- 著者: Salem A, Mistry H, Hatton M, Locke I, Monnet I, Blackhall F, Faivre-Finn C
- Corresponding author: Corinne Faivre-Finn, PhD (Division of Cancer Sciences, University of Manchester / The Christie NHS Foundation Trust, Manchester, UK)
- 雑誌: JAMA Oncology
- 発行年: 2019
- Epub日: 2018-12-06
- Article種別: Original Article (secondary analysis of Phase III RCT)
- PMID: 30520977
背景
限局型小細胞肺癌 (LS-SCLC: limited-stage small cell lung cancer) に対する標準治療は、長年にわたり化学放射線療法 (CRT: chemoradiotherapy) とされてきた。歴史的には、Veterans Administration (VA) の2段階分類に基づいて治療方針が決定されてきたが、2009年に国際肺癌学会 (IASLC: International Association for the Study of Lung Cancer) の提案を受けて国際対がん連合 (UICC: Union for International Cancer Control) およびアメリカがん合同委員会 (AJCC: American Joint Committee on Cancer) がTNM病期分類の適用を推奨した [[JThoracOncol-2007-Shepherd-The international association for the study of lung cancer lung cancer staging project proposals regarding the clinical|Shepherd et al. JThoracOncol 2007]]。これにより、LS-SCLCという単一のカテゴリーが、実際にはstage I-IIの早期病変からstage IIIの局所進行病変までを含む極めて不均一な集団であることが明らかとなった。
小細胞肺癌の疫学や治療成績の変遷については、過去30年間のデータ解析などでも報告されているが [[JClinOncol-2006-Govindan-Changing epidemiology of small-cell lung cancer in the united states over the last 30 years analysis of the|Govindan et al. JClinOncol 2006]]、早期のstage I-II患者における現代的な同時CRTの具体的な治療成績や安全性プロファイルについては、これまで十分に検証されておらず、データが「不足」していた。胸部放射線療法の併用効果はメタアナリシスで確立されているものの [[NEnglJMed-1992-Pignon-A meta-analysis of thoracic radiotherapy for small-cell lung cancer|Pignon et al. NEnglJMed 1992]]、また1日2回照射の優位性を示した試験 [[NEnglJMed-1999-Turrisi-Twice-daily compared with once-daily thoracic radiotherapy in limited small-cell lung cancer treated concurrently with|Turrisi et al. NEnglJMed 1999]] も存在するが、これらの歴史的試験におけるstage I-II患者のサブグループ解析は行われていなかった。
特に、三次元原体照射や強度変調放射線療法 (IMRT: intensity-modulated radiation therapy) などの現代的放射線技術、および選択的リンパ節照射の省略やフルオロデオキシグルコースF18標識陽電子放出断層撮影 (FDG-PET: fludeoxyglucose F18-labeled positron emission tomography) による正確な病期診断が導入された現代の治療環境下において、stage I-II患者がどのような転帰をたどるかは「不明」であり、臨床上の大きな「課題」として残されていた。また、予防的全脳照射 (PCI: prophylactic cranial irradiation) の実施や、1日2回照射と1日1回照射のスケジュールが早期患者の生存に与える影響についても、エビデンスが「不足」しており、治療選択における意思決定の根拠が「未確立」であった。本研究は、これらの「未解明」な領域に焦点を当て、国際共同ランダム化第III相試験であるCONVERT試験のデータを用いた事後二次解析を行うことで、stage I-II LS-SCLC患者における現代的同時CRTの臨床的有用性を明らかにすることを試みた。
目的
本研究の目的は、国際多施設共同ランダム化第III相試験であるCONVERT試験に登録されたLS-SCLC患者のデータを用いて事後二次解析を行い、TNM分類におけるstage I-IIの早期患者における現代的同時CRTの有効性および安全性を、stage III of 局所進行患者と比較して検証することである。具体的には、全生存期間 (OS: overall survival) を主要評価項目とし、無増悪生存期間 (PFS: progression-free survival) や局所制御率、遠隔転移制御率、および治療に伴う急性・晩期毒性を詳細に比較評価する。さらに、stage I-II患者における放射線照射スケジュール (1日1回照射対1日2回照射) の違いや、FDG-PETによる病期診断の有無、PCIの実施状況が治療成績に与える影響を探索的に解析し、これまでエビデンスが不十分であった早期LS-SCLCに対する非手術的治療アプローチ(同時CRTおよびPCI)の臨床的有用性を確立し、日常臨床における最適な治療選択を支援するための強固な科学的根拠を提供することを目指す。
