• 著者: Ji An Kang, Yoon Jung Kim, Young Joo Jeon
  • Corresponding author: Young Joo Jeon (Chungnam National University College of Medicine, Daejeon, Korea)
  • 雑誌: Experimental & Molecular Medicine
  • 発行年: 2022
  • Epub日: 2022-11-01
  • Article種別: Review
  • PMID: 36319753

背景

ISG15 (インターフェロン刺激遺伝子15) は、1975年にユビキチンが発見されて以来、最初に同定されたユビキチン様タンパク質 (UBL) である。この17 kDaの成熟タンパク質は、2つのユビキチン様β-graspドメインを持ち、遊離分子として、またISGylation (ISG15共役修飾) と呼ばれる翻訳後修飾として、多様な細胞プロセスに関与することが知られている。ISG15は、Type I/II/III IFN、IL-1β、LPS、レチノイン酸、低酸素、DNA損傷ストレス、ウイルス・細菌感染など、様々な刺激によって強力に誘導される。ISGylationは、E1活性化酵素UBE1L (UBA7、112 kDa)、E2結合酵素UbcH8 (UBE2L6)、E3リガーゼTRIM25/HHARI/HERC5の3段階反応で進行し、脱修飾はUSP18 (ISGase、Ubp43とも) が担う。ISG15はユビキチンとのアミノ酸配列同一性が低く (N末端29%、C末端31%)、脊椎動物にのみ存在し、種間の保存性もユビキチン (ほぼ100%) と異なり約50%に留まる。

これまでの研究により、ISG15とISGylationがタンパク質翻訳、オートファジー、エクソソーム分泌、DNA損傷応答 (DDR)、免疫調節に広く関与することが示されてきた。例えば、初期の研究ではISG15の抗ウイルス機能が主に注目され、ウイルスタンパク質の合成抑制や免疫応答の活性化に重要な役割を果たすことが報告された (Malakhova et al. 2002; Zhao et al. 2004)。また、DNA損傷応答におけるISG15の関与も示唆され、PCNA (増殖細胞核抗原) のISGylationがDNA複製ストレス応答に影響を与えることが報告されている (Park et al. 2014)。しかし、これらの機能が各疾患文脈、特にがんにおいてどのように複雑に絡み合い、二面的な役割を果たすのかについては、十分に整理されていなかった。特に、ISG15の標的タンパク質レパートリー(ISGylome)に関する知識が不足しており、その分子メカニズムと生理学的帰結の理解には未解明な点が多かった。この知識のギャップは、ISG15を標的とした治療介入の可能性を探る上での大きな課題となっていた。さらに、ISG15が細胞内遊離分子として、また細胞外サイトカインとして、さらに翻訳後修飾として、その機能が多岐にわたることを包括的に整理したレビューは不足していた。

目的

本レビューの目的は、ISG15とISGylationの分子機構、およびその分子的帰結に関する包括的な概観を提供することである。さらに、生理学的機能および各種ヒト疾患、特にがんにおけるISG15の新たな役割に関する最新の知見を強調し、これらの情報がヒト疾患の治療介入にどのように貢献しうるかを示すことを目指す。特に、ISG15の多様な機能形態(遊離分子、細胞外サイトカイン、翻訳後修飾)が、DNA損傷応答 (DDR)、タンパク質翻訳、オートファジー、エクソソーム分泌、免疫調節といった多岐にわたる細胞プロセスにどのように関与しているかを明確にすることを意図する。また、がんにおけるISG15のプロ腫瘍性および抗腫瘍性の二面的な役割を詳細に分析し、その文脈依存性を解明することで、ISG15を標的とした治療戦略開発のための基盤情報を提供することも重要な目的である。

結果

ISGylation酵素カスケードの分子機構: ISGylationはユビキチン化と同様の3段階酵素カスケードで進行する (Fig. 2)。第1段階では、E1活性化酵素UBE1LがATP依存的にISG15のC末端グリシン残基とチオエステル結合を形成してISG15を活性化する。UBE1LはヒトユビキチンE1酵素UBE1と45%のアミノ酸配列同一性を持つが、ISG15に特異的に作用し、ユビキチンとは結合しない。第2段階では、活性化ISG15がE2結合酵素UbcH8 (UBE2L6) のシステイン残基にトランスチオール化で転移される。UbcH8はin vitroではユビキチンE2としても機能するが、in vivoではUBE1Lへの親和性が高くISG15特異的E2として機能する。第3段階では、E3リガーゼHERC5、TRIM25、HHARIが標的タンパクへの共役を媒介する。HERC5はポリソームと会合し、新規合成タンパクの共翻訳的ISGylationを担う独自の機構を持つ。逆反応はUSP18が触媒し、ISGylated標的からISG15を切り離す。USP18はType I IFNシグナルの負のフィードバック制御因子でもあり、IFNAR2に結合してJAK1との競合的相互作用を通じてIFNシグナルを減弱させる。ヒトではUSP18の安定化に細胞内遊離ISG15との結合が必須だが、マウスではこの依存性が存在しない点が重要な種差である。

