背景

肝細胞癌 (HCC) は、腫瘍切除や肝移植後の再発が主要な臨床課題であり、最大40%の再発率が報告されている (Llovet et al. 2021)。特に肝切除後の再発率は5年以内に最大70%に達する (Llovet et al. 2021)。再発の頻度が高いにもかかわらず、HCC再発の予防や治療に有効な標的は依然として不足している (Llovet et al. 2021)。免疫監視はがんの再発や転移を防ぐ上で極めて重要であるが、がん細胞はしばしば代謝経路を乗っ取り、免疫破壊を回避し、治療抵抗性を獲得することで再発を促進する (Sharma et al. 2017; Hegde and Chen 2020)。これは、肥満や高コレステロール血症に関連する代謝障害が腫瘍の進行と再発の主要な要因であるHCCにおいて特に顕著である (Rathmell 2021; Sung et al. 2019)。非アルコール性脂肪性肝疾患 (NAFLD) や肥満関連代謝機能障害は、肝がんの発生と再発の両方に重要な寄与因子として浮上している (Younossi et al. 2019; Estes et al. 2018)。免疫チェックポイント阻害剤 (ICI) などの免疫療法はがん治療に革命をもたらしたが (Pardoll 2012; Ribas and Wolchok 2018)、HCCにおけるその有効性は依然として限定的である (Llovet et al. 2022)。このため、より効果的な治療戦略を可能にするために、肝がん特異的な免疫回避と再発のドライバーおよびメカニズムを特定することが喫緊の課題である。これまでの研究では、コレステロール代謝ががん細胞の免疫回避に関与することが示唆されているが (Yang et al. 2016; Yan et al. 2023)、HCCにおけるコレステロールエステル化酵素SOAT1 (sterol O-acyltransferase 1) の具体的な役割、特に再発や免疫療法抵抗性における役割は未解明な点が多い。特に、免疫抑制環境下や肥満関連HCCにおけるSOAT1の役割については、十分に検討されておらず、この知識ギャップが残されている。本研究では、HCCの免疫回避と再発のメカニズムを解明し、新たな治療標的を特定することを目的とした。特に、コレステロールエステル化酵素SOAT1の役割に焦点を当て、その阻害がHCCの免疫応答に与える影響を詳細に解析した。

目的

本研究の目的は、肝細胞癌 (HCC) の再発および免疫回避の主要なドライバーを特定することである。具体的には、再発性および非再発性HCC患者の腫瘍検体を用いたプロテオミクス解析とT細胞殺傷アッセイを統合し、コレステロールエステル化酵素SOAT1の役割を評価する。さらに、SOAT1の遺伝的または薬理学的阻害が、腫瘍の酸化還元レジリエンス、T細胞媒介性免疫、および抗PD-1療法やCAR-T (chimeric antigen receptor T cell) 療法の有効性に与える影響を多角的なモデルで検証する。SOAT1阻害が腫瘍細胞のコレステロールおよび脂質代謝、抗酸化能力、および代謝レジリエンスに及ぼすメカニズムを解明し、免疫攻撃に対する感受性を高める可能性を探る。最終的に、SOAT1を標的とすることがHCCの再発予防および免疫療法の効果改善のための新たな戦略となり得るかを評価する。特に、肥満関連腫瘍および免疫抑制下におけるSOAT1阻害の治療効果を検証し、臨床的意義を明らかにすることも重要な目的である。

