• 著者: Weiler-Sagie M, Bushelev O, Epelbaum R, Dann EJ, Haim N, Avivi I, Ben-Barak A, Ben-Arie Y, Bar-Shalom R, Israel O
  • Corresponding author: Michal Weiler-Sagie (Nuclear Medicine Department, Rambam Health Care Campus, Haifa, Israel)
  • 雑誌: Journal of Nuclear Medicine
  • 発行年: 2010
  • Epub日: 2009-12-15
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 20009002

背景

リンパ腫は病理組織型が多岐にわたる疾患群であり、2008年に米国では約74,340例の新規診断が予測される頻度の高い悪性腫瘍である。18F-FDG (fluorodeoxyglucose) を用いたPET (positron emission tomography)/CT は、リンパ腫の病期診断・治療効果判定において重要な非侵襲的ツールとして広く普及し、その臨床利用は当時のガイドライン推奨を超えていた。

先行研究として、Elstrom ら (Elstrom et al. Blood 2003) はWHO分類に基づくリンパ腫172例でのFDG-PET有用性を報告したが、病期診断・治療後・再病期診断の混在した異質な患者群が問題であった。Tsukamoto ら (Tsukamoto et al. Cancer 2007) は255例でFDG-PETと67Gaシンチグラフィを比較したが、同様に解析対象の組織型に偏りがあり大規模かつ均一な評価が不足していた。さらにIsasi ら (Isasi et al. Cancer 2005) による20研究・854例のメタ解析は感度中央値90%を報告したが、組織型別の詳細なFDG集積性データは手薄であった。

当時のガイドラインである International Harmonization Project およびNCCN (National Comprehensive Cancer Network) は、FDG集積性が高く根治可能な diffuse large B-cell lymphoma (DLBCL) とHodgkin diseaseへのFDG-PET使用を推奨する一方、他の組織型については「集積性が可変」として臨床試験内に限定的な推奨にとどめていた。しかし希少組織型を含む各サブタイプの正確なFDG集積率を系統的・大規模に示した研究は不足しており、特に低頻度組織型のデータの gap in knowledge が臨床的なPET適用判断を困難にしていた。

目的

766例という単施設最大規模のコホートを用いて、新規診断リンパ腫のWHO分類に基づく組織型別FDG集積性 (FDG avidity) を系統的に定量評価し、FDG-PET各サブタイプへの適用根拠となる実証的エビデンスを提供する。

結果

全体FDG集積性と非集積症例の特徴:766例中718例 (94%; 95% CI: 92-96%) で少なくとも1箇所のFDG avid病変が確認され、48例 (6%) がFDG non-avid であった (Table 1)。non-avid 48例は全員18歳超の成人であった。侵攻性NHL 285/293例 (97%) vs 緩徐進行性NHL 200/240例 (83%) と有意差を認め (p<0.001; Table 2)、臨床分類でも明確なFDG avidity 差が確認された。注目すべき点として、non-avid 48例のうち約1/3が組織型に関わらず皮膚限局病変であり、皮膚部位のFDG検出感度が低い傾向が横断的に確認された。

100%FDG集積を示す組織型:Hodgkin disease (n=233)、Burkitt lymphoma (n=18)、Mantle cell lymphoma (n=14)、Anaplastic large T-cell lymphoma (ALCL) (n=14)、Nodal marginal zone lymphoma (n=8)、Lymphoblastic lymphoma (n=6)、Angioimmunoblastic T-cell lymphoma (n=4)、Plasmacytoma (n=3)、Natural killer (NK)/T-cell lymphoma (n=2) は全例でFDG avid (avidity=100%) であった (Table 1)。Hodgkin diseaseのサブタイプ内訳はnodular sclerosis 175例・mixed cellularity 32例・lymphocyte-rich 4例・lymphocyte-depleted 1例・nodular lymphocyte-predominant 1例・特定不能の古典的Hodgkin disease 20例であり、全233例が一例の例外なく100%の集積性を示した。