結果
早期病期群における全生存期間の有意な延長:
解析対象となった509例のうち、stage I-II群(n=86)はstage III群(n=423)と比較して、主要評価項目であるOSが有意に延長した。生存期間中央値(mOS)は、stage I-II群で50 months (95% CI 38 to not reached months) であったのに対し、stage III群では25 months (95% CI 21-29 months) であり、ハザード比は HR 0.60 (95% CI 0.44-0.83, p=0.001) と有意な生存ベネフィットを示した (Figure A)。年次生存率の比較においては、1年生存率が 83% (95% CI 75-91%) vs 79% (95% CI 75-83%)、2年生存率が 64% (95% CI 54-75%) vs 51% (95% CI 46-56%)、5年生存率は 49% (95% CI 39-62%) vs 28% (95% CI 23-34%) であった。この結果は、現代的同時CRTを適用することで、早期LS-SCLC患者の約半数が5年以上の長期生存を達成できることを示している。特に、stage IIの大部分を占めるN1陽性症例(44.2%)を含むコホートにおいてこの優れた生存成績が得られたことは、非手術的治療の強力な支持基盤となる。なお、stage I(n=4)は極めて少数のため独立した解析は困難であったが、stage II(n=82)が本コホートの大部分を占めており、stage IIにおける良好な生存が全体の成績を牽引している。
局所および転移無増悪生存期間の改善と遠隔転移リスクの低下:
無増悪生存の解析においても、stage I-II群はstage III群に比して優れた成績を示した。局所PFS中央値は、stage I-II群で38 months (95% CI 21 to not reached months) vs stage III群で17 months (95% CI 15-20 months) であり、HR 0.63 (95% CI 0.46-0.85, p=0.003) と有意に良好であった (Figure B)。また、転移PFS中央値についても、stage I-II群で40 months (95% CI 24 to not reached months) vs stage III群で16 months (95% CI 14-19 months) であり、HR 0.58 (95% CI 0.42-0.79, p<0.001) と有意な改善を認めた (Figure C)。5年局所PFS率は 47% (95% CI 37-59%) vs 26% (95% CI 21-31%)、5年転移PFS率は 48% (95% CI 38-60%) vs 26% (95% CI 21-31%) であった。死亡を競合リスクとした再発部位の解析では、局所再発率に両群間で有意差は認められなかったが (sHR 1.29 [95% CI 0.70-2.35], p=0.41)、遠隔転移の発生率はstage III群で有意に高頻度であった (sHR 1.60 [95% CI 1.02-2.51], p=0.04)。
高い治療完遂率と照射スケジュールによる生存差の欠如: 治療の忍容性および完遂率に関して、プロトコル規定の放射線照射分割数(1日2回群で30分割、1日1回群で33分割)を完遂した割合は、stage I-II群で 80.2% (69/86例) vs stage III群で 74.2% (314/423例) であり、両群間で有意差はなかった (p=0.60) (Table 1)。また、同時化学放射線療法が実際に施行された割合も 91.9% vs 90.3% と同等であった。化学療法の完遂サイクル数(4サイクル完遂:64.0% vs 58.4%、6サイクル完遂:7.0% vs 21.0%、p=0.98)や、PCIの実施率(90.7% vs 81.8%、p=0.10)についても同様に有意差を認めなかった (Table 1)。PCIの完遂率がstage I-II群で高かったことは、腫瘍体積の小ささに起因する全身状態の良さが寄与していると推察される。Stage I-II群における探索的サブグループ解析では、1日1回照射群(mOS 39 months)と1日2回照射群(mOS 72 months)の間で生存期間に有意差は認められず (p=0.38)、FDG-PETによる病期診断の有無による生存差も認められなかった (mOS 50 months vs 40 months、p=0.69)。
腫瘍体積の縮小に伴う急性食道炎発生率の有意な低下: 安全性解析において、全体的な毒性プロファイルは極めて良好であった。特に、Grade 3以上の急性食道炎の発生率は、stage I-II群で 11.3% (9/85例) であったのに対し、stage III群では 21.1% (82/412例) と、stage I-II群において有意に低率であった (p<0.001) (Table 1)。これは、stage I-II群における計画標的体積 (PTV: planning target volume) の指標となる肉眼的腫瘍体積 (GTV: gross tumor volume) の中央値が 38.4 cm³ (範囲 2.2-593.0 cm³) と、stage III群の 93 cm³ (範囲 0.5-513.4 cm³) に比べて有意に小さく (p<0.001)、食道への照射線量が低減されたためと考えられる (Table 2)。また、Grade 3以上の急性肺炎の発生はstage I-II群で0例であり、治療関連死も認められなかった。その他の急性および晩期毒性については、両群間で有意な差は検出されず、早期LS-SCLCに対する同時CRTの極めて高い安全性が示された。この毒性の低さは、早期LS-SCLCに対する放射線線量増加(dose escalation)の試みに対する理論的根拠を提供し得るものである。
