- 著者: Zahra Abbas, Courtney George, Mathew Ancliffe, Meegan Howlett, Anya C. Jones, Mani Kuchibhotla, Robert J. Wechsler-Reya, Nicholas G. Gottardo, Raelene Endersby
- Corresponding author: Raelene Endersby (Telethon Kids Cancer Centre, Telethon Kids Institute, Perth, Western Australia, Australia; raelene.endersby@telethonkids.org.au)
- 雑誌: Frontiers in Immunology
- 発行年: 2022
- Epub日: 2022-03-03
- Article種別: Original Article
- PMID: 35309309
背景
髄芽腫 (Medulloblastoma) は小児期に最も多く見られる悪性脳腫瘍であり、特にGroup 3サブタイプはMYC遺伝子駆動型で予後不良である。数十年にわたり、外科的切除後の放射線療法(頭蓋脊髄照射、CSI)と化学療法が標準治療として維持されてきたが、これらの治療法は重篤な神経毒性を伴い、生存率の改善は近年停滞している (Northcott et al. 2019)。約30%の髄芽腫患者が標準治療に失敗し、再発例では治療抵抗性が高く、長期生存率は5%未満である (Hill et al. 2020)。このため、新たな治療戦略、特に免疫療法の開発が喫緊の課題となっている。
しかし、髄芽腫における免疫療法の臨床試験はこれまで成功しておらず、その理由として、脳腫瘍免疫微小環境(TIME)が他の固形腫瘍とは大きく異なる可能性が指摘されている。特に、標準治療が脳内の免疫細胞にどのような影響を与えるかについては、体系的な評価が不足していた。T細胞を標的とする免疫チェックポイント阻害薬(例:抗PD-1抗体)が髄芽腫患者で奏効しない背景には、TIMEにおけるT細胞の乏しさや機能不全が関与している可能性が考えられるが、その分子基盤は未解明のままであった。
これまでの研究では、髄芽腫の免疫微小環境に関する知見は限られており、特に標準治療が免疫細胞の組成や機能に与える影響については、詳細なデータが不足していた。例えば、SHHサブタイプ髄芽腫モデルにおける放射線治療後の免疫細胞浸潤の増強が報告されているが (Dang et al. 2021)、Group 3髄芽腫におけるCSIの影響は不明であった。また、化学療法薬であるシクロホスファミド(CPA)やゲムシタビン(GEM)が全身性の免疫抑制を引き起こすことは知られているが (Galluzzi et al. 2015; Ahlmann et al. 2016)、脳内のTIMEに与える具体的な影響は十分に解明されていなかった。これらの薬剤が脳内の免疫細胞に与える影響は、全身性の免疫抑制とは異なる可能性があり、脳腫瘍の治療戦略を策定する上で重要なギャップが残されている。
本研究は、免疫担当マウスモデルを用いて、MYC駆動型Group 3髄芽腫のTIMEを詳細に特徴付け、CSI、CPA、GEMといった標準治療が免疫細胞に与える影響を包括的に解析することを目的とした。特に、適応免疫の役割をRag1欠損マウスで検証し、髄芽腫における免疫療法の新たな標的となる細胞集団を同定することで、将来の臨床試験デザインに貢献することを目指した。
目的
本研究の目的は、MYC/p53 DD髄芽腫移植マウスモデルを用いて、脳腫瘍免疫微小環境(TIME)の包括的な特徴付けを行うことであった。具体的には、以下の点を解明することを目指した。
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髄芽腫増殖と適応免疫の関連性: 野生型(WT)マウスと成熟T細胞およびB細胞を欠損するRag1ノックアウト(Rag1KO)マウスにおけるMYC/p53 DD髄芽腫の増殖速度と治療応答を比較し、適応免疫系が腫瘍の生着、増殖、および標準治療への応答に必須であるか否かを検証する。Rag1欠損マウスはV(D)J組換えが欠損しており、T細胞およびB細胞の分化が初期段階で停止するため、重度の複合免疫不全を示すことが知られている (Mombaerts et al. 1992)。
