• 著者: Jiefei Han, Ruofei Yu, Jianchun Duan, Jin Li, Wei Zhao, Guoshuang Feng, Hua Bai, Yuqi Wang, Xue Zhang, Rui Wan, Jiachen Xu, Xin Wang, Yanfang Guan, Xuefeng Xia, Zhuoran Yao, Kailun Fei, David P. Carbone, Zhijie Wang, Jie Wang
  • Corresponding author: Zhijie Wang (zlhuxi@163.com) (National Cancer Center/National Clinical Research Center for Cancer/Cancer Hospital, Chinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical College, Beijing, China); Jie Wang (jie_969@163.com) (同); David P. Carbone (david.carbone@osumc.edu) (The Ohio State University Wexner Medical Center, Columbus, OH, USA)
  • 雑誌: Science Advances
  • 発行年: 2021
  • Epub日: 2021-05-19
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 34138742

背景

免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) は非小細胞肺がん (NSCLC) 治療に革命をもたらし、患者の生存期間を大幅に改善した。しかし、ICI治療に奏効するのは患者全体の20〜40%に過ぎず、治療効果を正確に予測できるバイオマーカーは未だ確立されていないのが現状である。PD-L1発現、腫瘍変異負荷 (TMB)、遺伝子発現プロファイル (GEP) スコアなど、いくつかの潜在的なバイオマーカーが同定されているものの、これらは臨床的に不十分であり、より新規かつ有効な予測因子の探索が喫緊の課題となっている。腫瘍微小環境 (TME) における様々な免疫細胞の抗腫瘍免疫への寄与を解明することは、治療効果が期待できる患者を特定するための基本的なステップであると考えられている。抗腫瘍応答を駆動する中心的な特徴の一つは、腫瘍ネオアンチゲン特異的な腫瘍浸潤リンパ球 (TIL) の活性化であり、特にPD-1陽性CD8陽性T細胞 (PD-1+CD8+ TIL) が主要なサブグループとして同定されている。PD-1+CD8+ TILの高密度は、抗PD-(L)1療法への優れた応答を示す可能性があり、これは免疫組織化学染色やフローサイトメトリーのような半定量的アプローチで評価できる。しかし、この評価は粗いものであり、より正確な腫瘍特異的T細胞の定量化が求められていた。

T細胞受容体 (TCR) レパートリーの解析は、T細胞免疫活性化を直接的かつ正確に評価できるため、ネオアンチゲン認識の定量的推定を可能にする。TCRレパートリーの多様性やクローン性はICIへの応答と関連すると報告されているが、その結果は依然として議論の余地がある。例えば、Han et al. Cancer Immunol Res 2020 は、末梢血単核球 (PBMC) ではなく、PD-1+CD8+ TILのベースラインTCR多様性がICIへの応答を予測できることを示しており、腫瘍浸潤T細胞のTCRレパートリー評価の重要性を強調している。理論的には、TIL全体におけるPD-1+CD8+ T細胞の割合が高いほど、機能的な抗原特異的TILの濃縮の可能性が増加すると考えられるが、TCRレパートリー評価を通じてこの濃縮を正確かつ簡便に測定する方法は未解明であった。

また、末梢血と腫瘍浸潤PD-1+CD8+ T細胞のネオアンチゲン特異的TCRレパートリーが類似していることが報告されており、腫瘍内で拡大したTCRクローンが対応する血液サンプルで同定できる可能性が示唆されていた (Gros et al. Nat Med 2016)。これは、循環PD-1+CD8+ TCRレパートリーが腫瘍内のTCRレパートリーの代替として使用できることを意味する。しかし、腫瘍内TILと末梢血PD-1+CD8+ T細胞のTCR重複という視点からICI奏効を前向きに予測した研究は存在せず、特にTCR配列情報を統合したアルゴリズムによる奏効予測インデックスの開発・検証が不足していた。本研究では、この知識ギャップを埋めることを目的とし、腫瘍特異的TCRレパートリーを重み付けした新しい分類器を開発し、NSCLC患者における免疫療法選択の層別化に貢献することを目指した。

目的

本研究の目的は、免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) 治療を受ける非小細胞肺がん (NSCLC) 患者において、腫瘍浸潤リンパ球 (TIL) と末梢血PD-1+CD8+ T細胞のTCR-β鎖相補性決定領域3 (CDR3) 配列の重複率を定量化した「TIR (Tumor-Infiltrating Repertoire) インデックス」を算出し、そのICI治療に対する奏効予測能および生存期間予測能を検証することである。

