• 著者: Asif J. Iqbal, Franziska Krautter, Isobel A. Blacksell, Rachael D. Wright, Shani N. Austin-Williams, Mathieu-Benoit Voisin, Mohammed T. Hussain, Hannah L. Law, Toshiro Niki, Mitsuomi Hirashima, Michele Bombardieri, Costantino Pitzalis, Alok Tiwari, Gerard B. Nash, Lucy V. Norling, Dianne Cooper
  • Corresponding author: Dianne Cooper (William Harvey Research Institute, Queen Mary University of London, UK; d.cooper@qmul.ac.uk); Asif J. Iqbal (Institute of Cardiovascular Sciences, University of Birmingham, UK; a.j.iqbal@bham.ac.uk)
  • 雑誌: FASEB Journal
  • 発行年: 2022
  • Epub日: 2022-01-01
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 34847625

背景

好中球の組織への遊走は炎症反応の重要な要素であり、病原体の排除と組織修復に不可欠である。好中球は血管外へ移動するために、内皮との相互作用と血管壁を通過する遊走を促進する方向性シグナルに従うことが知られている (David et al. 2019; Ley et al. 2018)。ガレクチン (Gal) ファミリーのメンバーは、免疫細胞のトラフィッキングにおいて役割を担うことが示されており、Galectin-1 (Gal-1) およびGalectin-3 (Gal-3) については、接着促進機能と接着抑制機能の両方が報告されている (Cooper et al. 2012; Cooper et al. 2008; Eckardt et al. 2020; Gittens et al. 2017; Malik et al. 2009; Sano et al. 2000)。本研究では、2つの異なる糖鎖認識ドメインが短いリンカーペプチドによって結合されたタンデムリピート型ガレクチンであるGalectin-9 (Gal-9) に焦点を当てた (Nishi et al. 2005; Nishi et al. 2006)。Gal-9は、もともとホジキン病患者のリンパ組織で同定され (Tureci et al. 1997)、その後、好酸球の走化性因子として記述され (Matsumoto et al. 1998)、好酸球の接着とT細胞の血管外遊走を促進することが示された (Bi et al. 2011; Imaizumi et al. 2002)。最近では、B細胞の接着にもその機能が拡張されている (Chakraborty et al. 2021)。

好中球のトラフィッキングにおけるGal-9の役割に関するエビデンスは限られている。Gal-9は好中球の脱顆粒、プライミング、細菌の貪食促進、および寿命延長を誘導することが報告されている (Vega-Carrascal et al. 2014; Wiersma et al. 2019; Zhu et al. 2005)。また、肺気腫モデルにおけるGal-9の投与は、気管支肺胞洗浄液中の好中球浸潤を減少させ、ケラチノサイト由来ケモカイン(IL-8の murine orthologue)への走化性を阻害した (Horio et al. 2017)。しかし、Gal-9が可溶性メディエーターとして機能するのか、あるいは活性化血管内皮によって提示される分子として機能するのかは不明な点が多い。慢性炎症性疾患、例えば関節リウマチ (RA) (Wiersma et al. 2019; Vilar et al. 2019)、2型糖尿病 (Kurose et al. 2013)、慢性肝疾患 (Fujita et al. 2018) の患者血清中で可溶性Gal-9レベルの増加が報告されている一方で、炎症組織では内皮細胞での発現が増加し (Schaefer et al. 2017)、in vitroではインターフェロンガンマ (IFNγ) (Imaizumi et al. 2002; Alam et al. 2011) および二本鎖RNA (dsRNA) (Ishikawa et al. 2004) によって上方制御されることが示されている。

これまでの研究では、Gal-9が好中球の脱顆粒や寿命延長に関与することが示唆されていたが、活性化内皮細胞における接着メディエーターとしての直接的な役割とその分子機構は未解明であった。特に、Gal-9が可溶性因子として、また内皮表面の接着分子として、好中球の動員にどのように寄与するのか、その二重機能については知識が不足していた。本研究は、生理的フロー条件下で好中球を捕捉し、血管内皮との接着相互作用を強化する接着分子としてのGal-9のこれまで知られていなかった役割を特定することを目的とした。

