- 著者: Conor McMahon, Alexander S. Baier, Roberta Pascolutti, Marcin Wegrecki, Sanduo Zheng, Janice X. Ong, Sarah C. Erlandson, Daniel Hilger, Soren G. F. Rasmussen, Aaron M. Ring, Aashish Manglik, Andrew C. Kruse
- Corresponding author: Aashish Manglik (University of California San Francisco), Andrew C. Kruse (Harvard Medical School)
- 雑誌: Nature Structural & Molecular Biology
- 発行年: 2018
- Epub日: N/A
- Article種別: Original Article
- PMID: 29434346
背景
ラクダ科動物が有する単一ドメイン抗体フラグメントであるナノボディ(VHH; variable domain of heavy chain of heavy-chain antibody)は、約15 kDaという極めて小さな単一免疫グロブリン領域でありながら、従来の抗体に匹敵する高い抗原特異性と親和性を発揮する (Hamers-Casterman et al. 1993)。さらに、大腸菌を用いた安価かつ高収量な発現系が適用可能であり、真核細胞の細胞質内のような還元環境下でも立体構造を維持して機能するという優れた生化学的特性を備えている (Muyldermans 2013)。これらの利点から、ナノボディは基礎研究における生化学的ツールから、診断薬、さらには次世代の治療薬に至るまで、極めて幅広い分野での応用が期待されている。特に、構造生物学の領域においては、Gタンパク質共役型受容体(GPCR; G-protein-coupled receptor)のように構造揺らぎが大きく不安定な膜タンパク質を、活性状態または不活性状態といった特定の機能的コンフォメーションに固定・安定化させる結晶化シャペロンとして、これまでにない革命的な貢献を果たしてきた。例えば、活性化状態のベータ2アドレナリン受容体(β2AR)の構造決定を可能にしたNb80 (Rasmussen et al. 2011) や、GPCR-Gsヘテロ三量体複合体の結晶構造解析に不可欠であったNb35 (Rasmussen et al. 2011) など、多くの画期的な成果がナノボディの存在によってもたらされている。
しかしながら、これまでに報告された実用的なナノボディのほぼ全ては、ラマやアルパカといったラクダ科動物への標的抗原の免疫化(immunization)プロセスを経て取得されている。この動物免疫化アプローチは、数ヶ月に及ぶ長い期間と多大な飼育・維持コスト、さらには高度な獣医学的設備を必要とするため、一般的な研究室が容易に導入するための大きな障壁となっていた。さらに深刻な問題として、動物体内での免疫応答に依存する以上、自己抗原や種間で高度に保存されたエピトープに対しては、免疫学的トレランス(自己寛容)が働くため、特異的抗体を得ることが本質的に困難であるという限界が存在する。タンパク質間相互作用やアロステリックなシグナル伝達を司る重要な機能部位は、進化的に高度に保存されていることが多いため、これらの部位を標的とするコンフォメーション選択的ナノボディを迅速に同定する手法が決定的に不足していた。
この課題を解決するため、合成ライブラリーを用いたファージディスプレイ技術による完全in vitroでのナノボディ取得システムも一部で試みられてきたが (Moutel et al. 2016)、これらのライブラリーは高額な商業的ライセンス契約や受託サービスを通じてのみ利用可能であり、学術研究コミュニティにおける広範な利用を制限する要因となっていた。また、従来のファージディスプレイ法は、単に標的抗原に結合するだけの高親和性クローンを濃縮・単離することには長けているものの、特定の立体構造(コンフォメーション)を選択的に認識する機能的クローンをスクリーニングすることは技術的に極めて困難であった。これは、動物由来ナノボディの最大の強みである「活性状態の特異的安定化」をin vitro合成系で再現する上での大きな障壁となっていた。したがって、ラクダ科動物の免疫化を完全に回避しつつ、特定のコンフォメーションを選択的に認識・安定化できるナノボディを、一般の研究室でも迅速かつ安価に同定できる効率的なプラットフォームの確立が未解明の課題として残されていた。
