• 著者: Franck Housseau, Shaoguang Wu, Elizabeth C. Wick, Hongni Fan, Xinqun Wu, Nicolas J. Llosa, Kellie N. Smith, Ada Tam, Sudipto Ganguly, Jane W. Wanyiri, Thevambiga Iyadorai, Ausama A. Malik, April C. Roslani, Jamunarani S. Vadivelu, Sara Van Meerbeke, David L. Huso, Drew M. Pardoll, Cynthia L. Sears
  • Corresponding author: Franck Housseau (Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD, USA)
  • 雑誌: Cancer Research
  • 発行年: 2016
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 26880802

背景

IL-17 (interleukin-17) は炎症関連発がんを促進するサイトカインとして注目されているが、これまで大腸癌においてどの細胞集団がその主要産生源を担うかは争点であり未解明であった。先行研究 (Wu et al. Nature 2014 らは ヒト大腸癌で γδT17 が IL-17 産生主源と主張) では IL-17 産生源として CD4+ Th17 (helper T cell 17) と γδT17 (gamma-delta T cell expressing IL-17) のどちらが優位かに関する報告が一致していなかった。著者らの先行研究 (Wu et al. NatMed 2009 が示した ETBF Min マウス腫瘍誘発機構) では、腸管病原細菌 enterotoxigenic Bacteroides fragilis (ETBF; B. fragilis 産生 fragilysin による発がん促進株) が Min (Apc+/-) マウスに大腸腫瘍を誘発し、その機序に STAT3 (signal transducer and activator of transcription 3)/IL-17 駆動の炎症応答が関与することが示されていた。Th17 細胞は STAT3 依存的な主要 IL-17 産生細胞であるが、γδT 細胞・ILC3 (group 3 innate lymphoid cell)・肥満細胞・MDSC (myeloid-derived suppressor cell) など多彩な自然免疫細胞も IL-17 を産生しうる (Cua et al. CellHostMicrobe 2010 のレビュー)。

これまで腫瘍促進における Th17 細胞依存性の IL-17 と、これら自然免疫由来の IL-17 の相対的寄与と機能的冗長性は十分に検討されておらず、特に骨髄キメラを用いた因果関係解析と「Th17 を ablate した時の腫瘍発生 kinetics の動的変化」を捉えた研究は不足していた。本研究を着手するうえで足りなかったのは、(1) 適応免疫 Th17 と自然免疫 γδT17 の冗長性を骨髄キメラで因果証明する基盤、(2) ETBF 誘発 Min モデルでの 8 週・12 週の長期 kinetics 解析、(3) ヒト大腸癌コホート (米国 + マレーシア) での Th17・γδT17 共存パターンの並行解析、の 3 点である。

目的

ETBF 誘発 Min マウス大腸腫瘍モデルにおいて、(1) Th17 細胞を CD4-Cre × Stat3-flox 系で選択的に ablate した場合の発がんへの影響を解明し、(2) Th17 非依存的な IL-17 源を腫瘍内 TIL ソート + RT-qPCR で同定し、(3) IL-17 産生の適応・自然免疫由来の冗長性を骨髄キメラ実験で因果証明し、(4) ヒト大腸癌における Th17・γδT17 共存パターンを米国 + マレーシアコホートで確認する。

結果

所見1:Th17 ablation で発がんが遅延するが最終的に IL-17 依存的腫瘍発生が成立する:Min-CD4Stat3-/- (CD4 系統での STAT3 conditional ablation, Th17 機能消失) マウスでは ETBF 感染 8 週時点のマクロ腫瘍数が親株 Min マウスより有意に減少した (8 週時 n=10/group, p<0.01; Fig 1A)。しかし 12 週時点では Min CD4Stat3+/+ で 23.4 ± 3.6 個 vs Min CD4Stat3-/- で 15.8 ± 1.9 個 (mean ± SEM) と逆転傾向を示し、Th17 非依存的な腫瘍発生の「リバウンド」が確認された (8 週 vs 12 週 within Min CD4Stat3-/-, p<0.004, unpaired t-test; Fig 1B)。微小腺腫 (microadenoma) 数は両群で差がなく、腫瘍発生 initiation ではなく腫瘍成長 kinetics に Th17 依存性があることが示唆された。Th17 欠損下でも腫瘍組織の Il17a 発現量は対照と同等に高く維持され (n=6 mice/group, p>0.5; Fig 1C)、抗 IL-17a 抗体投与 (100 μg/dose, 週 2 回 i.p., 6-12 週) は Min-CD4Stat3-/- マウスの腫瘍数を有意に減少させた (約 0.5-fold へ抑制, p=0.0317, Mann-Whitney U; Fig 1D)。これらの結果から、Th17 細胞 (cell type) ではなく IL-17 サイトカイン (molecule) 自体が発がんに必須であることが明確となった。

