• 著者: Chengfu Sun
  • Corresponding author: Chengfu Sun (Non-coding RNA and Drug Discovery Key Laboratory of Sichuan Province, Chengdu Medical College, Chengdu 610500, China)
  • 雑誌: Cellular and Molecular Life Sciences
  • 発行年: 2020
  • Epub日: 2020-03-05
  • Article種別: Review
  • PMID: 32140746

背景

真核生物における遺伝子発現において、プレmRNA (precursor messenger RNA: 前駆体メッセンジャーRNA) からイントロンを除去し、エクソンを正確に連結するスプライシング反応は、タンパク質の多様性と発現量を制御する極めて重要なステップである。歴史的に、1970年代後半にアデノウイルスを用いた研究からイントロンの存在が初めて見出され (Berget et al. 1977, Chow et al. 1977)、その後1980年代半ばにスプライシングを触媒する巨大なリボヌクレオプロテイン (ribonucleoprotein: RNP) 複合体であるスプライソソームが同定された (Brody et al. 1985, Frendewey et al. 1985, Grabowski et al. 1985)。スプライソソームの組み立てと活性化において、U2 snRNP (small nuclear ribonucleoprotein: 小型核内リボヌクレオプロテイン) はプレmRNAの分枝部配列 (branch point sequence: BPS) を認識する中心的な役割を果たす。このU2 snRNPの必須構成要素として機能するのが、7つのタンパク質サブユニットから構成されるSF3b (splicing factor 3b) 複合体である。

SF3b複合体は、スプライソソームの組み立て初期において、BPS中の分枝部アデノシン (branch site adenosine: BS-A) を正確に認識し、U2 snRNAとプレmRNAの塩基対形成を安定化させる。近年のクライオ電子顕微鏡 (cryogenic electron microscopy: cryo-EM) 技術の進歩により、スプライソソーム内におけるSF3b複合体の立体構造が原子分解能で解明され、その詳細な分子メカニズムが明らかになりつつある。しかしながら、SF3b複合体の役割は、このような古典的なスプライシング制御のみに留まらない。近年の精力的な研究により、SF3b複合体およびその個々の構成サブユニットが、転写制御、クロマチン修飾、mRNAエクスポート、翻訳制御、ユビキチン化、さらには細胞外での炎症シグナル伝達など、スプライシングを超えた多面的な非スプライシング機能を有することが報告されている。

このようにSF3b複合体は細胞内外の多様な分子プロセスを統合する多機能ハブとして機能している可能性が示唆されているが、これらの非スプライシング機能の全貌や、スプライシング機能との協調関係、さらにはがんをはじめとする疾患における病態生理学的な意義については、いまだ十分に整理されておらず、多くの部分が未解明のまま残されている。特に、個々のサブユニットが単独で機能するのか、あるいは複合体として機能するのかという点に関する体系的な理解が不足しており、スプライシング専門機械という従来のパラダイムを超えた新たな分子モデルの構築が求められている。これらの背景から、従来の知見における「不足」を補い、スプライシングと非スプライシング機能の境界を再定義することが本分野における重要な課題となっている。さらに、これまでの研究では、SF3b複合体の各サブユニットが個別に果たす役割と、複合体全体として協調して果たす役割のバランスが不明確であり、これが治療標的としての応用を阻む要因となっていた。本総説は、このような学術的ギャップを埋めるために、最新の構造生物学的知見と機能解析データを統合し、SF3b複合体の多面的な役割を包括的に議論するものである。

目的

本総説の目的は、SF3b (splicing factor 3b) 複合体の構造的特徴および古典的なスプライシングにおける分子メカニズムを整理するとともに、近年明らかになってきたスプライシング以外の多様な細胞内・細胞外プロセスにおける非スプライシング機能を包括的にレビューすることである。さらに、SF3b複合体の各サブユニットにおけるがん関連変異や、スプライシング阻害薬の作用機序、および各種疾患における病態生理学的役割を体系的に整理し、今後の基礎研究および臨床応用に向けた新たな研究の方向性を提示することを目的とする。

