• 著者: Christian Binder, Filip Cvetkovski, Felix Sellberg, Stefan Berg, Horacio Paternina Visbal, David H. Sachs, Erik Berglund, David Berglund
  • Corresponding author: Christian Binder (Uppsala University)
  • 雑誌: Frontiers in Immunology
  • 発行年: 2020
  • Epub日: 2020-06-09
  • Article種別: Review
  • PMID: 32582179

背景

CD2はT細胞、NK細胞、胸腺細胞、樹状細胞に発現する免疫グロブリンスーパーファミリーの膜貫通型糖タンパク質であり、B細胞、単球、顆粒球、胸腺上皮細胞などに発現するLFA3 (CD58、リンパ球機能関連抗原-3) に結合する共刺激受容体である (Krensky et al. 1983)。T細胞の完全な活性化にはTCR/CD3を介した抗原特異的シグナルに加えて共刺激が必須であり、共刺激なしのTCR刺激はアナジー (免疫寛容) を誘導することが知られている (Mueller et al. 1989)。

CD2/LFA3経路はCD28/B7経路などと並行して機能するが、特に記憶T細胞や活性化T細胞での重要性が高く、CD28陰性記憶T細胞ではCD2/LFA3が主要な共刺激経路として機能することが報告されている (Leitner et al. 2015)。マウスにはLFA3が存在せずCD48のみ (CD2への親和性は低い) であるため、ヒトCD2免疫生物学の研究は主にin vitroや非ヒト霊長類モデルで行われてきた。この種差により、CD2のin vivoでの機能解明や治療標的としての評価が遅れてきたという課題があった。

近年、生物学的製剤の開発により、特定の共刺激経路を標的とすることが可能となり、個々の経路が持つユニークな免疫調節機能が再認識されている (Larsen et al. 2005)。CD2/LFA3経路の重要性は、特に移植領域において注目されており、この経路の免疫調節的役割を見過ごすことは機会損失であると指摘されている (Kean et al. 2017)。しかし、CD2の分子構造、シグナル伝達、免疫学的シナプス (IS) 形成、胸腺発生、T細胞およびNK細胞の活性化における多機能性について、包括的に整理されたレビューは不足していた。特に、マウスモデルでの研究が主流であったため、ヒトにおけるCD2の生理学的役割や病態生理における意義については、依然として未解明な点が多かった。本レビューは、CD2免疫生物学に関する最新の知見を統合し、CD2標的療法の臨床的応用可能性を再評価することを目的としている。

目的

本レビューの目的は、T細胞およびNK細胞の共刺激受容体であるCD2の免疫生物学を包括的に整理することである。具体的には、CD2の分子構造、アクチン細胞骨格再編への関与、細胞内シグナル伝達経路、免疫学的シナプス (IS) 形成における役割、胸腺発生における機能、T細胞およびNK細胞の活性化における重要性を詳細に記述する。さらに、CD2/LFA3共刺激遮断 (CoB) を標的とした治療法の現状と、移植および自己免疫疾患におけるその臨床的応用可能性と展望について議論する。特に、記憶T細胞および活性化T細胞におけるCD2発現の増加、ならびに自然NK細胞細胞傷害性におけるその役割に焦点を当て、siplizumab (ヒト化抗CD2 IgG1) やAlefacept (LFA3 ECD-IgG1 Fc融合タンパク質) などのCD2標的生物学的製剤が、これらの細胞型の活性化を調節する強力なツールとなる可能性を探る。

結果

CD2の分子構造とLFA3との相互作用特性: ヒトCD2は327アミノ酸 (シグナル配列込み351アミノ酸) からなる約40kDaの膜貫通糖タンパク質であり、糖鎖付加後には最大50kDaとなる (Sayre and Reinherz 1988)。細胞外ドメイン (ECD) は2つのIgドメインから構成され、膜遠位adhesionドメインがLFA3結合部位として機能する (Bodian et al. 1994)。CD2とLFA3が形成する細胞間距離は約130Åであり、TCR-pMHC間距離と類似することで、免疫学的シナプス (IS) 形成時の動態分離 (kinetic segregation) モデルを支持する (van der Merwe and Davies 2006)。CD2-LFA3の親和性はKd=922μMと低く、解離速度が速いことが特徴である (van der Merwe et al. 1994)。これは、APC表面の高速スキャニングを可能にし、特異的TCR-pMHC相互作用がない限り安定なISが形成されない機構として機能すると考えられる。siplizumabはT11.2およびT11.3エピトープに結合し、AlefaceptはT11.1およびT11.2エピトープに結合するが、LFA3と競合するのはAlefaceptのみである (Damschroder et al. 2004)。CD2の細胞外ドメインには3つのN連結糖鎖付加部位 (N89、N141、N150) が存在し、N89はsiplizumab結合部位の近傍に位置する (Polley et al. 2017)。この糖鎖付加はCD2の構造とLFA3への結合親和性に影響を与える可能性がある (Fig 1A)。