高集積だが一部非avid症例が存在する組織型:DLBCL (n=222) はavidity 97% (216/222例)。非avid 6例の内訳は皮膚リンパ腫2例、結腸限局1例、骨髄限局1例、胸水由来診断1例、上顎洞1例であった。Follicular lymphoma (FL) はavidity 95% (133/140例) で、グレード別ではGrade I 24/24例 (100%)、Grade II 47/48例 (98%)、Grade III 33/37例 (89%)、grade未特定 29/31例 (94%) であった。非avid 7例は骨髄限局2例・皮膚限局5例であった。Peripheral T-cell lymphoma (n=10) はavidity 90% (9/10例) であり、非avid 1例は頬粘膜病変であった。

低集積組織型:MALTリンパ腫とSmall lymphocytic lymphoma:Small lymphocytic lymphoma (SLL) はavidity 83% (24/29例)。非avid 5例は全例リンパ節病変を有し、うち4例に追加の骨髄浸潤を認めた。本研究の29例は当時の新規診断SLLとして報告された最大症例数であり、先行研究が報告していたavidity約50%を大きく上回る結果であった。Extranodal marginal zone (MALT; mucosa-associated lymphoid tissue) lymphoma はavidity 54% (27/50例) と全組織型中最低の集積性を示した。非avid 23例の内訳は消化管17例 (胃16例・結腸1例)、皮膚3例、骨髄・脾臓1例、気管粘膜1例、眼窩1例であり、特に胃MALT (16例中16例が非avid) が低集積の主因であった。Splenic marginal zone lymphoma (n=3) はavidity 67% (2/3例)。Enteropathy-type T-cell lymphoma (n=3) はavidity 67% (2/3例) で、非avid 1例は小腸の既知病変にFDG集積を認めなかった。Lymphomatoid papulosis (n=2) は50%、Primary cutaneous ALCL (n=5) はavidity 40% (2/5例) であった。

侵攻性 vs 緩徐進行性NHL の臨床分類別比較:侵攻性NHL はavidity 97% (285/293例)、緩徐進行性NHL はavidity 83% (200/240例) と、臨床分類でも明確な差が認められた (Table 2)。一方でFDG集積性は臨床的悪性度よりも組織学的サブタイプとより強く相関することが確認された。緩徐進行性に分類されるPlasmacytoma・Nodal marginal zone lymphoma・FL (全グレード) は高いFDG集積性を示した一方、侵攻性に分類されるEnteropathy-type T-cell lymphomaがavidity 67%と低値であったことがその根拠となった。

考察/結論

本研究は766例の新規診断リンパ腫を対象とした単施設後ろ向き研究として、25以上のWHO分類サブタイプについて組織型別FDG集積性の包括的定量データを提供した。全体avidity 94%はElstrom ら (2003、n=172、94%) およびTsukamoto ら (2007、n=255、92%) の先行研究と一致しており、Isasi らのメタ解析感度中央値90%とも整合する。

既報との相違:Peripheral T-cell lymphomaについて、Elstrom ら (2003) は5例でavidity 40%と低値を報告していたが、これまでの研究と異なり本研究では10例中9例 (90%) と対照的に高い集積性が得られた。Elstrom らの5例という非常に小規模なサンプルに起因するバイアスの可能性が示唆される。SLLも既報のavidity約50%に比べ本研究では83%と高く、これまでの小規模報告とは相違する結果であった。一方MALT marginal zone lymphomaの54%は先行研究報告の55-82%の範囲の下限に相当し、胃MALT (低集積) と眼窩・肺等の他臓器MALT (比較的高集積) 間の部位別差異が総集積率を低下させている可能性がある。皮膚リンパ腫については、組織型に関わらず全non-avid症例の約1/3を占めており、皮膚という部位そのものがFDG検出感度を低下させる因子であることを既報のデータと合わせて強く示唆する。

新規性:本研究で初めて単施設・同一プロトコル・同一定義で25以上のWHO分類組織型を766例規模で系統評価した点が新規の貢献である。特にNK/T-cell lymphoma (n=2)、Angioimmunoblastic T-cell lymphoma (n=4)、Nodal marginal zone lymphoma (n=8) など従来の報告が乏しかった希少組織型において100%の集積性が確認されたことは、これまで報告されていない定量的エビデンスを提供するものである。FLがGrade Iを含む全グレードで95%の高いavidity (Grade I: 100%) を示した結果も、従来「FDG-PETは主にHL・DLBCLに有用」という見解を更新するものであり、FL評価へのPET適用拡大を支持する新規データとなる。

