• 著者: Maziar Divangahi, Eva Kaufmann
  • Corresponding author: Maziar Divangahi (McGill University), Eva Kaufmann (McGill University / Queen’s University)
  • 雑誌: Science Immunology
  • 発行年: 2026
  • Epub日: 2026-07-03
  • Article種別: Review
  • DOI: 10.1126/sciimmunol.eaeb7976

背景

自然免疫が「記憶」を持ちうるという概念は、適応免疫の専売特許とされてきたリンパ球系記憶の枠組みを根本から覆す発見であった。その起源は 1882 年の Metchnikoff によるヒトデ幼生のマクロファージ観察に遡り、1960 年代には Mackaness et al. (1962) が Listeria monocytogenes 感染後のマクロファージが異種感染に対する増強防御を獲得することを実証した。パターン認識受容体 (PRR; pattern recognition receptor) の発見、特に Toll 様受容体 (TLR; Toll-like receptor) の Janeway と Medzhitov による同定 (AnnuRevImmunol et al. Basic 2002) は、PRR シグナリングがクロマチンリモデリングを介して炎症遺伝子の遺伝子特異的制御を駆動することを明らかにし、自然免疫記憶の分子的枠組みを確立した。そして 2011 年、Netea et al. (2011) はモノサイト・マクロファージに BCG または β-グルカン刺激を加えると、代謝・エピジェネティックリプログラミングを介した二次刺激への増強応答が持続することを “trained immunity (訓練免疫)” と命名し、自然免疫記憶の機能的実体を確立した。

しかしながら、自然免疫記憶が生涯を通じてどのように発達・変容するか、またエピゲノムとメタボロームの双方向連関が生涯曝露体 (exposome) によっていかに形成されるかは未解明な問題として残されてきた。特に、胎児期トレランス、早期生活マイクロバイオーム定着(5〜14 歳の favorable school-age period に感染死亡率が最低となる機序は未定)、成人期の適応免疫との統合、そして老化に伴う免疫老化と炎症老化の逆説的共存という生涯連続的な変化の統一モデルが不足していた。BCG 接種新生児の全死亡率低下効果 (観察研究で 40-50% 低減)、膀胱がん BCG 療法後の約 60% 再発率、β-glucan + BCG 組み合わせが前臨床モデルで生存率 100% をもたらした事実などは、訓練免疫の治療的増幅を支持するが、生涯フレームでの最適制御機構の解明は不十分であった。また、BCG・β-glucan などの治療的訓練が maladaptive な炎症増幅と protective な防御の間でどのように均衡するか、その制御機構の解明が治療応用には不可欠であった。本総説はこれらの問いに包括的に答えることを目的としている。

目的

自然免疫記憶 (trained immunity) の進化的起源と保存された分子機序を整理し、哺乳類における中枢・末梢・臓器レベルの訓練免疫の統合を論じた上で、胎児期・新生児期・成人期・老化期という生涯各フェーズにおける訓練免疫の機能変容と曝露体による形成を概説する。有益な訓練と maladaptive な訓練の均衡を決定する因子と、その知識を応用した訓練免疫ベース治療戦略の可能性を展望することを目的とした。

結果

進化的保存と分子機序:原生生物から哺乳類まで連続する訓練免疫の枠組み

自然免疫記憶の中核機序として、エピジェネティック可塑性・代謝リワイヤリング・広域応答性の 3 特性が原生生物・植物・無脊椎動物・脊椎動物にわたって保存されていることが確立されている。単細胞生物では熱ショック・酸化ストレス・pH 変動に対して、ヒストン修飾と転写因子結合の変化を介したクロマチン状態の持続的変化が次世代に有糸分裂遺伝する。植物では先行感染が systemic acquired resistance (SAR) を誘導し、クエン酸・アセチル-CoA・S-アデノシルメチオニンなどの代謝産物がヒストンアセチル化・メチル化を介して炎症応答遺伝子の「待機」クロマチン状態を安定化する。無脊椎動物では、好気性解糖から酸化的リン酸化への代謝シフト、グルタミン使用増大、脂質・コレステロール代謝変化が mTOR (mechanistic target of rapamycin) および HIF-1α (hypoxia-inducible factor-1α) を介してエピジェネティック変化と連動し、訓練免疫様の増強応答が世代間にまたぐ(ただし転代伝達は系統限定的)。最初の記載は植物で 1961 年、無脊椎動物で 1969 年(McKay and Jenkin)に遡る。脊椎動物の進化において、顎口類と顎なし類が各々独立に抗原特異的リンパ球系を獲得(顎なし類は variable lymphocyte receptor (VLR)、顎口類は recombination activating gene (RAG) 媒介 V(D)J 組換え)したにもかかわらず、両系統で訓練免疫の保存が確認されることは、trained immunity が適応免疫よりも古い、普遍的免疫戦略であることを示す。哺乳類では H3K4me3・H3K27ac によるプロモーター開放、ヒストンラクチル化(BCG ワクチン接種後に持続)、mTOR/HIF-1α 軸を介した代謝-エピゲノム双方向回路が確立されており、特に後者の bidirectionality は有力な介入標的となっている (Fig. 1, 2)。

