- 著者: Hu, Matsuo, Du, et al.
- Corresponding author: Chong Sun (German Cancer Research Center (DKFZ) Heidelberg)
- 雑誌: Immunity
- 発行年: 2026
- Epub日: N/A
- Article種別: Original Article
- PMID: 38995345
- pmid: 38995345
- category: Basic-Others
- topics:
- Tumor Microenvironment
- Immunotherapy Resistance
- P2RY2 Signaling
- tags:
- Extracellular ATP
- Prostaglandin E2
- CAR-T Therapy
- TCR-T Therapy
- Immune Checkpoint Blockade
- entities:
- P2RY2
- ATP
- PGE2
- COX-1
- COX-2
- CAR-T
- TCR-T
- ICB
- TME
- T cells
背景
細胞外ATP (eATP) は、細胞のエネルギー通貨として細胞内にミリモル濃度で存在するが、生理的条件下では細胞外にナノモルレベルで維持される (Greiner and Glonek 2021)。しかし、細胞ストレス、損傷、細胞死はATPの細胞外放出を引き起こし、損傷関連分子パターン (DAMP) として自然免疫を活性化する (Kroemer et al. 2013)。その結果、eATPは腫瘍微小環境 (TME) に著しく蓄積し、健常組織の1,000倍以上の濃度に達することが報告されている (Pellegatti et al. 2008; Di Virgilio and Adinolfi 2017)。さらに、化学療法や放射線療法などの癌治療は、治療誘発性の細胞ストレスや溶解に続き、能動的な分泌と受動的な放出の両方を通じてeATPレベルをさらに上昇させる (Michaud et al. 2011; Zanoni et al. 2022)。eATPは、急性期にはP2Y11およびP2X7受容体を介して樹状細胞の成熟とインフラマソームを介したIL-1β分泌を促進し、P2RY2を介して好中球の走化性を駆動し、P2X7およびP2X4を介してT細胞の活性化と遊走を直接促進するなど、炎症促進性の「危険」シグナルとして機能する (Wilkin et al. 2001; Chen et al. 2006; Yip et al. 2009)。しかし、持続的に高濃度のeATP (マイクロモルからミリモル範囲) は免疫抑制効果を発揮し、P2X7受容体の長期的な関与はT細胞の機能不全や死を誘発し、骨髄由来抑制細胞 (MDSC) の抑制活性を増強する (Romagnani et al. 2020; Bianchi et al. 2014)。さらに、eATPはエクソヌクレオチダーゼCD39およびCD73の基質として、免疫抑制性代謝物であるアデノシンに加水分解され、エフェクターT細胞およびNK細胞の機能を阻害し、制御性T細胞の活性を促進する (Allard et al. 2017; Vijayan et al. 2017)。
これらのeATPの矛盾する役割を考慮すると、特に治療誘発性のeATPサージ中の抗腫瘍免疫に対するその正味の効果は未解明である。eATP分解の下流のアデノシン経路はよく特徴づけられているが、TMEにおける持続的なeATP受容体シグナル伝達の直接的な免疫学的影響は十分に定義されておらず、この点に知識のギャップが残されている (Di Virgilio et al. 2018)。eATPは多様で文脈依存的な機能を持つプリン受容体ファミリーを介してシグナル伝達を行うため、癌における免疫調節のメカニズムを理解するためには、eATP曝露の直接的な効果を区別することが重要である。
