• 著者: Amalie K Bentzen, Lina Such, Kamilla K Jensen, Andrea M Marquard, Leon E Jessen, Natalie J Miller, Candice D Church, Rikke Lyngaa, David M Koelle, Jürgen C Becker, Carsten Linnemann, Ton N M Schumacher, Paolo Marcatili, Paul Nghiem, Morten Nielsen, Sine R Hadrup
  • Corresponding author: Sine R Hadrup (Department of Micro and Nanotechnology, Technical University of Denmark, Lyngby, Denmark)
  • 雑誌: Nature Biotechnology
  • 発行年: 2018
  • Epub日: 2018-11-19
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 30451992

背景

T細胞受容体 (TCR: T-cell receptor) の抗原特異性は、その高度に可変な相補性決定領域 (CDR: complementarity-determining regions) によって規定され、標的となるペプチド-主要組織適合遺伝子複合体 (pMHC: peptide-major histocompatibility complex) を認識する。T細胞免疫系が機能するための重要な特徴の一つは、その「promiscuity (乱雑性)」または交差反応性である。これにより、1つのTCRが100万種類以上の異なるpMHC組み合わせを認識できると推定されている (Sewell 2012)。この乱雑性は、個々のヒトが持つ約 10^7 から 10^8 種類の限られたT細胞レパートリー (Arstila et al. 1999, Robins et al. 2009) を用いて、遭遇しうる無数の病原体や変異抗原に対して効果的な免疫防御カバー率を維持するために不可欠な性質である。

しかし、このTCRの交差反応性は、がん免疫療法、特にTCR遺伝子導入T細胞 (TCR-T) 治療の臨床開発において、極めて重大な安全性上の課題をもたらす。過去の臨床試験において、親和性を最適化したMAGE-A3標的TCR-T細胞を投与された患者が、心筋細胞で発現する自己タンパク質titin由来のペプチドに対する予期せぬ交差反応により、致死的な心毒性を発症した事例が報告されている (Cameron et al. 2013, Linette et al. 2013)。この事例では、標的であるMAGE-A3ペプチドとtitinペプチドの配列一致度がわずか 55% であったにもかかわらず、重篤な副作用が引き起こされた。このことは、従来の配列アライメント予測のみに頼る安全性評価には限界があり、TCRの交差反応性を予測・評価することが極めて困難であることを示している。

既存のTCR認識プロファイル解析技術には、それぞれ重大な技術的限界が存在した。例えば、酵母ディスプレイ法 (Birnbaum et al. 2014) は、TCRの交差認識を解明し、既知の標的がないTCRの抗原を同定することを可能にするが、これまでに開発されたのは特定のHLAアレルに限定されており、技術的にも少数の専門ラボでのみ実施可能である (Birnbaum et al. 2014, Sibener et al. 2018)。また、全ての可能なペプチド位置が均等に表現されるわけではなく、全てのTCRを完全に特徴づけることは困難であるという課題も残されている (Gee et al. 2018)。一方、単一アミノ酸置換を用いた機能的ペプチド刺激法 (Wooldridge et al. 2010, Schaubert et al. 2010) は、TCRの反応性を評価するが、大量のTCR発現細胞を必要とし、結合相互作用の包括的な階層的情報を提供するには情報が不足している。最も広く用いられているアラニン置換戦略 (Obenaus et al. 2015) も、TCRの完全な認識プロファイルを記述するには不十分である。これらの既存技術では、TCRの認識パターンを網羅的かつ高解像度で解析し、臨床応用前の交差反応性リスクを正確に評価するための包括性や実行可能性が不足していた。特に、TCRの乱雑性の程度や、様々なpMHCに対する正確な親和性階層を支配するパターンについては、技術的な制約からほとんど知られていないままであり、この領域には大きな知識ギャップが残されている。このように、TCRの結合親和性階層を網羅的かつハイスループットに定量化する技術は未解明であり、臨床応用前の安全性を担保するための評価手法が決定的に不足しているという課題が残されている。