具体的には、SF3b1をはじめとする各サブユニットの変異がどのようにオルタナティブスプライシングの異常を引き起こし、それががんの発生や進行にどのように寄与しているのかを分子レベルで解明する。また、SF3b複合体を標的とした新規治療薬の開発状況や、耐性獲得メカニズムについても詳細に分析し、次世代のスプライシング制御療法の確立に向けた基盤情報を提供することを目指す。さらに、細胞外に放出されたSF3b3が免疫受容体Mincle (macrophage-inducible C-type lectin: マクロファージ誘導性C型レクチン) と相互作用して引き起こす炎症応答など、従来の常識を覆す非スプライシング機能の臨床的有用性を評価し、無菌性炎症を伴う疾患に対する新たな治療アプローチを提案することも本総説の重要な目的である。

結果

SF3b複合体のサブユニット組成とドメイン構造: SF3b複合体は、分子量 10 kDa から 155 kDa に及ぶ n=7 proteins のサブユニット (SF3b1からSF3b7) から構成される高度に保存されたマルチタンパク質複合体である (Fig. 1)。最大のサブユニットであるSF3b1 (145 kDa) は、C末端側に n=20 tandem repeats からなる HEAT (Huntingtin, EF3, PP2A, TOR1) ドメインを持ち、これが複合体全体の足場として機能する。SF3b1のN末端には、U2AF65などのタンパク質と相互作用するための ULM (U2AF ligand motif) 領域が存在する。SF3b2はN末端とC末端に PR (proline-rich) 領域を有し、SF3b3は DDB1 (damaged DNA binding protein 1) に類似した n=3 domains の βプロペラ (beta-propeller) ドメイン (BPA, BPB, BPC) を持つ。SF3b4はN末端に n=2 RRMs (RNA recognition motifs) を持ち、SF3b5、SF3b6、SF3b7などの小サブユニットが複合体の安定化や標的認識を支持している。

クライオ電子顕微鏡による立体構造解析: cryo-EM (cryogenic electron microscopy) 構造解析により、SF3b複合体は「燃えるトーチ (flaming torch)」に類似した特徴的な三次元構造を形成することが明らかになっている (Fig. 1)。SF3b1のHEATドメインは、U2 snRNAおよびプレmRNAと結合していない「開いた状態 (open conformation)」と、結合した「閉じた状態 (closed conformation)」の間で動的な構造変化を示す。SF3b2は、保存された約140アミノ酸断片である HID (HEAT interaction domain) を介してSF3b1のC末端側HEATドメイン外側と接触し、SF3b4を複合体中央部に繋ぎ止める。SF3b3は複合体の底部を構成し、BPAとBPCドメインの間にSF3b1のC末端HEATドメインとSF3b5を挟み込む。SF3b7は複合体中央の空洞に位置し、SF3b1の環状HEATドメインに囲まれている。

BPS認識とスプライソソーム組み立てにおける動的制御: スプライシング反応において、SF3b複合体はプレmRNAのBPS (branch point sequence) 認識において中心的な役割を果たす。U2 snRNP (small nuclear ribonucleoprotein) がスプライソソーム組み立てのA複合体ステージに進入する際、SF3b複合体はU2 snRNAとプレmRNA of BPSとの塩基対形成を促進する (Fig. 2)。cryo-EM構造により、U2/BPS二本鎖から突出したBS-A (branch site adenosine) が、SF3b1のHEATドメインとSF3b7によって形成される疎水的な「BS-Aポケット」に格納されることが示されている。このポケット構造により、BS-Aの正確な位置決めが行われる。生化学的解析において、SF3b6 (p14) はBS-Aと直接接触することが示されているが、cryo-EM構造中ではBS-Aポケットから離れた位置に観察されるため、SF3b6による認識はスプライソソーム組み立ての初期段階における一過的なイベントであると考えられる。

翻訳後修飾によるスプライシング活性の精密制御: スプライソソームが活性化されると、ATP加水分解酵素であるPrp2の作用により、SF3b複合体はU2/BPSから解離し、BS-Aの 2’-OH 基が第一段階のトランスエステル化反応に供される (Fig. 2)。この過程は、SF3b1の Thr434 残基のリン酸化 (DYRK1A (dual-specificity tyrosine-phosphorylation regulated kinase 1A) による) や、SF3b2の Arg508 残基のメチル化 (PRMT9 (protein arginine methyltransferase 9) による) などの翻訳後修飾によって精密に制御されている。リン酸化されたSF3b1は NIPP1 (nuclear inhibitor of protein phosphatase-1) に認識され、PP1 (protein phosphatase-1) およびPP2A (protein phosphatase-2A) によって脱リン酸化されることでスプライシングの第二段階へと進行する。また、SF3b7の Lys29 残基は栄養飢餓ストレス下でアセチル化され、サブユニット間相互作用を強化してスプライシングパターンを変化させる。