中枢・末梢訓練免疫の統合:HSPC・組織常在細胞・構造細胞のネットワーク

哺乳類における訓練免疫は少なくとも 3 つの細胞層に階層化されている。骨髄の造血幹前駆細胞 (HSPC; hematopoietic stem and progenitor cell) が BCG・β-glucan・I 型/II 型インターフェロン (IFN; interferon) などの刺激(pathogen-associated molecular patterns (PAMPs) を含む)で転写・エピジェネティックプログラムを再編し、3ヶ月〜1年以上にわたり骨髄系後代細胞に訓練表現型を付与する中枢訓練免疫が第 1 層を構成する (Cell et al. Basic 2018;Kaufmann et al. Cell 2018)。HSPC レベルでのリプログラミングは複数回の骨髄系分化を経ても持続し、システミックかつ永続的な効果をもたらすことが 2 つのランドマーク研究で実証された (ref 21, 22)。第 2 層は末梢訓練免疫として、自己複製能を持つ肺胞マクロファージ・赤脾髄マクロファージなどの組織常在細胞が局所エピジェネティック・代謝変化を経てメモリーを形成し、血液からの補充前に局所防御を提供する。感染後、末梢マクロファージ集団は組織訓練型自己複製細胞と骨髄由来前駆細胞の双方から補充され、局所防御の二重層を形成する (ref 76-78)。Nature et al. Basic 2026 が示したようにヒト HSC が炎症ストレスを長期記憶して造血の質的変化をもたらし、CellStemCell et al. Basic 2026 が明らかにした緊急骨髄造血モジュールと同様の訓練的制御が中枢レベルで機能する。第 3 層は臓器訓練免疫 (organ-trained immunity) であり、内皮細胞・線維芽細胞・肺上皮細胞などの非免疫構造細胞も PRR を発現し、炎症・微生物刺激後にメモリー様機能特性を持つ。肺胞構造細胞は先行感染後に MHC クラス I/II の持続的高発現と抗ウイルス応答性増強を維持し (ref 83, 84)、血管内皮・平滑筋細胞は解糖リプログラミングとエピジェネティック変化を通じた訓練状態が活性化閾値を低下させ持続的炎症を助長する (ref 80, 85, 86)。訓練免疫と適応免疫の双方向クロストークも重要で、BCG の異種交差保護は BCG 抗原特異的エフェクターメモリー T 細胞が肺内でインフルエンザ感染時に抗原非依存的に活性化され、II 型 IFN を産生して肺胞マクロファージをトレーニングするという経路で生じる。さらに II 型 IFN シグナリングは HSPC の中枢訓練にも必要であり、適応免疫が中枢訓練の induction を支援することが示された (Fig. 3)。