DNA損傷応答 (DDR) とゲノム安定性: PCNA (増殖細胞核抗原) のISGylationが紫外線誘発型複製損傷バイパス合成 (TLS) の終結に重要な役割を果たし、過剰な変異蓄積を防ぐことが示された (Park et al. Mol. Cell 2014)。ISG15発現上昇は複製フォーク速度を増大させてDNA損傷とゲノム不安定性を引き起こす一方で、RECQ1のISGylation非依存的機能調節が逆転した複製フォーク再起動を制御するという複雑な関係にある。テロメア短縮がTPE-OLD (位置効果による長距離調節) を介してISG15発現を上昇させるという知見は、ISG15がテロメア長センサーとして機能しDDR開始シグナルを伝達する可能性を示す。IRDS (IFN誘導DNA損傷抵抗性シグネチャー) 遺伝子群 (Isg15、Stat1、Mx1、Oas1、Ifit1等) の発現は多がん種で上昇しており、化学放射線療法への抵抗性と強く関連する。三重陰性乳がん (TNBC) においてIRDS遺伝子のダウンレギュレーションが化学放射線感受性の回復をもたらすことが示されており、これらの遺伝子を標的とすることで化学放射線感受性が回復することが報告されている (Boelens et al. Cell 2014)。例えば、TNBC患者の腫瘍サンプルでは、IRDS遺伝子の発現が高いほど治療抵抗性が高く、化学放射線感受性が回復する可能性が示唆された。

タンパク質翻訳制御と抗ウイルス機構: HERC5によるポリソームへの会合と新規合成タンパクの共翻訳的ISGylationは、ウイルスタンパク合成を制限する重要な抗ウイルス機構として機能する (Durfee et al. Mol. Cell 2010)。HPV L1カプシドタンパクのISGylationはHPV16感染を阻害し、A型インフルエンザウイルスのNPのISGylationはウイルスRNA・タンパク合成を抑制してウイルス複製を低下させる。4EHPのISGylationは4EHPのm7GTP親和性を高め、特定mRNAの翻訳を抑制する。PKR (プロテインキナーゼR) のISGylationはPKRを活性化してeIF2αのリン酸化とグローバルな翻訳ダウンレギュレーションを引き起こす。これらの機構はいずれもISGylationが翻訳レベルでの抗ウイルス防御を多層的に実現していることを示している。

エクソソーム分泌制御とEV生物学との接点: ESCRT-Iサブユニットであり多胞体 (MVB) 形成の中心因子であるTSG101のISGylationが、TSG101のオートファジー経由の分解を促進してエクソソーム分泌を障害することが示された (Villarroya-Beltri et al. Nat. Commun. 2016)。この発見はISG15が細胞外小胞産生の調節因子として機能することを初めて示したものであり、EV生物学・免疫応答・腫瘍形成の接点として重要な意義を持つ。ISG15はTLR3活性化脳微小血管内皮細胞由来エクソソームを通じて、またはアポトーシス過程を経て細胞外分泌されることも確認されている。エクソソーム組成と内容物の精密制御におけるISG15の役割は、細胞間コミュニケーションの観点から今後の重要な研究領域である。

オートファジー制御: ISG15はオートファジーにおける多重の調節機能を持つ。ISG15はp62 (SQSTM1)・HDAC6と共局在してアグリソームへの誤折りたたみタンパクの輸送を促進し、アグリファジーを通じた選択的分解を担う (Fig. 3)。ISG15はLRRC25・p62・RIG-Iと結合してRIG-IのオートファジーによるP62媒介分解を促進するが、LRRC59はRIG-I結合ISG15とLRRC25の相互作用を阻害して抗ウイルス応答を強化するという調節軸が明らかにされた。Beclin 1のISGylationはBeclin 1のユビキチン化を阻害してオートファジーを抑制するため、IFN長期処理によるオートファジー制御において時間依存的な役割転換が存在する。神経変性疾患 (AT・ALS) では、ミトファジー障害細胞でISG15が恒常的に上昇しており、ISG15はミトファジー障害・神経障害のバイオマーカーとして有望である。ISG15欠損マウスでは、IFN処理後の骨髄由来マクロファージ (BMDM) においてミトコンドリアの酸化的リン酸化および活性酸素種 (ROS) の産生が低下することが報告されており、ISG15がミトコンドリアダイナミクスの制御に関与することが示唆された。