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標準治療が脳内免疫細胞に与える影響: 臨床的に関連性の高い標準治療プロトコル(CSI、CPA、GEM)が、髄芽腫を保有するWTマウスの脳内免疫細胞集団の組成にどのような変化を引き起こすかをフローサイトメトリーおよび免疫組織化学(IHC)を用いて詳細に解析する。特に、適応免疫細胞(T細胞、B細胞)と自然免疫細胞(ミクログリア、骨髄系細胞)への影響を評価する。CSIは分割照射プロトコル(総線量20 Gyを10回に分割)を、化学療法はCPA(120 mg/kg)およびGEM(60 mg/kg)を週2回投与する臨床関連プロトコルを用いた。
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免疫療法標的の同定: 標準治療後も脳内TIMEに豊富に存在する免疫細胞集団を同定し、それらが髄芽腫における有望な免疫療法標的となり得るかを評価する。特に、ミクログリアと骨髄由来マクロファージ(BAM)の役割と、既存のマーカー(Tmem119、CD45)による識別限界を検討する。病態条件下でのミクログリアの表現型変化、特にTmem119発現の低下とCD45発現の上昇の可能性を評価する。
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遺伝子発現プロファイルの変化: 標準治療が髄芽腫組織の遺伝子発現プロファイル、特に免疫関連遺伝子に与える影響をバルクRNAシーケンスとCIBERSORTx解析を用いて評価し、治療応答のメカニズムを分子レベルで解明する。これにより、免疫細胞の組成変化だけでなく、腫瘍細胞と免疫細胞間の分子相互作用の変化も捉えることを目指した。
これらの目的を達成することで、髄芽腫における免疫療法の失敗のメカニズムを解明し、初回治療と併用可能な新たな免疫療法の開発に向けた合理的な基盤を提供することを目指した。
結果
適応免疫系はMYC/p53 DD腫瘍の増殖および治療応答に非必須: MYC/p53 DD髄芽腫の増殖は、WTマウスとRag1KOマウス(T/B細胞欠損)間で差がなかった。対照群の腫瘍非保有生存期間はWTとRag1KOマウス (n=10 mice per group) で同等であった。標準治療に対する応答も同様であった。CSIはWTマウス (n=10 mice) で生存期間中央値を15日から21日へ延長し(p<0.0001)、Rag1KOマウス (n=10 mice) では17.5日から22.5日へ延長した(p=0.03)。CPAはWTマウス (n=10 mice) とRag1KOマウス (n=10 mice) の両方で生存期間中央値を34日へ延長し(p<0.001およびp<0.0001)、GEMはWTマウス (n=10 mice) で16日から34日へ、Rag1KOマウス (n=10 mice) で15日から35日へ延長した(p<0.0001)。これらの結果は、MYC/p53 DD髄芽腫モデルにおける腫瘍増殖と治療応答がT細胞およびB細胞に依存しないことを示唆する (Figure 1B-D)。
Group 3髄芽腫の増殖は脳への免疫細胞浸潤を促進: 髄芽腫の増殖は、非腫瘍脳と比較して脳内のCD45+免疫細胞総数を有意に増加させた(p<0.01-0.001)。特に、活性化ミクログリア(CD45int CD11b+ MHC II高)、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、NK細胞、古典的樹状細胞(cDC)の数が増加した (Figure 3)。ミクログリアは脳TIMEの主要な構成要素であり、全CD45+免疫細胞の50-65%を占める。Rag1KOマウス (n=5 mice) でも、MYC/p53 DD髄芽腫の増殖は脳内のミクログリア絶対数を増加させ、骨髄由来免疫細胞の浸潤を誘発した。CD11b+ cDC、NK細胞、好中球、単球の有意な増加も観察された (Supplementary Figure 4)。正常脳と比較して、腫瘍保有WTマウスの脳ではCD45+免疫細胞総数が約2.5-fold増加し、CD45 high細胞数も約3-fold増加した。活性化ミクログリアは健康な脳と比較して約4-fold増加した。