所見2:γδT17 細胞が Th17 不在時の主要代替 IL-17 源として因果的に証明される:Min-CD4Stat3-/- マウスの腫瘍内 TIL のフローサイトメトリーおよびソート後 RT-qPCR 解析により、CD3+γδ+ 細胞が主要な IL-17 産生細胞として同定された (Fig 2A, 2B)。定量的には MO-MDSC が腫瘍内白血球の 80-90% を占める一方、γδT 細胞は 0.1% にすぎないが、細胞当たりの Il17a 発現量は MO-MDSC の約 2,000-fold と圧倒的に高かった (n=4 mice/group, p<0.001; Fig 2C)。γδT 細胞欠損 CD4Stat3-/- マウス (γδ-/- × CD4Stat3-/-) では大腸の Il17a 発現がさらに著明に低下し (約 0.2-fold へ, p<0.01)、腫瘍形成も Min CD4Stat3-/- 単独と比較して有意に抑制された (n=8 mice/group, p<0.05; Fig 2D)。骨髄キメラ実験では、γδ-/- × CD4Stat3-/- ドナー骨髄を移植した IL17-/- Min マウスは [WT→IL17-/- Min] キメラと比較して顕著に腫瘍数が減少 (p=0.0159; Fig 2E) し、Rag1-/- ドナーで再構成したキメラ (適応免疫・γδT 欠損) では腫瘍形成がほぼゼロとなった (n=5 mice, p<0.001; Fig 2F)。これにより γδT17 細胞が Th17 不在時の機能的代替 IL-17 源であることが因果的に証明された。

所見3:Th17 が存在する場合には γδT17 は冗長で発がんに不要:ETBF 感染 Min-γδ-/- マウス (Th17 正常、γδT 欠損) の腫瘍数は親株 Min マウスと差がなかった (n=12 vs 12, p=0.5, unpaired t-test; Fig 3A)。腫瘍内 IL-17 産生プロファイルでも Min-γδ-/- では Th17 の Il17a 発現が代償的に上昇 (約 1.4-fold) しており (Fig 3B)、IL-17 全体量は対照と同等に維持された。これは Th17 細胞が主 IL-17 産生能を維持している状況では、γδT17 は冗長であり発がんへの寄与が限定的であることを示す。Th17 駆動が阻害または低下した時 (治療介入・個人差を含む) には γδT17 細胞が迅速に代替してしまうため、IL-17 産生全体を抑制する戦略 (抗 IL-17A 抗体) が必要となることが裏付けられた。

所見4:ヒト大腸癌コホートで Th17 と γδT17 の共存が再現される:米国コホート (Johns Hopkins, n=12 大腸癌手術検体, 12/13 で IL-17 陽性) およびマレーシアコホート (UM Medical Center, n=11) のヒト大腸癌 TIL 解析では、大多数の症例で Th17 (CD3+CD4+IL-17+) と γδT17 (CD3+γδTCR+IL-17+) 細胞が共存して検出された (Fig 4A, 4B)。IL-17 産生 T 細胞の中で Th17 が主体を占め、γδT17 は少数派であり、CD3+/IL-17+ 細胞に占める CD4+ T 細胞の比率は CD3+γδ+ T 細胞を有意に上回った (中央値 CD4+ 60% vs γδ+ 15%, p<0.0001, Mann-Whitney U; Fig 4C)。この分布は人種・地域 (米国人 vs マレーシア系アジア人) によらず再現された。腫瘍組織の全 IL-17 産生白血球の絶対数は症例間で大きく異なり (range 0.1%-4.7% of CD45+ TIL) IL-17 高産生症例においても Th17 と γδT17 の共存が見られた (Fig 4D)。

考察/結論

これまでの先行研究 (Wu et al. Nature 2014 が γδT17 のみがヒト大腸癌の IL-17 産生源と主張) と本研究の知見は相違しており、本研究は対照的に Th17 と γδT17 の「冗長性」がマウス ETBF Min モデルとヒト大腸癌コホートの両方で機能的に成立していることを骨髄キメラ + 並行ヒトコホート解析で初めて新規に示した点で異なる。これまで報告されていない知見として、(1) IL-17 産生の細胞源冗長性が大腸発がんの fundamental な特徴であること、(2) Th17 を選択的に削除すると初期 (8 週) には腫瘍発生が遅延するが、代替 IL-17 産生細胞 (主に γδT17) が機能を補完し、長期的 (12 週) には同等以上の腫瘍発生が起きること、(3) 単一細胞集団を標的とする戦略では不十分であり IL-17 サイトカイン自体を治療標的とすることの優位性が動物実験と並行ヒトデータで初めて示されたことが novel な発見である。動力学的にも Th17 と γδT17 は異なる役割を担い、Th17 駆動の IL-17 は ETBF 感染早期に急速に動員されて腫瘍増殖 (size) に優先的に影響し、γδT17 由来 IL-17 は発がん initiation には関与するが slower な kinetics を持つ点も従来知見と異なる。

