• 著者: Angelina M. Bilate, Juan J. Lafaille
  • Corresponding author: Juan J. Lafaille (Molecular Pathogenesis Program, Kimmel Center for Biology and Medicine at the Skirball Institute, New York University School of Medicine)
  • 雑誌: Annual Review of Immunology
  • 発行年: 2012
  • Epub日: 2012-01-06
  • Article種別: Review
  • PMID: 22224762

背景

Foxp3+制御性T (Treg) 細胞は免疫系のホメオスタシス維持と免疫寛容の確立に不可欠な細胞集団である。Foxp3はT細胞における制御機能を規定するForkhead boxファミリー転写因子であり、X染色体連鎖Foxp3遺伝子のヌル変異はヒトではIPEX症候群 (免疫調節異常・多腺性内分泌障害・腸症・X連鎖症候群)、マウスではScurfy変異として知られる重篤な多臓器自己免疫疾患を引き起こす。Foxp3欠損による壊滅的な自己免疫疾患は、Foxp3発現細胞の抑制機能が他の細胞集団では代替不可能であることを示す (Hori et al. 2003; Fontenot et al. 2003; Khattri et al. 2003)。この事実は、Treg細胞が免疫応答の負の制御において中心的役割を担うことを強く示唆している。

Treg細胞は発生部位と分化機序によって2カテゴリに大別される。(1) 自然発生型Treg (nTreg): 胸腺内で高親和性MHCクラスII-TCR相互作用を通じて誘導され、主に自己抗原特異性を持つ。(2) 誘導性Treg (iTreg): 胸腺外末梢部位で成熟Tconv細胞から分化し、自己抗原にも外来抗原にも反応できる。iTreg分化は非炎症性条件 (低用量抗原・抗CD4抗体・粘膜提示環境) と炎症性条件 (慢性炎症・感染) の2大カテゴリで誘導され、条件によって分化したiTregの特性が異なると推定される (Curotto de Lafaille and Lafaille 2009)。特に、炎症性環境下で誘導されるiTreg細胞は、その安定性が低いことが示唆されており、治療応用における重要な課題として認識されている。

本レビューの著者らは、腸管粘膜での口腔寛容モデルにおけるiTreg生成の直接実証 (Mucida et al. 2005)、nTreg-iTreg間の「役割分担 (Division of Labor)」モデルの確立 (Haribhai et al. 2011)、およびNrp1によるnTreg/iTreg識別マーカーの同定 (Bilate and Lafaille 2011) といったブレークスルーをもたらした研究者である。しかし、iTreg細胞の多様な生体内環境における役割、nTreg細胞との明確な識別マーカーの欠如、およびiTreg細胞の安定性については、2012年時点でも依然として多くの点が未解明であり、これらの知識ギャップが治療応用の可能性を制限する要因となっていた。特に、iTreg細胞が炎症性環境下でFoxp3発現を失い、病原性エフェクターT細胞に転換する可能性は、その治療的利用における重要な課題として残されている。本総説は、これらの未解明な側面を体系的に整理し、今後の研究方向性を示すことを目的としている。iTreg細胞の生物学的理解は、自己免疫疾患、アレルギー、癌、感染症といった広範な疾患の病態解明と新規治療法開発に不可欠であるにもかかわらず、その詳細な分化メカニズム、機能的多様性、および安定性に関する知識が不足している状況であった。

目的

本総説は、胸腺外部位で誘導される誘導性制御性T (iTreg) 細胞に関して、2012年時点の知見を包括的にレビューすることを目的とする。具体的には、以下の4つの主要な側面を検討する。(1) iTreg細胞の生成条件と分化シグナル、特に非炎症性および炎症性条件下での誘導メカニズムを詳細に分析する。(2) 自然発生型Treg (nTreg) 細胞との転写プロファイルおよび機能的差異を比較し、両者の識別マーカーの現状と課題を評価する。(3) 腸管粘膜免疫、癌、炎症性疾患、および感染症といった多様な生体内環境におけるiTreg細胞の役割と寄与を明らかにする。(4) iTreg細胞の安定性問題、特に炎症性環境下でのFoxp3発現の可塑性、および治療応用におけるiTreg細胞の可能性と残された課題について考察する。本レビューは、iTreg細胞の生物学的理解を深め、将来的な免疫療法開発への道筋を示すことを目指す。特に、nTreg細胞とiTreg細胞の機能的な役割分担の概念を確立し、それぞれの細胞集団が免疫寛容の維持にどのように寄与しているかを明確にすることも重要な目的である。