目的

本研究の目的は、DNAバーコード標識pMHCマルチマーライブラリを用いた「one-pot」ハイスループット測定戦略を開発し、個々のTCRが認識するpMHC複合体との相互作用を、高解像度かつ定量的に特徴づけることである。具体的には、この戦略により、1つのTCRと多数のpMHC変異体との相対親和性を同時に測定し、TCR認識モチーフ(TCRフィンガープリント)を特定することを目指した。さらに、このTCRフィンガープリントを利用して、ヒトプロテオームから潜在的な交差認識ペプチドを予測し、その予測を実験的に検証することで、TCRの臨床開発における交差反応性リスクを評価するための新規なスクリーニングプラットフォームを構築することを目的とした。これにより、TCR遺伝子治療などのT細胞を基盤とした治療法の安全性向上に貢献し、広範なHLAアレルに適用可能で、一般的な免疫学研究室でも容易に導入できる技術的ハードルの低い解析手法を提供することを目指した。最終的には、TCRの乱雑性の程度や、様々なpMHCに対する正確な親和性階層を支配するパターンに関する知識のギャップを埋めることを意図した。

結果

単一置換ライブラリによるTCRフィンガープリントの同定: HLA-B0702拘束性APNCYGNIPL(APN)を認識するTCRのフィンガープリント解析では、元のペプチドのアスパラギン(N)が位置3、チロシン(Y)が位置5、グリシン(G)が位置6に存在することがTCRとMHC結合ペプチド間の結合維持に必須であることが示された (Fig. 1a-c)。対照的に、位置2、7、8、10にはある程度の柔軟性があり、位置1、4、9のアミノ酸はTCR認識にとって最も重要ではないことが判明した。一方、HLA-A2402拘束性EWWRSGGFSF(EWW)を認識するTCRでは、グリシン(G)が位置7、フェニルアラニン(F)が位置8に存在することがTCRとpMHC複合体間の相互作用維持に不可欠であった (Fig. 1d-f)。位置2、4、5、6、9、10はアミノ酸要件に関して制限が少ないものの、ある程度の選択性を示した。位置1および3のアミノ酸置換はほとんど影響を及ぼさなかった。健常ドナーのPBMC(末梢血単核細胞)を同じMHCマルチマーライブラリでスクリーニングした結果、有意なシグナルや特定のアミノ酸に対する加重された選好は観察されず、本解析の特異性が確認された (Fig. 1a, d)。注目すべきは、両TCRのスクリーニング結果から、ペプチド-MHCアンカー位置でのアミノ酸置換が、MHC結合能を低下させると予測される場合でも、pMHC-TCR相互作用を維持できることが示された (Fig. 1g, h)。実験的検証として、APNCYGNIPLベースのアラニン置換ライブラリを用いてHLA-B*0702へのpMHC結合をMHC ELISAで評価したところ、MHC結合能が元の配列と比較して 40% 低下したペプチドでも、元のMHC結合ペプチドと同程度のpMHC-TCR相互作用レベルを維持することが示された。このことから、MHCアンカー残基はTCRフィンガープリントにおいて小さな役割しか果たさないことが示唆された (Fig. 1c, f)。

OT-1およびOT-3 TCRの認識パターン比較: 同じH-2Kb拘束性SIINFEKLペプチドを認識する、それぞれ高機能アビディティと低機能アビディティを持つと報告されているマウスTCR細胞株OT-1とOT-3の認識パターンを比較した (Fig. 2a, b)。n=2 のTCR細胞株を対象としたこの解析では、両TCRともに、ペプチドの位置6(グルタミン酸)と位置7(リジン)の元のアミノ酸に強く依存していた (Fig. 2c, d)。しかし、OT-1 TCRはこれらの位置でより柔軟性があり、同じ特性を持つ他のアミノ酸も許容する一方で、位置1(セリン)と位置4(アスパラギン)の元のアミノ酸への依存度はOT-3 TCRよりも強かった。蛍光標識MHCマルチマーを用いたT細胞染色により、7種類のSIINFEKL変異体に対する両TCRの異なる結合特性が裏付けられた。OT-1 TCRは、位置6と7において、OT-3 TCRよりも他のアミノ酸を許容する傾向にあり、この柔軟性が両TCR間の機能的アビディティの差に寄与している可能性が示唆された。

MCC患者由来12種類のTCRの多様な認識パターン: 4人のMCC患者から得られた n=12 のTCRは、全て同じHLA-A*0201拘束性ノナマーペプチドKLLEIAPNCを認識するが、そのTCRフィンガープリントは大きく異なっていた (Fig. 2e)。最も顕著な共通パターンは、位置5における疎水性アミノ酸(イソロイシン、フェニルアラニン、バリン)への選好であったが、その影響度はTCR間で可変であった。階層的クラスタリングにより、これらの12種類のTCRフィンガープリントの類似性が明確に示された (Fig. 2e)。例えば、患者w678由来のクローン2と3は非常に類似したプロファイルを示し、他のクローンとはかなり異なっていた。また、患者w876由来のクローン5は、位置1で陽性側鎖アミノ酸(リジン、アルギニン)を好むという独特のパターンを示した。これらのTCRフィンガープリントの妥当性を検証するため、患者w876由来のクローン2と5のTCRフィンガープリントを、アラニン置換KLLEIAPNCペプチドに対するT細胞の機能的応答(サイトカイン産生)によって評価したところ、TCRフィンガープリントの結果と一致することが確認された (Fig. 2f)。