プロスタグランジンE2 (PGE2) は、シクロオキシゲナーゼ (COX)-1およびCOX-2によって合成される、腫瘍におけるもう一つの主要な免疫抑制性メディエーターである (Wang and DuBois 2016)。固形腫瘍ではCOX-1およびCOX-2活性とPGE2蓄積が頻繁に上昇し、腫瘍の進行と免疫療法への抵抗性を促進する (Zelenay et al. 2015; Lacher et al. 2024)。過剰なPGE2は、樹状細胞機能を障害し、マクロファージをM2様表現型に分化させ、MDSCを拡大し、制御性T細胞を補充・活性化し、NK細胞活性を阻害し、EP2およびEP4受容体を介してエフェクターT細胞の増殖と機能を抑制するなど、様々な免疫細胞に影響を与えることで免疫抑制性TMEを形成する (Bayerl et al. 2023; Morotti et al. 2024)。腫瘍内PGE2の遍在性と多面的な免疫抑制機能にもかかわらず、腫瘍におけるCOX-1およびCOX-2発現とPGE2蓄積の慢性的な上昇の上流ドライバーについては限られた理解しか得られていない。EGFRやKRASなどの発癌経路、IL-1βやTLRリガンドなどの炎症性メディエーター、P2RY2およびP2RY6などのプリン受容体を含む多くの候補がin vitroデータに基づいて関与しているが、TMEにおけるCOX-1-およびCOX-2-PGE2過活性化の主要な原因は依然として不明であり、主要なトリガーを特定する決定的なin vivo証拠は不足している (Marcet et al. 2007; Boumelha et al. 2024; Xu et al. 2024)。
既知の腫瘍特異的なトリガーがないため、PGE2を介した免疫抑制に対抗する現在の臨床戦略は、広範なCOX阻害剤またはPGE2受容体拮抗薬に依存している。これらのアプローチは、試験間で様々な臨床結果をもたらしている (Kanai et al. 2021; Quandt et al. 2024)。さらに、全身性のCOX-1およびCOX-2阻害は、組織恒常性におけるプロスタグランジンシグナル伝達の生理学的重要性から、心筋梗塞などの血栓性心血管イベントの増加、消化管潰瘍および出血、腎臓損傷などの重大な毒性と関連している (Mukherjee et al. 2001; Henry et al. 1993; Zhang et al. 2017)。これらの知見は、COX-1-およびCOX-2-PGE2免疫抑制軸をその起源で破壊するための、腫瘍選択的な上流介入の必要性を強調する。
目的
本研究は、固形腫瘍における免疫療法への適応抵抗性の根底にあるメカニズムを解明することを目的とした。特に、腫瘍微小環境 (TME) における細胞外ATP (eATP) が、プリン受容体P2RY2を介してT細胞機能を抑制し、シクロオキシゲナーゼ (COX)-1およびCOX-2の発現とプロスタグランジンE2 (PGE2) の蓄積を促進する役割を調査した。さらに、免疫療法がeATPレベルをさらに増加させ、PGE2を介した免疫抑制を増幅することで適応抵抗性を引き起こすという仮説を検証した。P2RY2の阻害がPGE2の蓄積を抑制し、T細胞の活性を回復させ、CAR-T、TCR-T、および免疫チェックポイント阻害 (ICB) 療法に対する腫瘍の反応性を改善するかどうかを評価することも目的とした。最終的に、P2RY2を標的とすることが、既存の免疫療法に対する抵抗性を克服するための新たな治療戦略となる可能性を探求した。
結果
eATPはP2RY2を介してT細胞機能を抑制し、COX-1/-2-PGE2経路を駆動する: 固形腫瘍のTMEにおけるeATP濃度は、健常組織や末梢血と比較して1,000倍以上高かった。具体的には、腫瘍間質液中のeATP濃度は32~140 μMであったのに対し、正常組織では0.01~0.06 μM、末梢血では0.02~0.1 μMであった (Figures 1A-1C)。CAR-T、TCR-T、または免疫チェックポイント阻害 (ICB) 療法による治療後、腫瘍内eATPレベルはさらに増加した (Figures 1A-1C)。外因性eATPの補充は、TCR-T細胞およびCAR-T細胞との共培養において腫瘍細胞の生存を増加させ、非加水分解性ATPアナログであるATPγSも同様の効果を示した (Figures 1E-1H)。eATPはT細胞の活性化マーカー (CD25, CD137, CD69) の発現とエフェクターサイトカイン (IL-2, IFN-γ, TNF-α) の産生を抑制した (Figures 1I, 1J)。CRISPRスクリーニングにより、P2RY2の欠失がeATPによるT細胞抑制効果を消失させ、T細胞活性化を著しく増強することが示された (Figure 1M)。P2RY2欠損腫瘍細胞では、COX-1 (PTGS1) およびCOX-2 (PTGS2) の発現が著しく低下し、PGE2産生も減少した (Figures 2E-2G)。PGE2の補充は、P2RY2欠損腫瘍細胞におけるT細胞活性化の増強を打ち消し、腫瘍細胞の生存を回復させた (Figures 2H, 2I)。これらの結果は、eATPが腫瘍細胞内のP2RY2を介してCOX-1/-2-PGE2経路を駆動し、T細胞機能を抑制することを示唆する。