結果

nTregとiTregの転写プロファイルと識別マーカー: マイクロアレイ解析により、in vitroで生成されたiTreg細胞とin vivoのnTreg細胞の遺伝子発現プロファイルは有意に異なるが、多くの遺伝子を共有することが示された (Haribhai et al. 2009)。nTreg細胞特異的マーカーとして、Ikarosファミリー転写因子であるHelios (Ikzf2) とNeuropilin-1 (Nrp1) が同定された。健常な未免疫マウスでは、nTreg細胞がHelios高発現およびNrp1高発現を示すのに対し、口腔粘膜で誘導されたiTreg細胞はNrp1低発現であることが複数のin vivoモデル系で再現性をもって観察された。しかし、Heliosマーカーについては、TCR-トランスジェニック細胞をAPCと抗原で刺激するとiTreg細胞の50〜60%がHeliosを発現する一方で、抗CD3+抗CD28刺激ではほとんど発現しないという条件依存的な誘導が観察され、Helios単独でのnTreg/iTreg識別マーカーとしての信頼性には限界があることが示された (Verhagen and Wraith 2010; Akimova et al. 2011)。Lafailleらの研究では、口腔抗原誘導iTreg細胞とnTreg細胞の転写プロファイル比較においてNrp1が初の表面マーカーとして同定され、「健常マウスの粘膜由来iTreg細胞はNrp1低発現」という識別基準が確立された。興味深いことに、in vitro誘導iTreg細胞とin vivo誘導iTreg細胞は遺伝子発現プロファイルが大きく異なるにもかかわらず、抑制機能は同等であることが示されており、遺伝子発現の差異が必ずしも機能差を反映しないという逆説が浮かび上がった。nTreg細胞特異的遺伝子としてGranzyme BがiTreg細胞より高発現し、iTreg細胞特異的遺伝子としてIL-10がnTreg細胞より高発現する傾向が観察され、nTreg細胞が細胞接触依存性抑制を、iTreg細胞がIL-10等のサイトカイン依存性抑制を担うというメカニズム差異が示唆される (Haribhai et al. 2011)。

nTregとiTregの役割分担 (Division of Labor) の実験的確立: 大腸炎モデルおよびリンパ増殖症モデルでのiTreg細胞特異的欠失解析により、nTreg細胞とiTreg細胞が機能的に補完し合う「役割分担」の概念が確立された (Haribhai et al. 2009; Haribhai et al. 2011)。大腸炎モデルでは、Foxp3欠損マウス由来ナイーブT細胞 (iTreg細胞変換不能) を用いた場合、nTreg細胞移入単独では完全な大腸炎防御が得られず、in vitro誘導iTreg細胞の同時移入が必要であることが示された。これは、Foxp3+iTreg細胞変換能を有するナイーブT細胞と比較して、変換能のないFoxp3欠損T細胞ではnTreg細胞補充のみでは不十分であったことを意味する。リンパ増殖症モデルでは、新生児Foxp3欠損マウスへのnTreg細胞+Tconv細胞移入において、iTreg細胞特異的除去 (nTreg細胞区画は正常) を行うと疾患コントロールが不完全になることが示されており、iTreg細胞がnTreg細胞とは補完的・非重複的に機能することが確立された (Haribhai et al. 2011)。TCRレパートリー解析では、nTreg細胞とiTreg細胞が異なる抗原特異性を持ち、自己抗原応答 (nTreg細胞) と外来抗原応答 (iTreg細胞) への偏りが示唆され、これがnTreg-iTreg役割分担の分子的基盤を提供し得ると考えられる。NOD (非肥満糖尿病) マウスでは、in vitro誘導iTreg細胞の抑制能が欠損し、GARP、CTLA-4、CD73を含む遺伝子クラスターの発現低下と相関することが示された (D’Alise et al. 2011)。この欠損は脾臓ではなく膵臓流入リンパ節iTreg細胞に限局しており、局所的iTreg細胞機能不全が1型糖尿病発症に寄与し得る可能性が示唆された。

