- 著者: Nishanth Kuganesan, Margaret Pan, Haowen Jiang, Stavros Melemenidis, Jiangbin Ye, Sara Richter, Maximillian Diehn, Kerriann M. Casey, Edward E. Graves, Quynh Thu Le, Erinn B. Rankin
- Corresponding author: Erinn B. Rankin (Department of Radiation Oncology, Stanford University, Stanford, CA 94305, USA)
- 雑誌: SciAdv
- 発行年: 2026
- Epub日: 2026-07-03
- Article種別: Original Article
- PMID: 38955225
- Category: Basic-Others
- Topics: Lung Cancer, Metabolism, Oncology
- Tags: FTO, Cysteine Metabolism, Radiotherapy, NSCLC
- Entities: FTO, SLC7A11, CBS, CTH, NSCLC, ROS, GSH, DNA damage, FB23-2, Trolox, Liproxstatin-1
背景
肺がんは、米国において年間約227,000件の新規症例と125,000人の死亡を伴う、癌関連死亡の主要な原因である (Siegel et al. 2025)。最も一般的な肺がんのサブタイプは非小細胞肺がん (NSCLC) であり、肺がん全体の85%を占める (Hendriks et al. 2024)。NSCLCでは、TP53、KRAS、LKB1、NFE2L2/KEAP1、EGFRなどが最も頻繁に変異する遺伝子として報告されている (Arbour et al. 2018, Goldstein et al. 2016, Testa et al. 2018)。放射線治療、標的療法、免疫療法における進歩にもかかわらず、NSCLCの5年生存率は、生来性および後天性の抵抗性メカニズムにより依然として低い。これらのデータは、NSCLCの治療反応を改善するための治療標的の特定における満たされていない臨床的ニーズを浮き彫りにしている。
代謝再プログラミングは、NSCLCの癌増殖、生存、および治療抵抗性において重要な役割を果たす。システインは、NSCLC癌細胞の増殖と生存に必須のアミノ酸であり、非必須アミノ酸であるにもかかわらず、その重要性が強調されている (Ward et al. 2024, Kang et al. 2021)。システインはタンパク質翻訳の構成要素として機能し、グルタチオン (GSH) 合成の律速基質であるため、抗酸化防御に不可欠である (Zhang et al. 2022)。癌細胞は、主に2つの経路を通じて高いシステイン需要を満たす。1つは、システムXc[-]トランスポーター (SLC7A11サブユニットを含む) を介した細胞外シスチンの取り込みであり、もう1つは、トランスサルファレーション経路を介したシステインのde novo合成である (Zhang et al. 2022, Koppula et al. 2021, Zhu et al. 2019)。NSCLCでは、SLC7A11が過剰発現しており、予後不良と相関し、腫瘍増殖を促進することが示されている (Ji et al. 2018)。さらに、SLC7A11は上皮成長因子受容体 (EGFR) 阻害剤に対する抵抗性を促進し、シスチン取り込みの増強、グルタチオン合成、活性酸素種 (ROS) スカベンジング、および細胞死の減少につながる (Zhang et al. 2021)。細胞外シスチンが制限された状況や細胞ストレス下では、ホモシステインがシスタチオニンβ-シンターゼ (CBS) およびシスタチオニンγ-リアーゼ (CTH) の作用によりシステインに変換されるトランスサルファレーション経路が活性化される (Zhang et al. 2022, Zhu et al. 2019)。シスチン取り込みとトランスサルファレーション経路の二重阻害は、腫瘍におけるシステイン代謝を効果的に阻害するために必要である可能性があり、DJ-1ノックダウンによるトランスサルファレーション経路の阻害は、NSCLC腫瘍をシステムXc[-]トランスポーター阻害剤エラスチンに感作させることが報告されている (Cao et al. 2020)。