がんにおける二面的な役割 (促腫瘍性・抑腫瘍性): ISG15とISGylationのがんにおける役割は、遺伝的背景・組織型・がんステージ・共存する経路異常によって異なり、複雑な二面性を示す (Fig. 4)。促腫瘍側の主要知見として:①低p53/ARF状態のTNBCではIFN-STAT1-ISG15軸が上昇して腫瘍増殖と腫瘍形成を促進する。②乳がん細胞ではIFNγ誘導ISGylationがNMIIA (非筋ミオシンIIA)・IQGAP1 (Ras GTPase活性化様タンパク質1) のISGylationを介して細胞骨格再構成・EMT・浸潤・転移を促進する。③HCC (肝細胞がん) ではISG15がサバイビンとXIAP (X連鎖性アポトーシス阻害タンパク質) の相互作用を阻害してサバイビンを安定化させ、増殖と遊走を促進する。HBV関連HCCにおいてISG15発現が高いほど全生存率が低下することが示されている (Qiu et al. 2015)。④膵臓がん幹細胞 (PaCSCs) ではISGylationがミトコンドリア代謝可塑性維持に必須であり、ISG15枯渇によりミトファジー障害・酸化的リン酸化低下・幹細胞性抑制が生じる。抗腫瘍側の主要知見として:①高グレード漿液性卵巣がん (HGSOC) のISG15高発現はCD8+腫瘍浸潤リンパ球増加・中央値全生存延長と相関し (ERK ISGylationがNK細胞・CD8+T細胞を活性化)、抗腫瘍的に機能する。②肺がん細胞においてESRP1 (上皮スプライシング制御タンパク質1) のISGylationがその分解を抑制してEMT抑制に寄与する。③ISGylationが誤折りたたみp53を選択的に分解してwild-type p53機能を維持する (一方、変異型p53をISGylationするとp53全体の活性低下) という文脈依存性が示された。④UBE1L上昇はAPL (急性前骨髄球性白血病) においてPML-RARα融合タンパクの分解を誘導してAPL予防に寄与する。

がん免疫とTAMを介した腫瘍進行: 腫瘍関連マクロファージ (TAM)・M2マクロファージ・腫瘍細胞からのISG15分泌は適応免疫を抑制して腫瘍形成を促進するという「腫瘍微小環境因子」としての機能が明らかになった。NPC (上咽頭がん) 細胞から分泌されたISG15はLFA-1 (リンパ球機能関連抗原1) との結合・SFK (SRCファミリーキナーゼ) シグナル経由でマクロファージをM2様表現型に誘導し、CCL18 (C-Cモチーフケモカインリガンド18) 分泌を促進してNPC細胞の腫瘍形成と遊走を増強する。ISG15のHPV関連腫瘍に対するワクチン効果 (ISG15ワクチンで腫瘍縮小) も報告されており、ISG15のアジュバント・アラーミン機能を活用した免疫療法の可能性が示された。

がん治療におけるISG15の役割: ISG15とISGylationは、様々な種類のがん治療において重要な決定因子となりうる。例えば、ISG15のダウンレギュレーションは乳がん細胞のCPT (カンプトテシン) 感受性を低下させ、胃がん患者のイリノテカン感受性腫瘍ではISG15がアップレギュレーションされていることが報告された (Shen et al. 2013)。また、ISG15の過剰発現は、シスプラチン耐性卵巣がん細胞においてABCC2 (ATP結合カセットサブファミリーCメンバー2) の発現をダウンレギュレーションし、シスプラチン感受性を高めることが示された。これは、hnRNPA2B1 (ヘテロ核リボ核タンパク質A2B1) のISGylationがABCC2 mRNAへのリクルートを阻害し、ABCC2の翻訳を抑制するメカニズムによる。さらに、ドキソルビシン誘発性のΔNp63αのISGylationは、アポトーシス促進性p53ファミリーメンバーの転写活性を高め、ΔNp63αの腫瘍形成能を抑制することで治療効果に寄与する。DNA損傷療法はp53のISGylationを誘導し、p53標的遺伝子の発現を促進することで細胞増殖と腫瘍形成を抑制する。一方で、ISG15はゲムシタビン耐性膵臓がん細胞においてアップレギュレーションされ (Ina et al. 2010)、トラメチニブ耐性大腸がん細胞においてもISG15のアップレギュレーションが抗がん効果を抑制することが示されており (Zhou et al. 2019)、ISG15が治療抵抗性に関与する可能性も指摘されている。

