- 著者: X. Cahu, C. Bodet-Milin, E. Brissot, H. Maisonneuve, R. Houot, N. Morineau, P. Solal-Celigny, P. Godmer, T. Gastinne, P. Moreau, A. Moreau, T. Lamy, F. Kraber-Bodere, S. Le Gouill
- Corresponding author: S. Le Gouill (Centre Hospitalier Universitaire Nantes, France)
- 雑誌: Annals of Oncology
- 発行年: 2011
- Epub日: N/A
- Article種別: Original Article
- PMID: 20739714
背景
成熟T細胞・NK細胞 (T/NK) リンパ腫は、稀な疾患であり、その病態は多様で予後不良な疾患群として知られている。特にALK陽性未分化大細胞リンパ腫 (ALCL) を除くと、標準的な治療法としてシクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾンを組み合わせたCHOP系化学療法が広く用いられているが、その治療成績は依然として満足できるものではなく、患者の予後は不良なままである Vose et al. J Clin Oncol 2008。このため、T/NKリンパ腫における新たな治療戦略や、治療効果を正確に評価するツールの開発が喫緊の課題となっている。
近年、18F-フルオロデオキシグルコース陽電子放出断層撮影 (FDG-PET) は、ホジキンリンパ腫 (HL) やびまん性大細胞型B細胞リンパ腫 (DLBCL) において、治療効果判定の効率的なツールとしてその有用性が確立されてきた Juweid et al. J Clin Oncol 2007。特に、治療中に行われるinterim FDG-PETの結果は、HL患者の予後を予測する上で重要な指標となることが示されている Terasawa et al. J Clin Oncol 2009。また、治療後のFDG-PETは、従来のCTスキャンによる評価を補完し、より精密な病変評価を可能にすることが報告されている Juweid et al. J Clin Oncol 2007。
T/NKリンパ腫においても、FDG-PETが初期病期診断において高い感度と特異度を示すことが複数の研究で示唆されている Suh et al. J Nucl Med 2008、Khong et al. Ann Hematol 2008、Kako et al. Ann Oncol 2007。しかし、HLやDLBCLとは異なり、T/NKリンパ腫における治療中 (interim) および治療後FDG-PETの予後予測価値については、これまで十分に確立されておらず、その臨床的意義は未解明な点が多かった。特に、代謝学的完全奏効 (metabolic complete response) が、長期的な無増悪生存期間 (PFS) の改善にどの程度寄与するのか、また、FDG-PETの陰性予測値や陽性予測値がどの程度信頼できるのかについては、データが不足していた。
本研究は、この知識ギャップを埋めることを目的として、T/NKリンパ腫患者における治療前、治療中、および治療後FDG-PETの予後予測価値を後方視的に詳細に検討した。特に、ALK陽性ALCLとALK陰性T/NKリンパ腫という異なる病理学的サブタイプに焦点を当て、それぞれのFDG-PETの役割を評価することで、T/NKリンパ腫におけるFDG-PETの最適な活用法を模索した。
目的
本研究の目的は、成熟T細胞・NK細胞 (T/NK) リンパ腫患者において、治療前、治療中 (interim)、および治療後に行われる18F-フルオロデオキシグルコース陽電子放出断層撮影 (FDG-PET) の予後予測価値を後方視的に評価することである。具体的には、以下の点を明らかにすることを目指した。
- 診断時FDG-PETがT/NKリンパ腫の病期決定において、従来のCTスキャンと比較してどの程度の付加価値を持つか。