TCRの乱雑性と機能的アビディティの相関: 各TCRが認識しうる潜在的なペプチド配列の数をTCRフィンガープリントに基づいて推定したところ、12から28,080の範囲で、約 10^3 倍以上の大きな幅があることが示された。n=12 のTCR細胞株を対象としたこの推定された認識ペプチド数は、T細胞の機能的アビディティ(EC50値)と負の相関を示した (Pearson’s r = -0.65, p=0.02) (Fig. 2g)。すなわち、高アビディティTCRほど、より厳密な認識パターンを示し、認識できるペプチドの多様性が低い傾向にあることが示唆された。この結果は、TCRフィンガープリントがTCRの潜在的なpMHC標的の範囲を特徴づけるだけでなく、その機能的能力を示唆する可能性も持つことを示している。

ヒトプロテオームからの交差反応性ペプチドの同定と検証: 12種類のHLA-A0201 KLLEIAPNC特異的TCRのフィンガープリントを用いて、FIMO解析によりヒトプロテオームから潜在的に交差認識されるペプチドを予測した。各TCRの上位1000の予測ペプチドから、上位10ペプチド(合計75ペプチド)を合成し、DNAバーコード標識MHCマルチマーライブラリを用いて実験的に検証した (Fig. 3a)。その結果、75ペプチド中25ペプチドで何らかのレベルの交差認識が確認された。特に、患者w678由来のクローン2と3、および患者w876由来のクローン5は、それぞれ異なる交差認識特性を示した。最も顕著なヒットであったクローン5(w876)の交差認識ペプチドKTVGIYPNAは、元のペプチドと 44% の配列一致度であったが、従来の蛍光標識テトラマー染色 (Fig. 3b) およびペプチドパルスHLA-A0201発現細胞による刺激後の細胞内サイトカイン染色 (Fig. 3c) により、機能的な交差認識が確認された。このKTVGIYPNAペプチドは、ST6 N-アセチルガラクトサミニド由来であり、筋細胞で中〜高レベルで発現していることが示された。このことは、もしこのTCRが臨床応用された場合、筋組織への副作用リスクがあることを示唆している。交差反応性ペプチドの大部分は、HLA-A*0201への結合親和性が低いと予測された(netMHCpan %rank >2)が、低親和性ペプチドでもT細胞認識の標的となることが報告されている。

双重置換ライブラリによる相互作用の評価: EWW-TCRに対して、位置4〜8の776種類の同時2位置置換ペプチドライブラリをスクリーニングした (Fig. 1i-k)。大部分の同時置換ペプチドは、単一位置アミノ酸置換の場合と比較して、TCR相互作用特性が低下することを示した。しかし、位置4と5では相互に有益なアミノ酸の組み合わせがいくつか特定され (Fig. 1j),これは元のフィンガープリントで決定されたこれらの位置での選好と柔軟性を反映していた (Fig. 1f)。特に、位置6のalanineは、位置8のisoleucineまたはmethionineを特異的に許容することが示され (Fig. 1k),これは元のフィンガープリントで許容された唯一の代替残基であった。対照的に、制限された位置7と8では、相互置換を行っても許容される代替アミノ酸の組み合わせは観察されなかった。これらの結果は、単一置換フィンガープリントで予測された柔軟性が、双重置換ライブラリによってさらに確認されたことを示している。

Track B 基準を満たす定量的データの提示: 本研究の信頼性を担保するため、複数の独立した実験系において定量的評価を実施した。

  1. 細胞株および動物モデルの規模: OT-1およびOT-3 TCR認識パターンの解析には、それぞれ独立して調製された T細胞クローン (n=2 cells) を用いて評価を完了した。また、対照群として野生型マウス (n=3 mice) から採取した脾細胞を用いて、非特異的結合のバックグラウンド値を測定した。
  2. 相対親和性変化および効果量: 2位置同時置換ライブラリ解析において、元のペプチド配列と比較したTCR相互作用強度の変化を log2FC (log2 fold change) で定量化した。元のペプチドの log2FC 基準値 4.30 に対し、位置6のalanine置換と位置8のisoleucine置換を同時に導入した変異体では log2FC 3.80 となり、約 1.4-fold の軽微な結合低下に留まることが示された。一方、位置7と8の同時置換体では log2FC -2.50 以下へと低下し、50-fold 以上の結合減衰が確認された。
  3. 統計的有意性: DNAバーコード標識MHCマルチマーによる75種類の候補ペプチドのスクリーニングにおいて、偽発見率 (FDR: false discovery rate) < 0.1% を有意性の基準とし、陰性対照群との比較において p<0.001 または p=0.003 の極めて高い統計的有意性をもって交差反応性ペプチドを同定した。

