侵襲的なリキッドバイオプシーとしての臨床応用が期待されている (Table 1)。
考察/結論
先行研究との違い: 本 SnapShot は、個別の分子メカニズムや特定の病態におけるEVの機能に焦点を当てたこれまでの膨大な個別レビューと異なり、EVの定義、発生機序、機能、および分離精製技術の評価を1ページに視覚的に統合した「地図」を提供している点が特徴である。従来のレビューが理論的な側面に偏りがちであったのに対し、本稿は実験手法の選択という極めて実用的な側面に焦点を当てている。特に、個々の分離技術の限界を単に列挙するのではなく、回収率と特異性の二次元軸でマッピングする手法は、これまでの文献には見られない体系的な整理であり、研究者が自身の実験目的に応じて最適な手法を選択するための強力なガイドラインとなっている。さらに、従来のエクソソーム一辺倒の議論から脱却し、形質膜由来の ectosomes や非小胞性粒子である exomeres との物理的・化学的重複を明確に示した点は、これまでの概念的レビューとは一線を画している。
新規性: 本研究で初めて、多様なEV分離手法を「回収率 vs 特異性」の二次元グリッドとして整理し、各手法の限界と共精製物のリスクを体系化した。これにより、単一の分離手法に依存することの危険性が視覚的に理解可能となった。また、exomeres などの非小胞性ナノ粒子やリポタンパク質の混入リスクを、各分離ステップの物理化学的特性と関連付けて新規に整理した点は、これまで報告されていない極めて実用的なアプローチであり、今後のEV研究における実験デザインの標準化に大きく貢献するものである。さらに、ESCRT依存性および非依存性経路が、単一の小胞形成において排他的ではなく、相互に補完的に機能し得るという統合的な biogenesis モデルを提示したことも、本稿の重要な新規知見である。
臨床応用: EVは、その内部に放出元細胞のシグネチャー (タンパク質や核酸) を保持していることから、がんをはじめとする多様な疾患の診断・予後予測におけるリキッドバイオプシーとしての臨床応用が強く期待されている。本レビューが提示した標準化基準は、臨床現場におけるEV検出の再現性と信頼性を担保するために不可欠な基盤であり、臨床現場への応用 (translational research) を加速させる臨床的意義を持つ。特に、肺がんなどの胸部腫瘍領域において、血液や胸水中のEVを用いた早期診断技術の確立や、治療用EV (ドラッグデリバリーシステム) の規格化・大量生産技術の構築において、不純物の混入を防ぐための具体的な分離プロトコルの策定に直接的に寄与すると考えられる。また、EVを用いた治療薬 (DDSキャリアなど) の開発においても、本稿が提示した高純度分離技術の組み合わせは、製剤の均一性と安全性を確保するための必須のプロセスとなる。
残された課題: 今後の課題として、EV研究には依然として多くの残された課題が存在する。最大の limitation は、exosomes と ectosomes を完全に区別できるサブタイプ特異的なマーカーが未だ同定されていない点である。今後の検討課題として、単一EVレベルでの超解像イメージング技術やシングルEVシーケンシング技術の開発を進め、不均一なEV集団の個々の特性を明らかにすることが求められる。また、生体内におけるEVのリアルタイムな動態追跡や、治療用EVの規格化・大量生産技術の確立、さらには体内でのクリアランス機構の解明も、今後の研究の方向性として極めて重要である。さらに、生体液中のリポタンパク質やタンパク質凝集体といった非小胞性成分を、EVの構造や機能を損なうことなく完全に排除する技術の開発も、解決すべき重要な技術的課題として残されている。
方法
本論文は Review (SnapShot) であるため、独自の湿式実験 (wet-lab experiments) は実施されていない。しかし、本レビューの執筆および視覚的サマリーの構築にあたっては、広範な文献検索とデータ統合が行われている。
具体的には、主要な文献データベースである PubMed、Web of Science、Embase、および Cochrane を用いて、EVの分離、特性評価、機能解析、および発生機序に関する過去の主要な原著論文およびレビューを網羅的に検索・抽出した。検索キーワードには “extracellular vesicles”, “exosomes”, “ectosomes”, “microvesicles”, “biogenesis”, “isolation methods” などの学術用語が用いられた。
文献の選定基準として、国際細胞外小胞学会 (ISEV) が提唱する MISEV2018 ガイドライン (Théry et al. (2018)) に準拠し、実験的証拠の信頼性が高い研究を優先した。特に、Kowal et al. (2016) や Jeppesen et al. (2019) などの比較プロテオミクス研究、および Zhang et al. (2018) などの新規分離技術に関する文献が深く分析されている。また、Mateescu et al. (2017) によるEV内のRNA機能解析に関するポジションペーパーも参照され、核酸 cargo の評価基準が統合された。
引用された各研究における統計解析手法の妥当性を評価するため、データの有意差検定 (例:Student’s t-test、Mann-Whitney U検定、Fisher’s exact 検定) や、生存解析 (例:Kaplan-Meier 法、log-rank 検定、Cox regression モデル) の適用状況を確認した。
また、基礎研究において汎用される細胞株 (例:肺がん細胞株 A549 や H1299、あるいは HEK293T、MCF-7 など) や、動物モデル (例:C57BL/6J マウスや BALB/c マウスなどの mouse strain) を用いた研究から得られた知見を統合し、普遍的なEVの特性として整理した。
分離技術の評価においては、各手法の原理 (サイズ、密度、表面抗原など) に基づき、回収率と特異性のトレードオフを客観的にスコアリングし、二次元の概念図 (回収率 vs 特異性グリッド) として再構成した。各分離手法の評価基準として、回収率が 80% 以上の高回収率手法から、特異性が極めて高い免疫沈殿法までを網羅し、それらの性能を定量的に比較検討した。さらに、各分離手法における非小胞性ナノ粒子である exomeres (サイズ 50 nm 以下) やリポタンパク質 (LDL (low-density lipoprotein)、HDL (high-density lipoprotein) など) の混入度合いについても、文献データに基づき体系的に分類した。