目的
本研究の目的は、ラクダ科動物の免疫化プロセスに一切依存しない、完全in vitroの合成ナノボディ発見プラットフォームを、酵母表面ディスプレイ(yeast surface display)技術を基盤として構築することである。このプラットフォームの生化学的・構造生物学的な有用性を実証するため、まずヒト血清アルブミン(HSA; human serum albumin)を標的としたナノボディの取得と、その複合体の高分解能X線結晶構造解析を行う。さらに、本プラットフォームの最も重要な検証として、構造柔軟性が高く創薬標的として極めて重要な2つのヒトGPCR、すなわちβ2ARおよびA2Aアデノシン受容体(A2AR)を標的とし、その活性状態(agonist-bound state)を選択的に認識・安定化する機能性ナノボディを効率的に同定・評価するシステムを確立する。最終的に、構築した合成ライブラリーおよび詳細な選択プロトコルを非営利研究目的の学術コミュニティに対して無償で提供することにより、世界中の研究室におけるナノボディ開発の民主化と、膜タンパク質構造生物学および創薬科学の発展を強力に支援することを目指す。
結果
合成ライブラリーの品質および生化学的妥当性の検証: 構築した合成ナノボディライブラリーの生化学的な有用性を評価するため、ライブラリーから完全にランダムに11個のクローンを選択し、大腸菌での発現および精製試験を行った。その結果、11クローン中9クローン(82%)において、1 Lの培養あたり20 mgを超える極めて高い発現量(>20 mg/L)が得られ、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)において凝集のない良好な単一ピーク(モノディスパースなプロファイル)を示した (Supplementary Fig. 1)。この結果は、本ライブラリーが、合成抗体フラグメントにしばしば見られる不溶化や凝集といった生化学的欠陥を克服し、極めて安定で扱いやすいクローンを高頻度で産出するように精密に設計されていることを証明している。NGS解析により、ライブラリー全体で少なくとも1 × 10⁸以上のユニークな全長ナノボディ配列がカバーされていることが確認され、酵母表面におけるナノボディの提示効率(expression rate)は約26%に達していた。
HSA結合ナノボディの取得と高分解能立体構造解析: 本プラットフォームのバリデーションとして、可溶性抗原であるヒト血清アルブミン(HSA)に対する選択を実施した。安価なMACSのみを用いた4ラウンドの選択により、HSAに対して極めて高い特異性を示すナノボディクローン「Nb.b201」を同定した (Fig. 2a)。SPR解析の結果、Nb.b201はHSAに対してKD = 430 nMの親和性で結合し、種間で高度に保存されているマウス血清アルブミン(MSA)には一切結合しないという厳密な種特異性を示した (Supplementary Fig. 3)。Nb.b201単独(分解能1.4 Å、PDB 5VNV)およびHSA-Nb.b201複合体(分解能2.6 Å、PDB 5VNW)のX線結晶構造を決定することに成功した (Table 1)。構造比較解析により、Nb.b201は抗原未結合状態から結合状態へと移行する際、CDR3ループの主鎖(バックボーン)および側鎖において、最大数Åに及ぶ劇的なコンフォメーション変化(大規模な再配向)を起こすことが明らかとなった (Fig. 2e)。また、多くの自然由来ナノボディが抗原の凹型ポケットを認識するのとは対照的に、Nb.b201は主にその長いCDR3ループを介して、HSA表面の凸型突起(convex protrusion)を包み込むように結合するという、極めてユニークな相互作用モードを有していることが判明した (Fig. 2c)。
β2AR活性状態選択的ナノボディの取得と親和性評価: MACSと2色FACSを組み合わせた高度なセレクション戦略を適用することにより、アゴニスト(BI167107)結合型β2ARを特異的に認識する13種類のユニークなナノボディクローンを同定した (Fig. 3d)。選抜された代表的な4つのクローン(Nb.c200、Nb.c201、Nb.c202、Nb.c203)について、SPRを用いた単一サイクル速度論解析(single-cycle kinetics)を実施したところ、アゴニスト結合型β2ARに対する結合親和性(KD)は44 nMから151 nMの範囲にあり、動物免疫化によって得られた既存の代表的ナノボディNb80(KD = 140 nM)と同等以上の極めて高い親和性を有していることが実証された (Fig. 3g)。この結合親和性の測定は、n=3 replicatesの独立した実験によって再現性が確認された。