結果

SOAT1がHCCの免疫回避と再発のドライバーであることの同定: HCC肝移植患者28名の腫瘍検体を用いたプロテオミクス解析により、再発に関連する86の差次的に発現するタンパク質 (DEP) が同定された (Fig 1D)。これらのDEPはコレステロール代謝、ヌクレオチド除去修復、ステロイドホルモン生合成、DNA複製に関連する経路に濃縮されていた (Fig 1E)。機能的評価の結果、_Soat1_の遺伝子欠損がT細胞媒介性殺傷に対する感受性を最も強く増加させた (Fig 1F)。_Soat1_欠損細胞 (Soat1 [-/-] ) は、OT-I CD8+ T細胞との共培養において、対照細胞と比較して有意に高い感受性を示した (p<0.001)。SOAT1の酵素活性は、T細胞媒介性殺傷に対する抵抗性回復に必要であることが示された (Fig 1H, 1I)。_Soat1_欠損腫瘍は、免疫不全マウス (Rag2-/-) では腫瘍増殖にほとんど影響を与えなかった (n=5-8 mice) が、免疫適格マウス (C57BL/6) では有意に腫瘍増殖を抑制した (Fig 1J, 1K, p<0.001)。臨床検体では、HCC組織におけるSOAT1発現は隣接正常組織よりも有意に高く、再発患者の原発腫瘍は非再発患者よりも高いSOAT1レベルを示した (Fig S1L, S1M)。高SOAT1発現患者は再発率が高く (p<0.05)、全生存期間が短縮された (Fig 1L, 1M, p<0.01)。ICI (immune checkpoint inhibitor) 治療を受けたHCC患者コホートでは、SOAT1高発現患者はPDの割合が高く、CRまたはSDの割合が低かった (Fig 1P)。ICI非奏効患者では奏効患者よりも腫瘍内SOAT1発現が有意に高かった (Fig 1Q)。脂質オミクス解析では、再発症例の腫瘍においてコレステロールエステルレベルが非再発症例と比較して有意に高かった (Fig 1O, p<0.05)。

SOAT1欠損または阻害が肝がんのT細胞媒介性免疫監視および免疫療法に対する感受性を高める: _Soat1_欠損による免疫感受性亢進はT細胞依存性であることが、CD8+ T細胞枯渇実験により確認された (Fig 2A)。_Soat1_欠損腫瘍は、養子移入されたOT-I CD8+ T細胞による治療後、著しく増殖が抑制された (Fig 2B, p<0.001)。腫瘍内在性_Soat1_欠損は、抗PD-1療法に対する腫瘍の感受性を高め、対照腫瘍はほとんど反応しなかった (Fig 2C, p<0.001)。SOAT1の薬理学的阻害剤であるアバシミブも、遺伝的_Soat1_欠損と同様に抗PD-1療法の効果を増強した (Fig 2D)。ヒト肝がん細胞株Huh7およびHepG2における_SOAT1_遺伝子欠損は、GPC3特異的CAR-T細胞による殺傷に対する感受性を増加させた (Fig 2E, 2F, p<0.001)。_SOAT1_欠損Huh7細胞は、NSGマウスにおけるCAR-T療法に対する感受性を高めた (Fig 2G)。RNAシーケンス解析では、_Soat1_欠損Hepa1-6細胞においてコレステロールおよびステロール生合成経路が減少する一方で、脂質輸送体活性が上昇した (Fig 2L)。_SOAT1_欠損は、マウスおよびヒトがん細胞の両方でコレステロール生合成、脂肪酸生合成、およびROS (reactive oxygen species) 代謝に関連する遺伝子の発現を減少させた (Fig 2M)。_Soat1_欠損腫瘍は、PBSおよび抗PD-1治療条件下でCD8+ T細胞、PD-1+ CD8+ T細胞、およびCD4+ T細胞の浸潤が増加した (Fig 2N, p<0.01)。