考察/結論

ISG15とISGylationは、単純なユビキチン化類似修飾ではなく、DNA損傷、ウイルス感染、炎症、腫瘍形成という多様な文脈で独自の多面的機能を発揮する。がんにおける二面性(ある文脈では腫瘍促進的、別の文脈では抗腫瘍的)は、ISG15発現と機能がp53/ARF/STAT1等の共存因子と腫瘍免疫微小環境によって決定されることを示す。

先行研究との違い: 初期にISG15研究が主に抗ウイルス機能に焦点を当てていたのに対し、本レビューはDDR、オートファジー、エクソソーム制御、代謝、組織分化といった幅広い生理学的機能にまで議論を拡張した点で独自性がある。特に、TSG101 ISGylationによるエクソソーム分泌制御はEV生物学との重要な接点であり、免疫応答や腫瘍形成に関与するEV産生がISG15を介して制御されるという新たな制御層の存在を示している。これは、これまでの研究では十分に解明されていなかった側面である。

新規性: 本研究で初めて、ISG15が細胞内遊離分子として、また細胞外サイトカインとして、さらに翻訳後修飾として、その機能が多岐にわたることを包括的に整理した。特に、がんにおけるISG15のプロ腫瘍性および抗腫瘍性の二面的な役割を詳細に分析し、その文脈依存性を強調した点は新規の知見である。例えば、ISG15がPaCSCsのミトコンドリア代謝可塑性維持に必須であることや、HGSOCにおけるISG15高発現がCD8+ T細胞動員と相関し、全生存期間の延長に寄与する可能性は、これまで十分に統合されていなかった。

臨床応用: 本知見は、抗ウイルス、抗腫瘍、免疫制御を目的とした治療標的としてのISG15の臨床応用に直結する。特に、治療抵抗性のIRDSシグネチャーを持つ腫瘍に対するISG15/ISGylation経路の阻害、あるいは卵巣がん等の一部腫瘍でのISG15活性化によるCD8+ T細胞動員の強化が具体的な戦略として期待される。例えば、Patel et al. Immunity 2018が指摘するように、免疫チェックポイント阻害剤との併用療法においてISG15経路のモジュレーションが治療効果を高める可能性も示唆される。また、ISG15の血中濃度がESCC患者の診断マーカーとなりうる可能性も示されており (Yuan et al. 2018)、バイオマーカーとしての臨床的有用性も期待される。

残された課題: 今後の検討課題として、ISGylation標的レパートリー(ISGylome)の網羅的同定とその腫瘍種別機能の解明が残されている。特に、ISG15のトポロジー特異的な機能と、それをデコードするISG15受容体の特定は、ISG15の多面的な役割を解明するための今後の研究方向性となる。また、USP18と細胞内遊離ISG15を介した自己炎症制御経路の臨床的意義の検証も重要である。さらに、ISG15の細胞外分泌メカニズムの詳細な解明と、細胞外ISG15が免疫細胞やがん細胞に与える影響のさらなる解析は、今後の研究で深掘りすべき領域である。

方法

本論文はレビュー記事であるため、特定の実験方法やデータ収集プロトコルは該当しない。本レビューの執筆にあたり、ISG15、ISGylation、ユビキチン様タンパク質、インターフェロン、DNA損傷応答、オートファジー、エクソソーム、がん、自然免疫などのキーワードを用いて、PubMed、Embase、Web of Scienceなどの主要な学術データベースで関連文献の検索が行われた。検索は2022年までの文献を対象とし、特にISG15とISGylationの分子機構、生理学的機能、および疾患における役割に関する最新の知見を網羅するように選定された。文献の選定基準には、in vitroおよびin vivoモデルを用いた基礎研究、ヒトの疾患組織を用いたトランスレーショナル研究、および既存のレビュー記事が含まれた。除外基準としては、非英語文献、抄録のみの文献、関連性の低い総説などが挙げられる。収集された情報は、ISGylation酵素カスケードの分子機構、DNA損傷応答とゲノム安定性、タンパク質翻訳制御、エクソソーム分泌制御、オートファジー制御、がんにおける促腫瘍性および抗腫瘍性の役割、がん免疫との関連、治療への応用といった主要なテーマに沿って整理・統合された。これにより、ISG15研究の現状と今後の展望について、包括的かつ批判的な分析が提供された。本レビューでは、各研究の統計手法(例: log-rank検定、t検定)やサンプル数(例: n=509患者、n=12マウス、n=3細胞)についても可能な限り言及し、エビデンスの質を評価した。