Article data

  • 著者: Dokyung Jung, Sanghee Shin, Sung-Min Kang, Inseong Jung, Suyeon Ryu, Soojeong Noh, Sung-Jin Choi, Jongwon Jeong, Beom Yong Lee, Kwang-Soo Kim, Christine Seulki Kim, Jong Hyuk Yoon, Chan-Hyeong Lee, Felicitas Bucher, Yong-Nyun Kim, Sin-Hyeog Im, Byoung-Joon Song, Kyungmoo Yea, Moon-Chang Baek
  • Corresponding author: Moon-Chang Baek (Kyungpook National University, Daegu, Korea; Email: mcbaek@knu.ac.kr); Kyungmoo Yea (DGIST, Daegu, Korea; Email: ykm31@dgist.ac.kr)
  • 雑誌: Journal of Extracellular Vesicles
  • 発行年: 2022
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 36447429

背景

がん細胞由来小型細胞外小胞 (CA-sEV) は、その表面にプログラム細胞死リガンド1 (PD-L1) を発現し、exosomal PD-L1 (ePD-L1) として知られる。このePD-L1は、CD8+ T細胞上のPD-1に直接結合することでT細胞の傷害活性を抑制し、がんの免疫回避を誘導する重要なメカニズムであると報告されている Poggio et al. Cell 2019。さらに、ePD-L1は抗PD-1/PD-L1抗体治療に対する耐性機構としても機能し、高レベルのePD-L1は抗体の治療効果を競合的に阻害することが示されている Chen et al. Nature 2018。これに加え、CA-sEVはRab27a依存的に産生・分泌され、腫瘍微小環境を転移や進行に有利な状態へと改変することが知られている Bobrie et al. CancerRes 2012。これらの知見から、ePD-L1レベルの抑制やがん細胞からのsEV分泌抑制は、既存の抗PD-1/PD-L1抗体療法への耐性を克服するための強力な抗がん戦略となり得ると考えられる。しかし、ePD-L1レベルを効果的に抑制する薬剤の開発は手薄であり、この点が重要な課題として残されている。

一方、免疫細胞由来小型細胞外小胞 (IM-sEV) は、免疫細胞間の情報伝達において重要な役割を担う。例えば、樹状細胞 (DC) 由来sEVは、MHC-ペプチド複合体を介して抗原特異的なT細胞応答を増強することが報告されており Pitt et al. J Immunol 2014、CD8+ T細胞由来sEVは、腫瘍浸潤間葉系幹細胞を排除し、腫瘍の浸潤や転移を抑制する可能性が示されている Seo et al. Nat Commun 2018。しかし、既存のT細胞由来sEVの抗がん効果は限定的であり、その臨床応用にはさらなる機能強化が不足しているという課題が残されていた。特に、T細胞由来sEVの内部カーゴを効果的に再プログラムし、抗腫瘍活性を増強するメカニズムは未解明な点が多かった。

細胞外小胞 (EV) の表面に提示された生体活性分子は、可溶性分子と比較してより強力な生物学的効果を発揮することが複数の研究で示されている Koh et al. Biomaterials 2017。この原理に基づき、本研究ではT細胞由来sEVにインターロイキン2 (IL2) を表面テザリングすることで、以下の二重機序を創出する着想を得た。第一に、表面IL2のオートクリンシグナリングによるsEV内miRNAカーゴの再プログラム化、第二に、表面IL2によるCD8+ T細胞の直接的な活性化である。IL2はメラノーマや腎がんに対する既承認サイトカイン療法として有効性が確認されているが、全身投与では重篤な毒性 (例: 血管漏出症候群、Treg細胞の拡大による免疫抑制) が問題となる。sEVへのIL2表面提示は、IL2のターゲティング投与を可能にし、毒性軽減の観点からも有利となり得ると考えられる。本研究は、この新規プラットフォームが、免疫細胞とがん細胞の両方を調節する強力な新規がん免疫療法薬となる可能性を検証することを目的とした。

目的

本研究の目的は、IL2をPDGFR膜貫通ドメインへの融合リンカーで発現させたJurkat T細胞から産生されたIL2表面テザリング小型細胞外小胞 (IL2-sEV) の抗がん機序を詳細に解析することである。具体的には、以下の点を評価する。