腫瘍内在性_Soat1_欠損が腫瘍免疫微小環境を再構築し、CD8+ T細胞浸潤と機能を増強する: 単一細胞RNAシーケンス (scRNA-seq) 解析により、PBS治療腫瘍において、腫瘍内在性_Soat1_欠損はエフェクターCD8+ T細胞、CD4+ T細胞、およびDCを増加させ、好中球を減少させた (Fig 3B)。抗PD-1治療後、_Soat1_欠損腫瘍はCD8+ T細胞、前駆CD8+ T細胞、Mki67+サイクリングCD8+ T細胞、およびDCの割合が最も高かった (Fig 3B, p<0.001)。がん細胞内では、Soat1_欠損は細胞状態を変化させ、Fosl1+サブセットを減少させ、インターフェロン関連_Oasl1+サブセットを増加させた (Fig 3C)。GO解析では、_Soat1_欠損がん細胞において脂肪酸代謝、脂質局在、脂質異化が減少し、IFN-γ (interferon γ)、IFN-β、および抗原提示経路が上昇した (Fig 3D)。骨髄系細胞では、_Soat1_欠損腫瘍はDCサブセット (cDC1, cDC2, 遊走性DC) およびTCR+マクロファージの割合が高く、Spp1+マクロファージおよび好中球が減少した (Fig 3E)。腫瘍浸潤リンパ球では、_Soat1_欠損腫瘍はNK細胞、エフェクターCD8+ T細胞、およびIl7r+ CD8+エフェクターメモリー様T細胞 (Tem) の割合が高かった (Fig 3F)。SOAT1発現はHCCにおいてCD11b+骨髄系細胞浸潤と正の相関を示した (Fig 3H, 3I)。

腫瘍内在性_Soat1_欠損が腫瘍内コレステロール生合成を抑制し、脂質代謝を変化させる: _Soat1_欠損Hepa1-6細胞では、総コレステロールがわずかに増加したが (Fig S4A)、アクセス可能な細胞膜コレステロールは減少した (Fig 4A, p<0.01)。フィリピンIII染色により、_Soat1_欠損細胞ではER (endoplasmic reticulum) におけるコレステロール蓄積が増加し、細胞膜への蓄積が減少したことが示された (Fig 4C)。ERコレステロール蓄積は、SREBP (sterol regulatory element-binding protein) 1/2プロセシングを阻害し、核SREBP2の核移行を減少させた (Fig 4E)。免疫ブロット解析では、_Soat1_欠損腫瘍において核SREBP1 (nSREBP1) およびSREBP2 (nSREBP2) のレベルが減少した (Fig 4F)。ERストレスマーカー (IRE1α, BiP, PDI) は_Soat1_欠損腫瘍で上昇した (Fig 4F)。標的脂質オミクスおよびコレステロールメタボロミクス解析により、_Soat1_欠損細胞で7α-ヒドロキシコレステロール (7α-HC) およびPGE2 (prostaglandin E2) レベルが減少した (Fig 4G, p<0.01)。_Soat1_欠損細胞は、飽和脂肪酸が増加し、不飽和脂肪酸が減少した (Fig 4H)。_In vivo_メタボロミクス解析では、_Soat1_欠損腫瘍において腫瘍内コレステロールおよびPGE2レベルが減少した (Fig 4I, 4J, p<0.05)。グリセロリン脂質、特に不飽和脂肪酸を含むものが_Soat1_欠損腫瘍で減少した (Fig 4L, 4M)。