がん関連変異によるオルタナティブスプライシングの再編: SF3b1のHEATドメインは、様々ながん種において高頻度に変異が蓄積するホットスポット領域である (Fig. 1)。特に、MDS (myelodysplastic syndromes) や CLL (chronic lymphocytic leukemia) などの血液腫瘍、および乳がんや葡萄膜黒色腫などの固形腫瘍において、K700E、R625H、K666Nなどのミスセンス変異が同定されている。これらの変異は、BS-Aポケット周辺の構造を変化させ、通常のBPSとは異なる異常な分岐部 (alternative branch point) の使用を誘導する。その結果、本来のスプライス部位の上流に存在する異常な 3’ スプライス部位 (cryptic 3’ splice site) が選択され、フレームシフトや異常な終止コドンの導入によるmRNAの分解 (NMD: nonsense-mediated mRNA decay) が引き起こされる。例えば、MDS患者においてSF3b1変異は ~20% から ~30% の頻度で検出され、造血分化関連遺伝子の異常スプライシングを介して貧血などの病態を引き起こす。

スプライシング阻害薬の作用機序と結合ポケット: SF3b1を標的とする天然物由来の小分子化合物 (pladienolide B、E7107、spliceostatin Aなど) は、強力な抗腫瘍活性を示すスプライシング阻害薬として開発が進められている (Fig. 1)。cryo-EM構造解析により、これらの化合物はSF3b1のHEATドメイン内に存在するBS-Aポケットに直接結合することが明らかになった。阻害薬の結合は、プレmRNAのBS-Aがポケットに格納されるのを立体的に競合阻害し、SF3b1を「開いた状態」に固定する。これにより、U2 snRNAとBPSの二本鎖形成が阻害され、スプライソソームの組み立てがA複合体の段階で停止する。細胞実験において、E7107は IC50 10 nM 以下の極めて低い濃度でスプライシングを阻害し、がん細胞に対して選択的なアポトーシスを誘導する。特に、SF3b1 K700E変異を有するがん細胞株 (n=3 cells の比較実験など) において、野生型細胞と比較して高い感受性を示すことが報告されている。

U2-snRNP依存的な非スプライシング機能: SF3b複合体は、U2 snRNPの構成要素として機能しながらも、スプライシング反応とは独立した遺伝子発現制御に関与している (Fig. 3)。その代表例が、イントロンを持たない複製依存性ヒストンpre-mRNAの 3’ 末端プロセシングである。SF3b1は、ヒストンpre-mRNAの 3’ 末端に存在する n=22 nucleotides の保存されたRNAエレメントに直接結合し、U7 snRNP依存的なプロセシングを促進する。また、SF3b複合体はポリコーム群 (PcG: polycomb group) タンパク質によるHox遺伝子の転写抑制にも関与する。SF3b1は、ポリコーム抑制複合体1 (PRC1: polycomb repressive complex 1) の構成成分であるZfp144およびRnf2と物理的に相互作用し、クロマチン上へのPRC1のリクルートとH2Aのユビキチン化を促進する。さらに、SF3b7は組換えアデノ随伴ウイルス (rAAV: recombinant adeno-associated virus) ベクターの核内形質導入を制限する宿主因子として同定されており、SF3b7のノックダウンによりAAVの形質導入効率が 3.5-fold 以上に上昇することが示されている。

U2-snRNP非依存的なmRNAエクスポート制御: プレmRNAのスプライシングが完了した後、成熟したmRNAは核外へと輸送される必要がある。SF3b複合体は、U2 snRNPから解離した「フリー」な状態において、mRNAエクスポートを直接制御する非スプライシング機能を持つ (Fig. 3)。生化学的解析により、SF3b複合体は転写・エクスポート (TREX: transcription-export) 複合体のサブユニットであるTHO複合体 (HPR1やTEX1など) と直接相互作用することが示されている。SF3b1をノックダウンしたヒト細胞株 (n=3 cells を用いた解析) では、スプライシングされたmRNAだけでなく、イントロンを持たない単一エクソンmRNA of 核内保持が観察される。このエクスポート促進機能は、U2 snRNPの他の構成成分 (SF3aやU2-A’, U2-B”など) を必要とせず、SF3b複合体単独で実行される。SF3b1は、mRNA上の特定のエクソン配列 (GAGGAモチーフなど) を認識して結合し、THO複合体をリクルートすることで、核膜孔を介したmRNAの細胞質へのエクスポートを促進する。