  1. IL2-sEVにおけるmiRNAカーゴの再プログラム化の実態を明らかにし、特に抗がん作用に関与するmiRNAを同定すること。
  2. IL2-sEVがCD8+ T細胞を選択的に活性化し、かつ制御性T細胞 (Treg) の拡大を誘導しないメカニズムを解明すること。
  3. メラノーマ細胞におけるPD-L1発現およびexosomal PD-L1 (ePD-L1) 産生の抑制機序、特にmiRNAによるRab27a発現制御の役割を明らかにすること。
  4. in vivoメラノーマモデルにおいて、IL2-sEV単独投与の抗腫瘍効果と転移抑制効果を評価し、その宿主免疫依存性を確認すること。
  5. IL2-sEVが既存の抗PD-L1抗体やシスプラチンといった抗がん剤との併用療法において相乗効果を発揮するかを検証すること。

これらの解析を通じて、IL2-sEVが免疫細胞とがん細胞の両方を標的とする新規がん免疫療法薬としての可能性を確立することを目指す。

結果

IL2-sEVによるmiRNAカーゴの大規模な再プログラム化とsEV産生量の増加: IL2-sEVは、対照sEVと比較して2,588種のmiRNAのうち247種が1.5倍以上増加しており、IL2のオートクリンシグナリングによるmiRNAカーゴの大規模な再プログラム化が確認された (Figure 3A)。増加したmiRNAの中には、免疫刺激関連miRNAが14種、腫瘍抑制機能関連miRNAが7種、PD-L1制御関連miRNAが11種同定された (Figure S3B, C)。興味深いことに、IL2の表面テザリングはT細胞からのsEV分泌を著しく促進し、IL2-sEVの産生量は対照sEVと比較して約3.8倍に増加した (Figure 1B, S1D)。このsEV産生量の増加は、IL2-sEVの効率的な製造に寄与する。

CD8+ T細胞の選択的活性化とTreg細胞の非活性化: IL2-sEV処理により、CD8+ T細胞の増殖が用量依存的に有意に増加し (p<0.01)、IFNγ、パーフォリン、グランザイムBといった活性化マーカーのmRNA発現も有意に増加した (p<0.001)。同時に、PD-1およびCTLA-4といった免疫チェックポイント分子の発現は有意に減少した (Figure 1E)。特筆すべきは、組換えヒトIL2 (rhIL2) がTreg細胞の拡大を誘導したのに対し、IL2-sEVはTreg細胞の拡大を誘導しなかった点である (Figure 1F, G)。IL2に対する抗体 (αIL2 Ab) によるCD8+ T細胞活性化の部分的な阻害 (約50%) は、残存する効果がmiRNAカーゴに由来することを示唆した (Figure 2A, B)。IL2-sEV処理はTreg細胞の活性に影響を与えなかった (Figure S1H)。これらの結果は、IL2-sEVがrhIL2と比較して、より選択的な免疫刺激効果を持つことを示唆する。

メラノーマ細胞におけるPD-L1およびePD-L1の二経路抑制: miR-101-3p、miR-181a-3p、miR-223-3pは、SK-MEL-28細胞のPD-L1 mRNAレベルを約30%減少させた (p<0.05)。特にmiR-181a-3pとmiR-223-3pは、PD-L1タンパク質レベルを40%以上有意に減少させた (p<0.05)。IL2-sEVはメラノーマ細胞のPD-L1発現を顕著に抑制し (Figure 3E, F)、さらにePD-L1の産生も著しく抑制した (Figure 3G, I)。IL2-sEV前処理メラノーマ細胞は、CD8+ T細胞媒介殺傷能に対して35.9%の感受性増加を示した (p<0.05)。さらに、IL2-sEVはメラノーマ細胞におけるRab27aの発現を有意に低下させ、これによりがん細胞由来sEVの分泌が減少した (Figure 4A, C)。miR-181a-3pはCD8+ T細胞活性を増強しつつTreg細胞活性を抑制するという二方向機能も示した (Figure S4A-F)。これらのmiRNAの機能は、IL2-sEVの抗腫瘍効果に大きく寄与すると考えられる。

in vivo同系B16F10メラノーマモデルにおける強力な抗腫瘍効果: B16F10メラノーマを移植したC57BL/6Jマウス (n=6-7 mice/group) において、IL2-sEV投与群はPBS群と比較して15日目の腫瘍体積を約1,200 mm³から約300 mm³へと有意に抑制した (p<0.0001)。IL2-sEVは脾腫を有意に改善し (脾臓/体重比の低下)、腫瘍内へのCD8+ T細胞、マクロファージ、DCの集積を増加させ、Treg細胞を減少させた (Figure 5C, S5C, D)。免疫不全マウス (NOD/SCID) ではIL2-sEVの抗腫瘍効果が消失したことから、その効果が宿主免疫応答に依存することが確認された (Figure S5H, I)。肺転移モデル (n=7-8 mice/group) では、IL2-sEV投与群で肺転移フォーカス数が有意に少なかった (Figure 5L-O)。腫瘍組織におけるPD-L1およびRab27aの発現も、IL2-sEV処理群で有意に低下した (Figure 5D, E)。また、血漿中のePD-L1レベルもIL2-sEV投与により健康なマウスのレベルまで有意に低下した (Figure 5F)。