腸管粘膜免疫とiTregの誘導: 口腔寛容は食事性抗原に対する末梢免疫寛容のパラダイム的モデルであり、OVA特異的TCR-トランスジェニック/RAG欠損マウスへの経口OVA投与によってFoxp3-Tconv細胞からde novoにOVA特異的Foxp3+ iTreg細胞が生成されることが実証された (Mucida et al. 2005)。このiTreg細胞はOVAへの気道高感受性 (喘息モデル) の抑制に有効であった。腸管共生細菌がiTreg細胞誘導に直接寄与することも示された。Clostridium属細菌 (Ivanov et al. 2008が同定したヒト腸管微生物叢の約20種) は遠位腸管においてTGF-β依存的にFoxp3+ Treg細胞蓄積を促進し、生成されたTreg細胞はHelios低発現であることからiTreg細胞起源と推定された (Atarashi et al. 2011)。Bacteroides fragilisはTLR2シグナルを通じてiTreg細胞生成とTh17応答バランスの調整に寄与した (Round and Mazmanian 2010; Round et al. 2011)。Foxp3遺伝子座の保存非コードDNA配列エレメント1 (CNS1) の欠損マウスでは、胸腺nTreg細胞数は正常だがiTreg細胞生成が選択的に障害されることが示され、CNS1がiTreg細胞分化に特異的なシス調節エレメントとして必須であることが分子レベルで確立された (Zheng et al. 2010)。CNS1はTGF-β-SMAD3応答エレメントを含み、iTreg細胞分化を誘導するTGF-βシグナルとFoxp3転写誘導を直接連結する機能を持つ。腸管でのiTreg細胞誘導に特殊な環境的貢献をするのがCD103+腸管DCs (樹状細胞) である。これらのDCsはTGF-βとレチノイン酸 (RA) 依存的にiTreg細胞誘導を強力に促進する (Coombes et al. 2007; Sun et al. 2007)。RAはRALDH1/ALDH1A1により小腸絨毛DC上で産生され、Foxp3のCNS1エレメントに作用してiTreg細胞分化を増強する。

腫瘍免疫微小環境におけるiTregとnTreg: 多くの固形腫瘍でFoxp3+ Treg細胞浸潤増加が観察され、抗腫瘍免疫の抑制を介して腫瘍増殖を促進する (Wilke et al. 2010; Nishikawa and Sakaguchi 2010)。マウスモデルでは抗CD25抗体処置によるTreg細胞遮断が生存延長と転移抑制をもたらし (Onizuka et al. 1999; Shimizu et al. 1999)、CD4+CD25+ Treg細胞の添加が腫瘍拒絶免疫を抑制することが示された (Turk et al. 2004)。一方、ヒト大腸癌では高いTreg細胞数が良好な予後と関連するという例外があり (Ladoire et al. 2011)、腸管の強い常在菌誘発炎症環境でTreg細胞が炎症抑制として有益に機能する特殊状況と解釈される。腫瘍内Treg細胞がiTreg細胞かnTreg細胞かについては複数の証拠が相互に矛盾している。腫瘍細胞やその条件培地がTGF-β依存的にCD4+CD25-細胞へのFoxp3発現誘導によりiTreg細胞を生成できること (Liu et al. 2007)、また胸腺摘出・抗CD25処置マウスでもTreg様細胞が腫瘍内に出現することはiTreg細胞説を支持する (Valzasina et al. 2006)。一方、CCL22産生腫瘍がnTreg細胞を引き寄せるという化学遍性的機序も提示された (Curiel et al. 2004)。腫瘍内nTreg細胞比率の増加は腎細胞癌患者末梢血Treg細胞のHelios高発現として報告された (Elkord et al. 2011)。HA発現腫瘍とHA特異的TCR-トランスジェニックT細胞を用いたallelic marking実験では、nTreg細胞・iTreg細胞両方が腫瘍内Treg細胞蓄積に独立して寄与することが最も明確に示されており (Zhou and Levitsky 2007)、腫瘍微小環境ではiTreg細胞生成とnTreg細胞選択的蓄積が並行して生じる可能性が高い。

炎症・自己免疫・移植とiTreg: EAE (実験的自己免疫性脳脊髄炎)、喘息、移植拒絶、寄生虫感染等の各種モデルでiTreg細胞生成が観察されている (Curotto de Lafaille et al. 2008; Furtado et al. 2008)。炎症性条件下ではiTreg細胞生成効率がTeff細胞生成に比べ低く (Teff:iTreg比が非炎症下より高い)、したがって慢性炎症の完全制御よりも部分的軽減を担う役割が推定される。IL-6はFoxp3発現を抑制しTh17分化を促進することでiTreg細胞生成を阻害し、抗IL-6抗体投与がiTreg細胞拡大を促進するという逆説的知見も示された (Bettelli et al. 2006; Doganci et al. 2005)。Leishmania感染モデルでは慢性感染病原体の組織残存が腸管以外でもiTreg細胞誘導を促進し、病原体クリアランスを障害するという「寄生虫によるiTreg細胞ハイジャック」機序が示された (Belkaid et al. 2002)。HSV-2やRSVなどのウイルス感染モデルでは、iTreg細胞の誘導が病原体クリアランスを遅延させる一方で、過剰な免疫応答による組織損傷を軽減する二面性を持つことが報告された (Lund et al. 2008; Fulton et al. 2010)。