有益な訓練免疫の機能:感染防御・がん免疫・生殖適応

訓練免疫の有益な機能はエネルギーコストを伴う適応的免疫応答の増強として理解される。(i) 進化的適応度、(ii) 即時健康利益、(iii) 長寿利益の 3 軸で分類できる。感染防御では、BCG ワクチン接種が新生児・幼児の非結核性感染症に対する全死亡率低下をもたらす heterologous trained immunity 効果(ref 107-110)が疫学・実験的研究で一致した結果を示す。訓練されたモノサイト・マクロファージ・樹状細胞は MHC 分子・共刺激リガンド (CD80/CD86) の発現増強を通じ T 細胞のプライミングを加速し、適応免疫が機能的に有意になるまでの 5-7 日の間隙を橋渡しする「自然免疫ブリッジング (innate immune bridging)」を提供する。がん免疫では、BCG の膀胱がん膀胱内療法が訓練免疫原理の臨床応用の実例であるが、約 60% の患者が BCG 療法後に再発する課題がある。β-グルカン投与が半世紀以上前から抗腫瘍活性を示すことが知られ、膵臓がん・肺がん・黒色腫モデルで悪性進行防止効果が報告されてきた。近年の研究では、BCG と β-グルカンの組み合わせが granulopoiesis をシナジスティックにリプログラムし、訓練好中球を生成することで前臨床膀胱がんモデルで 100% の生存率をもたらした (ref 26)。この訓練好中球は (i) 腫瘍微小環境による protumor 表現型への再プログラミングへの抵抗性、(ii) 腫瘍コアへの浸潤と腫瘍細胞直接排除能の増強という 2 つの抗腫瘍特性を持つ。このモデルは複数の PAMP (pathogen-associated molecular pattern) 駆動シグナル経路を同時に活性化することで中枢訓練免疫を増幅・持続させうることの概念実証を提供する。β-グルカン訓練 HSPC は制御性好中球を生み出し、IL-10 産生亢進・抗炎症表現型へのシフトを通じてインフルエンザ感染時の病態耐性 (disease tolerance) を促進するが、この訓練好中球の肺への動員には RORγt T 細胞を必要とする (ref 27)。生殖期には性ホルモン(エストロゲン/プロゲステロン/テストステロン)が自然免疫・適応免疫細胞の機能に直接受容体を介して作用し、エストロゲンが液性免疫を増強・2 型 自然リンパ球 (ILC2; innate lymphoid cell type 2) の発達と機能を調節する。女性は男性より強固な抗体応答を示し、経胎盤 IgG 移行や母乳 IgA を介した次世代保護に寄与する (ref 155-158)。

生涯にわたる訓練免疫の発達:胎児期・新生児期・成人期・老化とその変容

訓練免疫はライフステージに依存したダイナミックに調節されるシステムであり、内的発達プログラムと外的環境曝露の統合から各フェーズ特異的に変容する (Fig. 4)。胎児・新生児期では、胎盤を介した母体 IgG の移行(neonatal Fc receptor: FcRn が主要な輸送体)と母乳 IgA・IgG が受動免疫保護を担う一方、母体免疫細胞の胎盤移行 (microchimerism) が胎児骨髄において HSC の骨髄系分化を優先させ、早期生活感染への resilience を高める (ref 146, 147)。同時に、母体の制限的感染が胎児腸管上皮幹細胞のエピジェネティックリプログラミングを惹起し、長期的な感染保護を付与する真の世代間エピジェネティック効果も示されている (ref 148)。早期生活のマイクロバイオーム定着「機会の窓 (windows of opportunity)」では短鎖脂肪酸・インドール誘導体がヒストンアセチル化・DNA メチル化・noncoding RNA 経路を介して免疫トレランスと病原体防御の均衡を校正する。帝王切開・抗生物質・粉ミルク使用による腸内細菌叢乱れが小児自己免疫疾患リスクと関連することが n=複数前向きコホートで示されており (ref 176-178)、早期生活曝露が数十年後の免疫トラジェクトリを形成することが確認されている。成人期では、中枢・末梢・臓器訓練免疫が適応免疫と完全統合された状態が実現し、宿主抵抗性 (host resistance = 病原体除去) と病態耐性 (disease tolerance = 免疫病理限局) の均衡がホスト適応度を最大化する。訓練マクロファージは MHC および CD80/CD86 の高発現により naive T 細胞プライミングを加速し、適応免疫が完全機能するまでの 5-7 日の間隙を「自然免疫ブリッジング」によりカバーし、急性感染の重症化・慢性化を予防する。老化期では、加齢が免疫老化 (immunosenescence; 免疫応答の量的・質的低下) と炎症老化 (inflammaging; 慢性低grade炎症) の逆説的同時存在を生じる。老化 HSPC は自己複製低下・骨髄系偏向を示し、骨髄微小環境は altered stromal 細胞機能・hematopoietic support 低下・炎症シグナル増大を呈する (NatMed et al. Basic 2017)。組織常在マクロファージ(肝臓・脂肪組織・骨髄)は累積局所炎症曝露を通じた訓練表現型を帯び、数ヶ月〜年単位で持続し骨髄で新生 HSPC を継続的に訓練する悪循環を形成する。老化細胞の集積が senescence-associated secretory phenotype (SASP; 老化関連分泌表現型) として IL-6・IL-8・TNF を持続分泌し、自然免疫細胞を pro-inflammatory 状態へ持続訓練する。ミトコンドリア機能障害に伴うアセチル-CoA・NAD⁺減少は、H3K4me3・H3K27ac・ヒストンラクチル化などのメモリーエピジェネティックマークの確立・維持能を損なう「代謝-エピゲノム脱共役」をもたらし、老化自然免疫細胞での訓練の質的低下をもたらすと推察される (Fig. 4)。若年では訓練が数ヶ月持続するのに対し、老化では慢性的 pro-inflammatory 基準値の持続と特異的保護応答の急速消失が同時進行する。