目的

本研究の目的は、免疫調節性レクチンであるGalectin-9 (Gal-9) が好中球のトラフィッキングと接着に果たす役割をin vivoおよびin vitroの両方で詳細に解明することである。具体的には、Gal-9が可溶性メディエーターとして、また内皮表面に固定化された接着分子として、二重の機能を持つことを検証する。さらに、Gal-9の接着促進効果に関与する好中球上の受容体と、その下流で活性化される細胞内シグナル伝達経路を同定することを目的とする。これにより、炎症性疾患における好中球動員におけるGal-9の役割の分子基盤を確立し、新たな治療標的の可能性を探る。

結果

活性化内皮細胞によるGal-9の発現と放出: RA滑膜生検の内皮細胞においてGal-9の陽性染色が確認された (図1A)。この発現はSMA (平滑筋アクチン) と共局在せず、平滑筋細胞におけるGal-9の不在を示した (図1B)。また、高内皮細静脈のPNAd陽性内皮細胞でもGal-9が発現していることが確認された (図1C)。TNFαとIFNγの併用、およびPoly:IC刺激により、HUVEC表面のGal-9発現が有意に上昇する傾向が認められた (図1F)。さらに、TNFαとIFNγの併用刺激は、可溶性Gal-9の細胞外環境への有意な放出も誘導した (図1G)。これは、Gal-9が表面結合型と可溶型の両方のプールで存在することを示唆する。内皮細胞のGal-9をsiRNAでノックダウンすると、Poly:IC刺激下での好中球接着が有意に減少したが (図1J)、遊走には影響がなかった (図1K)。

Gal-9欠損マウスにおけるzymosan誘発腹膜炎での好中球動員の減少: Gal-9欠損マウス (n=7-9 mice) では、zymosan腹腔内投与4時間後の腹腔内好中球動員が野生型 (WT) マウスと比較して有意に減少した (p<0.05) (図1L)。この早期時点での単球動員にはGal-9の欠損による影響は認められなかった (図1M)。16時間時点では、好中球のクリアランスはGal-9の欠損によって悪影響を受けず、同程度の細胞数が腹腔内に存在した (図1L)。しかし、16時間時点では単球数に有意な減少が観察され、これは好中球動員の減少に関連している可能性が示唆された (図1M)。

可溶性Gal-9による好中球の活性化と接着促進: 健常ボランティアから単離された好中球 (n=5 donors) は、表面に内因性のGal-9を発現しているが (図2A)、組換えヒトGal-9 (rhGal-9) の結合により、さらなる結合部位が存在することが示された (図2B)。このrhGal-9の結合は、ラクトースの存在下で有意に減少したことから、糖鎖依存性であることが示された (図2B)。Gal-9 (10-30 nM) は濃度依存的に好中球を活性化し、CD11bおよびCD18の活性型コンフォメーションを誘導し、CD62Lの発現をfMLPと同程度に低下させた (図2D)。これらのGal-9の作用もラクトースによって阻害された。Gal-9 (10 nM) で前処理した好中球をTNFα活性化内皮細胞上で流すと、ローリング好中球の数が有意に減少し、強固な接着とそれに続く血管外遊走が増加した (図2F)。これは、Gal-9が好中球をプライミングし、内皮への接着を強化する潜在的な内因性リガンドとして機能することを示唆する。生体顕微鏡を用いたin vivo実験でも、陰嚢内へのGal-9 (500 ng) 投与により、後毛細血管細静脈における白血球接着数の増加と、対照マウスと比較して有意に高い数の遊走細胞が確認された (図S1A-C)。

Gal-9による好中球-内皮相互作用の強化とクローリング抑制: Gal-9 (30 nM) は、二価カチオン(カルシウムおよびマグネシウム)非存在下でも好中球の接着を維持し、インテグリンがGal-9の接着促進効果に単独で必要ではないことを示した (図3A,B)。Gal-9の非存在下では、好中球は0.4 Paまでの剪断応力で内皮上に保持されたが、それ以上の剪断応力では有意な数の細胞が剥離した (図3C)。しかし、Gal-9の存在下では、好中球の剥離とローリングへの変換は、試験した最高の剪断応力 (1.6 Pa) でも有意に減少し (p<0.05)、Gal-9が高剪断応力下でも好中球と内皮細胞間の相互作用を強化することを示した (図3D)。

ICAM-1上での好中球のクローリングは、可溶性Gal-9の添加により停止し、好中球は固定された表現型を示した (図4A)。IL-8は好中球のクローリングを大きく変化させなかったが (図4B)、IL-8とGal-9を併用すると、クローリング速度とユークリッド距離が有意に減少し、Gal-9の作用が優位であることが示された (図4C)。Gal-9は、明確な極性を持たない広範な形態と皮質F-アクチンの再分布を伴う細胞骨格の変化を誘導した (図4D)。また、Gal-9はIL-8に対する好中球の走化性を濃度依存的に阻害し、30 nMのGal-9存在下では走化性レベルがベースラインまで低下した (図4G)。