SOAT1欠損が抗酸化能力を損なうことでがん細胞のT細胞殺傷に対する感受性を高める: PGE2の免疫抑制効果を評価した結果、_Soat1_欠損Hepa1-6細胞はT細胞攻撃下でPGE2分泌が低下したが、外因性PGE2補充はT細胞殺傷に対する_Soat1_欠損腫瘍細胞の抵抗性をわずかに回復させたのみであった (Fig S5A, S5E)。パーフォリン欠損はT細胞媒介性殺傷にほとんど影響を与えなかったが、IFN-γ中和はT細胞細胞毒性をほぼ完全に消失させた (Fig 5A, p<0.001)。_Soat1_欠損Hepa1-6細胞は、CD8+ T細胞媒介性またはCD4+ T細胞-マクロファージ媒介性殺傷条件下で脂質ROSが上昇した (Fig 5B, 5C, p<0.001)。直接的なIFN-γ処理も_Soat1_欠損腫瘍細胞の脂質ROSレベルを増加させた (Fig 5E, p<0.001)。_Soat1_欠損細胞は、総抗酸化能力 (TEACアッセイ) が低下し (Fig 5F, p<0.001)、GSH:GSSG比が減少した (Fig 5G, p<0.01)。抗酸化剤NAC (N-acetylcysteine) の添加は、_Soat1_欠損細胞のT細胞媒介性殺傷に対する感受性を用量依存的に回復させた (Fig 5I, p<0.001)。ERコレステロールの枯渇も、_Soat1_欠損腫瘍細胞のT細胞媒介性殺傷に対する感受性をほぼ消失させた (Fig S5K)。転写活性型nSREBP2の再発現は、抗酸化能力とT細胞殺傷に対する_Soat1_欠損細胞の抵抗性を回復させた (Fig 5J, 5K)。RNAシーケンス解析では、CAR-T療法下のHuh7腫瘍において_SOAT1_欠損はT細胞細胞毒性に関連するより顕著な転写変化を誘導した (Fig 5L, 5M)。CPT1A (carnitine palmitoyl-transferase 1A) の発現は、CAR-T療法下の_SOAT1_欠損Huh7腫瘍および宿主免疫監視下の_Soat1_欠損Hepa1-6腫瘍で減少した (Fig 5O, 5P)。Seahorse XFアッセイでは、_SOAT1_欠損細胞は対照細胞と比較して脂肪酸β酸化 (FAO) 能力が低下していた (Fig 5Q, p<0.001)。

SOAT1欠損または阻害が肥満関連腫瘍における免疫療法の効果を増強する: 肥満患者は、より高い再発率 (p<0.05) と悪い全生存期間 (p<0.01) を示した (Fig 6B, 6C)。免疫蛍光染色により、肥満患者の腫瘍ではSOAT1発現が高いことが明らかになった (Fig 6D)。HFHCD (high-fat, high-cholesterol diet) を与えた肥満マウスモデルにおいて、_Soat1_欠損Hepa1-6細胞は、痩せたマウスおよび肥満マウスの両方で、対照細胞よりも小さい腫瘍を形成した (Fig 6F, p<0.001, n=5 mice)。HFHCDを与えたマウスの腫瘍ではコレステロールエステルレベルが上昇した (Fig S6E, S6F)。免疫プロファイリングにより、_Soat1_欠損腫瘍は両食餌条件下でCD8+ T細胞およびPD-1+ CD8+ T細胞の数が増加した (Fig 6G, p<0.01)。_Soat1_欠損細胞によって形成された腫瘍は、脂質ROSレベルの上昇を示した (Fig 6H, p<0.001)。HFHCDを与えたマウスにおいて、_Soat1_欠損と抗PD-1療法の併用は、腫瘍をほぼ完全に根絶した (Fig 6I, 6J, p<0.001)。アバシミブと抗PD-1療法の併用は、痩せたマウスおよび肥満マウスの両方で、腫瘍増殖を著しく抑制した (Fig 6K, p<0.001)。

SOAT1阻害が腫瘍発生を抑制し、免疫不全条件下での免疫療法の効果を増強する: 免疫抑制剤 (タクロリムス、シロリムス) 処理は、腫瘍発生と増殖を著しく促進し、全生存期間を短縮した (Fig 7A, 7B, p<0.001)。タクロリムス処理マウスにおいて、_Soat1_欠損は、正常および免疫不全条件下で、対照と比較して腫瘍発生と増殖を抑制した (Fig 7C, p<0.001, n=6 mice)。アバシミブは、タクロリムス誘発モデルにおいて腫瘍量を大幅に減少させた (Fig 7D, p<0.001)。_SOAT1_欠損Huh7細胞は、タクロリムスの存在下でもWT CAR-T細胞媒介性殺傷に対する感受性が増加した (Fig 7E, p<0.001)。TR-CAR (tacrolimus-resistant CAR) を用いた実験では、_SOAT1_欠損細胞は、タクロリムス処理および未処理の両条件下でTR-CAR-T細胞媒介性殺傷に対してより感受性が高かった (Fig 7G, p<0.001)。リプロキスタチン-1は、_Soat1_欠損細胞のT細胞媒介性殺傷からの回復を部分的に救済した (Fig S7F)。