RNA修飾、特にN6-メチルアデノシン (m6A) を介したエピトランスクリプトーム制御は、癌における遺伝子発現を制御する重要な転写後メカニズムとして浮上している (He et al. 2019, Zaccara et al. 2019)。脂肪量および肥満関連 (FTO) 遺伝子はm6A RNA脱メチル化酵素として機能し、NSCLCを含む様々な悪性腫瘍において発癌性ドライバーとして関与している (Li et al. 2017, Su et al. 2020, Qiao et al. 2024, Li et al. 2019, Rastogi et al. 2025)。FTOは、癌遺伝子 (Su et al. 2018)、抗アポトーシス因子 (Niu et al. 2019)、および免疫抑制因子 (Yang et al. 2019) の制御を通じて腫瘍進行を促進することが示されている。さらに、FTOは癌の代謝再プログラミングの重要なエピトランスクリプトーム制御因子として浮上している。最近の研究では、FTOが解糖を調節する役割が明らかにされている。急性骨髄性白血病細胞では、FTOは好気性解糖の2つの主要因子であるホスホフルクトキナーゼ血小板 (PFKP) と乳酸デヒドロゲナーゼB (LDHB) の発現を促進する (Qing et al. 2021)。メラノーマ細胞では、FTOはc-JUN、JUN-B、およびC/EBPBの活性化を通じて解糖代謝を増強する (Liu et al. 2021)。さらに、FTOは淡明細胞腎細胞癌細胞におけるグルタミン取り込みと代謝再プログラミングにおいて重要な役割を果たす (Zhao et al. 2025)。しかし、システイン代謝におけるFTOの役割は、これまでほとんど未解明な点が課題として残されている。
目的
本研究は、RNA脱メチル化酵素FTOがNSCLC細胞のシステイン代謝を駆動する治療標的であることを明らかにすることを目的とした。具体的には、FTOがNSCLCの増殖と生存を促進するメカニズムを解明し、FTOの阻害がシステイン代謝、酸化ストレス、DNA損傷に与える影響を評価した。さらに、FTO阻害と放射線治療の併用がNSCLC治療において相乗的な効果をもたらす可能性をin vitroおよびin vivoモデルで検証することを目的とした。最終的に、FTOを標的とすることがNSCLC治療の臨床成績を改善するための理論的根拠を提供することを目指した。
結果
FTOはNSCLC細胞の増殖と生存を促進する: RNA脱メチル化酵素FTOがNSCLCを含むいくつかの癌種において発癌性因子として関与していることが、最近の研究で示されている (Wang et al. 2024, Xiao et al. 2020, Ji et al. 2025, Bian et al. 2021, Shimura et al. 2022, Gao et al. 2023)。異なる遺伝的背景を持つNSCLC細胞株H1299 (p53 null)、H292 (WT)、およびA549 (KRASおよびKEAP1変異) を用いてFTOの機能的役割を調査した。FTOの遺伝的または薬理学的阻害は、遺伝的背景に関わらず、これら3つのNSCLC細胞株すべてにおいて増殖と生存を減少させた (Fig. 1, D-F)。FTOノックダウン細胞における増殖と生存の減少がshRNAのオフターゲット効果によるものではないことを確認するため、shFTO-12 H1299細胞でFTO発現を回復させるレスキュー実験を行った。FTOの異所性発現は細胞の増殖と生存を回復させ、shFTO-12構築物の特異性を検証した (fig. S1, A and B)。さらに、この制御がFTOの触媒機能に依存するかどうかを判断するため、ノックダウン細胞で脱メチル化酵素不活性変異体 (H231A/D233A) を発現させた。野生型タンパク質とは異なり、酵素変異体はFTOノックダウンH1299細胞の増殖または生存を増強しなかった (fig. S1, A and B)。これは、FTOがその脱メチル化酵素活性を通じてNSCLCの進行を促進することを示している。さらに、強力かつ特異的な共有結合性FTO阻害剤であるFB23-2による治療は、グローバルなm6Aレベルを増加させ、これら3つのNSCLC細胞株すべてにおいて増殖と生存を減少させた (Fig. 1, G-L)。FB23-2処理により、H1299、H292、A549細胞におけるm6Aレベルはそれぞれ約1.5倍、2倍、1.8倍に増加した (p<0.001)。全体として、これらのデータは、FTOの遺伝的または薬理学的阻害のいずれもが、遺伝的背景に関わらず、複数のNSCLC細胞株の増殖と生存を減少させることを示している。
