• 著者: Peters S, Gettinger S, Johnson ML, Janne PA, Garassino MC, Christoph D, Toh CK, Rizvi NA, Chaft JE, Carcereny Costa E, Patel JD, Chow LQ, Koczywas M, Ho C, Fruh M, van den Heuvel M, Rothenstein J, Reck M, Paz-Ares L, Shepherd FA, Kurata T, Li Z, Qiu J, Kowanetz M, Mocci S, Shankar G, Sandler A, Felip E
  • Corresponding author: Enriqueta Felip, MD, PhD (Oncology Department, Vall d’Hebron University Hospital, Vall d’Hebron Institute of Oncology, Barcelona, Spain)
  • 雑誌: Journal of Clinical Oncology
  • 発行年: 2017
  • Epub日: 2017-06-13
  • Article種別: Original Article (Phase 2 single-arm multicohort trial — BIRCH, NCT02031458)
  • PMID: 28609226

背景

進行NSCLCに対する標準治療は依然として限定的成績である。これまでの研究では、1次治療 (1L) のプラチナベース化学療法はmOS 8-10ヶ月程度に留まり (Scagliotti 2008)、bevacizumab上乗せ (Sandler et al. NEnglJMed 2006) で改善が見られたものの、2次治療 (2L) 化学療法ではmOSが約9ヶ月程度の漸増にとどまる。EGFR・ALKドライバー変異陽性例ではTKIで顕著な改善が得られたが、これらドライバー陰性集団へのより有効な治療開発が未解明の重要課題であった。

これまでの研究で、免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) は様々な癌種で生存改善を示し、特にNSCLCではPD-L1 (programmed death-ligand 1) およびPD-1 (programmed death-1) 標的薬としてatezolizumab・nivolumab・pembrolizumabが承認された (Borghaei et al. NEnglJMed 2015Brahmer et al. NEnglJMed 2015Reck et al. NEnglJMed 2016)。PD-L1はTC (tumor cells; 腫瘍細胞) およびIC (tumor-infiltrating immune cells; 腫瘍浸潤免疫細胞) で発現し、活性化T細胞のPD-1・B7.1 (CD80) と結合してT細胞免疫応答を抑制・腫瘍免疫逃避を促進する。

Atezolizumabは抗PD-L1ヒト化IgG1モノクローナル抗体で、Fc領域改変によりADCC (antibody-dependent cellular cytotoxicity) を排除した設計を持ち、複数の固形腫瘍 (尿路上皮癌・NSCLC) で承認を取得している (Rittmeyer et al. Lancet 2017 OAK trial)。先行Phase 1 (PCD4989g、atezolizumab first-in-human試験) (Herbst et al. Nature 2014) では、PD-L1発現量とatezolizumab奏効率の正相関、特にTC3またはIC3 (TC≥50%またはIC≥10%) で高い活性が示唆されていた。

しかし、これまでの研究では、何が足りなかったかは「PD-L1富化選択 (TC2/3またはIC2/3、SP142アッセイで≥5%) を用いた1L/2L/≥3L全治療段階でのatezolizumab単剤の前向き有効性データの不足」と「ロバストなサンプルサイズによる1L atezolizumab単剤データの欠如」であった。BIRCH試験はこのギャップを埋め、PD-L1選択集団における全治療段階での前向き活性検証として設計された。

目的

PD-L1陽性 (TC2/3またはIC2/3 = TC≥5%またはIC≥5%、SP142アッセイ) の進行NSCLC患者を対象に、(1) Atezolizumab単剤の主要評価項目としてのIRF (independent review facility) 評価ORR、(2) 副次評価項目としてmDOR・mPFS・mOS・安全性、(3) PD-L1発現レベル (TC3またはIC3 vs TC2/3またはIC2/3) サブグループとEGFR/KRAS変異サブグループでの効果差異、を1L (コホート1)・2L (コホート2)・≥3L (コホート3) の3コホート並行評価する。