臨床応用:本研究の臨床的意義は、組織型別FDG集積性データをNCCN・International Harmonization Projectなどのガイドライン更新の実証的根拠として提供する点にある。Hodgkin disease・DLBCL・FL・Mantle cell lymphoma・BurkittなどのFDG avid組織型では、FDG PET/CTを病期診断・効果判定に積極的に活用すべき臨床現場への明確な示唆が得られた。一方MALT lymphomaとSLLでは集積性が低く、PET陰性例においても内視鏡・CT・骨髄生検等の追加評価を怠ってはならないという臨床含意がある。皮膚・粘膜・胸水病変では組織型に関わらずFDG感度が低下するため、これらの部位の評価にはPET以外のモダリティを組み合わせることが推奨される。本研究は単施設ではあるが、当時の最大規模コホートとして組織型別PET適用の標準的参照データを提供する意義を持つ。

残された課題:本研究のlimitationとして、FDG集積の程度をSUV (standardized uptake value) 等の定量指標で評価していない点、希少組織型では症例数が依然限られている点が挙げられる。今後の検討として、組織型・解剖学的部位別の詳細な集積性解析 (特に皮膚・粘膜・胸水病変における定量的評価)、FDG avidity と腫瘍生物学的特性 (GLUT-1発現・増殖活性等) の相関研究が必要である。さらにMALT lymphomaおよびSLLにおける最適な画像診断戦略の確立 — FDG-PETとCT・MRI・内視鏡の組み合わせ — が今後の研究課題として残されており、future research の重要な方向性として位置づけられる。

方法

2001年9月から2008年3月にイスラエルのRambam Health Care Campusで、病期診断目的にFDG PET/CTを施行した新規診断リンパ腫患者1,093例のレポートを後ろ向きに検討した。このうち病理報告が入手できない症例 (n=213)、WHO分類に基づく組織型診断が記載されていない症例 (n=52)、PET/CT施行前に病変が外科的に切除された症例 (n=45)、複合リンパ腫 (n=17) を除外し、766例を最終解析対象とした。患者背景は男性411例・女性355例、年齢3-93歳 (平均53歳)、小児 (18歳以下) 37例を含んだ。本研究は施設内倫理審査委員会 (Institutional Review Board) の承認を得た。

PET/CT撮像は以下のプロトコルで統一した。検査前少なくとも4時間の絶食後に370-555 MBq (megabecquerel; 10-15 mCi) の18F-FDGを静脈注射し、注射60-90分後に全身撮像を実施した。スキャナはDiscovery LS (GE (General Electric) Healthcare) を使用し、CT撮像条件は80 mAs (milliampere-second)・140 kV (kilovolt)、PET収集はスライス厚4 mmで行い、OSEM (ordered-subset expectation maximization) 法による反復再構成を実施した。CT画像はPET画像の減弱補正に使用した。読影は少なくとも2名の核医学専門医が患者の臨床情報を参照しながら行った。

FDG avidity の定義は「少なくとも1箇所の病変部位で18F-FDG集積増加が報告されること」とし、non-avidity は「臨床診察・従来型画像診断・病理組織学的に証明された病変が存在するにも関わらず、関与部位のいずれにもFDG集積を認めない」と定義した。患者ベースのFDG集積率は (FDG avid症例数÷全症例数) ×100 (%) として算出した。WHO分類サブタイプ別に加え、non-Hodgkin lymphoma (NHL) を侵攻性 (DLBCL・Burkitt・Mantle cell等9組織型) と緩徐進行性 (Follicular lymphoma全グレード・Marginal zone lymphoma等) の臨床分類で評価した。統計解析は主に記述統計 (患者数・割合) を用い、組織型間の集積率の差はchi-square test (カイ二乗検定) またはFisher’s exact test (フィッシャー正確検定) で検定し、先行研究データとの組織型別比較を行った。