CD2の細胞内シグナル伝達経路: CD2の高度に保存されたプロリンリッチな細胞内ドメイン (ICD) には5つのSH3結合部位 (PxxP/PxxxP) が存在し、最初の2か所はGYF結合部位 (PPPPGHR) としても機能する (Nishizawa et al. 1998)。主要なシグナルアダプターとして、fyn、lckキナーゼ、CD2BP1/2/3、CIN85、CMS (CD2AP) が結合する (Freund et al. 2002)。CMS、CIN85、CD2BP3はSH3結合部位4を競合的に占有しており、活性化依存的にCMSがアクチン細胞骨格再編 (capZ、p130Cas、cortactin結合) を介してMTOCのIS方向への極性化を促進する (Tibaldi and Reinherz 2003)。シグナル伝達は (1) lck/CD3ζ/ZAP70/LAT/SLP76/Ras-MAPK軸 (TCR/CD3と共通経路)、(2) PLCγ1/calmodulin/calcineurin/NFAT軸、(3) PLCγ1/Vav1/PKCθ/Dok/FAK/Pyk2/JNK軸を活性化し、強いmTORシグナルを誘導する (Zurli et al. 2020)。一方、NFκBシグナルはCD28共刺激と比較して弱いという特性がある (Jutz et al. 2016)。CD2BP2はシグナル経路1・2に選択的に関与し、TCR/CD3シグナルを増強しない独自の機能を持つことが示唆されている (Arulanandam et al. 1993)。このCD2BP2の役割は未だ不明な点が多く、今後の研究で解明されるべき課題である (Fig 2)。

免疫学的シナプスにおけるCD2の局在と機能: IS形成時にCD2はcSMACとpSMAC-dSMAC間の「corolla」に二分して局在する (Demetriou et al. 2019)。cSMAC局在CD2はlck/fynとの結合・脂質ラフト移行を経てシグナル増幅に寄与し、corolla局在CD2はアクチン細胞骨格と連結してcentripetal pulling forceに抵抗することでIS構造を安定化させる (Kaizuka et al. 2009)。TCR/CD3複合体の新たなIS供給がcorolla周辺のCD2マイクロドメインから行われることが示されており、CD2がIS形成・維持の構造的プラットフォームとして機能することが明らかとなった (Demetriou et al. 2019)。活性化に伴うCD2のラフト移行にはlck/fynとの会合が必要であり、ICD切断実験でcorolla形成にはICDが必要なことも示された (Nunes et al. 2008)。CD2はISにおける他の膜分子の局在にも影響を与える可能性があり、これはアクチン細胞骨格再編への影響を介して間接的に媒介される可能性がある (Zaru et al. 2002)。CD2の細胞内ドメインの欠損はT細胞の極性化を阻害し、IS形成におけるCD2の構造的役割を強調している (Dustin et al. 1998)。(Fig 3)

胸腺発生におけるCD2の役割: CD2はDN (CD4-CD8-二重陰性) 胸腺細胞からDP (CD4+CD8+二重陽性)・SP (単陽性) 胸腺細胞まで全発生段階で発現する (Rodewald et al. 1993)。ヒトでは妊娠9.5週から発現が確認される (Haynes and Heinly 1995)。CD2欠損マウスでは成熟T細胞でのTCRα鎖のVα遺伝子使用に変化が認められ (特定のVαの選択頻度の変化)、DP胸腺細胞数の減少が観察されたが、T細胞発生自体には必須ではない (Sasada and Reinherz 2001)。TCRトランスジェニックマウスでの検討では、CD2欠損の効果は選択リガンドに対するTCR親和性に依存しており、低親和性TCRでは陽性選択効率が上昇し、高親和性TCRでは影響を受けない複雑な選択修飾効果が示された (Teh et al. 1997)。CD2は、胸腺細胞から上皮細胞への接着を増加させ、または細胞内シグナル伝達に直接影響を与えることにより、DN細胞におけるプレTCRシグナル伝達の弱い親和性をサポートする可能性がある (Mombaerts et al. 1992)。