結果

患者背景と曝露 (Table 1):n=659 (1L 139、2L 268、≥3L 252)、median年齢64歳 (range 28-88)、男性59%、白人84%・アジア人12%、ECOG PS 1が64%、現喫煙/既喫煙83%、非扁平上皮72%。PD-L1高発現 (TC3またはIC3) は46% (3コホート均等)。EGFR変異8% (45/543)、KRAS変異28% (137/488)、ALK陽性2% (9/376)。Median治療期間4.2ヶ月 (range 0-21)、median投与回数7回 (range 1-30)、520例 (79%) がatezolizumab中止 (PD 65%・AE 7%・患者希望3%・プロトコル違反2%・医師判断1%)。

主要評価項目—IRF-assessed ORR (Table 2):12ヶ月最小追跡時、IRF-assessed ORRはコホート1 22% (95% CI 18-33%) vs コホート2 19% (95% CI 15-25%) vs コホート3 18% (95% CI 15-25%)、CRはそれぞれ1%・2%・2%。TC3またはIC3サブグループでORRはコホート1 31% (95% CI 23-41%) vs コホート2 26% (95% CI 19-35%) vs コホート3 27% (95% CI 19-35%) と全コホートで一段高値、PD-L1発現とatezolizumab奏効の正相関を確認。歴史的化学療法対照 (≥3L 5%、≥2L 7%、1L 15-20%) に対して有意に高い活性を示し、主要評価項目を達成。Investigator-assessed ORRはIRF評価と概ね同等。Median DORはコホート1 9.8ヶ月 vs コホート2 NE vs コホート3 11.8ヶ月、TC3またはIC3でコホート1 10.0ヶ月 vs コホート2 NE vs コホート3 7.2ヶ月と持続的奏効を確認。

PFS—1Lで高値、ランドマーク12ヶ月PFS率 14-20% (Fig A3、Table 2):mPFSはコホート1 5.4ヶ月 (95% CI 3.0-6.9) vs コホート2 2.8ヶ月 (95% CI 1.5-3.9) vs コホート3 2.8ヶ月 (95% CI 2.7-3.0)。Landmark 12ヶ月PFS率はコホート1 20% vs コホート2 17% vs コホート3 14%。1L設定で最良のPFSが得られた。

Updated OS—1L mOS 23.5ヶ月の長期生存 (Fig 2、Table 2):データcutoff 2016年8月1日 (median follow-up 22.5ヶ月) のupdated解析で、mOSはコホート1 23.5ヶ月 (95% CI 18.1-NE) vs コホート2 15.5ヶ月 (95% CI 12.3-19.3) vs コホート3 13.2ヶ月 (95% CI 10.3-17.5)。TC3またはIC3サブグループのコホート1 mOSは26.9ヶ月 (95% CI 12.0-NE) と最高値、コホート2 16.6ヶ月・コホート3 17.5ヶ月。Landmark 12ヶ月OS率は全患者でコホート1 66.4% vs コホート2 58.1% vs コホート3 52.3%、TC3またはIC3で57.5-61.5%。非扁平上皮 mOS 20.1/16.3/14.7ヶ月 vs 扁平上皮 mOS NE/12.3/9.2ヶ月で組織型による差を確認。歴史的化学療法対照 (mOS 10-12ヶ月) を約2倍上回り、1L設定での長期生存ベネフィットが示された。

ドライバー変異サブグループ—EGFR/KRAS非依存的奏効 (Table 2):EGFR mutant vs wild-typeのORRはコホート1で23% vs 19%、コホート2で0% vs 21%、コホート3で7% vs 18%、KRAS mutant vs wild-typeでコホート1で27% vs 16%、コホート2で32% vs 16%、コホート3で19% vs 18%。EGFR・KRAS変異状態に関わらず奏効を確認したが、EGFR mutant 2L/3LではORR低下傾向。mOS (EGFR mutant/wild-type) コホート1: 20.1/NEヶ月、コホート2: 9.8/16.3ヶ月、コホート3: 7.4/14.7ヶ月、mOS (KRAS mutant/wild-type) コホート1: NE/20.1ヶ月、コホート2: 17.7/15.1ヶ月、コホート3: 12.1/13.8ヶ月。