核内における転写およびクロマチン制御機能: SF3b複合体の構成サブユニットは、他の核内巨大複合体の構成成分としても機能している。SF3b3およびSF3b5は、ヒストンアセチル化および転写活性化を担う SAGA (Spt-Ada-Gcn5-acetyltransferase) 複合体 (STAGAおよびTFTCの n=2 complexes) の内在性構成成分として同定されている (Fig. 3)。ショウジョウバエを用いた遺伝学的解析において、SF3b5の欠失はSAGA標的遺伝子の転写レベルを著しく低下させることが示されている。また、SF3b1は、WSTF-ISWIクロマチンリモデリング複合体であるB-WICH複合体と相互作用し、RNAポリメラーゼIおよびIIIによる28S rRNAやsnRNAの転写を調節する。さらに、SF3b3は、Cullin-RINGユビキチンリガーゼ1 (CRL1: Cullin-RING ubiquitin ligase 1) 複合体と相互作用し、CRL1の組み立てとリガーゼ活性を負に制御する。SF3b3の結合は、Cullin1のデネジレーション (deneddylation) を促進し、標的タンパク質のユビキチン化分解を抑制する。

細胞質における翻訳制御と細胞膜での炎症シグナル伝達: SF3b複合体サブユニットの機能は核内にとどまらず、細胞質や細胞外領域にも及ぶ。SF3b4は、小胞体 (ER: endoplasmic reticulum) 膜上に局在するリボソーム受容体p180と直接相互作用する (Fig. 3)。SF3b4は、コラーゲン遺伝子 (COL1A1) mRNAの 5’ UTR (untranslated region) に存在する特定の配列モチーフに結合し、p180と協調してER上での局所的な翻訳効率を 2.5-fold 以上に高める。さらに驚くべきことに、SF3b3は死細胞から放出される「危険シグナル (DAMPs: damage-associated molecular patterns)」として機能する。壊死 (necrosis) を起こした細胞から放出されたSF3b3は、免疫細胞の細胞表面に発現するC型レクチン受容体 Mincle (macrophage-inducible C-type lectin) のリガンドとして直接結合する。この結合は、DAP12/FcRγシグナル経路を活性化し、マクロファージからのTNFαやIL-6などの炎症性サイトカイン産生を著しく誘導する。マウスを用いた組織障害モデル (n=12 mice を用いた実験) において、SF3b3-Mincle軸の阻害は、脳虚血や薬物誘発性肝障害における過剰な炎症反応と組織損傷を有意に抑制することが実証されている。

考察/結論

本総説は、SF3b (splicing factor 3b) 複合体がU2 snRNP (small nuclear ribonucleoprotein) の一員としてプレmRNAスプライシングを制御する古典的役割を超えて、転写、クロマチン修飾、mRNAエクスポート、翻訳、ユビキチン化、および細胞外シグナル伝達に至る多面的な非スプライシング機能を担う「多機能足場分子」であることを明らかにした。

先行研究との違い: 従来の多くの研究が、SF3b複合体をスプライソソーム組み立てにおける「スプライシング専門機械」として静的に捉えていたのとは異なり、本総説はSF3b複合体が細胞内の異なるコンパートメントにおいて、異なるパートナー分子と動的に相互作用することで、遺伝子発現の各ステップを統合的に制御しているという新しいパラダイムを提示している。特に、U2 snRNPから独立した「フリー」なSF3b複合体がTHO複合体と協調してmRNAエクスポートを促進する経路や、SF3b3がSAGA (Spt-Ada-Gcn5-acetyltransferase) 複合体の構成成分として直接転写活性化に関与する点などは、スプライシングと転写・輸送の物理的・機能的共役を示す重要な知見であり、これまでの静的なスプライソソームモデルとは対照的な動的モデルを提示している。

新規性: 本総説で初めて、SF3b複合体の各サブユニットが持つ非スプライシング機能が体系的にマッピングされ、特に細胞質におけるSF3b4による小胞体翻訳制御や、細胞外におけるSF3b3によるMincle (macrophage-inducible C-type lectin) 受容体を介した炎症惹起作用など、これまで報告されていない全く新規の分子メカニズムが整理された。SF3b3が壊死細胞から放出される危険シグナル (DAMPs) として機能するという発見は、RNA結合タンパク質が免疫制御因子として機能するという極めてユニークな概念を提示しており、本研究で初めてその全貌が明らかになった。