FTOはシスチン取り込みとトランスサルファレーション経路に関与する遺伝子の発現を促進する: FTOがNSCLCの増殖と生存を促進するメカニズムを決定するため、H1299細胞のコントロール (shCtrl-10) またはFTOノックダウン (shFTO-12) 細胞でRNAシーケンス解析を行った。FTOノックダウン細胞で発現が変化した遺伝子の経路濃縮解析により、システインおよびメチオニン代謝経路がFTOノックダウン細胞で最も下方制御される経路として同定された (Fig. 2A)。RNAシーケンスデータでは、システムXc[-]トランスポーターの触媒サブユニットであるSLC7A11に加え、トランスサルファレーション経路の2つの主要遺伝子であるCBSとCTHがFTOノックダウン細胞で下方制御されていた (data S1)。遺伝的または薬理学的FTO阻害のいずれもが、H1299細胞におけるSLC7A11、CBS、およびCTH mRNAの発現を減少させることを確認した (Fig. 2, B and C, and table S1)。FB23-2処理により、SLC7A11、CBS、CTHのmRNA発現はそれぞれ約0.5倍、0.4倍、0.6倍に減少した (p<0.001)。m6A conquerデータベースを用いて、SLC7A11、CBS、およびCTHの3’非翻訳領域 (3’UTR) および5’非翻訳領域 (5’UTR) にm6A濃縮が観察された (Zhao et al. 2026)。FTOノックダウン細胞の3’UTR領域内のSLC7A11 m6Aメチル化、5’UTR領域内のCBS m6Aメチル化、および3’UTR領域内のCTH m6Aメチル化における部位特異的な増加をm6A-定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応 (qRT-PCR) 解析により検証した (Fig. 2, D-F, and table S2)。これらの結果は、FTOがSLC7A11、CBS、およびCTHのm6A脱メチル化と発現を促進することを示している。
FTOはSLC7A11を介してNSCLC細胞のシスチン取り込みを促進する: FTOがSLC7A11およびシスチン取り込みの制御において果たす機能的役割を調査するため、FTOの遺伝的または薬理学的阻害がH1299、H292、およびA549細胞におけるSLC7A11タンパク質レベルを減少させることを確認した (Fig. 3, B and C, and fig. S2, A and B)。シスチン取り込みアッセイにより、FTOの遺伝的阻害がこれら3つの細胞株すべてにおいて細胞外シスチン取り込みを減少させることを明らかにした (Fig. 3, D and E, and fig. S2C)。H1299細胞におけるシスチン取り込みは、FTOノックダウンにより約50%減少した (p<0.0001)。FB23-2処理細胞でも同様の結果が観察された (Fig. 3, F and G, and fig. S2D)。FTOがSLC7A11の制御を通じてシスチン取り込みを促進するかどうかを判断するため、FTOノックダウン細胞でSLC7A11を異所的に発現させた (Fig. 3H)。FTOノックダウン細胞におけるSLC7A11発現の回復は、シスチン取り込みを回復させるのに十分であり、SLC7A11がNSCLC細胞におけるシスチン取り込みを促進するためにFTOによって制御される主要な因子であることを示している (Fig. 3, I and J)。
FTOはCBSおよびCTHの制御を通じてトランスサルファレーション活性を促進する: 細胞外シスチン取り込みに加えて、癌細胞はde novo合成トランスサルファレーション経路を通じてシステインを生成できる。この経路は、栄養が制限された状態や腫瘍微小環境で見られるような細胞ストレス下で特に重要であると考えられている (Zhu et al. 2019)。この経路では、メチオニンサイクルの代謝中間体であるL-ホモシステインが、律速酵素であるCBSによってL-シスタチオニンに変換され、その後CTHによってL-システインに切断される (Zhu et al. 2019)。本研究のデータは、FTOがCBSとCTHの発現を制御することを示している。FTOがCBS、CTH、およびトランスサルファレーション活性の制御において果たす役割をさらに調査するため、FTOの遺伝的または薬理学的阻害のいずれもが、H1299、H292、およびA549細胞におけるCBSおよびCTHタンパク質レベルを減少させることを確認した (Fig. 4, A and B, and fig. S3, A and B)。 