さらに、高TIRインデックス群と低TIRインデックス群の患者における腫瘍微小環境 (TME) の特性を詳細に解析し、TIRインデックスがTMEの免疫活性化状態を反映する機能的指標であることを示す。具体的には、サイトカインプロファイル、T細胞炎症性遺伝子発現プロファイル (GEP) スコア、および免疫細胞サブセットの組成を比較する。

また、TIRインデックスに含まれる共有TCRクローンが、実際に変異関連ネオアンチゲン (MANA) に反応する腫瘍特異的T細胞であることをin vitro機能アッセイにより直接的に検証する。

最後に、ICI治療中の共有TCRレパートリーの動態的変化を追跡し、その変化が治療効果や腫瘍のサブクローン進化とどのように関連するかを評価することで、TIRインデックスが治療効果モニタリングに応用可能であるかを検討する。これらの目的を達成することで、TIRインデックスがNSCLC患者に対する個別化免疫療法選択のための新規かつ実用的なバイオマーカーとなる可能性を探る。

結果

TIRインデックスはICI治療の奏効を高い精度で識別: ICI治療を受けたNSCLC患者31名において、奏効者 (CR + PR, n=6) と非奏効者 (SD + PD, n=25) の間でTIRインデックスの中央値は有意に異なり、奏効者で2.34% (95% CI 1.78-4.09%)、非奏効者で0.64% (95% CI 0.57-1.17%) であった (p<0.001)。ROC解析により、TIRインデックスの最適カットオフ値は1.91と決定され、AUCは0.974、感度100% (95% CI 54.07-100%)、特異度96.2% (95% CI 80.36-99.9%) であった (Figure 1D)。これにより、TIRインデックスはICI治療の臨床的奏効を非常に高い精度で層別化できることが示された。PD-L1発現レベルや組織TMB (tTMB) とTIRインデックスの間には有意な相関は認められず、TIRインデックスがこれらの既存バイオマーカーとは独立した予測因子である可能性が示唆された (Figure 2C)。

高TIRインデックス群で有意なPFSおよびOSの延長: TIRインデックスのカットオフ値1.91を用いて患者を高TIR群 (n=7) と低TIR群 (n=24) に層別化した結果、高TIR群は低TIR群と比較して有意に長いPFSおよびOSを示した。PFS中央値は高TIR群で10.7ヶ月、低TIR群で2.3ヶ月であり、ハザード比 (HR) は0.40 (95% CI 0.19-0.85, p=0.022) であった (Figure 1E)。OS中央値は高TIR群で未到達、低TIR群で6.9ヶ月であり、HRは0.21 (95% CI 0.08-0.53, p=0.018) であった (Figure 1F)。多変量Cox回帰分析では、TIRインデックスはPFS (HR 0.47, 95% CI 0.28-0.89, p=0.013) およびOS (HR 0.62, 95% CI 0.33-0.91, p=0.030) の両方において独立した良好な予後因子であることが確認された (Figure 2D)。PD-L1発現やtTMBは多変量解析において独立した有意性を示さなかった。

EGFR変異陽性NSCLC患者におけるTIRインデックスの予測能: 免疫チェックポイント阻害薬に抵抗性を示すことが多いとされるEGFR変異陽性NSCLC患者10名のサブグループ解析においても、TIRインデックスの予測能が維持されることが示された。高TIRインデックス群のEGFR変異陽性患者5名全員が客観的奏効 (ORR 100%) を達成したのに対し、低TIRインデックス群のEGFR変異陽性患者5名は全員が非奏効であった (ORR 0%) (Figure 2H)。PFS中央値は高TIR群で10.7ヶ月、低TIR群で3.1ヶ月であった (Figure 2I)。PD-L1発現レベルやEGFRエクソン変異サブタイプはTIRインデックスと相関せず、PD-L1 TPSが1%以下の患者においても高TIRインデックスが奏効と関連することが示された。これは、EGFR変異陽性患者においてもTIRインデックスが有効な予測因子となりうることを示唆する。