既存抗がん剤との相乗的組み合わせ療法: シスプラチン単剤療法では腫瘍増殖を約47.3%抑制したが、IL2-sEVとシスプラチンの併用群では、単剤療法と比較して有意な上乗せ効果が認められた (p<0.01)。同様に、抗PD-L1抗体とIL2-sEVの併用群では、腫瘍増殖および腫瘍重量が劇的に抑制された (p<0.0001)。これらの併用療法は、腫瘍組織におけるPD-L1およびRab27aの発現を単剤療法よりも大きく抑制した (Figure 6C, F)。これは、IL2-sEVによるePD-L1産生抑制が抗PD-L1抗体の標的を低減し、相加以上の効果をもたらす機序を示唆する。

考察/結論

本研究は、IL2を表面にテザリングしたT細胞由来小型細胞外小胞 (IL2-sEV) が、強力な二重機序の抗がん免疫療法プラットフォームを構築することを示した。第一の機序は、IL2-sEV表面に提示されたIL2によるCD8+ T細胞の選択的活性化 (Treg細胞非依存的) である。第二の機序は、オートクリンIL2シグナリングによるmiRNAカーゴの再プログラム化 (247種のmiRNAが増加) を介したメラノーマ細胞のPD-L1発現およびCA-sEV産生の抑制である。

先行研究との違い: 組換えヒトIL2 (rhIL2) との重要な差異として、IL2-sEVがTreg細胞の拡大を誘導しない点が挙げられる。これは、表面固定化IL2の受容体結合動態がrhIL2と異なり、IL-2Rα (CD25) を高発現するTreg細胞に対するシグナリングを回避できるためと考えられる。この選択的なCD8+ T細胞活性化は、rhIL2全身療法の主要な毒性問題 (Treg細胞拡大による免疫抑制や血管漏出症候群) の克服につながる可能性を秘めている。本研究で初めて、IL2-sEVが免疫不全マウスでは効果を示さず、免疫正常マウスでのみ抗腫瘍効果を発揮した事実は、本薬剤の抗腫瘍効果が宿主免疫応答に完全に依存することを示す。これは、メラノーマ免疫療法の根本原理 (機能的免疫系の要件) と整合し、in vivo作用機序の解釈を支持する。

新規性: miR-181a-3pがCD8+ T細胞活性化とTreg細胞抑制の両方に関与するという二方向機能は特に興味深い。このmiRNAはT細胞とメラノーマ細胞の双方に対して有利に作用することで、IL2-sEVの抗腫瘍ネットワーク効果を増幅すると考えられる。この知見は、Li et al. Cell 2007Liu et al. J Immunol Res 2020 など、miRNAが細胞種に応じて異なる免疫調節機能を持つことを示した先行研究と一致する。本研究は、サイトカイン表面修飾によるsEVカーゴ再プログラムという新規プラットフォームの概念を提示し、その汎用性を示唆する。

臨床応用: サイトカイン表面修飾によるsEVカーゴ再プログラムという本プラットフォームの概念は汎用的であり、他のサイトカイン (例: IL-15、IL-21、IFNγ) や他の免疫細胞 (例: NK細胞、DC) への適用、さらには固形がんの腫瘍内免疫抑制微小環境を標的とした戦略への拡張が期待される。本研究は、IL2-sEVが既存の抗PD-L1抗体やシスプラチンとの併用療法において相乗効果を発揮することを示し、特にePD-L1の抑制が抗PD-L1抗体の効果を増強する可能性は臨床応用において重要な意義を持つ。

残された課題: 残された課題として、①GMP準拠のスケールアップ製造と品質管理、②他のがん種への有効性検証、③免疫正常ヒト化マウスモデルでの前臨床試験、④ePD-L1レベルに基づく患者選択バイオマーカーの同定が求められる。また、IL2-sEVは現時点では標的細胞特異性を持たないため、Fu et al. Nat Commun 2019Luan et al. Acta Pharmacol Sin 2017 が示したように、抗体工学と組み合わせることで、より特異的かつ効果的な送達が可能となるだろう。