NSCLC細胞におけるトランスサルファレーション活性におけるFTOの役割を決定するため、FTOノックダウン細胞とコントロール細胞をシスチン欠乏状態にし、システイン生合成の前駆体でありトランスサルファレーション経路に入るL-ホモシステインまたはL-システインのいずれかを補給した。コントロール細胞とFTOノックダウン細胞の両方が、生存のために細胞外シスチンに依存していた (Fig. 4, C and D)。シスチン欠乏H1299細胞では、外因性L-ホモシステインの補給により、shCtrl-10細胞では細胞生存率が93%に回復したが、shFTO-11細胞では63%、shFTO-12細胞では34%にしか回復しなかった (細胞生存率はそれぞれのシステイン補給条件に正規化されている) (Fig. 4, C and D)。これらのデータは、FTO枯渇がH1299およびH292細胞におけるトランスサルファレーション活性を減少させることを示している。FB23-2によるFTOの薬理学的阻害もこれらの知見を再現した (Fig. 4, E and F)。さらに、A549細胞はFTO阻害により生存率が低下し、L-ホモシステインによる部分的な回復しか示さなかった。これは、トランスサルファレーションへの依存度が低く、構成的なNRF2活性化によって付与される高い抗酸化緩衝能力と一致している (fig. S3, C and D)。
FTO阻害はGSH生合成を減少させ、NSCLC細胞の酸化ストレスとDNA損傷を増加させる: システインは、主要な細胞内抗酸化物質であるGSH生合成の重要な前駆体として機能する (Combs et al. 2019)。FTO阻害がシスチン取り込みとde novoシステイン合成の両方を損なうことを示唆する知見に基づき、FTO阻害が細胞内GSHレベルを減少させるかどうかを調査した。FTOの遺伝的または薬理学的阻害は、H1299、H292、およびA549細胞における総GSHレベルを減少させた (Fig. 5, A and B, and fig. S4, A-D)。H1299細胞における総GSHレベルは、FTOノックダウンにより約40%減少した (p<0.0001)。GSHの減少は、還元型から酸化型GSH/GSSG比の低下を伴い、FTO阻害がNSCLC細胞の酸化ストレスを増加させることを示している (Fig. 5, C and D, and fig. S4, E-H)。GSHは細胞ROSレベルを制御する重要な抗酸化物質である (Lu et al. 2009)。したがって、CM-H2DCFDA色素を用いて、FTOノックダウン細胞またはFB23-2処理細胞における細胞ROSレベルを定量化した。FTOの遺伝的または薬理学的阻害は、低密度で播種されたH1299細胞においてROSレベルを増強した (Fig. 5, E and F)。FTOノックダウンH1299細胞では、ROSレベルが約2.5倍に増加した (p<0.0001)。高密度で播種されたFTOノックダウン細胞では同様のベースラインROSレベルが観察されたが、グルタチオンペルオキシダーゼ-4 (GPX4) 阻害剤およびROS誘導剤であるRAS選択的致死-3 (RSL3) (Yang et al. 2014) による治療は、コントロール細胞と比較してFTOノックダウン細胞におけるROSレベルを増加させた (fig. S4, I-N)。これらの知見は、FTO阻害がNSCLC細胞の酸化ストレスを増加させることを示唆している。
FTO阻害と放射線治療の併用はNSCLC細胞のDNA損傷を悪化させる: NSCLC治療における放射線治療の臨床的関連性と、それがROSおよびDNA二本鎖切断 (DSB) の誘導を通じて大部分機能することを考慮し、FTO阻害が放射線治療との併用でDNA損傷をさらに増強するかどうかを調査した。この目的のため、細胞を比較的低線量の1.6 Gyの放射線で照射し、照射後30分および6時間でγH2AX焦点陽性細胞 (>15焦点) を定量化した。予想通り、コントロール細胞とFTO遺伝的または薬理学的阻害細胞の両方で、照射後30分で最大のDNA損傷が観察された (Fig. 6, A-D, and fig. S6, A-D)。しかし、照射後6時間では、FTOノックダウン細胞およびFB23-2処理細胞は、コントロール細胞と比較して、γH2AX焦点の増加と持続性を示した (Fig. 6, A-D, and fig. S6, A-D)。FTOノックダウンH1299細胞では、照射後6時間のγH2AX陽性細胞の割合が約2倍に増加した (p<0.0001)。これらのデータは、FTO阻害がDNA損傷を増加させ、NSCLCにおいて電離放射線と組み合わせると損傷をさらに悪化させることを明らかにしている。これは、FTO阻害がNSCLC治療のための放射線治療の有効性を高める可能性のある治療戦略を浮き彫りにしている。