eATP-P2RY2軸は腫瘍内PGE2蓄積の主要なドライバーである: ヒト化および同系マウス腫瘍モデルにおいて、P2RY2の遺伝的欠失または薬理学的阻害は、ベースラインおよび免疫療法誘発性の腫瘍内PGE2レベルを一貫して劇的に減少させた (Figures 3E-3H)。P2RY2発現腫瘍ではeATP濃度とPGE2レベルの間に強い相関が見られたが (例: BxPC-3 TCR-TモデルでR²=0.85, p<0.0001)、P2RY2欠損腫瘍ではこの相関は完全に消失した (Figures 3I, 3J)。免疫療法単独での治療は、TMEにおけるeATPレベルをさらに増加させ、それに伴い腫瘍内PGE2も著しく増加した (Figures S6E-S6H)。P2RY2の共標的化は、治療誘発性のPGE2スパイクを抑制するだけでなく、PGE2レベルをベースライン以下に減少させた (Figures 3E-3H)。これらのデータは、eATP-P2RY2シグナル伝達軸が、腫瘍タイプおよび治療状況を問わず、腫瘍内PGE2蓄積の主要な上流ドライバーであることを確立する。
P2RY2標的化は抗腫瘍免疫を回復させ、免疫療法への抵抗性を克服する: P2RY2の遺伝的欠失は、ヒト化腫瘍モデルにおいて、養子移入されたヒトCD3+ CAR-T細胞およびTCR-T細胞の腫瘍内存在量を著しく増加させ、CD8+ T細胞の割合を上昇させた (Figures 4A, 4D)。P2RY2欠損腫瘍のヒトCD8+ T細胞は、グランザイムBおよびKi-67の高い発現を示し、エフェクター機能と増殖の増強を示唆した (Figures 4B, 4E)。P2RY2欠失とCAR-TまたはTCR-T療法との併用は、腫瘍抑制を増強し、生存期間を延長した (Figures 4G-4J)。同系マウスモデル (n=10 mice/group) では、P2RY2阻害剤AR-CまたはPD-(L)1チェックポイント阻害単独でCD45+免疫細胞の腫瘍浸潤が増加し、併用療法で最も高い浸潤レベルが誘導された (Figure 4K)。P2RY2阻害は、浸潤T細胞中のCD3+ T細胞の存在量を増加させ、T細胞コンパートメント内のCD8+ T細胞の割合を上昇させた (Figure 4L)。併用療法は、CD8+ T細胞のエフェクター細胞傷害活性 (グランザイムB) と増殖 (Ki-67) を増強し、TCF-1+幹様T細胞の頻度も増加させた (Figures 4N, 4O)。IL-2, IFN-γ, TNF-αの産生も併用療法でさらに増強された (Figure 4P)。P2RY2阻害下では、疲弊マーカー (Lag-3, Tim-3, PD-1, TOX) は増加せず、一部はICB単独と比較して減少した (Figure 4Q)。これらの免疫表現型の変化と一致して、P2RY2阻害とPD-1またはPD-L1阻害の併用は、著しい腫瘍退縮と最大の生存利益をもたらした (Figures 4R, 4S)。
P2RY2阻害抗体はCAR-T療法の腫瘍排除を増強する: P2RY2を標的とするモノクローナル抗体を開発し、P2RY2発現細胞に選択的に結合し、抗原特異的T細胞を介した腫瘍殺傷を著しく増強することを確認した (Figures 5A, 5B)。in vivoでは、この抗体治療は腫瘍制御を改善し、CAR-T細胞で治療された腫瘍担持マウス (n=10 mice/group) の生存期間を延長した (Figures 5C, 5D)。
P2RY2阻害は自己TIL応答を増強する: 切除された脳転移巣からの自己腫瘍浸潤リンパ球 (TIL) と一致する原発性腫瘍細胞のex vivo共培養において、AR-Cまたはモノクローナル抗体によるP2RY2の薬理学的阻害は、TIL活性を増強し、活性化マーカー (CD137, CD69) の発現とエフェクターサイトカイン (IL-2, IFN-γ, TNF-α) の産生を増加させた (Figures 6B-6D)。P2RY2阻害は、eATPを介したT細胞増殖とエフェクター増殖の抑制も打ち消した (Figure 6E)。P2RY2阻害は、患者由来サンプル全体で腫瘍単培養および腫瘍-TIL共培養上清中のPGE2蓄積を減少させ (Figure 6F)、TILを介した腫瘍細胞殺傷を増強した (Figure 6G)。in silico生存分析では、ベースラインのP2RY2発現が高いほど、抗PD-1療法を受けたメラノーマ患者の全生存期間が短いことと関連していた (Figure 6H, p=0.012)。