固定化Gal-9の接着分子としての機能とCD44依存性メカニズム: 固定化された組換えヒトGal-9は、流動する好中球を濃度依存的に捕捉し、ローリングを経ずに瞬時に強固な接着を誘導した (図5A,B)。この捕捉はラクトースの添加により有意に抑制され (p<0.01)、Gal-9の糖鎖依存的な接着メカニズムが確認された (図5C)。CD18中和抗体による好中球の前処理は、固定化Gal-9上での好中球の活性化(伸展)表現型への移行を有意に減少させた (図5E)。ICAM-1上では好中球が容易にクローリングしたが、Gal-9上に接着した好中球は、可溶性Gal-9に曝露されたICAM-1上の好中球と同様に、遊走が阻害された (図5F)。Gal-9はAktとERKを迅速にリン酸化し、Aktは5分でピークに達し、ERKはより遅い動態を示した (図6E)。これらのシグナル伝達経路の誘導はラクトースによって阻害された (図6F)。CD44がGal-9の好中球受容体として同定され、抗CD44抗体によるブロッキングは、固定化Gal-9上での好中球の伸展を有意に減少させたが、接着には影響しなかった (図6D)。これは、CD44がGal-9を介した好中球の活性化と形態変化に重要な役割を果たすことを示唆する。

考察/結論

本研究は、Galectin-9 (Gal-9) が好中球動員において「可溶性活性化因子」と「固定化接着分子」という二重機能を持つ内因性メディエーターとして機能することを初めて明らかにした。関節リウマチ (RA) 滑膜生検の内皮細胞でGal-9の発現が上昇し、zymosan誘発腹膜炎モデルにおけるGal-9ノックアウトマウス (n=7-9 mice) では好中球動員が有意に減少した (p<0.05) ことは、in vivoにおけるGal-9の重要な役割を裏付けている。

先行研究との違い: これまでの研究では、好中球の接着カスケードは主にセレクチン、ICAM-1、VCAM-1などの古典的な接着分子によって媒介されると考えられていたが、本研究はGal-9/CD44経路という新規の糖鎖認識に基づく並行経路が存在することを提示した点で、これまでの知見と対照的である。特に、Gal-9がセレクチンとは異なり、ローリングを介さずに好中球を直接捕捉し、瞬時に強固な接着を誘導する能力は、従来の接着分子の機能と対照的である。

新規性: 本研究で初めて、Gal-9が活性化内皮細胞によって発現・放出され、可溶性および固定化の両形態で好中球の接着と活性化を促進する接着分子として機能することを新規に同定した。また、好中球上のCD44がGal-9の主要な受容体として機能し、Akt/ERK経路を介したシグナル伝達を担うことも本研究で初めて示された。さらに、Gal-9が高剪断応力下 (1.6 Pa) でも好中球-内皮相互作用を強化し、ICAM-1上での好中球のクローリングを抑制するという、これまでに報告されていない機能も明らかになった。

臨床応用: 本知見は、RAやその他の慢性炎症性疾患における過剰な好中球動員を促進する分子基盤を解明する上で重要な臨床的意義を持つ。RA滑膜におけるGal-9の高発現が関節炎症の好中球負荷を増幅するドライバーとして位置付けられ、可溶性Gal-9の阻害(中和抗体や糖鎖模倣ラクトースアナログなど)が次世代の抗炎症戦略の候補となる可能性を示唆する。敗血症や急性肺障害などの高Gal-9病態にも本研究の知見は臨床応用できると考えられる。

残された課題: 今後の検討課題として、本研究がHUVECをモデル内皮として使用したため、他の組織特異的な血管床(微小血管、滑膜血管など)におけるGal-9の効果を検証する必要がある。また、Gal-9とβ2インテグリンの直接的な物理的相互作用や、受容体架橋の詳細なメカニズムは未同定である。好中球の糖鎖プロファイルが血管外遊走後に変化し、Gal-9結合が低下する可能性が示唆されたため、組織実質におけるGal-9の作用が限定的である可能性も考慮する必要がある。さらに、単球やT細胞などの他の免疫細胞との比較研究も今後の研究で必要とされる。本研究のlimitationとして、Gal-9が好中球の形態変化と遊走を欠如させる理由や、Mac-1誘発性極性を阻害するメカニズムの解明が挙げられる。

