• 著者: Pellegrini C, Argnani L, Broccoli A, Stefoni V, Derenzini E, Gandolfi L, Casadei B, Maglie R, Pileri S, Zinzani PL
  • Corresponding author: Pier Luigi Zinzani (Institute of Hematology “L. and A. Seràgnoli,” S. Orsola-Malpighi Hospital, Via Massarenti 9, 40138 Bologna, Italy)
  • 雑誌: The Oncologist
  • 発行年: 2014
  • Epub日: 2014-05-28
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 24869930

背景

末梢性T細胞リンパ腫 (peripheral T-cell lymphoma, PTCL) は侵攻性かつ予後不良の非ホジキンリンパ腫群であり、CHOP (cyclophosphamide, doxorubicin, vincristine, prednisone) が標準一次治療として広く用いられているが、多くの患者が再発・難治性経過をたどる。18F-フルオロデオキシグルコース (fluorodeoxyglucose, FDG) を用いたPET (positron emission tomography) はリンパ腫のステージング・治療評価に重要な役割を果たしており、ホジキンリンパ腫 (Hodgkin lymphoma, HL) やびまん性大細胞型B細胞リンパ腫 (diffuse large B-cell lymphoma, DLBCL) では腫瘍が常にFDG高集積を示すことが確立されている。早期中間期PETはこれらのB細胞リンパ腫で予後予測能が高く、Gallamini et al. (JClinOncol 2007) は進行期HLにおいて中間期PETが国際予後スコア (IPS) より予後予測力で優れることを報告し、Jerusalem et al. (NuclMedCommun 1999) も全身18F-FDG PETによるHL・非ホジキンリンパ腫評価の意義を確認した (Zinzani et al. AnnOncol 2006)。

しかしPTCLでは状況が異なる。Feeney et al. (AJR 2010) はT細胞リンパ腫サブタイプによりFDG陽性率が皮膚ALCL (anaplastic large-cell lymphoma) の50%から成人T細胞白血病/リンパ腫の100%まで大きく変動し、FDG集積の予測性がB細胞リンパ腫より劣ることを示した。中間期PETの予後予測能についても先行研究の結果は矛盾しており、Cahu et al. (n=54のNK/T細胞リンパ腫) ではOS・PFS双方で有意差を認めなかった (Cahu et al. AnnOncol 2011)。一方、Casulo et al. は再病期診断コホート50例でPFSに有意差を示したが、OSは有意でなかったと報告した (Casulo et al. LeukLymphoma 2013)。Li et al. (JNuclMed 2013、n=88) は成熟T細胞・NK細胞リンパ腫でPFS・OS双方に有意差を認めたが、コホートの組織型異質性・化学療法レジメンの多様性・中間期PET実施タイミングの不統一が結果解釈を困難にしていた。PTCLにおける均質な初回化学療法を受けた患者群での系統的な中間期PET予後評価というgap in knowledgeが解消されないまま残っていた。

目的

進行期PTCL患者において、CHOP 3コース後の中間期FDG-PET (PET+3) の陰陽性が無増悪生存期間 (progression-free survival, PFS) および全生存期間 (overall survival, OS) の独立した予後予測因子として機能するかを後方視的に評価する。

結果

患者背景・組織型分布 (Table 1):n=34例 (男性19例 [55.9%]、女性15例 [44.1%])、診断時中央値年齢46歳 (範囲21-81歳)。病期はStage III: n=9例 (26.5%)、Stage IV: n=25例 (73.5%) であった。B症状を有する症例は14例 (41.2%)、バルキー病変あり4例 (11.8%)、骨髄浸潤あり8例 (23.5%)、節外浸潤あり15例 (44.1%) であった。組織型の内訳はPTCL-not otherwise specified (NOS) n=11例 (32.4%)、ALK (anaplastic lymphoma kinase) 陽性ALCL n=9例 (26.5%)、ALK陰性ALCL n=6例 (17.6%)、AITL (angioimmunoblastic T-cell lymphoma) n=6例 (17.6%)、NK (natural killer)/T細胞リンパ腫 n=2例 (5.9%) であった。国際予後指数 (international prognostic index, IPI) I/II: n=26例、III/IV: n=8例。T細胞リンパ腫予後指数 (prognostic index for T-cell lymphoma, PIT) 0/I: n=21例、II/III: n=13例。自家幹細胞移植 (autologous stem cell transplantation, ASCT) を施行した症例はn=16例であり、うちn=8例が寛解固定目的、n=8例が2次治療目的であった。