- 治療中 (interim) FDG-PETの結果が、T/NKリンパ腫、特にALK陰性T/NKリンパ腫患者の無増悪生存期間 (PFS) および全生存期間 (OS) を予測する上で有用であるか。
- 治療後FDG-PETの結果が、T/NKリンパ腫、特にALK陰性T/NKリンパ腫患者のPFSおよびOSを予測する上で有用であるか。
- FDG-PETの予後予測価値が、ALK陽性ALCLとALK陰性T/NKリンパ腫という異なる病理学的サブタイプ間でどのように異なるか。
- International Harmonization Project (IHP) 基準と3点スコア法という異なるFDG-PET解釈基準が、予後予測においてどの程度の整合性を示すか。
- 末梢性T細胞リンパ腫の簡易2群予後指標 (sPIT) とFDG-PETの予後予測能を比較し、T/NKリンパ腫におけるより適切な予後因子を特定する。
これらの検討を通じて、T/NKリンパ腫におけるFDG-PETの臨床的有用性を明確にし、治療戦略の最適化に資する知見を提供することを目指した。
結果
患者背景と全体生存・PFS: 本研究には合計54例のT/NKリンパ腫患者が登録された。内訳は、ALK陽性ALCLが10例、ALK陰性T/NKリンパ腫が44例であった。ALK陰性T/NKリンパ腫には、ALK陰性ALCL 14例、末梢性T細胞リンパ腫-非特異型 (PTCL-U) などが含まれた。患者の中央値年齢は51歳 (範囲17〜77歳) であり、男性が33例 (61%) を占めた。治療レジメンは多様であったが、96%の患者がCHOP系誘導療法を受けた。一次治療として、自己骨髄移植 (ABMT) が14例、同種造血幹細胞移植 (allo-SCT) が10例に実施された。追跡期間中央値は24ヶ月 (範囲6〜74ヶ月) であった。全患者集団における4年OS率は54% (95% CI 39-74%)、4年PFS率は50% (95% CI 37-68%) であった。ALK陽性ALCL患者は、4年OS 89%、4年PFS 80%と良好な予後を示した。これに対し、ALK陰性T/NKリンパ腫患者では、4年OS 47%、4年PFS 44%と有意に不良な予後が観察された (Figure 1A)。
診断時FDG-PETの病期決定における有用性: 診断時FDG-PETは40例 (74%) に施行され、全例で異常なFDG集積が認められた。これはT/NKリンパ腫が高いFDGavidityを示すことを裏付けている。診断時にCTスキャンとFDG-PETの両方が施行された35例中、28例 (80%) でAnn Arbor病期が一致した。しかし、7例 (20%) においては、FDG-PETがCTスキャンでは検出されなかった病変 (頸部、胸部、腹部、骨髄など) を発見し、Ann Arbor病期を上方修正した。この結果は、診断時FDG-PETがT/NKリンパ腫の病期決定において付加価値を有することを示唆する (Table 2)。組織学的サブグループ別にみると、ALK陽性ALCLの7例中4例、ALK陰性ALCLの10例中1例、PTCL-Uの10例中1例、鼻型NK/T細胞リンパ腫の1例で病期の上方修正が認められた。
Interim FDG-PETの予後予測価値 (限定的): 治療中 (3〜4コース後) のinterim FDG-PETは44例 (81%) に施行された。3点スコア法による評価では、interim FDG-PET陰性群 (n=25) の4年PFSは69%であったのに対し、陽性群 (n=19) では49%であり、統計的有意差は認められなかった (p=0.10)。IHP基準を用いた場合も同様の結果であった (p=0.21)。ALK陰性T/NKリンパ腫 (n=35) に限定して解析すると、interim FDG-PET陰性例 (n=19) の4年PFSは59%であったが、陽性例 (n=16) の4年PFSは46%であり、ここでも有意差は認められなかった (p=0.28) (Figure 1B)。さらに、interim PET陰性後の4年累積再発率は41%と高率であり、陰性予測値はわずか58%に過ぎなかった。これは、interim FDG-PET陰性であっても、ALK陰性T/NKリンパ腫では再発リスクが高いことを示している。interim FDG-PETの結果に基づいて治療方針が変更された患者が6例存在したが、これらの患者を除外した解析でも同様の結果が得られた。