考察/結論
本研究は、腫瘍微小環境 (TME) における持続的かつ治療によって増強される細胞外ATP (eATP)-P2RY2シグナル伝達が、免疫抵抗性を駆動し、複数の癌免疫療法の有効性を制限するメカニズムを明らかにした。機械論的には、固形腫瘍における慢性的なeATP蓄積は、P2RY2を介してCOX-1およびCOX-2依存性のプロスタグランジンE2 (PGE2) 産生を維持し、炎症性危険シグナルを永続的な免疫抑制回路に変換する。これらの知見は、固形腫瘍におけるCOX-1-およびCOX-2-PGE2軸の過活性化の根底にある中心的なメカニズムを確立する。
先行研究との違い: 本研究の知見は、TMEにおける持続的に上昇したeATPが抗腫瘍免疫をどのように形成するかを再定義する。CD39-CD73経路を介したATPからアデノシンへの異化は確立された免疫抑制メカニズムであるが、本データはP2RY2阻害がアデノシンレベルを低下させることなく抗腫瘍T細胞応答を回復させ、免疫療法の有効性を実質的に増強することを示しており、アデノシン非依存性の免疫抵抗性におけるP2RY2の役割を支持する。これは、アデノシン経路に焦点を当てたこれまでの研究とは対照的である。急性期のeATPはP2X受容体を介して初期のT細胞活性化を一時的に刺激しうるが、本結果は、腫瘍における慢性的なeATP蓄積が、主にTMEに作用することでT細胞機能を抑制することを示している。総合すると、本研究は、TMEにおける上昇したeATPが、アデノシンへの加水分解とは独立して、P2RY2シグナル伝達を介して抗腫瘍免疫を抑制するという、明確な免疫回避様式を新規に明らかにしている。
新規性: 本研究で初めて、免疫療法が意図せずして腫瘍内のeATP-P2RY2-PGE2軸を増幅するという逆説的なフィードバックループを解明した。本モデルでは、養子T細胞 (CAR-TまたはTCR-T) またはICBによる治療は、腫瘍細胞のストレスと細胞死を増加させ、ATP放出を誘発し、腫瘍内eATPおよびPGE2レベルをさらに上昇させた。この治療誘発性のeATPサージとそれに続くPGE2産生の増加は、EP2およびEP4シグナル伝達を介してT細胞機能を減衰させ、適応抵抗性を促進し、免疫療法に対する自己制限的な回路を効果的に作り出した。この文脈において、P2RY2阻害はPGE2蓄積を防止することでこのフィードバックループを効果的に破壊し、T細胞活性と抗腫瘍有効性を維持した。
臨床応用: 複数の実験システムにわたる本研究の結果は、P2RY2を標的とすることの広範な治療可能性を強調する。多様なヒト化および同系マウス腫瘍モデル、ならびにヒト自己TILと一致する腫瘍細胞のex vivo共培養において、P2RY2阻害は一貫してT細胞機能を増強し、CAR-T、TCR-T、ICB、またはTIL治療と組み合わせた場合に腫瘍制御を改善した。これらの知見と一致して、患者コホートの分析では、P2RY2発現が高いほどICB療法への応答が不良であることと相関しており、ヒト免疫療法抵抗性におけるこの経路の臨床的関連性を裏付けている。P2RY2阻害は、正常組織における生理的COX-プロスタグランジン機能を温存しながら、腫瘍関連免疫抑制回路を破壊する可能性を秘めており、臨床応用が期待される。
残された課題: 本研究にはいくつかの技術的限界がある。第一に、in vivo実験における免疫プロファイリングは実験終了時に実施されたため、残存腫瘍のサイズはグループ間で異なり、治療関連の細胞組成の変化を腫瘍量の影響から完全に分離することはできない。第二に、ヒト化異種移植モデルはヒト腫瘍-T細胞相互作用を捉えたが、完全なヒト免疫および間質コンパートメントを欠いていた。一方、同系モデルにおける薬理学的研究は、腫瘍細胞内在性P2RY2と宿主内在性P2RY2の寄与を区別しなかった。TME内の非腫瘍細胞、特に免疫細胞および間質細胞におけるP2RY2の細胞タイプ特異的な役割は、本研究では解明されておらず、今後の検討課題である。最後に、ex vivo検証はメラノーマ脳転移TIL-腫瘍ペアを使用しており、臨床的関連性を示すものの、腫瘍タイプ全体での広範な検証には限界がある。適切な患者材料が入手可能になり次第、追加の腫瘍タイプへの拡大が進行中である。