CSIは脳内の骨髄由来免疫細胞集団を一時的に枯渇させる: WTマウス (n=5 mice per group) において、CSIは浸潤性骨髄由来免疫細胞(CD45 high)の有意かつ一時的な減少をもたらした。最終照射24時間後には、脳内のCD4+ T細胞、CD8+ T細胞、B細胞、CD11b+ cDCの割合が有意に減少した(p<0.05-0.001)。例えば、CD4+ T細胞の割合は対照群の約10%からCSI群で約2%に減少した。その結果、この時点では全免疫細胞中のミクログリアの割合が有意に高くなった (Figure 4)。しかし、CSI中止後1-2週間後の後期時点では、免疫細胞集団に差は検出されず、CSIによる免疫細胞の変化は一時的なものであることが示された。Rag1KOマウス (n=5 mice per group) では、CSI後24時間でNK細胞のみが有意に減少した (Supplementary Figure 6)。
CPAは広範囲な免疫細胞を枯渇させ、GEMは好中球に選択的な影響を与える: CPA治療を受けたWTマウス (n=5 mice) の脳では、浸潤性免疫細胞の割合が対照群と比較して有意に低かった。CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、B細胞、NK細胞、活性化ミクログリアの割合はすべて有意に減少した(p<0.05-0.001) (Figure 4)。例えば、CPA群ではCD4+ T細胞の割合が対照群の約10%から約1%に、B細胞の割合が約5%から約0.5%に減少した。これはCPAが全身性の白血球減少症を引き起こすことと一致し、脾臓でも同様の免疫細胞減少が確認された (Supplementary Figure 1)。一方、GEM治療はWTマウス (n=5 mice) の脳免疫に最小限の影響しか与えず、好中球の割合のみが選択的に減少した(p<0.05) (Figure 4)。驚くべきことに、Rag1KOマウス (n=3 mice per group) では化学療法による免疫枯渇は観察されず、CPAまたはGEM治療後にCD45 high免疫細胞が有意に増加した (Supplementary Figure 6)。CPA群ではCD45 high細胞が対照群と比較して約1.5-fold増加した。
髄芽腫浸潤性骨髄系細胞はIba1を発現するがミクログリアマーカーTmem119は発現しない: MYC/p53 DD腫瘍をWTマウスから解剖し、フローサイトメトリーで腫瘍内免疫細胞の割合を評価したところ、腫瘍内の細胞のわずか1-2%が免疫細胞であり、その大部分(76.9 ± 3.88%)がCD45 highであった(p<0.0001) (Figure 5A)。IHCでは、Iba1陽性細胞(骨髄由来マクロファージとミクログリアの両方のマーカー)が脳実質と腫瘍全体に観察された。正常脳ではIba1+細胞は樹枝状形態を示したが、腫瘍辺縁部や腫瘍内ではアメーバ状形態を示した (Figure 5B, C)。ミクログリア特異的マーカーとされるTmem119陽性細胞は正常脳全体に観察されたが、腫瘍内ではTmem119染色が完全に欠如していた (Figure 5B, C)。腫瘍内でのTmem119陽性細胞数は0 cells/mm²であったのに対し、正常脳では約30 cells/mm²であった。これは、腫瘍内のIba1+細胞がミクログリアではないか、あるいは病態条件下でミクログリアがTmem119を下方制御しCD45を上方制御することを示唆する。
バルクRNAシーケンスによる免疫学的シグネチャの解釈は困難: バルクRNAシーケンスデータを用いたCIBERSORTx解析では、免疫細胞のシグネチャは非常に低く、ミクログリア、境界関連マクロファージ(BAM)、単球のシグネチャのみが検出されたが、これらの推定値は有意ではなかった(p>0.05) (Figure 6C)。CSIはどちらのマウス系統でも免疫細胞組成を有意に変化させなかった。しかし、Rag1KOマウス (n=3-4 mice per group) においてCPAまたはGEM治療後に計算された細胞分画を比較すると、ミクログリアが対照群と比較して減少しており(p=2.0x10⁻⁴およびp=2.0x10⁻⁵)、BAMが有意に増加していた(p=0.04およびp=1.8x10⁻⁵) (Figure 6D)。WTマウスでは有意な差は観察されなかった。この結果は、MYC/p53 DD腫瘍における免疫細胞の腫瘍細胞に対する存在量が低いため、バルクRNAシーケンスでは免疫学的シグネチャを正確に定量することが困難であることを示唆している。
考察/結論