治療後FDG-PETの陰性予測値の低さ: 治療後FDG-PETは31例 (57%) に実施された。治療後FDG-PET陰性群 (n=19) と陽性群 (n=12) の間で、4年PFSに統計的有意差は認められなかった (51% vs 67%, p=0.96) (Figure 1D)。ALK陽性ALCLでは、治療後PET陰性の陰性予測値は83%と比較的良好であったが、ALK陰性T/NKリンパ腫では、陰性PET後の4年累積再発率が53%に達し、陰性予測値はわずか61%であった (Figure 1C)。また、治療後PETの陽性予測値はALK陰性T/NKリンパ腫で33%と低く、偽陽性の多さが課題として浮上した。陽性病変の生検が1例で実施され、腫瘍細胞を伴わない炎症性組織が確認された。この結果は、ALK陰性T/NKリンパ腫において、治療後FDG-PETの陽性所見が必ずしも残存腫瘍を意味しないことを示唆する。
sPITの優位性: FDG-PETがALK陰性T/NKリンパ腫において有意な予後予測能を示さなかったのに対し、sPIT (末梢性T細胞リンパ腫の簡易2群予後指標) は、全患者集団およびALK陰性T/NKリンパ腫のいずれにおいてもPFSを有意に層別化することができた。全患者集団では、sPIT Group 1 (有害因子0〜1個) の4年PFSは75%であったのに対し、Group 2 (有害因子2〜4個) では33%と有意差を認めた (HR 0.38, 95% CI 0.20-0.72, p=0.004) (Figure 2A)。ALK陰性T/NKリンパ腫においても、sPIT Group 1の4年PFSは68% vs Group 2 30%と有意差が確認された (HR 0.40, 95% CI 0.19-0.85, p=0.02) (Figure 2B)。この結果は、FDG-PETよりもsPITがT/NKリンパ腫におけるより重要な予後因子であることを示唆している。
考察/結論
本研究は、成熟T/NKリンパ腫におけるFDG-PETの診断時、治療中、および治療後の予後予測価値を評価した多施設共同後方視的検討である。
先行研究との違い: ホジキンリンパ腫やびまん性大細胞型B細胞リンパ腫では、FDG-PETが治療効果判定や予後予測に極めて有用であることが確立されている Juweid et al. J Clin Oncol 2007。しかし、本研究の結果は、ALK陰性T/NKリンパ腫において、治療中および治療後FDG-PETが陰性であっても、必ずしも長期的な無増悪生存期間の改善に繋がらないという点で、これらの先行研究とは対照的であった。特に、ALK陰性T/NKリンパ腫では、代謝学的完全奏効を達成しても高率な再発 (治療後PET陰性後の4年累積再発率53%) が認められ、代謝学的完全奏効を治療目標とすることの妥当性に疑問を呈する。
新規性: 本研究で初めて、ALK陰性T/NKリンパ腫において、interim FDG-PETおよび治療後FDG-PETの陰性予測値が低く、代謝学的完全奏効が必ずしも長期PFSに結びつかないことを明確に示した。これは、T/NKリンパ腫の生物学的特性が、他のリンパ腫とは異なることを示唆する新規の知見である。また、治療後FDG-PETの陽性予測値が低い (33%) ことも明らかとなり、偽陽性病変の多さが課題として浮上した。
臨床応用: 診断時FDG-PETは、全例で異常集積を示し、20%の症例でAnn Arbor病期を上方修正したことから、病期決定における付加価値は高い。この知見は、T/NKリンパ腫の初期診断におけるFDG-PETの臨床応用を支持する。しかし、治療中および治療後のFDG-PETの予後予測能が限定的であるという結果は、T/NKリンパ腫の治療戦略において、FDG-PET単独での治療変更や奏効評価の判断には慎重な姿勢が必要であることを示唆する。一方で、sPITは全患者集団およびALK陰性T/NKリンパ腫においてPFSを有意に層別化しており、FDG-PET以上に重要な予後因子となりうる。臨床現場では、FDG-PETの結果とsPITなどの臨床的予後因子を総合的に評価することが重要である。