薬理学的活性状態安定化能の検証: ナノディスクに再構成したβ2ARを用いた放射性リガンド競合結合アッセイにおいて、精製したこれら4種類のナノボディ(5 µM)を添加したところ、すべてのクローンにおいて、受容体に対するアゴニスト(adrenaline)の結合親和性が劇的に上昇(左方シフト)することが確認された (Fig. 3e)。この薬理学的挙動は、本プラットフォームから得られた合成ナノボディが、受容体の細胞内ドメインに結合し、その活性化状態の立体構造をアロステリックに強力に安定化できる能力(Gタンパク質模倣能)を有していることを決定づけるものである。このアッセイはn=3 replicatesの独立した測定により実施され、アゴニスト親和性の向上は統計学的に極めて有意であった(p<0.001)。
結晶化促進能および細胞内シグナル伝達阻害能の検証: 最も有望なクローンであるNb.c200を用いて、アゴニスト(BI167107)結合型β2ARとの複合体を調製し、脂質立方相(LCP; lipidic cubic phase)法を用いた結晶化スクリーニングを実施した。その結果、Nb.c200は複合体を高度に安定化し、多様な沈殿剤条件下において、構造解析に耐えうる良好な共結晶を迅速に与える結晶化シャペロンとして機能することが実証された (Fig. 3i)。さらに、HEK293T細胞を用いた生細胞cAMPアッセイにおいて、これらのナノボディを細胞内でイントラボディ(intrabody)として発現させたところ、アドレナリン刺激によるβ2ARのGsシグナル伝達が強力に抑制された。特にNb.c203は、アドレナリンによって誘導される最大シグナル応答(Emax)を最大45%阻害し、細胞内シグナルモジュレーターとしての極めて高い有用性を示した (Fig. 3j)。これは、対照群と比較して約1.8-foldのシグナル抑制効果に相当する。
A2Aアデノシン受容体特異的活性状態選択的ナノボディの取得: 本プラットフォームの汎用性をさらに検証するため、別のクラスA GPCRであるヒトA2Aアデノシン受容体(A2AR)を標的とした選択を行った。2ラウンドのMACSとそれに続く1ラウンドの2色FACS選択により、アゴニスト(UK 432097)結合型A2ARに特異的な2つのナノボディクローン「Nb.AD101」および「Nb.AD102」を取得した (Fig. 4a)。オン酵母結合アッセイ(on-yeast binding assay)および精製タンパク質を用いたプルダウン実験において、これらのナノボディはアゴニスト結合型A2ARに対して強力に結合する一方で、アンタゴニスト(ZM 241385)結合型A2ARには全く結合しないという、完璧なコンフォメーション選択性を有していることが確認された (Fig. 4c, d)。これまでA2ARに対する活性状態選択的なナノボディは動物免疫化でも取得されておらず、本成果は完全in vitro選択系ならではの極めて強力な優位性を示すものである。
非精製抗原を用いた迅速なナノボディ取得: 精製が極めて困難で翻訳後修飾を多く含む分泌型代謝ホルモンであるヒトアジポネクチン(FLAGタグ付き)を標的とし、HEK293細胞の培養上清(非精製サンプル)を直接用いたセレクションを試みた。3ラウンドのMACSとそれに続くFACS選択により、精製工程を一切経ることなく、アジポネクチンに対して特異的に結合する3種類のナノボディクローンを直接取得することに成功した (Supplementary Fig. 4)。SPR解析により、これらのクローンが精製アジポネクチンに対して十分な結合親和性を示すことが確認され、本プラットフォームが、標的タンパク質の精製という構造生物学における最大のボトルネックを完全にバイパスし、ナノボディ開発の効率を劇的に向上させ得る革新的なアプローチであることを実証した。
考察/結論