方法
本研究では、細胞外ATP (eATP) とプリン受容体P2RY2が腫瘍微小環境 (TME) におけるプロスタグランジンE2 (PGE2) 蓄積と免疫療法への適応抵抗性を駆動するメカニズムを解明するため、in vitro細胞培養、in vivoマウスモデル、およびex vivoヒトサンプルを用いた多角的なアプローチを採用した。
細胞株と培養: ヒト膵臓癌細胞株BxPC-3、ヒト結腸直腸癌細胞株SW480、マウス結腸直腸癌細胞株MC-38、マウス膵臓癌細胞株Panc02など、様々な癌細胞株が使用された。これらの細胞株は、遺伝子操作によりP2RY2の発現を欠損 (sgP2RY2) または過剰発現させ、非標的コントロール (sgNT) と比較された。細胞は、適切な培地と血清を用いて培養された。
CRISPR-Cas9スクリーニング: P2RY2がeATP誘発性T細胞抑制のメディエーターであることを特定するため、P2受容体を標的とするCRISPR sgRNAライブラリーを用いたアレイ型スクリーニングが実施された。Cas9発現BxPC-3腫瘍細胞に個々のsgRNAを導入し、腫瘍反応性T細胞とeATP存在下または非存在下で共培養し、T細胞活性化を評価した。
T細胞共培養アッセイ: 抗原特異的TCR-T細胞およびCAR-T細胞が、対応する抗原を発現する腫瘍細胞と共培養された。eATPまたは非加水分解性ATPアナログ (ATPγS) の補充がT細胞の活性化 (CD25, CD137, CD69, IL-2, IFN-γ, TNF-αの発現) および腫瘍細胞の生存に与える影響が評価された。P2RY2欠損腫瘍細胞を用いた実験も行われた。
遺伝子発現解析: eATP刺激下またはP2RY2欠損細胞における遺伝子発現の変化を評価するため、RNAシーケンス解析および定量的PCR (RT-qPCR) が実施された。特に、COX-1 (PTGS1) およびCOX-2 (PTGS2) の発現が注目された。
タンパク質発現解析: ウェスタンブロット法により、P2RY2、COX-1、COX-2などの関連タンパク質の発現レベルが評価された。
PGE2測定: 腫瘍細胞培養上清および腫瘍間質液中のPGE2濃度は、ELISA法を用いて定量された。
in vivoマウスモデル:
- ヒト化腫瘍モデル: 免疫不全NXGマウスに、P2RY2発現または欠損のヒトCRC (SW480) またはPDAC (BxPC-3) 腫瘍細胞を皮下移植した。その後、抗原一致のヒトCAR-T細胞またはTCR-T細胞を投与し、腫瘍増殖、T細胞浸潤、T細胞機能、および腫瘍内PGE2レベルを評価した。
- 同系腫瘍モデル: 免疫能を有するC57BL/6マウスに、マウスCRC (MC-38) またはPDAC (Panc02) 腫瘍細胞を皮下移植した。マウスは、免疫チェックポイント阻害剤 (抗PD-(L)1抗体)、選択的P2RY2阻害剤 (AR-C118925XX; AR-C)、またはそれらの併用で治療された。腫瘍増殖、生存期間、TMEにおける免疫細胞浸潤、T細胞機能、およびPGE2レベルが評価された。
フローサイトメトリー: 腫瘍組織から単一細胞懸濁液を調製し、T細胞のサブタイプ、活性化マーカー、疲弊マーカー、増殖マーカー (Ki-67)、およびサイトカイン産生をフローサイトメトリーにより分析した。
P2RY2モノクローナル抗体の開発と評価: P2RY2を標的とするモノクローナル抗体が開発され、その特異性と機能的活性がin vitroおよびin vivoで評価された。
ex vivo自己TIL共培養: ヒトメラノーマ脳転移巣から分離された自己腫瘍浸潤リンパ球 (TIL) と、一致する原発性腫瘍細胞との共培養システムが確立された。P2RY2阻害剤 (AR-Cまたはモノクローナル抗体) がTIL活性化、増殖、細胞傷害性、およびPGE2産生に与える影響が評価された。
統計解析: データは平均±標準偏差で示され、統計的有意差は、Studentのt検定、一元配置分散分析 (ANOVA) とDunnettの多重比較検定、二元配置分散分析 (ANOVA) とTukeyの多重比較検定、またはKaplan-Meier生存分析を用いて決定された。p値 < 0.05が統計的に有意とみなされた。