残された課題: 本研究にはいくつかのlimitationが存在する。第一に、症例数が54例と比較的少ないため、統計的検出力が限定的であった可能性がある。特に、ALK陽性ALCLのような稀なサブタイプでは、さらに大規模なコホートでの検証が今後の課題である。第二に、治療レジメンが多様であり、均一な治療プロトコル下での評価ではなかったため、治療効果とFDG-PET結果の直接的な関連性を評価することが困難であった。第三に、ベースラインFDG-PETが全例に施行されていなかった (77%) ことも、interimおよび治療後PETの解釈に影響を与えた可能性がある。さらに、FDG-PETの解釈基準 (IHP基準と3点スコア法) 間で不一致が見られたことは、T/NKリンパ腫に特化した標準化されたFDG-PET解釈基準の必要性を示唆する。今後は、定量的評価法 (例: SUVmax) の導入や、より大規模な前向き研究による検証が求められる。
方法
本研究は、GOELAMS (Groupe Ouest-Est des Leucémies Aiguës et autres Maladies du Sang) グループに属するフランス国内の5施設において、2003年2月から2008年6月までの期間に組織学的に確認された非皮膚性成熟T/NK腫瘍患者を対象とした後方視的コホート研究である。対象患者は、治療前、治療中 (化学療法3〜4コース後)、および/または治療後にFDG-PET評価を受けていることが条件とされた。
患者選択とデータ収集: 合計54例の患者が解析対象となった。患者の臨床データ、病理学的診断、治療レジメン、および転帰に関する情報は、各施設の医療記録から収集された。病理学的診断は、WHO分類第4版に基づいて行われた。国際予後指標 (IPI) および末梢性T細胞リンパ腫の簡易2群予後指標 (sPIT) は、標準的な基準に従って算出された Gallamini et al. Blood 2004。
FDG-PETおよびCT評価: FDG-PETは、診断時 (n=40)、治療中 (n=44)、および治療後 (n=31) に施行された。治療後FDG-PETは、すべての一次治療 (化学療法、放射線療法、自己骨髄移植 (ABMT)、同種造血幹細胞移植 (allo-SCT) など) 終了後、化学療法終了から少なくとも3週間、放射線療法終了から少なくとも8週間経過後に実施された。FDG-PETスキャンは、患者が少なくとも4時間絶食し、毛細血管血糖値が測定された後、7 MBq/kgのFDGを注入し、60〜80分後に取得された。画像は、各施設でGE HealthcareまたはPhilips HealthcareのPET/CT装置を用いて取得された。
FDG-PETの解釈: 診断時FDG-PETは、リンパ腫に関連する異常なFDG集積の存在をもって陽性と定義された。治療中および治療後FDG-PETは、International Harmonization Project (IHP) 基準 Juweid et al. J Clin Oncol 2007 および、より厳格でない3点スコア法 Haioun et al. Blood 2005 の2通りの方法で、独立した核医学医によって盲検下で解釈された。3点スコア法では、FDG集積を低、中、高の3段階で評価し、病理学的集積がないか、1つのグレード1病変のみが報告された場合に陰性と判断された。少なくとも1つのグレード2病変または2つ以上のグレード1病変が報告された場合は陽性と分類された。ベースラインFDG-PETが利用可能な場合 (interim PETの77%、post-therapy PETの71%) は、その結果も参照して解釈が行われた。
統計解析: 本研究は後方視的コホート研究 (retrospective cohort study) であり、主要評価項目はPFSおよびOSであった。全生存期間 (OS) および無増悪生存期間 (PFS) は、診断日を起点としてKaplan-Meier法を用いて評価された。サブグループ間の比較にはログランク検定が用いられた。陰性FDG-PETからの累積再発率は、陰性FDG-PETを達成した時点から評価された。すべてのデータ解析はRパッケージを用いて行われた。