TIR共有クローンはMANA刺激で活性化される腫瘍特異的T細胞である: TIRインデックスの算出に用いられる共有TCRクローンが、機能的なMANA特異的T細胞であるかを検証するため、in vitro機能アッセイを実施した。PRを達成した患者4名と進行性疾患の患者2名から候補MANAペプチドを予測・合成し、PBMC由来T細胞を刺激した。PR患者のMANAの大部分 (11個中6個) は、WTペプチドと比較してCD8+ T細胞上の4-1BB発現を有意に上方制御した (Figure 3A, B)。MANA刺激後に活性化されたT細胞のTCR配列を解析したところ、in vitroで活性化された全てのTCR配列が、TILと末梢血PD-1+CD8+ T細胞間で重複するTCRクローン内に存在した (Figure 3D)。この結果は、TIRインデックスが測定するTCR重複クローンが、腫瘍特異的なネオアンチゲン反応性T細胞であることを直接的に裏付けるものである。

高TIRインデックス患者の腫瘍微小環境は免疫活性化状態を示す: 高TIRインデックス群と低TIRインデックス群の患者の腫瘍微小環境特性を比較した。高TIRインデックス群では、M1マクロファージの割合が有意に高く (中央値 10.6% vs 5.3%)、M2マクロファージの割合が有意に低かった (中央値 6.3% vs 17.6%) (p<0.05) (Figure 5E)。また、CD8+ TILの割合も高TIRインデックス群で有意に高値であった (23.4% vs 11.6%) (Figure 5F)。RNA-seqデータに基づくT細胞炎症性GEPスコア (Ayers et al. JClinInvest 2017 の18遺伝子パネル) も、高TIRインデックス群で有意に高値を示した (中央値 1.2 vs -0.57, p<0.05) (Figure 5D)。さらに、血漿中のIL-3, IL-4, IL-5, IL-6, IL-7, IL-8, IL-9, IL-12, SDF-1, CTACKといった免疫調節関連サイトカインのレベルも、高TIRインデックス群で有意に高かった (Figure 5A)。これらの結果は、高TIRインデックスが活性化された抗腫瘍免疫応答を伴うTMEを反映していることを示唆する。

TCRレパートリーの類似性とTIRインデックスの関連: 全31名の患者から1471種類の共有TCRクローンタイプが同定された。TCRの編集距離 (edit distance) を計算したところ、共有TCRの2.6%が比較的近い距離 (0〜3) を有していた (Figure 4A)。奏効者または高TIRインデックス群の患者では、非奏効者または低TIRインデックス群と比較して、共有TCR全体における編集距離が近いTCRの割合が有意に高かった (奏効者 vs 非奏効者: 3.8% vs 2.2%, p=0.048; 高TIR vs 低TIR: 3.6% vs 2.1%, p=0.034) (Figure 4B, C)。これは、高TIRインデックスがネオアンチゲンを効果的に認識する可能性が高い類似したTCRの濃縮を反映していることを示唆する。

ICI治療中の共有TCRレパートリーの動的変化: ICI治療中の共有TCRレパートリーの動態を評価するため、治療前後の末梢血サンプルを解析した (n=19)。末梢血PD-1+CD8+ T細胞における共有TCRクローンの頻度変化は、治療効果 (奏効 vs 非奏効) およびPFS (優 vs 劣) と一貫した傾向を示した (Figure 6B, top)。具体的には、共有TCRクローン頻度が増加した患者は、減少した患者と比較して有意に長いPFSを示した (中央値 8.9ヶ月 vs 2.0ヶ月, HR 0.28, 95% CI 0.09-0.86, p<0.001) (Figure 6C)。奏効群では、ICI治療2サイクル後に末梢血PD-1+CD8+ T細胞における共有TCRの割合が有意に増加した (中央値 0.51% vs -0.12%, p=0.002) (Figure 6D)。さらに、アテゾリズマブ治療でPRを達成した患者の経時的解析では、共有TCRクローン頻度は腫瘍縮小と相関して増加し、腫瘍の進行時には増加しなかった (Figure 6E, F)。これは、TIRインデックスの動的変化が局所的な免疫制御を反映し、治療効果モニタリングに応用可能であることを示唆する。

考察/結論

本研究は、非小細胞肺がん (NSCLC) 患者における免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) 治療の奏効を予測する新規TCRレパートリーベースの予測因子「TIRインデックス」を開発し、その高い予測精度と臨床的有用性を実証した。TIRインデックスは、腫瘍浸潤リンパ球 (TIL) と末梢血PD-1+CD8+ T細胞のTCR-β鎖CDR3配列の重複率を定量化したものであり、AUC 0.974という極めて高い予測精度でICI治療の奏効を識別した。この精度は、既存のバイオマーカーであるPD-L1発現や腫瘍変異負荷 (TMB) 単独を大幅に凌駕しており、これらの因子との相関も認められないことから、TIRインデックスが独立した補完的なバイオマーカーとして機能しうることを示唆する。