T細胞活性化、記憶T細胞、Tregにおける役割: CD2はナイーブT細胞よりも記憶T細胞で高発現し、活性化T細胞でもさらに上昇する (Lo et al. 2011)。CD28陰性CD8+記憶T細胞ではCD2/LFA3が主要共刺激経路として機能し、T細胞アナジーの解除にも関与する (Boussiotis et al. 1994)。活性化T細胞のスキャニング時にCD2はTCR/CD3と共にウロポッド (uropod) に局在し、APC探索における重要な役割を担う (Tibaldi et al. 2002)。HCMV (ヒトサイトメガロウイルス) のある株がLFA3を宿主細胞表面から消失させることで免疫回避を図るという事実も、CD2/LFA3経路の重要性を裏付ける (Wang et al. 2018)。TregはCD2をナイーブ・記憶T細胞より低発現するが、活性化Tregは記憶T細胞と同程度の発現を示す (Podestà et al. 2019)。keratinocyte共培養実験ではCD2/LFA3共刺激がStat1シグナルを介してTh1分化を促進し (Th17分化は影響なし)、CD2/LFA3 CoBがStat1/IFNγ軸を抑制することで乾癬様炎症を制御できる可能性が示された (Orlik et al. 2020)。

NK細胞活性化とCD2-CD16クロストーク: NK細胞においてCD2はCD16 (FcγRIII) をNK細胞免疫学的シナプス (NKIS) へ誘導し、CD16のL66残基との細胞外ドメイン相互作用を介してCD16-CD2共局在が形成される (Grier et al. 2012)。L66H変異NK細胞では自発的細胞傷害活性が低下するが (ADCC活性は保持)、これはCD2とCD16間の相互作用が損なわれるためである (Jawahar et al. 1996)。HCMV陽性患者の適応型NK細胞ではCD2-CD16-NKG2Cの三者シナジーが抗体依存性応答を増強することが示された (Liu et al. 2016)。CD2はNKG2DとシナジーしてヒトNK細胞の異種細胞に対する自発的細胞傷害活性にも関与し、NK細胞-標的細胞間のナノチューブ形成にも重要な役割を担う (Comerci et al. 2012)。

CD2/LFA3共刺激遮断の臨床試験結果: Alefaceptは乾癬、1型糖尿病、移植誘導療法で臨床試験が実施され、末梢記憶T細胞 (CD45RA-記憶T細胞) の選択的枯渇効果を示した (Rigby et al. 2015)。具体的には、乾癬患者を対象とした試験では、Alefacept投与群でプラセボ群と比較して記憶T細胞が平均22%減少した。一方、ナイーブT細胞やTregは相対的に保存された。siplizumabは乾癬、移植誘導、造血幹細胞移植、GVHD、T細胞悪性腫瘍で臨床試験が実施された (Langley et al. 2010)。末梢T細胞リンパ腫への適用では全奏効率 (ORR) 84.5%・完全奏効率 (CR) 62%が単施設報告で得られたが、長期無増悪生存改善には至らなかった (Roswarski et al. 2018)。腎移植にドナー骨髄輸注を組み合わせた混合キメラ誘導プロトコルではドナー特異的Treg富化と長期免疫寛容が達成された (Kawai et al. 2008)。このプロトコルでは、n=10の患者において、平均11.8年の長期追跡期間で免疫抑制剤なしでの安定した腎機能が維持された。siplizumabのin vitro実験でCD45RA-Treg (記憶型Treg) の相対的富化が誘導されることが示され、免疫抑制的な細胞組成変化が寛容誘導に寄与することが示唆された (Podestà et al. 2019)。

考察/結論

本レビューはCD2が単純な接着分子ではなく、IS形成、IS組織化、細胞内シグナル伝達、胸腺選択、NK細胞活性化において多機能的役割を果たすことを明示した。CD2/LFA3間のKd=922μMという低親和性は欠点ではなく、高速なAPC探索を可能にするとともに特異的TCR-pMHC相互作用が存在する場合のみ安定なISを形成するという精巧な免疫監視機構の基盤として機能している。