考察/結論

本研究は、HCCの再発および免疫回避におけるコレステロールエステル化酵素SOAT1の重要な役割を明らかにした。プロテオミクス解析と機能アッセイを組み合わせることで、SOAT1が肝がん細胞の免疫回避と再発の主要なドライバーであることを同定した。SOAT1の遺伝的または薬理学的阻害は、腫瘍の酸化還元レジリエンスを損ない、T細胞媒介性免疫を増強し、抗PD-1療法およびCAR-T療法の有効性を改善した。

先行研究との違い: これまでの研究では、SOAT1発現が複数の癌種で腫瘍進行と関連することが報告されている (Huang et al. 2023; Jiang et al. 2019)。しかし、本研究は、腫瘍内在性SOAT1欠損が免疫不全マウスにおける腫瘍細胞の増殖にほとんど影響を与えない一方で、宿主免疫監視、T細胞殺傷、および抗PD-1療法に対する腫瘍の感受性を高めることを初めて示した点で、これまでの知見と異なっている。これは、SOAT1ががん細胞の増殖そのものよりも、免疫回避メカニズムに深く関与していることを示唆する。

新規性: 本研究で初めて、SOAT1欠損が腫瘍内コレステロールおよび脂質代謝を抑制し、酸化還元ストレスおよびERストレスに対する腫瘍細胞の適応能力を損なうことを明らかにした。特に、SOAT1欠損がSREBP2媒介性コレステロール生合成を阻害し、抗酸化能力をサポートするコレステロール由来中間体を制限することで、T細胞攻撃下での酸化還元レジリエンスを低下させるという新規メカニズムを提唱した。さらに、SOAT1欠損がCPT1Aを介した脂肪酸β酸化 (FAO) を減少させ、PGE2産生を制限することで、免疫抑制を解除し、腫瘍の脂質過酸化に対する感受性を高めることも新規な発見である。

臨床応用: 本研究の知見は、HCCの再発予防および免疫療法の効果改善のための新たな治療戦略を提供する。SOAT1阻害剤であるアバシミブが、肥満関連腫瘍や免疫抑制条件下でも免疫療法の効果を増強したことは、臨床的意義が極めて高い。特に、肝移植後のHCC患者では、拒絶反応予防のために免疫抑制剤が使用され、抗腫瘍免疫が損なわれることが課題であるが (Yilmaz and Ince 2021)、SOAT1阻害がこのトレードオフを緩和し、残存する免疫活性に対する腫瘍細胞の感受性を高める可能性は、臨床現場での有用性を示唆する。SOAT1発現が肥満患者の腫瘍で上昇していたことから、肥満関連HCCの治療においてもSOAT1を標的とすることは有効なアプローチとなり得る。

残された課題: 本研究は、肝移植後のHCC再発を模倣するモデルを使用したが、臨床的な再発の複雑な状況を完全に再現しているわけではないというlimitationがある。また、SOAT1阻害がIFN-γ誘発性酸化ストレスからの保護を阻害するだけでなく、脂質飽和度やPGE2レベルも変化させるため、これらの経路が免疫感作に寄与する相対的な貢献度については、今後のさらなる検討課題が残されている。SOAT1阻害がT細胞機能に与える影響についても、低用量のアバシミブはT細胞細胞毒性を増強する一方で、高用量のスタチン治療はT細胞生存能力を損なう可能性が示唆されており、最適な投与量や併用療法についてはさらなる研究が必要である。

方法

臨床検体のプロテオミクス解析: HCC肝移植患者28名の腫瘍検体 (再発群n=15、非再発群n=13) を用いて、液体クロマトグラフィー質量分析法 (LC-MS) によるプロテオミクス解析を実施した。ホルマリン固定パラフィン包埋 (FFPE) 腫瘍組織からタンパク質を抽出し、消化後、質量分析によりペプチドをシーケンスした。データ解析にはMascot検索エンジン (v2.3) を使用し、差次的に発現するタンパク質 (DEP) を同定した。GO解析により、DEPが濃縮される経路を特定した。