新規性: 本研究で初めて、TILと末梢血PD-1+CD8+ T細胞のTCR重複度を定量化したTIRインデックスが、NSCLC患者のICI治療奏効および生存期間を予測する強力な指標となることを示した。特に、in vitroでのMANA (mutation-associated neoantigen) 刺激実験により、TIRインデックスに含まれる共有TCRクローンが実際に腫瘍特異的なネオアンチゲン反応性T細胞であることを直接的に証明した点は、本研究の重要な新規性である。これは、TIRインデックスが単なるT細胞の量ではなく、機能的な腫瘍免疫応答を真に定量化する指標であることを裏付けるものである。

先行研究との違い: これまでの研究では、TCRレパートリーの多様性やクローン性がICI応答と関連すると報告されてきたが、その結果は一貫していなかった。例えば、Han et al. Cancer Immunol Res 2020 はPD-1+CD8+ TILのTCR多様性が予測因子となることを示したが、本研究は、腫瘍内と末梢血のPD-1+CD8+ T細胞間のTCR重複という新たな概念を導入した点で、これまでの研究とは異なるアプローチである。また、Gros et al. Nat Med 2016 は末梢血中のネオアンチゲン特異的T細胞の同定を報告しているが、本研究は、腫瘍特異的T細胞の末梢血への動員を定量化するTIRインデックスが、ICI治療の臨床的アウトカムと強く関連することを示した点で、より直接的な臨床応用への道を開くものである。

臨床応用: TIRインデックスは、高TIR群の患者で有意な無増悪生存期間 (PFS) および全生存期間 (OS) の延長を予測し、多変量解析においても独立した予後因子であることが示された。さらに、EGFR変異陽性NSCLC患者においてもTIRインデックスの予測精度が維持されるという発見は、Dong et al. Onco Targets Ther 2017 が報告した「EGFR変異肺がんはPD-L1が低くICI無効」という既存の固定概念を見直すための重要な手がかりを提供する。高TIRインデックスのEGFR変異患者は全例奏効を達成しており、これはEGFR変異陽性患者に対する個別化免疫療法選択の可能性を広げるものである。また、高TIRインデックス患者の腫瘍微小環境がM1マクロファージの増加、M2マクロファージの減少、CD8+ TILの増加、およびT細胞炎症性遺伝子発現プロファイル (GEP) スコアの高値を示すことは、TIRインデックスが活性化された抗腫瘍免疫応答を反映する機能的予測因子であることを裏付ける。動的TCR追跡の結果は、TIRインデックスが治療効果モニタリングにも応用可能であることを示唆しており、早期の治療効果判定や耐性メカニズムの解明に貢献しうる。

残された課題: 本研究の主要な限界は、対象症例数が31名と比較的少ないことである。この小規模なコホートサイズは、結果に潜在的なバイアスをもたらす可能性があり、より大規模な前向きコホートでの検証が今後の検討課題として残されている。また、TCRシーケンシングのコストと実用性も臨床現場での広範な導入に向けた課題である。さらに、TCR配列解析によって同定されたT細胞が、個々の腫瘍特異的ネオアンチゲンに正確に特異的であるかを完全に特定することは、現在の技術では依然として困難である。ネオアンチゲン予測のための次世代シーケンシング (NGS) パネルの使用には、一部の重要なMANAや体細胞変異を見落とすリスクも存在する。TIRインデックスがTMEの状態を示す指標となり、ICI治療の恩恵を受ける患者を異なる程度で識別できることは示されたが、これら二つの要因の因果関係や主要な効果については未解明な点が多く、その根底にあるメカニズムのさらなる調査が必要である。将来的には、ネオアンチゲンTCR同定技術との統合や、マルチオミクス解析 (TCR + シングルセルRNAシーケンス + TME解析) によるさらなる予測精度向上が期待される。本論文は、腫瘍特異的T細胞定量化に基づく個別化免疫療法選択の概念実証として重要な基礎的エビデンスを提供し、将来のTCRベースの研究開発に新たな洞察をもたらすものである。