本研究は、MYC駆動型Group 3髄芽腫マウスモデルにおいて、標準治療が脳腫瘍免疫微小環境(TIME)に与える影響を包括的に解析した初めての報告である。特に、CSIとCPAが髄芽腫脳TIMEのT/B細胞を枯渇させることを体系的に示し、抗PD-1抗体などのT細胞中心の免疫療法が髄芽腫小児患者で奏効しない理由のメカニズム的基盤を提示した。この知見は、ヒトGroup 3髄芽腫におけるリンパ球の希少性 (Riemondy et al. 2021) やPD-L1/PD-1の発現レベルが低いという報告 (Martin et al. 2018) とも一致する。
新規性: 本研究で初めて、Rag1欠損マウスを用いた実験により、髄芽腫の増殖および標準治療への応答がT/B細胞に依存しないことを明確に示した。これは、髄芽腫における免疫療法の標的を適応免疫細胞から自然免疫細胞へとシフトさせる重要な根拠となる。また、Tmem119が腫瘍内ミクログリアのマーカーとして信頼性が低い可能性を指摘し、病態条件下でのミクログリアの表現型変化を示唆した点も新規の知見である。
先行研究との違い: 既報のSHH髄芽腫モデルにおける放射線治療後のマクロファージ増加 (Dang et al. 2021) とは対照的に、本研究のGroup 3髄芽腫モデルでは、臨床的に関連性の高い分割CSIプロトコルを用いた場合、ミクログリアやマクロファージの絶対数の増加は観察されなかった。この違いは、髄芽腫のサブタイプ間での免疫応答の異質性を示唆しており、治療プロトコル設計における考慮が必要である。
臨床応用: 本研究の結果は、髄芽腫における免疫療法の将来的な臨床試験デザインに重要な含意を持つ。T細胞が標準治療によって枯渇することから、抗PD-1抗体などのT細胞標的療法を初回治療と併用することは困難である可能性が高い。一方、ミクログリアを含む骨髄系細胞は脳TIMEに豊富に残存し、標準治療によっても枯渇しないことが示された。このため、CD47-SIRPα経路などの骨髄系チェックポイントを標的とする免疫療法(例:CD47阻害薬magrolimab、SIRPα標的抗体、CSF1R阻害薬)が、CSIやCPAとの併用において有望な標的となるという強力な理論的根拠を提供する。これらの薬剤は、髄芽腫や他の小児脳腫瘍のマウスモデルで高い有効性が示されている (Gholamin et al. 2017)。また、CPAによる全身性免疫抑制を考慮し、T細胞を救済可能な治療順序(CPA完了後の遅延投与など)の検討も必要である。
残された課題: 本研究にはいくつかのlimitationが存在する。第一に、Tmem119のミクログリア特異性に関する疑問が残る。病態条件下でのTmem119の下方制御とCD45の上方制御は、ミクログリアがマクロファージ様の状態へ移行することを示唆するが、これを明確に区別するためには、Sall1などのミクログリア特異的マーカーやCD206、Siglec-H、CD38などのBAMマーカーを用いたさらなる検証が必要である。第二に、バルクRNAシーケンスの感度限界により、腫瘍内の免疫細胞の低存在量のため、免疫シグネチャの正確な定量が困難であった。今後は、CD45陽性細胞の濃縮後のバルクRNAシーケンス、またはシングルセルRNAシーケンスやプロテオミクス技術を用いた詳細な解析が求められる。第三に、頭蓋内移植手技による血液脳関門(BBB)の破綻が末梢免疫細胞の浸潤を促進する可能性があり、自発性髄芽腫モデルでの検証が望ましい。最後に、本研究はGroup 3髄芽腫に限定されており、他のサブタイプ(SHH、WNT、Group 4)への一般化可能性は未検証である。Rag1KOマウスはNK細胞が正常であるため、自然免疫の役割を完全に排除できていない点も考慮すべきである。今後の研究では、これらの課題を克服し、髄芽腫における免疫細胞の動態と治療応答メカニズムをより深く理解することが、最適な免疫療法の選択に不可欠である。
方法
動物モデル: 6-12週齢のC57BL/6J野生型(WT)雌マウスおよびRag1欠損(Rag1KO)雌マウス(成熟T細胞およびB細胞を欠損)を用いた。Rag1欠損マウスはV(D)J組換えが欠損しており、T細胞およびB細胞の分化が初期段階で停止するため、重度の複合免疫不全を示す (Mombaerts et al. 1992)。MYC/p53 DD髄芽腫細胞は、レトロウイルスを用いてMYC T58A、Tp53のドミナントネガティブカルボキシ末端断片、GFP、およびホタルルシフェラーゼを発現させたCD133陽性小脳幹細胞から作製された (Pei et al. 2012)。これらの細胞5,000個を、既報の方法 (Endersby et al. 2011) に従い、Matrigelに懸濁してマウスの頭蓋内に移植した。腫瘍サイズはIVIS Spectrumを用いた生物発光イメージングでモニタリングし、治療開始時に各群の平均光子束が均等になるようにマウスをランダム化した。