中間期PET (PET+3) と最終PET (PET+6) の一致率・治療奏効:PET+3陰性n=27例 (79.5%)、陽性n=7例 (20.5%) であった。PET+3陰性27例のうちPET+6でも陰性が19例 (70.4%)、陽性へ転換した例は8例 (29.6%) であった。PET+3陽性7例のうちPET+6で陰性へ転換したのは1例のみで、6例はPET+6でも陽性のままであった。3コース後のPET陽性7例の奏効はPR 6例、PD 1例であった。最終評価ではCR 20例 (59%)、PR 3例 (9%)、非奏効/PD 11例 (32%) であり、臨床的CRとPET+6陰性の一致率は100%であった。PETはCTによる奏効評価の格下げを引き起こさなかった。

PFS解析:中間期PET陰陽性群の比較 (Fig. 1):中央値追跡期間36ヶ月の時点において、PET+3陰性群のPFSは73%であったのに対し、PET+3陽性群は17%に留まり、群間に有意差が認められた (p=0.02)。この明確なPFS差は中間期PETの陰性所見がPTCLにおける長期無増悪生存と強く関連することを示す。先行4研究との比較を示すTable 2によると、本研究はLi et al. (72% vs 21%、p<0.001) とともに最も顕著なPFS差を示したグループに属し、PFS有意差を認めたCasulo et al. (63% vs 25%、p=0.03) とも方向性が一致した。一方、Cahu et al. (69% vs 49%、p=0.10) は有意差なしであり、研究間の不一致が確認された。

OS解析および持続完全寛解 (CCR) との関連 (Fig. 2、Fig. 5):89ヶ月時点のOS解析では、PET+3陰性群79%に対してPET+3陽性群21%と有意差が認められた (p=0.02)。中央値追跡期間4年における全コホートのOSは65% (死亡13例)、PFSは61% (115ヶ月時点) であった (Fig. 5)。解析時点でのPET+3陰性例n=19例中17例 (89.5%) が持続完全寛解 (CCR) を維持していたのに対し、PET+3陽性例n=7例中CCRを維持したのは1例 (14.2%) のみであった。PET+3で陰性だったがPET+6で陽性へ転換したn=8例のその後の経過は、6例がASCTを施行 (最終追跡時: 3例死亡・1例PD・2例再治療後CR)、残り2例はPD後に死亡した。PET+3陽性例でCCRを維持した者がほぼ皆無という所見は、早期PET評価の予後分離能の高さを示す。

ASCTサブグループ解析 (Fig. 3、Fig. 4):ASCT施行群 (n=16) と非施行群のOS曲線は、115ヶ月時点でそれぞれ59% vs 60%であり統計的有意差は認められなかった (p=0.17) (Fig. 3)。移植前PETの陰陽性でみると、PET陰性群のPFS 100% vs PET陽性群14.3%と顕著な差が示された (p=0.0047)。ASCT施行目的別のOS解析 (Fig. 4) では、寛解固定目的群71% vs 2次治療目的群47%であり有意差は認めなかった (p=0.08)。

考察/結論

本研究は進行期PTCL患者において中間期FDG-PET (PET+3) が独立した予後予測因子として機能することを後方視的コホートで示し、陰性群のPFS 73%・OS 79%と陽性群のPFS 17%・OS 21% (いずれもp=0.02) という明確な転帰差を明らかにした。PET+3陰性例の89.5%がCCRを達成・維持し陽性例でCCRを維持したのは14.2%にすぎないという対比は、中間期PET陰性所見が長期寛解維持と強固に関連することを示す。「共通の特徴なし」という観察から、PET+3は既存のIPI・PITとは独立した予後因子として機能する可能性が示唆される。