方法

本研究では、2017年3月14日から2018年5月2日までに抗PD-1/PD-L1単剤療法を受けた連続するステージIV NSCLC患者31名を対象とした。全ての患者から、PD-1/PD-L1阻害薬投与前2週間以内に腫瘍組織生検と対応する末梢血検体を採取した。動的解析のため、治療中は画像評価と同時に6〜8週間ごとに末梢血サンプルを前向きに採取し、フローサイトメトリーによりPD-1+CD8+ T細胞をソーティングし、TCRシーケンシングに供した。また、一部の余剰組織検体は多重免疫蛍光染色 (mIF) および遺伝子発現プロファイリング解析に使用された。MANA (mutation-associated neoantigen)/野生型 (WT) ペプチド刺激実験には、2名の健常ドナーから書面によるインフォームドコンセントを得て血液サンプルが提供された。本研究は、中国医学科学院腫瘍病院倫理委員会 (NCC2016JZ-03およびNCC2018-092) の承認を得て実施され、全ての患者から書面によるインフォームドコンセントが取得された。

末梢血単核球 (PBMC) は、新鮮な末梢血から密度勾配遠心分離により分離された。フローサイトメトリー (BD FACSAria II) を用いて、PBMCからPD-1+CD8+ T細胞が精製された。TCR-β鎖CDR3 (complementarity-determining region 3) 領域のディープシーケンシング (ImmunoSEQ) は、ベースラインの腫瘍組織、末梢血PD-1+CD8+ T細胞、およびペプチド刺激T細胞から抽出されたDNAを用いて実施された。TCRレパートリーの多様性はShannon-Wiener指数 (Shannon index) に基づいて計算され、クローン性は正規化されたShannon indexとして算出された。

TIRインデックスは、TILとベースライン末梢血PD-1+CD8+ T細胞の両方で同定されたTCRクローンの総頻度として定義された。具体的には、TIL (T) と末梢血PD-1+CD8+ T細胞 (P) の両方で同定されたn個のTCRクローンがある場合、TIR index = Σ(Freq(T ∩ P)i) / T_n と計算された。ここで、iはn個の重複クローンにおけるクローンタイプiの頻度を示す。

奏効はRECIST 1.1基準に基づき、完全奏効 (CR) および部分奏効 (PR) を奏効と定義した。TIRインデックスの最適カットオフ値は、Youden指数を最大化するROC (Receiver Operating Characteristic) 解析によって決定された。無増悪生存期間 (PFS) および全生存期間 (OS) の解析にはKaplan-Meier曲線が用いられ、群間比較にはログランク検定が適用された。年齢、性別、パフォーマンスステータス、組織型、PD-L1発現、組織TMB (tTMB)、およびTIRインデックスを共変量とした多変量Cox回帰分析により、独立した予測因子が同定された。

腫瘍微小環境の特性評価のため、mIFによりCD4、CD8、PD-1、PD-L1、LAG3、TIM3の発現が評価された。また、14名の患者の腫瘍サンプルからRNAが抽出され、Oncomi-Seqプラットフォームを用いた395遺伝子パネルによる遺伝子発現プロファイリングが実施された。CIBERSORTツールを用いて、22種類の免疫細胞サブセットの存在量がLM22 (leukocyte gene signature matrix) 遺伝子シグネチャーマトリックスに基づいて推定された。さらに、Ayers et al. JClinInvest 2017 によって定義された18遺伝子からなるT細胞炎症性GEPスコアが算出された。血漿中の10種類の免疫調節関連サイトカインレベルは、Meso Scale Discovery (MSD) 技術を用いて測定された。サイトカインにはIL-3, IL-4, IL-5, IL-6, IL-7, IL-8, IL-9, IL-12, SDF-1, CTACKが含まれた。

TIRインデックスに含まれる共有TCRクローンが機能的な腫瘍特異的T細胞であるかを検証するため、MANA刺激によるin vitro機能アッセイが実施された。ネオアンチゲン予測アルゴリズムを用いて予測されたMANA候補および対応するWTペプチドが設計・合成された。PBMCから分離されたT細胞とMANAを提示した樹状細胞 (DC) を共培養し、4-1BB発現およびIFN-γ産生によりT細胞の活性化を評価した。MANA刺激により活性化されたT細胞のTCR配列と、TILおよび末梢血PD-1+CD8+ T細胞のTCR配列を比較解析し、TIRインデックスに含まれる共有TCRクローンがMANA特異的T細胞であるかを検証した。統計解析にはStudent’s t-test、Mann-Whitney U test、Wilcoxon rank sum testが用いられた。