治療プロトコル:
- 頭蓋脊髄照射 (CSI): X-RAD SmART小動物画像ガイド放射線治療システムを用いて実施した。総線量20 Gyを2週間で10回に分割して照射した(1回2 Gy、週5日照射)。シャム対照群は、CSI治療群と同時間、イソフルラン麻酔下で処置した。
- 化学療法: シクロホスファミド(CPA, 120 mg/kg, 腹腔内投与)またはゲムシタビン(GEM, 60 mg/kg, 静脈内投与)を週2回投与した。対照群には同経路で生理食塩水を投与した。治療は腫瘍関連の病的状態により安楽死が必要となるまで継続した。
フローサイトメトリー: 全脳から単一細胞懸濁液を調製した。脳組織をコラゲナーゼIVとDNAseを含む消化バッファーで処理し、Percoll勾配遠心分離によりミエリンを除去した。細胞は、CD45、IAIE、CD11b、CD4、CD8a、NK1.1、B220、F4/80、CD3e、CD19、CD11c、Ly6Gなどの蛍光標識抗体で染色した。データはLSRFortessa X-20で取得し、FlowJoソフトウェアを用いて免疫細胞集団をゲーティングした (Figure 2)。脾臓組織も全身性免疫への影響を評価するために採取・解析した。CSI治療マウスの脳は、最終照射24時間後(急性期)と腫瘍関連の病的状態時(後期)の2つの時点、化学療法マウスの脳は腫瘍関連の病的状態時に解析した。
免疫組織化学 (IHC): マウスをPBSで経心臓灌流後、4%パラホルムアルデヒドで固定した。脳はパラフィン包埋し、5 µm厚の切片を作製した。Iba1(Wako Chemicals)とTmem119(Abcam)に対する一次抗体を用いてIHCを実施した。陽性細胞は、正常皮質、腫瘍辺縁部、腫瘍内部の3つの異なる領域で計数した。
RNA分離とバルクRNAシーケンス: 腫瘍組織を脳から解剖し、RNeasy Plus Mini Kit(Qiagen)を用いて全RNAを抽出した。RNAシーケンスはGenomicsWAまたはAustralian Genome Research Facility(AGRF)で実施された。NovaSeq 6000 S1フローセルでペアエンド150bpリードとしてシーケンスした。
データ解析:
- 前処理と品質管理: CutAdaptでアダプターと品質トリミングを行い、FastQCとSAMStatでQCを実施した。HISAT2 (Kim et al. 2015) を用いてマウス参照ゲノム(GRCm38)にリードをアラインメントし、summarizedOverlaps()で遺伝子レベルで定量した。
- 細胞組成の推定 (CIBERSORTx): CIBERSORTx (Newman et al. 2019) を用いて、バルクRNAシーケンスデータから免疫細胞の割合を推定した。参照データセットとして、公開されているC57BL/6J WT全脳単一細胞データセット(GEO accession GSE128855)を使用した。
- 差次発現遺伝子解析: Robinson et al. Bioinformatics 2010 を用いて差次発現遺伝子(DEGs)を同定した。多重検定補正として偽発見率(FDR)を適用し、調整p値 < 0.05かつ絶対log2 fold change > 0.5を統計的に有意とした。
- パスウェイ解析: InnateDB (Breuer et al. 2013) を用いて、アップレギュレートおよびダウンレギュレートされた遺伝子のパスウェイ濃縮解析を行った。
- 上流ドライバー解析: Ingenuity Systems KnowledgeBase (Krämer et al. 2014) の上流レギュレーター解析を用いて、遺伝子発現パターンの推定分子ドライバーを同定した。
統計解析: Kaplan-Meier生存曲線はログランク検定を用いて比較した。フローサイトメトリーデータは、対応のない両側t検定を用いて免疫細胞集団を比較した。IHCおよびCIBERSORTxの比較では、p値 < 0.05を統計的に有意とした。多重検定補正は行わなかった (Bender and Lange 2001)。