これまでの研究と比較すると、Cahu et al. (n=54) はOS・PFS共に有意差を認めなかった点で本研究と異なる結果であり (Cahu et al. AnnOncol 2011)、Casulo et al. はPFSのみ有意差ありでOSは有意でないという結果であり本研究と一部のみ一致する (Casulo et al. LeukLymphoma 2013)。Li et al. のみが本研究と同様にPFS・OS双方で有意差を示した。この既報との不一致には、コホートの組織型異質性・初回化学療法レジメンの多様性 (他研究では1〜10サイクルと幅があった)・中間期PET実施タイミングの不統一が影響していると考えられる。本研究の新規な特徴は、全患者が同一のCHOP 6コースレジメンを受け全員が同一タイミング (3コース後) で中間期PETを施行した均質コホートである点であり、これは本研究で初めて達成された解析条件の均一性であって内的妥当性の面でこれまで報告されていない水準を確保している。さらに全患者に基線PETを施行した点も本研究の独自性として挙げられる。

臨床応用の観点では、PET+3陽性のPTCL患者は早期から積極的な治療戦略変更 (高用量化学療法・ASCT早期移行・新規レジメン試験参加) の候補として同定できる可能性がある。臨床現場において中間期PETを用いた患者層別化は、陰性患者への既存治療継続と陽性患者への治療変更検討という意思決定の根拠となりうる。臨床的意義として移植前PET陰性群でPFS 100% vs 陽性群14.3% (p=0.0047) という結果はASCT適応選択への応用可能性を示唆する。

残された課題として、まず症例数n=34の後方視的研究という limitation が最大の制約であり、多変量解析を行うには不十分であった。ASCT施行例の存在は潜在的な交絡要因となりうる。前向き大規模多施設試験の実施が今後の検討として不可欠であり、読影基準の標準化 (Deauville score等の定量的基準導入) が将来研究での比較可能性確保に必須である。PTCLサブタイプ別 (PTCL-NOS・ALCL・AITL・NK/T等) のFDG集積特性と中間期PET予後予測能の差異についての更なる検討も課題として残る。中間期PET結果に基づく治療変更が転帰改善につながるかについてのプロスペクティブな検証がfuture researchとして求められる。

方法

2003年9月から2010年7月にかけて、イタリア・ボローニャ大学血液内科において進行期 (Ann Arbor stage III-IV) PTCLと診断・治療された34例を対象とした観察的後方視的コホート研究 (NCT番号の記載なし)。診断はWHO (World Health Organization) 分類に基づき専門病理医 (Stefano Pileri) が全生検を再検討した。連続症例として登録することで選択バイアスを回避し、施設倫理委員会 (Institutional Review Board) の承認を取得した上でデータを収集した。生存患者からは書面による同意を得た。

インダクション化学療法はCHOP 6コースを21日ごとに施行した。中間期FDG-PETスキャン (PET+3) はCHOP 3コース終了後・4コース開始直前に実施し、全患者で治療終了後にPET (PET+6) とCTスキャンによる最終再病期診断を行った (治療終了から1ヶ月以上後)。PETデータは同一の専門読影医が国際調和プロジェクト (International Harmonization Project) 基準に従い視覚的に評価した。完全奏効 (complete response, CR) はInternational Workshop for Response Criteria for NHL基準に従い定義し、再燃はすべて生検で確認した。部分奏効 (partial response, PR) または病態安定 (stable disease, SD) からの増悪は、既存病変の最大径積の50%以上増大または新規病変出現として定義した。

PFSは治療開始日からリンパ腫進行または任意の原因による死亡日まで、OSは診断日から任意の原因による死亡日として定義した。生存関数の推定はKaplan-Meier法を用い、群間比較はlog-rank検定で実施した。統計解析はStata 11 (StataCorp, College Station, TX) を使用し、有意水準はp<0.05とした。