Maladaptive 訓練と炎症疾患:動脈硬化・代謝疾患・アレルギー

訓練免疫の maladaptive 側面は、本来保護的である訓練が慢性的・異常な刺激により炎症増幅に転じる現象である。Western 型食事(高脂肪・高コレステロール)・大気汚染・心理的ストレス連動神経内分泌メディエーター・内因性 DAMP(oxidized LDL・ヘム)などの非感染性因子が HSPC・モノサイト・マクロファージに持続 pro-inflammatory プログラムを刻印する。IL-1β・IL-6・TNF などの炎症性サイトカイン遺伝子の promoter/enhancer でのクロマチン恒常的開放と、抗炎症性メディエーターの誘導障害が特徴的である。動脈硬化では Western 型食・酸化 LDL・アテローム発生シグナルがモノサイト・マクロファージに訓練表現型を惹起し、foam cell 形成・サイトカイン産生・プラーク進展を促進する。2 型糖尿病・肥満では慢性栄養過多と代謝性エンドトキシン血症が低grade全身性炎症を訓練免疫経路を介して代謝組織と血管で駆動し、インスリン抵抗性と心代謝リスクを悪化させる。連続的でなく反復的な訓練誘導体曝露の方が maladaptive 表現型を増強する。β-グルカン曝露が sterile inflammation(LPS)下では肺障害を増悪させ、炎症性骨吸収を通じた関節リウマチ型変化をもたらす点は、文脈依存的な両刃性を示す。アレルギー疾患では大気汚染物質・アレルゲンが pro-allergic・hyperreactive 自然免疫プロファイルを刻印し、喘息児モノサイトに IL-6・IL-8・TNF のエピジェネティック強化再産生が観察される (ref 126-128)。inflammaging は累積 maladaptive 訓練が HSPC レベルでコードされ、骨髄系後代細胞世代を通じて伝播するとされる (NatMed et al. Basic 2017;ref 218, 219)。

曝露体と治療的展望:訓練免疫のリセットと精密制御に向けて

曝露体 (exposome) は生涯を通じた全環境曝露の総体であり、自然免疫記憶の軌道を継続的に形成する (Fig. 5)。大気汚染は数十年にわたる酸化ストレス・慢性自然免疫活性化・加速エピジェネティック老化を誘発し (ref 126, 246-249);Western 食はPRR の持続的活性化と腸内細菌叢異常化による訓練を促し;慢性ストレスと睡眠障害は自然免疫細胞を訓練経路に活性化する (ref 129, 232-234)。現代都市環境は進化的最適化外の maladaptive 刺激(マイクロプラスチック・persistent organic pollutants (POPs)・高強度心理社会的ストレス)への曝露が増大しており、胎児期・早期生活の曝露がエピジェネティックマークを通じ数十年後の免疫老化と認知低下に影響する証拠が蓄積している (ref 267-271)。治療的に重要なのは、標的環境修正が訓練免疫の方向性を部分的にリセット・再配向できることである。身体活動は全身性エンドトキシン血症を低減・腸内細菌叢多様性を回復・訓練マクロファージを less inflammatory 表現型にシフトさせ、老齢でも効果を示す (ref 272, 273)。地中海食・植物性食事に富むポリフェノールは酸化ストレス駆動訓練トリガーを減少・有益微生物叢を支援する (ref 244)。Trained immunity ベースワクチン戦略(BCG・β-glucan・ナノ粒子 PRR リガンド送達系)は適応免疫を超えた広域保護の誘導、がん免疫療法との相乗効果、アレルギー・炎症性疾患における maladaptive set point リセットに有望である (ref 117-121)。重要な未解決問題として: (1) 広域応答性の innate memory プログラムにいかに特異性がエンコードされるか、(2) 「病的エピジェネティック刻印を消去」できるか、(3) 訓練免疫を慢性炎症誘導なしに精密制御できるか、(4) マイクロビオーム組成 (bacteriome・mycobiome・virome) と β-glucan への全身曝露が感染・がん・自己免疫への感受性/抵抗性を訓練免疫を通じて形成するかを集団レベルで観察できるか、が残されている。