安全性—Grade 3-4 治療関連AE 12%、致死的肺炎1例 (Table 3、Table 4):全AE発生94%、治療関連AE 65%。全原因Grade 3-4 AE 42% vs 治療関連Grade 3-4 AE 12%、3コホート共通でほぼ同等。TC3またはIC3サブグループのAEプロファイルはTC2/3またはIC2/3と類似。≥10%発生のTRAE: 疲労19%・下痢11%・悪心11%・掻痒10%。重篤AE (SAE) 主要: 肺炎4%・呼吸困難3%・発熱3%・肺臓炎2%。治療関連性肺炎による死亡1例 (致死的SAE)。AE中止43例 (7%、Grade 3-4: 15例 [2%])、肺臓炎によるwithdrawal 1%。305例死亡 (46%、234例は最終投与後≥30日)、死因の90%が疾患進行、進行以外の主死因は肺炎1%。

考察/結論

本BIRCH Phase 2試験 (n=659) は、PD-L1選択 (TC2/3またはIC2/3、SP142≥5%) の進行NSCLCに対するatezolizumab単剤の有効性を、1L・2L・≥3L全治療段階で確認した世界初の大規模Phase 2試験である。IRF-assessed ORR 18-22% (TC3またはIC3で26-31%)、mOS 13.2-23.5ヶ月、1L設定でのTC3またはIC3 mOS 26.9ヶ月という結果は、歴史的化学療法対照 (mOS 10-12ヶ月) を大幅に上回り、PD-L1富化集団でのatezolizumab単剤の臨床的意義を確立した。Grade 3-4治療関連AE 12%という低毒性、致死的肺炎1例のみという許容可能な安全性プロファイルも、化学療法と比較した利点として示された。

これまでの研究との違いとして、Topalian 2012 (Topalian et al. NEnglJMed 2012) のnivolumab Phase 1は他固形腫瘍にも対象が広く、PD-L1選択ではなかった (これとは異なる本試験のデザイン)。KEYNOTE-024 (Reck et al. NEnglJMed 2016) はpembrolizumab 1L単剤を化学療法と比較した先行研究でPD-L1 TPS≥50%でmOS 30.0ヶ月のhistorical benchmarkを確立したが、抗PD-L1 (atezolizumab) のPhase 2 1Lデータがそれまで不在であった。OAK (Rittmeyer et al. Lancet 2017) はatezolizumab vs docetaxel 2Lで全集団mOS HR 0.73を示した先行研究で、本BIRCHは1L設定での主要データを補完。新規な貢献として本研究で初めて (1) PD-L1選択atezolizumabの1L単剤データの大規模Phase 2提供、(2) TC3またはIC3でのORR 31%・mOS 26.9ヶ月という顕著な活性、(3) EGFR/KRAS非依存的奏効パターンの記録、(4) SP142アッセイの臨床的有用性検証、を達成した。

臨床応用として、(1) PD-L1高発現 (TC3またはIC3) NSCLCの1L治療にatezolizumab単剤が合理的選択肢として支持される、(2) 既治療例 (2L・≥3L) でもPD-L1選択により奏効率の予測が可能、(3) SP142アッセイによるPD-L1スコアリングはTC・ICの両者を評価することで22C3 (PD-L1 TPS) との相補的役割を持つ、(4) bench-to-bedsideとして本Phase 2成績がIMpower110 Phase 3 (atezolizumab vs プラチナ化学療法 1L、TC3またはIC3でmOS HR 0.59、P=.0106) の臨床的意義を支える、(5) 後続の後続併用試験/132/150のchemo+atezolizumab併用Phase 3デザインの基盤データとして機能。