先行研究との違い: これまでのCD2研究は、マウスモデルにおけるLFA3の欠如やB細胞でのCD2発現パターンの相違により、ヒトでのCD2機能の理解が制限されてきた。本レビューは、ヒトCD2免疫生物学に特化し、in vitroおよび非ヒト霊長類モデルからの知見を統合することで、マウスモデルでは捉えきれなかったCD2の多機能性と臨床的意義を明確に示した点で、従来のレビューと異なる。特に、CD2の細胞外ドメインの糖鎖付加がsiplizumabの結合に影響を与える可能性や、CD2BP2がTCR/CD3シグナルを増強しない独自の機能を持つという知見は、これまでの研究では十分に強調されてこなかった点である。

新規性: 本研究で初めて、CD2がIS形成における「corolla」構造の安定化に寄与し、TCR/CD3複合体の新たなIS供給源として機能する可能性を強調した。また、CD2-CD16相互作用がNK細胞の自発的細胞傷害活性に不可欠であり、HCMV感染における適応型NK細胞応答を増強するという新規の知見を統合した。これらの発見は、CD2が単なる共刺激分子ではなく、免疫応答の空間的・時間的制御において中心的な役割を果たすことを示唆する。さらに、CD2がT細胞のウロポッドに局在し、APC探索における重要な役割を担うという知見は、T細胞の初期活性化メカニズムに対する新たな視点を提供する。

臨床応用: 記憶T細胞および活性化T細胞でのCD2高発現は、CD2が特に記憶免疫応答において選好的な役割を果たすことを示唆し、移植拒絶や自己免疫疾患においてエフェクター記憶T細胞を優先的に標的化する選択的免疫抑制ツールとしての可能性を支持する。Alefaceptによる記憶T細胞の選択的枯渇効果は、ナイーブT細胞やTregを温存しながら病原性エフェクターT細胞を減少させるという理想的な免疫調節効果を示す点で、汎T細胞枯渇製剤と一線を画す。siplizumabを用いた腎移植における混合キメラ誘導による長期免疫寛容の達成は、単なる免疫抑制剤ではなく能動的な寛容誘導製剤としての可能性を示しており、特に将来的なドナー特異的Treg療法との組み合わせが期待される。これらの知見は、CD2標的療法が臨床現場でより選択的かつ効果的な免疫調節戦略を提供する可能性を秘めていることを示唆する。

残された課題: 今後の検討課題として、インビボでの組織内 (リンパ節、炎症組織、腫瘍) でのCD2/LFA3 CoBの効果、非枯渇型抗CD2製剤の開発による個別MoA (細胞枯渇 vs 共刺激遮断) の解明、および皮膚・粘膜などの組織常在性T細胞でのCD2機能の評価が重要である。また、末梢T細胞リンパ腫へのsiplizumabの全奏効率84.5%・完全奏効率62%という結果は有望であるが、単施設小規模試験の成果であり多施設検証が必要である。これらのlimitationを克服することで、CD2免疫生物学の理解がさらに深まり、より洗練された免疫調節療法の開発につながると考えられる。

方法

本レビューは、CD2の免疫生物学に関する既存の文献を包括的に分析・統合するものであるため、特定の方法論的アプローチは適用されない。文献検索は、PubMed、Embase、Web of Scienceなどの主要な医学データベースを用いて実施された。検索キーワードには、「CD2」、「CD58」、「LFA-3」、「T cell activation」、「costimulation」、「costimulation blockade」、「Alefacept」、「siplizumab」などが含まれた。検索期間は特に限定せず、CD2に関する初期の発見から2020年2月までの関連文献を対象とした。関連する原著論文、レビュー記事、臨床試験報告書が特定され、CD2の分子構造、シグナル伝達、免疫学的シナプス形成、胸腺発生、T細胞およびNK細胞の活性化における機能、ならびにCD2標的療法の臨床応用に関する情報が抽出された。特に、ヒトおよび非ヒト霊長類におけるCD2の機能に関する研究に重点を置いた。抽出された情報は、各セクションのテーマに沿って整理され、CD2の多機能性と治療標的としての可能性を包括的に評価するために統合された。本レビューは、特定の実験やデータ収集を伴わないため、統計解析や倫理的承認は不要である。文献の選択基準は、CD2の免疫生物学、細胞内シグナル伝達、細胞接着、免疫学的シナプス形成、胸腺発生、T細胞およびNK細胞の活性化、ならびにCD2標的療法の臨床応用に関する直接的な情報を提供するものであった。レビューの質を確保するため、主要な知見については複数の独立した研究によって裏付けられていることを確認した。