FTO阻害はin vitroでNSCLC細胞の放射線反応を増強する: 放射線治療はNSCLCの標準治療であり続けている (Binkley et al. 2020)。本研究のデータは、FTO阻害がNSCLC細胞の細胞内ROS、酸化ストレス、およびDNA損傷を増加させることを示しており、FTOがNSCLC細胞の放射線反応を増強する潜在的な治療標的である可能性を示唆している。FTOの遺伝的および/または薬理学的阻害がNSCLC細胞の放射線反応を増強するかどうかを決定するため、まず、FTOノックダウン細胞またはFB23-2処理細胞で、放射線曝露線量を増加させたクローン形成生存アッセイを行った。FTOの遺伝的または薬理学的阻害は、H1299、H292、およびA549 NSCLC細胞の放射線反応を増強した (Fig. 7, A-L)。H1299細胞では、FTOノックダウンにより6 Gy照射後の生存率が約50%減少した (p<0.0001)。放射線反応表現型におけるFTO酵素活性の役割を確認するため、FTOノックダウンH1299細胞で野生型または脱メチル化酵素変異型FTOを異所的に発現させた。野生型FTOの発現は、照射されたFTOノックダウン細胞の増殖と生存を増強したが、変異型FTOの発現はFTOノックダウン細胞の放射線反応に影響を与えなかった (fig. S7, A and B)。これらの知見は、FTOの遺伝的および薬理学的阻害の両方がin vitroでNSCLC細胞の放射線反応を増強することを確立し、FTO標的療法と放射線療法の併用のためのメカニズム的根拠を提供している。
SLC7A11、CBS、またはCTHの阻害はNSCLC細胞の放射線反応を増強する: 次に、FTOを介した放射線反応におけるSLC7A11、CBS、およびCTHの機能的役割を決定しようとした。SLC7A11、CBS、またはCTHの遺伝的阻害は、FTOノックダウンを模倣し、NSCLC細胞の放射線感受性を増強した (Fig. 8, A-L)。H1299細胞では、SLC7A11ノックダウンにより6 Gy照射後の生存率が約40%減少した (p<0.0001)。FTOを介した放射線反応におけるSLC7A11、CBS、およびCTHの役割をさらに確認するため、FTOノックダウンH1299およびH292細胞で個別に標的遺伝子を異所的に発現させ、クローン形成アッセイを行った (Fig. 8, M-P)。SLC7A11、CBS、またはCTHの発現は、照射されたFTOノックダウン細胞の増殖と生存を増強した。これは、FTOノックダウン細胞における放射線反応の増強が、少なくとも部分的にはSLC7A11、CBS、およびCTHの下方制御を介して媒介される可能性を示唆している (Fig. 8, M-P)。NSCLCにおけるSLC7A11の腫瘍放射線反応における役割は十分に文書化されている (Cobler et al. 2018, Wang et al. 2025)。対照的に、CBSとCTHの役割はほとんど理解されていない。本研究では、NSCLC腫瘍と放射線反応におけるCTH阻害の治療可能性を評価した。CTHノックダウンは、H1299腫瘍異種移植片の増殖を減少させ、電離放射線との併用で、いずれかの治療単独と比較して腫瘍体積の相加的な減少をもたらした (Fig. 8, Q-T, and fig. S8A)。これらのデータは、NSCLC腫瘍の進行におけるCTHの重要性を浮き彫りにしている。
NSCLC異種移植モデルにおけるFTO阻害と放射線の相加的有効性: NSCLC治療のための放射線治療と組み合わせたFTO標的療法の治療可能性を決定するため、コントロールまたはFTOノックダウン腫瘍を偽照射または放射線治療 (5または6 Gy) で治療した。コントロール (shCtrl-10) またはFTOノックダウン (shFTO-12) H1299細胞を免疫不全マウス (n=6-9 mice per group) に皮下移植した (fig. S9A)。腫瘍が約150 mm³ (±40 mm³) に達したとき、マウスを照射 (5 Gy) または偽照射 (0 Gy) グループに無作為に割り付けた。FTO阻害単独はH1299腫瘍の増殖を減少させ、これは脂質ROS副産物である4-ヒドロキシノネナール (4-HNE) のレベル増加と関連していた (Fig. 8, A-E)。偽照射腫瘍は38日目に採取され、照射腫瘍はそれぞれのコントロール腫瘍が約1000 mm³の体積に達した46日目に採取された (Fig. 9, A-C)。