考察/結論
先行研究との違い:
本研究は、TNM病期分類の導入以前に行われた古い手術対放射線療法のランダム化比較試験 [[Chest-1994-Lad-A prospective randomized trial to determine the benefit of surgical resection of residual disease following response of|Lad et al. Chest 1994]] や、現代的な放射線技術が未導入であった時代の治療成績 [[EurJCardiothoracSurg-1998-Rea-Long term results of surgery and chemotherapy in small cell lung cancer|Rea et al. EurJCardiothoracSurg 1998]] と異なり、FDG-PETによる正確な病期診断、選択的リンパ節照射の省略、および三次元原体照射やIMRTなどの現代的放射線治療技術が適用された環境下における早期LS-SCLC患者の治療成績を系統的に示した。
新規性: 本研究は、現代的な同時化学放射線療法およびPCIを受けたTNM stage I-IIのLS-SCLC患者において、5年生存率 49% という極めて良好な長期生存成績が得られることを、ランダム化第III相試験のデータを用いて本研究で初めて明らかにした。これは、早期LS-SCLCに対する非手術的治療アプローチのベンチマークとなる新規性の高い知見である。
臨床応用: 本知見の臨床的意義として、これまでガイドライン等で外科切除が推奨されてきた早期LS-SCLC(特に T1-2N0 (tumor stage 1-2, node stage 0: 腫瘍径が小さくリンパ節転移のない早期病期))において、同時CRTが手術に劣らない極めて有力な治療選択肢となり得ることが示された。特に、術後補助化学療法の成績を示した後ろ向きデータと比較しても、本解析の5年生存率 49% は遜色ないものであり、手術困難な症例や手術を希望しない症例に対する標準治療としての同時CRTの臨床的有用性を強く支持する。また、毒性プロファイルが極めて良好(Grade 3以上の急性食道炎 11.3%、急性肺炎 0%)であることから、実臨床において高齢者や軽度の合併症を有する早期患者に対しても、積極的な同時CRTの導入を推奨できる。
残された課題: 今後の検討課題として、本研究が事後二次解析であるため、TNM病期による前向きな層別化がなされていない点や、stage I患者が4例と極めて少数であり、N0とN1の予後差異や腫瘍体積別の詳細なサブグループ解析が十分に実施できなかった点が挙げられる。また、PCIに伴う長期的な神経心理学的毒性に関するデータが本試験では収集されておらず、早期患者におけるPCIの真のベネフィットとリスクのバランスについては依然として議論の余地がある。今後の方向性として、stage I-IIのLS-SCLCに対する同時CRTと外科切除(術後補助療法を含む)を直接比較する前向きランダム化比較試験の実施や、循環腫瘍DNA(ctDNA)などのバイオマーカーを用いた微小残存病変(MRD)検出による個別化治療戦略の構築が求められる。
方法
本研究は、2008年4月7日から2013年11月29日までに患者登録が行われた国際多施設共同ランダム化第III相試験であるCONVERT試験 (ClinicalTrials.gov識別子: NCT00433563) のデータを基にした事後二次解析である。解析は2017年11月1日から2018年2月28日にかけて実施された。
CONVERT試験の対象基準は、組織学的または細胞学的に確認されたLS-SCLC患者であり、Eastern Cooperative Oncology Group performance status (ECOG PS) が0〜1(がん関連症状による場合は医師の裁量で2も許容)の良好な全身状態を有し、適切な呼吸機能および骨髄・肝・腎機能を有する18歳以上の患者であった。病期分類はAJCCがん病期分類マニュアル第7版に基づいて前向きに収集された。本解析では、TNM病期情報が利用可能であった543例のうち、93.7%にあたる509例を解析対象とした。このうち、stage I-IIは86例 (16.9%、うちstage Iが4例 [4.7%]、stage IIが82例 [95.3%])、stage IIIは423例 (83.1%) であった。
介入として、患者は1:1の割合で、1日2回照射群 (45 Gy/30分割、3週間) または1日1回照射群 (66 Gy/33分割、6.5週間) にランダム化され、化学療法(シスプラチン 25 mg/m² 静脈内投与 day 1-3 または 75 mg/m² day 1 + エトポシド 100 mg/m² day 1-3、3週毎、計4〜6サイクル)と同時に開始された。放射線治療は3次元原体照射またはIMRTが用いられ、選択的リンパ節照射は禁止された。PCIは治療効果が得られた患者に対して推奨され、用量および分割は各施設の医師の裁量に委ねられた。
主要評価項目はOSであり、副次評価項目は局所PFS、転移PFS、および有害事象共通用語基準 (CTCAE: Common Terminology Criteria for Adverse Events) version 3.0を用いた毒性評価、治療完遂率であった。統計解析には、Kaplan-Meier法を用いて生存曲線をプロットし、log-rank検定(Mantel-Cox法)により群間比較を行った。また、死亡を競合リスクとする腫瘍進行部位(局所進行対遠隔転移)の解析には、Fine-Gray法に基づく競合リスク回帰分析を適用し、分布下ハザード比 (sHR: subdistribution hazard ratio) を算出した。すべての統計解析はRソフトウェア(version 3.4.1)を用いて行われ、p<0.05を統計的有意差の基準とした。