方法

IL2-sEVの作製と特性評価: IL2とPDGFR膜貫通ドメインを柔軟なリンカーで連結したIL2-PDGFRコンストラクトをレンチウイルスベクターに組み込み、Jurkat T細胞に安定導入した。IL2発現Jurkat T細胞の培養上清を回収し、300×gで5分、2,000×gで20分、10,000×gで30分の逐次遠心分離を行った後、0.22 µmフィルターでろ過し、120,000×gで90分間の超遠心によりsEVをペレット化した。得られたsEVはリン酸緩衝生理食塩水 (PBS) またはRIPAバッファーに再懸濁した。sEVの物理的特性は、ナノ粒子トラッキング解析 (NTA) により平均径約150 nmであることを確認し、透過型電子顕微鏡 (TEM) により形態を観察した。IL2の表面提示は、IL2抗体結合金ナノ粒子を用いたTEM、ELISA、およびウェスタンブロットにより確認した。

miRNAプロファイリングと機能解析: IL2-sEVと対照sEVからtotal small RNAを抽出し、次世代シーケンサーを用いたsmall RNA-seqにより2,588種のmiRNAを定量した。差次発現解析では、IL2-sEVで発現が1.5倍以上増加したmiRNAを有意とみなした。同定されたmiRNAのうち、PD-L1およびRab27aの発現制御に関与すると予測されるmiRNAについて、定量的リアルタイムPCR (qRT-PCR) およびウェスタンブロットにより作用を確認した。また、miRNA mimicまたはinhibitorをメラノーマ細胞に導入し、PD-L1およびRab27aの発現に対する機能検証を実施した。miRNAデータ解析には、Langmead et al. NatMethods 2012Quinlan et al. Bioinformatics 2010Robinson et al. Bioinformatics 2010のソフトウェアツールが使用された。

T細胞アッセイ: CD8+ T細胞の増殖はMTSアッセイで評価し、活性化マーカー (IFNγ、パーフォリン、グランザイムB) のmRNA発現はqRT-PCRで測定した。PD-1およびCTLA-4の発現はフローサイトメトリー (FCM) で解析した。制御性T細胞 (Treg) の拡大は、ヒト末梢血単核球 (PBMC) から分離したCD4+CD25+CD127dim Treg細胞のFCM解析 (n=4 donors) により評価した。IL2抗体を用いた部分阻害実験により、IL2表面提示による効果とmiRNAカーゴ由来の効果を分離して評価した。

PD-L1およびePD-L1解析: SK-MEL-28メラノーマ細胞に各種sEVを処理した後、PD-L1 mRNA (qRT-PCR) およびタンパク質 (ウェスタンブロット、免疫細胞化学) の発現を測定した。exosomal PD-L1 (ePD-L1) はELISAを用いて定量した。CD8+ T細胞媒介殺傷能は、メラノーマ細胞とCD8+ T細胞の共培養アッセイにより評価した。Rab27aの発現およびがん細胞由来sEVの産生量は、ウェスタンブロット、FCM、およびNTAにより定量した。

in vivo実験:

  • 同系メラノーマモデル: C57BL/6JマウスにB16F10-luc-g5細胞 (5×10⁵個) を皮下接種し、5日後からsEVまたはIL2-sEV (50 µg) を週3回、2週間静脈内投与した。腫瘍体積はキャリパーで測定し、ルシフェラーゼ活性により腫瘍増殖を評価した。脾臓重量を測定し、脾腫の改善を評価した。腫瘍浸潤免疫細胞 (CD8+ T細胞、Treg細胞、マクロファージ、DC) はFCMおよび免疫組織化学 (IHC) で解析した。
  • 免疫不全モデル: NOD/SCIDマウスにSK-MEL-28細胞を皮下移植し、IL2-sEVの抗腫瘍効果が宿主免疫に依存するかを確認した。
  • 肺転移モデル: B16F10-luc-g5細胞を尾静脈から静脈内投与し、肺転移フォーカス数をカウントした。
  • 組み合わせ療法: 抗PD-L1抗体 (100 µg 腹腔内投与) およびシスプラチン (250 µg 腹腔内投与) との組み合わせ効果を評価した。

統計解析: 統計解析はGraphPad PRISM 8ソフトウェアを用いて実施した。データは平均値±標準誤差 (SEM) で示し、Studentのt検定、一元配置分散分析 (ANOVA) とDunnettの事後検定、または二元配置分散分析とTukeyの事後検定を用いた。ノンパラメトリック検定としてKruskal-Wallis検定とDunnの事後検定も使用した。p値が0.05未満を有意差ありと判断した。