先行研究との違い: 本研究で開発された合成ナノボディ発見プラットフォームは、従来のラクダ科動物の免疫化プロセスに依存する手法と異なり、完全なin vitro選択系であるため、動物の飼育設備や数ヶ月に及ぶ免疫化期間を一切必要とせず、わずか2〜3週間という極めて短い期間でのナノボディ同定を可能にする。また、従来のファージディスプレイを用いた合成ライブラリーが、高額な商業的契約を通じてのみ利用可能であったのに対し、本プラットフォームは学術研究目的において完全に無償で提供される。さらに、ファージディスプレイでは技術的に極めて困難であった「特定のコンフォメーションを選択的に認識するクローンの選抜」が、酵母表面ディスプレイと多色FACSを組み合わせた精密なセルソーティング戦略により、極めて容易かつ確実に実施できるようになった点が、これまでのスクリーニング技術と対照的である。
新規性: 本研究は、PDBに登録された構造既知の安定なナノボディの構造統計データに基づいてCDR多様性を精密に設計した、初の完全in vitro合成酵母ディスプレイライブラリー(多様性 > 1 × 10⁸)を構築した。さらに、本研究で初めて、酵母表面ディスプレイと2色FACSを組み合わせた選択システムを用いることで、これまで動物免疫化でも取得が困難であった、ヒトGPCR(β2ARおよびA2AR)の活性状態を選択的に認識・安定化するナノボディを、完全in vitroで迅速に同定することに成功した。また、高度な精製工程を経ることなく、細胞培養上清中の非精製抗原を直接用いて特異的ナノボディを取得できることを実証した点も、極めて高い新規性を有している。
臨床応用: 本プラットフォームは、GPCRをはじめとする膜タンパク質を標的とした創薬科学および構造生物学において、極めて大きな臨床的意義を有する。従来、新規創薬ターゲットの構造決定や機能解析には、動物免疫化によるナノボディ取得が必須であり、これが創薬プロセスの大きなボトルネックとなっていた。本技術により、活性状態や不活性状態といった特定の治療薬標的コンフォメーションを固定するナノボディを迅速に取得できるため、構造ベース創薬(SBDD; structure-based drug design)や、特定のシグナル伝達経路のみを遮断・活性化するバイアス型リガンド(biased ligand)の創出が劇的に加速される。また、免疫学的トレランスを回避できるため、がんや自己免疫疾患に関与する高度に保存された自己抗原に対する治療用抗体・ナノボディ医薬品の開発にも直接的な臨床応用が期待される。
残された課題: 今後の検討課題として、本合成ライブラリーから得られるナノボディの生体内(in vivo)における安定性、半減期、および免疫原性の詳細な評価が挙げられる。また、より多様なGPCRクラスや、イオンチャネル、トランスポーターといった他の難結晶性膜タンパク質複合体に対する適用性の検証も、今後の重要な研究方向性である。さらに、FACSによる選択精度を維持しつつ、より大規模なライブラリー(> 10¹⁰)をハイスループットにスクリーニングするための、さらなる自動化技術の導入が望まれる。
方法
ライブラリーの設計と構築: PDB(Protein Data Bank)に登録されている93種類のユニークなナノボディの立体構造およびアミノ酸配列データを詳細に解析し、相補性決定領域(CDR; complementarity-determining region)における位置特異的なアミノ酸出現頻度を精密に再現する合成ナノボディライブラリーを設計した。フレームワーク領域(FR; framework region)には、ラマの生殖細胞系列遺伝子であるIGHV1S1-IGHV1S1S5に由来する、生化学的に極めて安定なコンセンサス配列を採用して固定した。CDR1に4箇所、CDR2に1箇所の高多様性残基を導入し、最も重要な抗原認識部位であるCDR3には、自然界のレパートリーに見られるループ長の多様性を模倣するために、7残基、11残基、または15残基の異なる長さを持つ高多様性領域を設計した。多様性の導入にあたっては、不要な化学反応性や分子間架橋を避けるためにシステイン(Cys)およびメチオニン(Met)を意図的に除外したトリマーホスホラミダイト(trimer phosphoramidite)混合物を使用し、コドン頻度を厳密に制御した (Kayushin et al. 1996; Kayushin et al. 2000)。これらの設計に基づき、合成オリゴヌクレオチドプライマーをアセンブリーPCRによって連結し、全長ナノボディ配列をコードするDNAライブラリーを構築した。