臨床応用の観点から本研究の意義は大きく、bench-to-bedside に直結する translational research である。臨床応用として、(1) 抗 IL-17A 抗体 (セクキヌマブ・イキセキズマブ; 既存乾癬薬の re-purposing) または IL-17RA 阻害剤 (ブロダルマブ) が、特に慢性炎症関連・ETBF 関連大腸発がんリスク患者で化学予防効果を持つ可能性、(2) ETBF 検出 (大腸便培養 or PCR) を高リスク識別バイオマーカーとして用いる層別化、(3) 抗 IL-17A + ICI 併用による炎症 + 免疫療法統合戦略、の 3 点が直接的な臨床応用候補である。臨床応用への次ステップとして、ETBF 高保有のリスク患者で抗 IL-17A 化学予防臨床試験 (Phase II RCT) を設計することが自然な拡張となる。

残された課題として、第一に limitation として本研究はマウス ETBF Min モデルに限定されており、ヒト大腸癌における抗 IL-17A 化学予防の有効性検証 (prospective RCT) が future work として必要である。第二に、IL-17 は感染防御においても重要であり、全身阻害に伴う日和見感染リスク (カンジダ症等) も考慮すべきで、long-term safety profile の future studies が今後の検討課題である。第三に、ヒト大腸癌で Th17 と γδT17 の比率が臨床予後 (奏効・無病期間・OS) と相関するかの prospective biomarker 検証も今後の研究展望として残されている。第四に、ETBF 以外の他の onco-microbe (Fusobacterium nucleatum, pks+ E. coli 等) でも同様の Th17/γδT17 冗長性が成立するかの今後の検討、および IL-17 軸を介した MDSC 動員機構の詳細 (CCL2/CXCL1 ケモカイン階層) の解明が future research direction として残されている。

方法

マウス系統 (Jackson Laboratory 由来): C57BL/6 background Min (C57BL/6J-Apc+/Min/J; stock 002020) mouse strain、Th17 欠損 Min-CD4Stat3-/- mouse (CD4-Cre × Stat3flox/flox × Min, B6.Cg-Stat3tm2Aki line)、γδT 細胞欠損 mouse (TCRδKO; B6.129P2-Tcrdtm1Mom/J, stock 002120)、γδ/Th17 ダブル欠損 mouse (γδ-/- × CD4Stat3-/-) を使用した (各群 n=8-15)。骨髄キメラはドナー骨髄 (CD4Stat3+/+・CD4Stat3-/-・Rag1-/- 由来) を致死照射 IL17-/- Min マウスに移植して作製した (8 週間の再構成後に ETBF 投与)。ETBF 086 株を経口投与し 8-12 週後に大腸腫瘍数・大腸炎重症度を内視鏡 + 組織学で評価した。腫瘍解析では大腸腫瘍を酵素処理 (collagenase IV + DNase I) して単核細胞を分離、ICS (intracellular cytokine staining)・フローサイトメトリー (CD3, CD4, γδTCR, CD45, IL-17A, IFN-γ, TNF-α) で IL-17 産生細胞を同定した。腫瘍浸潤白血球 (TIL) を PMN-MDSC (Ly6G+Ly6Clow)・MO-MDSC (monocytic MDSC, Ly6G-Ly6Chigh)・CD11b+Gr1-・γδT・ILC3 等にフローソートし RT-qPCR で Il17a 発現を定量した。IL-17 阻害として抗 IL-17a モノクローナル抗体 (clone 50104, 週 2 回 i.p., 100 μg/dose) で 6-12 週間阻害し腫瘍数を評価した。ヒト検体はジョンズ・ホプキンス病院 (n=12 大腸癌手術検体) およびマレーシア大学医療センター (n=11 大腸癌手術検体) から TIL を分離し ICS・フローサイトメトリーで Th17・γδT17 の分布を解析した。統計は Mann-Whitney U test、unpaired t-test、Kaplan-Meier (log-rank) を使用、p<0.05 を有意とした。