FTOノックダウン単独は、すべての腫瘍モデルで腫瘍増殖を減少させ、NSCLC腫瘍の開始と進行におけるFTOの役割を示唆している (Fig. 9, A-C and F-J)。さらに、FTO阻害と放射線の併用は相加的な抗腫瘍効果をもたらし、これら2つのモダリティが相補的な経路を通じてin vivoでNSCLCの増殖を阻害することを示唆している (Fig. 9, A-C and F-J)。エンドポイントでの腫瘍重量は腫瘍増殖曲線と一致しており、FTO阻害単独がNSCLC (H1299、H292、およびA549) 腫瘍の増殖を減少させるのに対し、FTO阻害と放射線治療の併用が最も効果的な治療であることを示している (Fig. 9, A-C and F-J, and fig. S9, A-E)。 低分子FTO阻害剤候補薬の可能性を決定するため、H1299異種移植片におけるFB23-2の治療反応を評価した。H1299腫瘍が確立された後、FB23-2 (10 mg/kg) またはビヒクルを各グループのエンドポイントまで毎日投与した。薬剤注射の3日目に、腫瘍を0または5 Gyで照射した。FTOの遺伝的阻害と一致して、FB23-2治療単独はH1299腫瘍異種移植片の増殖を減少させた (Fig. 9, K-N)。さらに、FB23-2治療と放射線の併用は、H1299腫瘍異種移植片において相加的な抗腫瘍効果をもたらした (Fig. 9, K-N)。FB23-2と放射線併用群では、腫瘍体積がビヒクル群と比較して約70%減少した (p<0.0001)。m6A酵素結合免疫吸着アッセイ (ELISA) により、FB23-2治療がH1299腫瘍におけるグローバルなm6Aを増加させることを確認した (Fig. 9L)。研究全体を通じて、マウスは健康であり、初期体重を維持しており、FB23-2治療が全身毒性を誘発しなかったことを示している (fig. S9F)。
考察/結論
代謝再プログラミングは、腫瘍の開始、進行、および治療抵抗性を促進する癌の主要な特徴である。システイン代謝経路は、抗酸化反応、タンパク質翻訳、および翻訳後タンパク質修飾の制御において重要な役割を果たし、癌の増殖と生存に不可欠である。多くの癌細胞は外因性シスチンに依存するが、最近の研究では、シスチン欠乏および/または細胞ストレス下での細胞内システインレベルを維持する上で、de novo合成トランスサルファレーション経路の重要な役割が強調されている。これは、治療効果を高めるために両方の経路を標的とすることが必要である可能性を示唆している。しかし、癌細胞におけるシステイン再プログラミングを調整するメカニズムは、これまでほとんど未解明であった。
先行研究との違い: RNA脱メチル化酵素FTOは、腫瘍進行および治療抵抗性中の遺伝子発現を制御する重要なエピトランスクリプトーム因子として浮上している (Li et al. 2017, Su et al. 2020, Tsuruta et al. 2020, Gao et al. 2021)。本研究は、先行研究がFTOの癌における役割を一般的な遺伝子発現制御に限定していたのに対し、FTOがSLC7A11、CBS、およびCTHのm6A制御を通じて、シスチン取り込みとトランスサルファレーション経路の両方を促進することを初めて実証した点で大きく異なる。FTOの遺伝的または薬理学的阻害は、シスチン取り込み、トランスサルファレーション活性、およびGSHレベルを減少させ、これはROSおよびDNA損傷の増加と関連していた。酸化ストレスおよび酸化的損傷の制御は癌細胞の増殖と生存を維持するために重要であるため、FTO阻害は単独または放射線治療との併用でNSCLCの増殖と生存を減少させることを観察した。
新規性: 本研究で初めて、FTOがNSCLC細胞のシステイン代謝を促進し、NSCLCの増殖と生存をサポートするという新規な役割を明らかにした。これは、FTOがグルタミン代謝 (Zhao et al. 2025) や解糖 (Qing et al. 2021, Liu et al. 2021, Huang et al. 2025) を促進するという既報の知見に加えて、FTOが癌細胞の代謝再プログラミングの主要な制御因子としての役割をさらに強調するものである。本研究は、FTOがNSCLC細胞におけるSLC7A11の制御を通じてシスチン取り込みを促進することを実証した。SLC7A11は、癌細胞における主要なシスチントランスポーターであり、システイン恒常性と抗酸化防御を促進する (Koppula et al. 2021)。NSCLCでは、SLC7A11は上方制御されており、高いSLC7A11発現は進行期疾患および全生存期間の短縮と関連している (Ji et al. 2018)。機能的に、SLC7A11がNSCLCの増殖と生存を促進することを示した。これは、結腸直腸癌における以前の研究と一致して、FTOがNSCLCにおけるSLC7A11の発現とm6A修飾を促進することを示している (Qiao et al. 2024)。本研究は、FTOがNSCLC細胞におけるSLC7A11発現とシスチン取り込みを増強する分子レオスタットとして機能する、標的可能なエピトランスクリプトーム因子であることを実証した。