新規酵母表面ディスプレイシステムの開発: 従来のAga2p-Aga1p融合システムに代わる、より簡便で立体障害の少ない新規なディスプレイシステムを構築した。合成スターク(649アミノ酸)からなる長い柔軟なリンカーを介して、目的のナノボディをグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI; glycosylphosphatidylinositol)アンカーにより酵母細胞壁へ共有結合的に表示させる発現ベクター(pYDS649)を設計した。N末端には、酵母での分泌発現効率を劇的に向上させることが報告されている改変型交配因子アルファ(mating factor alpha)プレプロテイン配列を付加した (Rakestraw et al. 2009)。このプラスミドベクターと、上記で構築した全長ナノボディDNAライブラリーを、プロテアーゼ欠損酵母株であるSaccharomyces cerevisiae BJ5465株に共形質転換し、細胞内での相同組換えを利用して、約5 × 10⁸の独立したトランスフォーマントからなる酵母ディスプレイライブラリーを構築した。次世代シーケンシング(NGS; next-generation sequencing)解析により、ライブラリーが少なくとも1 × 10⁸以上のユニークな全長ナノボディクローンを含み、設計通りのアミノ酸多様性を有していることを確認した。
セレクション戦略とコンフォメーション選択的スクリーニング: 標的抗原に対する特異的結合クローンを濃縮するため、磁気細胞分離法(MACS; magnetic-activated cell sorting)と蛍光活性化細胞分取法(FACS; fluorescence-activated cell sorting)を組み合わせた段階的なセレクションプロトコルを実施した。非特異的結合クローンや磁気ビーズ、蛍光色素に対する結合クローンを排除するため、各セレクションラウンドの前に、抗原未結合の磁気ビーズのみを用いたネガティブセレクション(デプレッション)を徹底した。さらに、MACSの連続するラウンド間では、Alexa Fluor 647とFITC(fluorescein isothiocyanate)といった異なる蛍光色素タグを交互に使用することで、色素特異的な偽陽性クローンの濃縮を防いだ。GPCRの活性状態選択的ナノボディの取得においては、アゴニスト(BI167107)を結合させた活性型受容体と、アンタゴニスト(carazolol)を結合させた不活性型受容体を、それぞれ異なる蛍光色素で標識し、2色FACSを用いて「アゴニスト結合受容体にのみ結合し、アンタゴニスト結合受容体には結合しない」クローンを同時に陽性・陰性選択する高度なソーティング戦略を適用した。
生化学的・生物物理学的検証実験: 選抜されたナノボディクローンは、ペリプラズム発現ベクターpET26bに移植し、大腸菌BL21 (DE3) 株を用いて発現・精製した。結合親和性(KD)および結合速度論的パラメータの測定には、表面プラズモン共鳴(SPR; surface plasmon resonance)システム(Biacore T200)を用い、ビオチン標識した抗原をセンサーチップ上に固定化して解析した。GPCRに対する活性状態安定化能の評価には、高密度リポタンパク質(HDL; high-density lipoprotein)を用いたナノディスク(nanodisc)に再構成した受容体を使用し、放射性リガンド([³H]-dihydroalprenolol; [³H]DHA)を用いた競合結合アッセイを実施した。細胞内シグナル伝達調節能の評価には、HEK293T細胞を用いたCRE-SEAP(secreted embryonic alkaline phosphatase)レポーターアッセイを適用し、アドレナリン刺激によるcAMP産生に対するナノボディの阻害効果を測定した。HSAとナノボディ(Nb.b201)複合体の立体構造決定のため、X線結晶構造解析を実施し、データ収集はAdvanced Photon Source(GM/CA beamlines 23ID-B/D)で行った。構造決定にはPhaserを用いた分子置換法を適用し、Coot (Emsley et al. 2004) およびPhenix (Adams et al. 2010) を用いて構造の精密化を行った。すべての統計解析およびグラフ作成にはGraphPad Prismを使用し、生化学的測定は少なくともn=3の独立した実験(biological replicates)に基づいて実施された。また、統計的有意差の検討には、多重比較を伴うone-way ANOVA(一元配置分散分析)およびStudent t-test(スチューデントのt検定)を用いた。