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SRSF2 plays an unexpected role as reader of m5C on mRNA, linking epitranscriptomics to cancer

  • 著者: Hai-Li Ma, Martin Bizet, Christelle Soares Da Costa, Frederic Murisier, Eric James de Bony, Meng-Ke Wang, Akihide Yoshimi, Kuan-Ting Lin, Kristin M. Riching, Xing Wang, John I. Beckman, Shailee Arya, Nathalie Droin, Emilie Calonne, Bouchra Hassabi, Qing-Yang Zhang, Ang Li, Pascale Putmans, Lionel Malbec, Celine Hubert, Jie Lan, Frederique Mies, Ying Yang, Eric Solary, Danette L. Daniels, Yogesh K. Gupta, Rachel Deplus, Omar Abdel-Wahab, Yun-Gui Yang, Francois Fuks
  • Corresponding author: Yun-Gui Yang (Beijing Institute of Genomics, China); Francois Fuks (Universite libre de Bruxelles, Belgium)
  • 雑誌: Molecular Cell
  • 発行年: 2023
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 38065062

背景

5-メチルシトシン (m5C) は、tRNA、rRNA、非コードRNA (ncRNA)、mRNAに存在するRNA修飾である。m5Cメチル基転移酵素 (writer) としてNSUN2、NSUN6が、消去酵素 (eraser) としてTET2、ALKBH1が同定されている。mRNA上のm5C修飾を直接認識するリーダータンパク質としては、ALYREF、YBX1、YBX2、YTHDF2、RAD52、FMRPが知られていたが、新規リーダーの探索は限定的であった (Yang et al. 2017)。一方、スプライシング因子SRSF2は造血系の機能維持に必須であり、骨髄異形成症候群 (MDS) および急性骨髄性白血病 (AML) では約15〜30%、慢性骨髄単球性白血病 (CMML) では約47%の患者にSRSF2変異が検出される (Yoshida et al. 2011)。最頻変異はプロリン95番→ヒスチジン (P95H) であり、エキソンスプライシングエンハンサー (ESE) モチーフへの結合選択性変化 (GGNG→CCNG優位) によりスプライシングパターンが変化することが知られていた (Kim et al. 2015)。しかし、SRSF2の変異がなぜそこまで広範なスプライシング異常をもたらすのかの完全な分子機構は未解明であり、その病原性におけるm5C修飾の役割については不明な点が多かった。このメカニズムを解明するための研究は不足している。

目的

SRSF2がmRNAのm5C修飾を読み取るリーダータンパク質として機能するかを検証し、MDS/白血病で頻発するSRSF2 P95H変異がm5C認識にどのような影響を与えるか、またその臨床的意義を解明すること。

結果

SRSF2のm5Cリーダー機能の発見: RNAプルダウンと質量分析の結果、SRSF2がビオチン化m5C修飾オリゴに対して唯一有意な結合選択性を示した (Figure 1A)。他のSRタンパク質 (SRSF1、SRSF3など) は同一実験条件でm5C選択性を示さなかった。in vitroプルダウン、ビオチンプルダウン、NanoBRETアッセイの複数のアプローチが一致して、SRSF2のm5C修飾RNAへの選択的結合を証明した。NanoBRET競合実験では、SRSF2のm5C RNAへのKi,app = 84.39 nMに対し、非修飾RNAへのKi,app = 322.1 nMであり、m5Cが約4倍の親和性向上をもたらした (Figure 1G)。SRSF2-N末端断片 (RNA認識モチーフ (RRM) +リンカー領域含む) がm5C結合を担い、C末端断片は有意なBRETシグナルを示さなかった。この結果は、SRSF2がm5Cを特異的に認識するリーダータンパク質であることを強く示唆する。

ゲノムワイドなSRSF2結合とm5Cの共局在: PAR-CLIP-seqにより、SRSF2は主にエクソン領域に結合し、特にコード配列 (CDS) 領域 (73%) に濃縮されていることが判明した (Figure 2B)。m5C MeRIP-seqで同定されたm5Cピークは翻訳開始点の直下流CDS領域に最も多く分布し、SRSF2結合部位とm5Cピーク中央が有意に頻繁に近接していた (Figure 2H)。m5C含有転写産物のうち約40%がSRSF2標的であり、高ストイキオメトリーのm5Cサイトで最もSRSF2標的との重複率が高かった (Figure S2N, S2O)。このデータは、SRSF2がm5C修飾されたmRNAにゲノムワイドに結合することを示している。

NSUN2欠損によるSRSF2結合パターン変化とスプライシング異常: NSUN2 KDによりmRNA m5Cレベルが有意に減少 (質量分析、ドットブロット、MeRIP-seq) し、SRSF2の総RNA結合量が有意に低下した (Figure 3A, 3B)。PAR-CLIP-seqでNSUN2 KD後に3,426のSRSF2結合部位が変化し、そのうち約65%が結合消失、約35%が結合増加であった (Figure 3C)。結合消失部位ではC含有モチーフ (GCAG) が優位であった一方、結合増加部位では非Cモチーフ (GGGG) が優位であり、NSUN2低下によりSRSF2が非C含有結合部位へリダイレクトされることが示唆された。RNA-seq解析では、NSUN2 KDとSRSF2 KDの間で差次的スプライシング (DS) イベントに強い正の相関 (73.3%の重複) が認められた (Figure 3G)。この結果は、NSUN2によるm5C修飾がSRSF2を介したスプライシング制御に影響を与えることを示している。