考察/結論

長年、免疫記憶は適応免疫 (T・B 細胞) の専売特許とされてきたのと対照的に、本総説は自然免疫記憶が原生生物から哺乳類まで継続する新規の進化的枠組みを提示し、エピジェネティック可塑性・代謝リワイヤリング・広域応答性という 3 特性が核心を構成することを示した。特に、こうした機序を先行研究(Cell et al. Basic 2018;Kaufmann et al. Cell 2018)が HSPC レベルの中枢訓練として確立したことと異なり、本総説は胎児・新生児期から老化に至る生涯連続モデルを統合し、exposome が生涯各フェーズで訓練軌道を連続形成するというライフコース免疫学的観点を打ち出した。さらに Nature et al. Basic 2026 が示した HSC の炎症記憶との統合的な読みとして、中枢訓練免疫のダイナミクスが inflammaging における HSPC 異常と構造的に共通していることが本総説の生涯フレームで初めて明示された。

臨床応用として最も即時的な意義は、訓練免疫ベースワクチン戦略の洗練である。BCG の新生児全死亡率低下効果は訓練免疫の heterologous 保護効果として理解され、β-glucan + BCG の組み合わせが膀胱がん前臨床モデルで 100% 生存率をもたらした事実は、複数 PAMP 経路の組み合わせ活性化が中枢訓練免疫を増幅させるというコンセプトの proof-of-concept である。また inflammaging・心血管疾患・代謝症候群といった maladaptive 訓練が介在する慢性疾患において、介入目標として訓練免疫の epigenetic・metabolic reset が実行可能な方向性として示された。生活習慣介入(運動・地中海食・睡眠回復)が maladaptive 訓練刺激を減じ保護的表現型にシフトさせうる機序が提示された。

残された課題として、(i) 広域自然免疫記憶への特異性の付与機構、(ii) pathological エピジェネティックシグネチャの消去可能性、(iii) 炎症誘導なしの訓練免疫の精密増強・抑制制御、(iv) マイクロビオームの exposome-訓練免疫軸への寄与の集団レベル評価、(v) セックス差・加齢・遺伝的感受性の複合作用、が挙げられる。システム免疫学・縦断ヒトコホート・時間的エピゲノム解析を組み合わせた統合アプローチが次世代の研究課題となる。

方法

総説論文であり、独自の患者データ収集・実験は行っていない。文献は PubMed および関連データベース(Web of Science, Google Scholar)を検索し、trained immunity・innate immune memory・epigenetics・trained immunity + aging/cancer/vaccines・exposome + immunity などのキーワードで網羅的に検索した上で、著者の専門的判断により選択的に引用した(274 件の参考文献)。原著論文・総説・実験的動物モデル・疫学コホートおよびランダム化比較試験の知見を統合した。統計的メタ解析は行っておらず、各引用試験の効果推定量(relative risk・OR・生存率・死亡率低下 %)は原著の記載をそのまま参照した。PRISMA に準拠した系統的レビューではなく、expert-driven narrative review として位置付けられる。Glossary (Box 1) で 10 の用語(central trained immunity・disease tolerance・exposome・host resistance・immune priming・immune senescence・inflammaging・organ-trained immunity・SAR・trained immunity)を定義し、概念の統一的定義を提示した。