iTregの安定性問題と「exFoxp3 T細胞」: iTreg細胞研究における最大の懸念の一つはその安定性である。炎症性環境 (IL-6、TNF等) 下でFoxp3発現が消失してエフェクターT細胞 (Th17等) に転換する「Treg細胞不安定性」が報告されており、これを「exFoxp3 T細胞」と称する (Zhou et al. 2009)。Foxp3遺伝子座のCpGメチル化パターンがnTreg細胞とiTreg細胞で異なることが示唆されており (CNS2のメチル化がiTreg細胞ではnTreg細胞より高い傾向)、エピジェネティックな安定性の差がin vitro生成iTreg細胞の不安定性の一因と考えられる (Floess et al. 2007; Polansky et al. 2008)。生体内でiTreg細胞がどの程度の頻度で病原性エフェクターに転換するかは腫瘍免疫・自己免疫治療の観点から重要な未解決問題である。例えば、Foxp3-GFPレポーターマウスを用いた研究では、炎症性環境下でFoxp3-GFPの発現が低下するTreg細胞が観察され、その割合は炎症の程度に依存して変化することが示された。これらのFoxp3発現を失った細胞は、IL-17などの炎症性サイトカインを産生する能力を獲得し、病原性エフェクターT細胞として機能し得ることが示唆された。この現象は、iTreg細胞を治療に用いる際の安全性と有効性に直接影響するため、そのメカニズム解明と制御が今後の検討課題である。

考察/結論

本レビューはiTreg細胞研究の2012年時点での体系的整理であり、以下の4点が主要な概念的貢献として挙げられる。

先行研究との違い: 本研究は、従来の口腔寛容が主にT細胞のアネルギーやクローン欠失によって引き起こされるという見解と異なり、de novoのiTreg細胞生成が口腔寛容の主要なメカニズムであることを実験的に実証した。OVA特異的TCR-transgenic/RAGマウスへの経口OVA投与によりFoxp3-Tconv細胞からFoxp3+iTreg細胞がde novoに生成されるという直接的実証は、口腔寛容の分子機序確立に決定的に重要であり、食品アレルギー・炎症性腸疾患の新規治療法開発の基礎となる。

新規性: 本研究で初めて、nTreg細胞とiTreg細胞が機能的に補完し合う (Division of Labor) という概念が実験的に確立された。大腸炎モデルおよびリンパ増殖症モデルで、nTreg細胞単独では完全な免疫制御が達成できず、両者の協調が必要であることが示された。この知見は自己免疫疾患治療においてiTreg細胞誘導をnTreg細胞依存療法に補完的に利用することの合理的根拠を提供する。また、Nrp1というnTreg/iTreg識別が可能な表面マーカーの同定 (粘膜iTreg細胞はNrp1低発現) は、Treg細胞サブセットのより精密な解析を可能にする新規なツールを提供した。ただし、各マーカーの適用条件には限界があり、単一マーカーによる絶対的区別は困難であるという注意が示された。

臨床応用: 腸管共生細菌 (Clostridium属・B. fragilis) がiTreg細胞誘導に直接寄与するという発見は、マイクロバイオームと腸管免疫寛容の接点を示し、iTreg細胞誘導を介した腸内細菌叢と腫瘍免疫の関連という現代的な研究フロンティアに先行した知見である。この発見は、腸内細菌叢を標的としたiTreg細胞誘導による自己免疫疾患やアレルギーの治療、さらには腫瘍免疫の制御といった臨床応用への道を開く可能性がある。iTreg細胞の体外誘導・養子移入による自己免疫疾患・移植拒絶・炎症性腸疾患の治療という方向性が提示されており、特にラパマイシンを用いたiTreg細胞の効率的なin vitro誘導プロトコルは、臨床現場での細胞治療の実現可能性を高めるものとして期待される (Hippen et al. 2011)。