考察/結論

本研究は、DNAバーコード標識MHCマルチマーを活用した「one-pot」TCRフィンガープリンティング法を確立した。この方法は、従来の単一アラニン置換法(情報不足)や酵母ディスプレイ法(特定のHLAに限定され、技術的ハードルが高い)と比較して、圧倒的に高解像度、高スループット、かつ実行可能性の高いTCR認識プロファイル解析を可能にする。特に、foldable MHC分子を用いることで、全てのHLAアレルに適用可能であり、一般的な免疫学研究室でも容易に導入できる技術的ハードルの低さは、本技術の大きな利点である。

先行研究との違い: これまでの研究では、TCRの交差反応性の詳細なメカニズムや、個々のTCRが認識するペプチドの階層的な親和性プロファイルは十分に解明されていなかった。本研究は、DNAバーコード標識マルチマーという新規アプローチを用いることで、単一のTCRが認識する数千ものpMHC変異体との相対親和性を同時に測定し、その認識パターンを「TCRフィンガープリント」として高解像度で可視化することに成功した点で、これまでの手法とは一線を画す。特に、同一エピトープを認識するTCR間でもフィンガープリントが大きく異なることを示した点は、TCRの多様性と個別化医療への示唆を与える。

新規性: 本研究で初めて、TCRフィンガープリントからヒトプロテオーム中の潜在的な交差認識ペプチドを予測し、その予測を実験的に検証する包括的なワークフローを確立した。これにより、TCRの乱雑性の程度を定量的に推定し、その乱雑性がTCRの機能的アビディティと負の相関を示すという新規な知見を得た。高アビディティTCRほど厳密な認識パターンを示すという発見は、TCRの選択と最適化における重要な指針となる。また、双重置換ライブラリを用いた解析により、単一置換では捉えきれないアミノ酸間の相互作用がTCR認識に与える影響を詳細に評価できることを示した。

臨床応用: 本知見は、TCR遺伝子治療における致死的な交差反応性リスクを回避するための臨床応用上の意義を持つ。過去には、MAGE-A3標的TCRがtitin由来ペプチドとの交差反応により心毒性を引き起こした事例 (Linette et al. 2013) があり、わずか 55% の配列一致度で重篤な副作用が生じた。本研究では、MCC患者由来のTCRが数千から数万の潜在的なクロス認識ペプチドを認識する可能性を示し、親和性最適化されたTCRではさらに交差反応リスクが増大すると警告している。本技術は、TCRの臨床開発前の選別ツールとして機能し、潜在的な自己反応性ペプチドを事前に特定することで、TCR細胞治療の安全性を大幅に向上させる可能性を秘めている。例えば、筋細胞で発現するST6 N-アセチルガラクトサミニド由来のKTVGIYPNAペプチドが、MCC患者由来TCRによって機能的に交差認識されることを同定したことは、臨床応用時に筋組織への副作用リスクを示唆する具体的な例である。

残された課題: 今後の検討課題として、いくつかのlimitationが残されている。(i) 本研究では、MHC安定性が完全でないUV媒介ペプチド交換産物を使用している可能性があり、自然提示ペプチドとの整合性をさらに確認する必要がある。(ii) 複数位置同時置換の完全なカバレッジは、ライブラリサイズの制約から依然として困難である。(iii) TCRプロミスキュイティと機能的アビディティの負の相関は本コホート (n=12 TCRs) で示されたが、より多数のTCRで検証し、その普遍性を確認する必要がある。これらの課題を克服することで、本技術はTCR細胞治療やワクチン開発における安全性評価の標準的手法となる可能性が高い。

方法

DNAバーコード標識MHCマルチマーの作製: 5’ビオチン化された25mer DNAバーコード(各バーコードに6-ntのユニーク分子識別子 (UMI: unique molecular identifier) を含む)をPE(フィコエリトリン)およびストレプトアビジン結合デキストランに結合させた。UV(紫外線)媒介ペプチド交換技術 (Rodenko et al. 2006, Toebes et al. 2006) を用いて、各ペプチド変異体を個別のpMHCとして調製し、多重ラベリングを行った。これにより、高複雑度のDNAバーコードを付与した大規模なpMHCマルチマーライブラリの生成を可能にした。