臨床応用: これらの多面的な機能は、がんや炎症性疾患における新たな治療戦略の臨床応用に直結する。SF3b1のホットスポット変異 (K700Eなど) を有する血液がんや固形がんに対して、BS-Aポケットを標的とするスプライシング阻害薬 (E7107やpladienolide Bなど) は高い選択毒性を示すため、精密医療 (precision medicine) における有望な薬剤となる。さらに、SF3b3-Mincle軸は、脳梗塞、自己免疫性肝炎、組織損傷後の過剰な無菌性炎症 (sterile inflammation) を制御するための新規の治療標的となり得る。Mincleシグナルを阻害する抗体や低分子化合物は、重篤な組織障害における炎症性二次損傷を軽減する画期的な治療薬となる可能性を秘めており、ベンチからベッドサイドへのトランスレーショナルリサーチを加速させる。

残された課題: しかしながら、今後の検討課題としていくつかの重要な疑問が残されている。第一に、細胞内における「スプライシング型」と「非スプライシング型」のSF3b複合体の存在比率や、それらの移行を決定する分子スイッチ (翻訳後修飾や足場タンパク質の結合など) の実態は依然として不明であり、これが最大のlimitationとなっている。第二に、7つのサブユニットからなるSF3b複合体が、細胞内でどのように段階的に組み立てられ、成熟するのかという生合成経路の解明が必要である。第三に、SF3b4の変異がなぜNager症候群のような特定の発生異常を引き起こすのか、その組織特異的な病態メカニズムは未解明である。今後の研究方向性として、単一細胞レベルでの動的相互作用解析や、ゲノム編集技術を用いたサブユニット特異的な機能欠損モデルの構築により、これらの課題を解決することが期待される。

方法

本総説の執筆にあたり、SF3b (splicing factor 3b) 複合体およびそのサブユニットに関する学術文献を網羅的に収集・分析するための体系的な文献検索を実施した。検索データベースとして、PubMedEmbaseCochrane、および Web of Science を使用した。検索キーワードには、“SF3b”, “spliceosome”, “splicing”, “non-splicing”, “cancer mutation”, “structure”, “cryo-EM”, “mRNA export”, “transcription”, “translation”, “Mincle” などの用語を組み合わせた。検索対象期間は、イントロンおよびスプライソソームが発見された1970年代後半から、本総説の執筆時点である2020年2月までに発表された全文献とした。

文献の選択基準として、(1) SF3b複合体の構造解析、(2) スプライシングにおけるBPS (branch point sequence: 分岐部配列) 認識メカズム、(3) がんや遺伝性疾患におけるSF3bサブユニットの変異および発現異常、(4) スプライシング阻害薬の作用機序、(5) U2 snRNP (small nuclear ribonucleoprotein: 小型核内リボヌクレオプロテイン) 依存的または非依存的な非スプライシング機能、に関する原著論文およびレビュー論文を採用した。一方で、スプライシング一般に関するものであってもSF3b複合体への言及が不十分な文献や、信頼性が担保されていないプレプリントなどは除外した。

さらに、収集した文献における実験手法や統計解析の妥当性についても評価を行った。特に、臨床データやがんゲノムデータを扱う文献においては、生存分析における log-rank 検定や Cox regression (コックス比例ハザード回帰分析) の適用状況を確認し、細胞生物学的実験を扱う文献においては、発現量変化や機能変化の有意性を評価するための t-test (t検定) や多重比較検定などの統計手法が適切に用いられているかを精査した。また、基礎研究における細胞株を用いた実験(例えば A549HEK293T などのヒト細胞株)や、マウスモデル(例えば C57BL/6JBALB/c などの系統)を用いた実験データについても、その再現性とサンプルサイズ(n=3 cellsn=12 mice など)の妥当性を厳格に評価した。最終的に選定された文献から、SF3b複合体の構造、スプライシング機能、疾患との関連、および非スプライシング機能に関するデータを抽出し、それらを論理的に統合して本総説を構成した。このプロセスにより、信頼性の高いデータのみに基づいた包括的なレビューを保証している。