SRSF2 P95H変異によるm5C認識障害と白血病関連転写産物への影響: SRSF2 P95H変異型タンパク質はm5C含有RNAへの結合親和性が野生型と比較して有意に低下した (Figure 4B)。NanoBRETアッセイでは、SRSF2 P95HのKi,appは43.4 nMであり、野生型SRSF2のKi,app 22.9 nMと比較して約2倍の低下を示した。K562白血病細胞 (n=2回の実験) での内在性SRSF2発現下のPAR-CLIP-seqで、P95H変異はNSUN2 KDと類似したSRSF2結合変化パターンを示した。P95H変異体は白血病関連多数の転写産物への結合が減少しており、スプライシングパターンの変化 (エクソンスキッピング、イントロン保持) がRNA-seqで検出された。特に、EZH2、BRD4、SF3B1、TPM3などの白血病関連遺伝子において、NSUN2 KDとSRSF2 P95H変異の両方でSRSF2結合の減少が観察された (Figure 5B, 5C)。これらの遺伝子におけるSRSF2結合の減少は、白血病発症におけるm5C認識の役割を示唆する。

臨床コホートでの予後不良との関連: CMML患者コホート (n=8) でのRNA-BisSeq解析では、NSUN2低発現患者でmRNA m5Cの全般的な低メチル化が観察された (Figure 6D)。AML患者コホート (n=246) の解析で、NSUN2低発現かつSRSF2 P95H変異陽性の患者群では全生存期間が有意に短縮し (p = 0.00105)、この二重異常が相乗的な予後不良バイオマーカーとなることが示された (Figure 7B)。この群では、白血病関連癌遺伝子であるORM1とLCN2の有意な高発現 (ORM1: p = 1.4e-5、LCN2: p = 0.0021) が認められた (Figure 7F)。別のAMLコホート (n=451) でも同様の結果が確認された (Figure 7D)。

考察/結論

本研究はSRSF2が従来のスプライシング因子としての機能に加えて、mRNA上のm5C修飾を直接認識するエピトランスクリプトームリーダーとして機能するという全く新規な機能軸を発見した。SRSF2-m5C-NSUN2軸という概念は「m5C修飾の書き込み (NSUN2) → m5C読み取り (SRSF2) → 正常スプライシング制御」という統合的エピトランスクリプトーム-スプライシング制御回路を本研究で初めて提示する。MDS/白血病で高頻度に検出されるP95H変異がm5C認識を障害することで、ESEモチーフ選択性の変化 (GGNG→CCNG) という既知の機序に加えてm5C認識障害という新たな病原性機序が加わることが示された。この知見は、先行研究と異なり、SRSF2変異がもたらす広範なスプライシング異常の分子機構をより包括的に説明する。NanoBRETによる生細胞内リアルタイム定量と構造的な結合ドメイン同定、臨床コホートでの予後データの統合という多角的アプローチの強みは、この機能軸の病態生理的重要性を強固に裏付ける。NSUN2発現レベルとSRSF2 P95H変異状態の組み合わせによる白血病リスク層別化は、臨床応用可能な予後バイオマーカーとしての潜在的価値を持つ。この組み合わせは、AML患者において全生存期間の有意な短縮と、ORM1やLCN2といった白血病関連癌遺伝子の高発現と関連しており、臨床的意義は大きい。m5C修飾-スプライシング因子連関という概念はEVカーゴ選択のRNA修飾依存性という観点でも広く応用しうる。残された課題として、in vivoにおけるSRSF2とm5C修飾RNAの直接結合の検証や、NSUN2低発現とSRSF2 P95H変異の組み合わせが癌遺伝子発現を増加させる詳細なメカニズムの解明が挙げられる。今後の検討では、これらのメカニズムを標的とした新たな治療戦略の開発が期待される。

方法

RNAプルダウンと質量分析によりm5C結合タンパク質を探索し、SRSF2の選択的結合をin vitroプルダウン、ビオチンプルダウン、ウェスタンブロットで確認した。NanoBRET (nanoluciferase bioluminescence resonance energy transfer) アッセイで生細胞内のSRSF2-m5C相互作用を定量的に解析し、解離定数 (Ki,app) を算出した。SRSF2のN末端断片・C末端断片を用いてm5C認識ドメインを同定した。HeLa細胞でphotoactivatable ribonucleoside-enhanced crosslinking and immunoprecipitation sequencing (PAR-CLIP-seq) によりゲノムワイドなSRSF2結合部位を同定した (n = 10,928結合部位、6,844転写産物)。m5C MeRIP-seqでmRNA m5C景観を解析した (n = 6,913 m5Cピーク、4,684転写産物)。NSUN2 KD (knockdown) およびNSUN2 KO (knockout) HeLa細胞でのSRSF2結合変化をPAR-CLIP-seqおよびRNAビオチン標識アッセイで解析した。K562白血病細胞およびCMML患者由来細胞を用いて、SRSF2 P95H変異のm5C結合、RNA結合、スプライシングへの影響をRNA-seq、PAR-CLIP-seqで網羅的に評価した。CMML患者コホートでのm5C RNA-BisSeq (Bisulfite sequencing) 解析とAML患者コホートでのNSUN2発現、SRSF2変異状態と臨床転帰の相関解析を実施した。RNA-seqデータの前処理には Bolger et al. Bioinformatics 2014 のTrimmomatic、アライメントには Dobin et al. Bioinformatics 2013 のSTAR、遺伝子発現定量には Anders et al. Bioinformatics 2015 のHTSeqが用いられた。ゲノムアライメントには Langmead et al. NatMethods 2012Langmead et al. GenomeBiol 2009 が活用された。機能濃縮解析には Huang et al. NatProtoc 2009 のDAVID、遺伝子セット濃縮解析には Subramanian et al. ProcNatlAcadSciUSA 2005 のGSEAが使用された。統計解析には、pairedまたはunpaired Student’s t-test、extra sum-of-squares F test、two-tailed F test、Wilcoxon test、log-rank test、hypergeometric testが用いられた。