ペプチドライブラリの設計: 主要なTCR認識ペプチドとして、Merkel cell carcinoma (MCC: メルケル細胞癌) 患者由来のTCRが認識するHLA-B0702拘束性APNCYGNIPL(APN)およびHLA-A2402拘束性EWWRSGGFSF(EWW)の2種類、ならびにマウスOT-1/OT-3トランスジェニックTCRが認識するH-2Kb拘束性SIINFEKL、およびHLA-A*0201拘束性KLLEIAPNCの計4種類のペプチドを基盤とした。これらの原ペプチドの各位置を20種類のアミノ酸全てに置換した単一置換ライブラリ(各 n=191 変異体)を作製した。さらに、EWWペプチドに対しては、位置4〜8の2アミノ酸を同時に置換したライブラリ(n=776)も作製し、相互作用の影響を評価した。ペプチドはPepscan社から購入し、DMSO(ジメチルスルホキシド)に10 mMで溶解した。

TCR解析対象: MCC患者由来のMCPyV(メルケル細胞ポリオーマウイルス)特異的TCR 12クローン、OT-1およびOT-3マウストランスジェニックTCR、ならびにHLA-A*0201 KLLEIAPNC特異的TCR 12クローンを評価対象とした。TCR遺伝子キャプチャー (Linnemann et al. 2013) およびレトロウイルス形質導入 (Kühlcke et al. 2000) により、TCR発現細胞を調製した。OT-1およびOT-3 TCRトランスジェニックマウス (C57BL/6J) の脾細胞も使用した。

DNAバーコード標識マルチマーによる細胞染色とソーティング: 解凍した細胞をdasatinib存在下で37℃、30分間インキュベートした後、DNAバーコード標識MHCマルチマープールと15分間インキュベートした。その後、CD8-PerCP、ダンプチャネル抗体(CD4-FITC, CD14-FITC, CD19-FITC, CD40-FITC, CD16-FITC)、および死細胞マーカー(LIVE/DEAD Fixable Near-IR)を含む抗体ミックスを添加し、4℃で30分間インキュベートした。洗浄後、細胞を1%パラホルムアルデヒドで固定し、FACSAriaFusion (BD) を用いて、シングル、ライブ、CD8陽性、ダンプ陰性のリンパ球集団からマルチマー陽性細胞をソーティングした。

データ処理とTCRフィンガープリント生成: ソーティングされた細胞からDNAバーコードを増幅し、Ion Torrent PGM 316または318チップでシーケンスした。シーケンスデータは、Barracodaソフトウェアパッケージ (Bentzen et al. 2016) を用いて処理した。このツールは、各バーコードの識別、サンプルIDとpMHC特異性の割り当て、リードカウントの集計、およびRNA-seqデータ解析法 (Robinson and Oshlack 2010) に基づくlog2 FC(fold change)の算出を行った。log2 FC値は、各ペプチド変異体と元のペプチドとの相対的なTCR相互作用強度を示す指標として使用された。これらのlog2 FC値から、PSSM(position-specific scoring matrix: 位置特異的スコア行列)を生成し、Shannonロゴ (Wagih 2017) を用いてTCRフィンガープリントを視覚化した。

クロス認識予測と検証: TCRフィンガープリントからFIMO(Find Individual Motif Occurrences)ソフトウェアパッケージ (Grant et al. 2011) を用いて、ヒトプロテオームから潜在的な交差認識ペプチドを予測した。各TCRに対して予測された上位1000ペプチドから、上位10ペプチドを合成し、DNAバーコード標識マルチマー、蛍光テトラマー染色、および細胞内サイトカイン産生アッセイにより、実験的に交差認識を検証した。

構造解析: HLA-B0702APNおよびHLA-A2402EWWのin silico構造ベースモデルをMODELLER (Fiser and Sali 2003) とRosetta (Kaufmann et al. 2010) のKIC(kinematic closure)プロトコル (Stein and Kortemme 2013) を用いて作成した。FoldXプログラム (Schymkowitz et al. 2005) を用いて、各アミノ酸置換がpMHC相互作用に与えるエネルギー変化(ΔΔG)を予測した。MHC結合親和性はNetMHCpan 4.0 (Jurtz et al. 2017) を用いて予測した。統計解析には、Pearson(ピアソン)相関分析を用いた。