方法

試験デザイン: 本研究は、in vitroでのフローアッセイ、in vivoでの好中球動員モデル、およびヒト臨床検体の解析を組み合わせた統合的なアプローチを採用した。

主要手技:

  1. 関節リウマチ (RA) 滑膜生検の免疫蛍光染色: ヒトRA滑膜生検組織を用いて、血管内皮細胞におけるGal-9の発現を免疫蛍光染色により評価した。VWF (von Willebrand Factor) およびSMA (smooth muscle actin) との共局在を解析した。
  2. HUVECにおけるGal-9発現の調節: ヒト臍帯静脈内皮細胞 (HUVEC) を用いて、Gal-9のsiRNAノックダウンを実施した。また、腫瘍壊死因子アルファ (TNFα, 10 ng/ml)、インターフェロンガンマ (IFNγ, 20 ng/ml)、またはPoly:IC (20 µg/ml) などのサイトカイン刺激によるGal-9の表面発現および細胞外放出を評価した。Gal-9の表面発現はフローサイトメトリーで、細胞外放出はELISAで測定した。
  3. 生理的剪断応力下でのフローチャンバー接着アッセイ: μ-Slide VI 0.4 (Ibidi) を使用し、生理的な剪断応力 (0.1 Pa) 下で好中球の接着、ローリング、遊走を定量化した。Gal-9またはrhICAM-1-Fc (10 µg/ml) をコーティングしたチャンバー、またはTNFα刺激HUVEC上で実験を行った。好中球はGal-9 (10 nM) で10分間前処理する場合としない場合があった。CD18 (10 µg/ml) またはCD44 (10 µg/ml) の中和抗体を用いたブロッキング実験も実施した。
  4. Gal-9ノックアウトマウスのzymosan誘発腹膜炎モデル: Galectin-9ノックアウトマウス (B6(FVB)-Lgals9tm1.1Cfg/Mmucd) を用いて、zymosan (0.1 mg) 誘発腹膜炎モデルにおける好中球動員を評価した。腹腔洗浄液中の総細胞数および好中球・単球数をフローサイトメトリーで定量した。この実験にはn=7-9 miceが使用された。
  5. 生体顕微鏡 (Intravital microscopy): 陰嚢内へのGal-9 (500 ng) 投与による精巣挙筋の炎症モデルを用いて、好中球の血管外遊走をin vivoで可視化した。Ly6G抗体を用いて好中球を標識し、接着および遊走細胞数を定量した。
  6. フローサイトメトリーによる好中球活性化の評価: 好中球をGal-9 (1-30 nM)、PAF (1 nM)、またはfMLP (1 µM) と共にインキュベートし、CD11b、CD18 (活性化エピトープ)、およびCD62Lの発現をフローサイトメトリーで評価した。ラクトース (30 mM) による糖鎖依存性阻害実験も実施した。
  7. レクチン結合アッセイ: 固定化好中球にビオチン化植物レクチン (SNA, LEL, PHA-L) を結合させ、フローサイトメトリーで好中球の糖鎖プロファイルを解析した。
  8. ウェスタンブロッティング: Gal-9 (30 nM) 刺激後の好中球におけるAktおよびERKのリン酸化をウェスタンブロッティングで評価した。ラクトース (30 mM) による阻害実験も実施した。
  9. 共焦点顕微鏡による細胞骨格解析: フローアッセイ後の好中球を固定し、F-アクチン (ファロイジン) およびビンキュリンを染色し、共焦点顕微鏡で細胞形態と接着構造を観察した。活性化CD18の発現も評価した。
  10. 好中球の遊走アッセイ: ICAM-1基質上での好中球のクローリング挙動を、可溶性Gal-9 (30 nM) またはIL-8 (30 ng/ml) の存在下で解析した。Boydenチャンバーを用いた走化性アッセイも実施した。
  11. 剥離アッセイ: HUVEC上に接着した好中球の剥離を、漸増する剪断応力下で評価した。

統計解析: データは平均 ± 標準誤差 (SEM) で示された。多群比較には一元配置または二元配置ANOVAにDunnett’sまたはBonferroni’sの事後解析を適用した。二群比較にはStudent’s t検定を用いた。p値が0.05未満を有意とした。