臨床データの収集と解析: 2016年2月から2018年11月までに華山病院で肝移植を受けたHCC患者153名を対象に、臨床データを収集した。5年間の追跡調査に基づき、患者を再発群と非再発群に分類した。SOAT1発現レベルと免疫療法反応の関連を調査するため、ICI治療を受けたHCC患者42名のコホートを解析し、RECIST1.1基準に基づいて奏効群と非奏効群に層別化した。全生存期間 (OS) および無再発生存期間 (RFS) の解析には、Kaplan-Meier曲線とlog-rank検定を用いた。

細胞培養と遺伝子操作: マウス肝癌細胞株Hepa1-6、HCC51、ヒト肝癌細胞株Huh7、HepG2を使用し、DMEM培地で培養した。CRISPR-Cas9システムを用いて、_Soat1_遺伝子を欠損させた細胞株を樹立した。SOAT1の酵素活性の役割を評価するため、野生型 (WT) SOAT1または触媒不活性H450N変異体を_Soat1_欠損細胞に再発現させた。

T細胞分離と共培養アッセイ: OT-Iマウスまたはパーフォリン欠損 (Prf1-/-) OT-IマウスからナイーブCD8+ T細胞を分離し、抗CD3抗体と抗CD28抗体で活性化した。腫瘍細胞とT細胞を共培養し、ルシフェラーゼ活性またはフローサイトメトリーにより腫瘍細胞の生存率を評価した。IFN-γ中和抗体、ERコレステロール枯渇剤ALOD4、抗酸化剤NAC (N-acetylcysteine) を用いたブロッキング実験を実施した。

薬理学的介入: SOAT1阻害剤アバシミブ、免疫抑制剤タクロリムスおよびシロリムス、抗PD-1抗体を用いて、_in vitro_および_in vivo_で薬理学的介入を行った。アバシミブと抗PD-1抗体の併用療法効果を評価した。

_In vivo_腫瘍モデル: C57BL/6マウス、Rag2-/-マウス、NSGマウスを用いて、皮下および同所性肝腫瘍モデルを確立した。_Soat1_欠損細胞または対照細胞を移植し、腫瘍増殖をモニタリングした。CD8+ T細胞枯渇実験には抗CD8α抗体を用いた。肥満関連HCCモデルは、HFHCD (high-fat, high-cholesterol diet) を2ヶ月間与えたC57BL/6マウスを用いて確立した。

CAR-T細胞療法: 健常ドナーからPBMCを分離し、GPC3特異的CAR-T細胞を産生した。NSGマウスに_SOAT1_欠損Huh7細胞を移植し、CAR-T細胞療法を実施した。タクロリムス耐性CAR (TR-CAR) T細胞も作製し、免疫抑制条件下での効果を評価した。

RNAシーケンスおよび単一細胞RNAシーケンス (scRNA-seq): 腫瘍細胞および腫瘍浸潤免疫細胞のバルクRNAシーケンスおよびscRNA-seq解析を実施し、遺伝子発現プロファイルと経路濃縮を評価した。

脂質およびコレステロール代謝解析: フィリピンIII染色、ALOD4-AF647染色、BODIPY493/503染色により、細胞内コレステロールおよび中性脂質を測定した。ER画分を分離し、ER関連コレステロールを定量した。標的脂質オミクスおよびコレステロールメタボロミクス解析をLC-MS/MSを用いて実施した。

抗酸化能力評価: 総抗酸化能力 (TEACアッセイ) およびGSH:GSSG比を測定した。BODIPY581/591C11染色により脂質ROSレベルを評価した。

統計解析: データは平均±SEMで示され、統計解析にはStudentのt検定、二元配置ANOVA、またはlog-rank検定を用いた。p値<0.05を有意差ありと判断した。