残された課題: iTreg細胞の安定性 (炎症性環境下でFoxp3発現が消失し病原性T細胞に転換するリスク) が主要な残課題として挙げられた。この「exFoxp3 T細胞」の現象は、iTreg細胞を治療に用いる際の安全性と有効性に直接影響するため、そのメカニズム解明と制御が今後の検討課題である。また、nTreg細胞とiTreg細胞を明確に区別する特異的マーカーのさらなる同定、およびiTreg細胞の抗原特異性と抑制範囲、TCRレパートリーの多様性、抑制メカニズムの微小環境依存性など、iTreg細胞の生物学における多くの基本的な問いが今後の研究方向性として残されている。腫瘍免疫療法の観点からは、腫瘍内iTreg細胞選択的な除去戦略 (nTreg細胞との識別マーカーの確立が前提) が有望な治療標的として示唆されており、2012年以降に実臨床化が進んだ抗CTLA-4・抗PD-1療法による抗腫瘍応答増強においてTreg細胞枯渇が重要な機序の一つであることと整合する。

方法

本論文はレビュー記事であるため、独自の実験方法は含まれない。引用された研究では、iTreg細胞の誘導、機能、およびnTreg細胞との比較を評価するために、主にマウスモデルが用いられている。本レビューの文献検索は、PubMed、Web of Scienceなどの主要な医学・生物学データベースを用いて行われたと推測される。検索期間は、Foxp3がTreg細胞の主要な転写因子として同定された2003年以降の関連論文に焦点を当て、2011年末までの発表論文を対象としたと考えられる。

iTreg細胞誘導モデル:

  • 口腔寛容モデル: OVA (ovalbumin) 特異的TCR-トランスジェニック/RAG (recombination activating gene) 欠損/Foxp3欠損マウスへの経口OVA投与により、nTreg細胞が存在しない状況下でのiTreg細胞のde novo生成を実証した (Mucida et al. 2005; Curotto de Lafaille et al. 2008)。このモデルは、iTreg細胞が末梢で独立して誘導され得ることを示す上で重要であった。
  • 大腸炎モデル: CD4+CD45RBhigh T細胞を免疫不全マウスへ移入し、大腸炎の発症とTreg細胞による抑制効果を評価した (Mottet et al. 2003; Haribhai et al. 2009)。このモデルでは、iTreg細胞が腸管炎症の制御に果たす役割が詳細に解析された。
  • リンパ増殖症モデル: 新生児Foxp3欠損マウスにnTreg細胞とTconv細胞を移入し、iTreg細胞の選択的欠失が疾患制御に与える影響を解析した (Haribhai et al. 2011)。この研究は、nTreg細胞とiTreg細胞の機能的な役割分担を示す上で重要な知見を提供した。
  • 腫瘍モデル: HA (influenza hemagglutinin) 発現腫瘍とHA特異的TCR-トランスジェニックT細胞を用いたallelic marking実験により、腫瘍微小環境におけるnTreg細胞とiTreg細胞の寄与を区別した (Zhou and Levitsky 2007)。
  • 自己免疫疾患モデル: EAE (実験的自己免疫性脳脊髄炎) モデルや非肥満糖尿病 (NOD) マウスモデルを用いて、炎症性環境下でのiTreg細胞の生成と機能的役割を検討した (Furtado et al. 2008; D’Alise et al. 2011)。

iTreg細胞の同定と解析:

  • レポーターマウス: Foxp3-GFPレポーターマウスやallelic markingシステムを用いて、Foxp3発現細胞の起源と動態を追跡した。これにより、Foxp3発現の動態とTreg細胞の可塑性が評価された。
  • 細胞移入とFACS解析: CD4+T細胞サブセットの分離、移入、およびフローサイトメトリーによる表現型解析が行われた。
  • 遺伝子発現解析: マイクロアレイ解析により、in vitroおよびin vivoで誘導されたiTreg細胞とnTreg細胞の遺伝子発現プロファイルを比較し、Helios (Ikzf2) やNeuropilin-1 (Nrp1) などの識別マーカー候補を同定した (Haribhai et al. 2009; Feuerer et al. 2010)。
  • エピジェネティック解析: Foxp3遺伝子座のCpGメチル化パターンを解析し、nTreg細胞とiTreg細胞の安定性の違いを評価した (Floess et al. 2007; Polansky et al. 2008)。

腸内細菌叢の役割:

  • 無菌 (GF) マウスモデル: 腸内細菌叢がiTreg細胞誘導に与える影響を評価するため、無菌マウスに特定の共生細菌 (例: Clostridium属、Bacteroides fragilis) を定着させる実験が行われた (Round and Mazmanian 2010; Atarashi et al. 2011)。
  • 統計手法: 引用された研究では、T細胞の増殖、サイトカイン産生、疾患スコア、生存率などの比較に、t検定、ANOVA、ログランク検定などの標準的な統計手法が用いられている。これらの統計手法は、異なる群間での有意差を評価するために不可欠である。