残された課題とlimitationとして、(1) 単腕デザインで化学療法対照との直接比較が不在、(2) SP142アッセイのcompanion assayとしての他PD-L1 IHC (22C3, 28-8, SP263) との互換性検証が不十分 (Blueprint Phase 1/2でその後解明)、(3) ORR・PFS・OSのPD-L1依存性に不一致 (ORR・PFSはPD-L1上昇で改善するがOSはPD-L1非依存)、(4) EGFR mutant 2L/3LでのORR低下要因の解明、(5) brain metastases合併例の除外による外挿可能性、(6) ICI耐性機構・再投与・post-progression治療の検討、(7) chemotherapy+atezolizumab併用 vs atezolizumab単剤のhead-to-head検証、が今後の検討課題である。今後の研究としては、PD-L1非依存的OS benefitの予測バイオマーカー (TMB、bTMB、cancer-immunity cycle gene expression) 探索、ICI耐性後のbispecific antibody・ADC・TCR治療の検証が必要である。本試験はatezolizumab 1L適応のPhase 3への決定的橋渡しとなった重要な歴史的試験である。

方法

試験デザイン: BIRCH (NCT02031458) はグローバル多施設単腕Phase 2試験。19カ国106施設で2014年1月-12月に登録、Genentech (Roche Group) スポンサー、薬剤atezolizumab供給。

PD-L1選択: SP142免疫組織化学アッセイ (Ventana Medical Systems, Tucson, Arizona) を用い中央検査でarchivalまたは新鮮腫瘍検体でPD-L1スクリーニング。TC陽性スコア=PD-L1陽性TC%、IC陽性スコア=PD-L1陽性腫瘍領域%。TC3 (≥50%) またはTC2 (≥5%-<50%)、IC3 (≥10%) またはIC2 (≥5%-<10%) で組入れ可。3,914例スクリーニング、36%がTC2/3またはIC2/3、667例が組入れ。

対象: 組織学的・細胞学的に確認されたStage IIIB/IV/再発NSCLC、年齢≥18歳、PD-L1陽性 (TC2/3またはIC2/3)、ECOG performance status (PS) 0-1、RECIST v1.1評価可能病変、適切な造血・臓器機能。除外: CNS転移、肺臓炎既往、自己免疫疾患、慢性ウイルス疾患、CD137作動薬・ICI前治療歴 (anti-CTLA4は最終投与から≥6週なら可)。EGFR感受性変異またはALK陽性例はTKI進行/不耐後に組入れ可。

3コホート: コホート1 (1L; 進行NSCLCに化学療法歴なし、n=139)、コホート2 (2L; プラチナベース1レジメン後進行/再発、n=268)、コホート3 (≥3L; ≥2レジメン後進行、n=252)、全効果評価可能N=659。

投与法: atezolizumab 1200 mg IV q3週固定。コホート1は進行 (RECIST v1.1) で中止必須、コホート2・3は臨床benefit持続中は治療継続可。減量不可。

評価: 主要=IRF-assessed ORR (RECIST v1.1)。副次=IRF-assessed PFS・DOR (duration of response)・investigator-assessed ORR/PFS/DOR・OS・安全性。腫瘍評価: 12ヶ月までq6週、その後q9週。AE: CTCAE v4.0、EGFR・KRAS・ALK変異: FoundationOne panelおよび/またはlocal test。データcutoff: 2015年12月1日 (12-month follow-up)、updated 2016年8月1日 (20-month follow-up)。

統計: ORR・95% CIはClopper-Pearson法、time-to-event解析はKaplan-Meier法、95% CIはBrookmeyer-Crowley法。主要解析 (2015年5月28日) でIRF-assessed ORRを事前設定の階層的固定順序手順で歴史的化学療法対照ORR (≥3L: 5%、≥2L: 7%、1L: 15-20%、全体: 15%) と比較 (α=0.05、各検定)。