臨床応用: 本研究は、FTOがNSCLCにおけるレドックス代謝と放射線反応の重要な制御因子であり、システイン恒常性経路の協調的制御を通じて作用することを確立した。RNA脱メチル化とシステイン代謝適応との間の関連性を明らかにすることにより、本研究はFTOの発癌性役割に関する理解を広げ、NSCLCにおける治療成績を改善するためのFTO標的療法の説得力のある理論的根拠を提供する。FTO阻害が放射線と組み合わせると相加的な治療効果をもたらすという観察は、FTO阻害が代謝環境を整え (システイン枯渇と脂質過酸化を介して)、放射線治療のDNA損傷効果を補完する独立したストレスを提供するというモデルを支持する。また、低分子FTO阻害剤FB23-2が放射線と併用することで相加的な治療効果をもたらすことも示された。これは、FTO阻害がNSCLC治療の臨床応用において有望な戦略であることを示唆している。
残された課題: 今後の検討課題として、FTO阻害がDNA損傷修復に直接関与するかどうかをさらに詳細に調べる必要がある。本研究では、FTOノックダウン細胞におけるPARP1やPOLKなどのDNA修復関連遺伝子の発現変化は観察されなかったが、FTOがDNA損傷修復において別のメカニズムで機能する可能性は否定できない。また、FTO阻害剤の全身毒性に関するさらなる評価と、より臨床応用に近いFTO阻害剤の開発が残された課題である。
方法
本研究では、ヒトNSCLC細胞株H1299 (p53 null)、H292 (WT)、およびA549 (KRASおよびKEAP1変異) を使用した。細胞はそれぞれDMEMまたはRPMI-1640培地で培養し、マイコプラズマ検査を定期的に実施した。FTOの遺伝的阻害にはshRNAを用いたノックダウン細胞株を作製し、薬理学的阻害には低分子阻害剤FB23-2 (5 μM) を使用した。
細胞増殖と生存は、クローン形成アッセイにより評価した。細胞を6ウェルプレートに播種し、FTO阻害剤またはshRNAで処理後、7〜12日間培養した。形成されたコロニー数 (>50細胞) を計数し、生存率を算出した。DNA損傷の評価には、γH2AX免疫蛍光染色を行い、γH2AX焦点陽性細胞 (>15焦点) の割合を定量化した。
RNAシーケンス解析は、H1299 shCtrl-10細胞とshFTO-12細胞を用いて実施し、FTOノックダウンによる遺伝子発現変化を解析した。得られたデータはKEGG経路濃縮解析に供した。特定の遺伝子 (SLC7A11, CBS, CTH) のmRNA発現レベルは、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応 (qRT-PCR) により測定した。m6Aメチル化レベルは、m6A ELISAキットおよびm6A-qRT-PCRにより評価した。
シスチン取り込みアッセイには、蛍光シスチンアナログ溶液を使用し、細胞内シスチン取り込み量を測定した。トランスサルファレーション活性は、シスチン欠乏培地におけるL-ホモシステインまたはL-システイン補給時の細胞生存率をCell Titer Blueアッセイで評価した。細胞内グルタチオン (GSH) レベルおよびGSH/GSSG比は、GSH/GSSG-Gloキットを用いて測定した。活性酸素種 (ROS) レベルは、CM-H2DCFDA色素を用いたフローサイトメトリーにより定量化した。
in vivo実験では、免疫不全Rag2[ko] IL2rg[ko]マウスにH1299、H292、またはA549細胞を皮下移植し、異種移植モデルを確立した。腫瘍が約150 mm³に達した時点で、マウスを治療群 (FTOノックダウン、FB23-2投与、放射線照射、またはそれらの併用) に無作為に割り付けた。腫瘍体積はデジタルキャリパーで定期的に測定し、腫瘍重量は実験終了時に測定した。放射線照射はX-Rad SmARTキャビネット照射装置を用いて行った。統計解析には、GraphPad Prism (version 10) を使用し、一元配置分散分析 (ANOVA)、二元配置分散分析、またはStudentのt検定を適用した。腫瘍増殖曲線については、一般化線形回帰モデルを用いた。有意水準はp<0.05とした。