• 著者: NSCLC Meta-analyses Collaborative Group
  • Corresponding author: Sarah Burdett (MRC Clinical Trials Unit, London, UK) or Jean-Pierre Pignon (Institut Gustave-Roussy, Villejuif cedex, France)
  • 雑誌: Lancet
  • 発行年: 2010
  • Epub日: 2010-03-24
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 20338595

背景

非小細胞肺癌 (NSCLC) は、年間約150万人が新たに診断される肺癌の約85%を占める主要な癌種である (Parkin et al., 2005; American Cancer Society, 2007)。手術はNSCLCに対する最良の治療法とされているが、根治的切除が可能なのは全体の20〜25%に過ぎない (Datta and Lahiri, 2003)。切除可能NSCLC患者における術後補助化学療法の有効性については、これまで多くのランダム化比較試験が実施されてきた。先行研究である我々の個別患者データを用いたメタアナリシス (Non-small Cell Lung Cancer Collaborative Group, 1995) では、シスプラチンベースの術後化学療法が生存率を改善する可能性が示唆された (HR 0.87, 95% CI 0.74–1.02, p=0.08)。しかし、当時の研究では試験数および患者数が少なく、特に術後放射線療法と化学療法を併用した場合の有効性については明確な結論が得られていなかった。この点は、補助化学療法の最適な適用戦略を確立する上で重要な未解明な課題であった。

その後、補助化学療法の有意な生存利益を示す複数のメタアナリシス (Hotta et al., 2004; Sedrakyan et al., 2004; Berghmans et al., 2005; Bria et al., 2005; Hamada et al., 2005; Pignon et al., 2008) が報告され、多くの試験と患者が組み入れられてきた。しかし、これらのメタアナリシスでは、術後放射線療法との併用における補助化学療法の効果や、病期、化学療法の種類、患者背景による効果の差異については、依然として詳細な検討が不足している状況であった。特に、早期病期の患者に限定した詳細な解析は十分に行われておらず、この知識ギャップが残されていた。本研究は、切除可能NSCLC患者における術後補助化学療法の効果を、術後放射線療法の有無にかかわらず、個別患者データを用いた2つの包括的なメタアナリシスにより確立することを目的とした。これにより、これまでの研究で残されていたギャップを埋め、より確固たるエビデンスを提供することが期待される。

目的

本研究の目的は、切除可能非小細胞肺癌 (NSCLC) 患者において、術後補助化学療法が生存率に与える影響を、個別患者データを用いた2つの包括的なメタアナリシスにより評価することである。具体的には、以下の2つの主要な比較を行うことを目的とした。

  1. 手術単独に対する補助化学療法の追加効果: 手術単独群と比較して、手術に補助化学療法を追加した場合の全生存期間 (OS) への影響を評価する。
  2. 手術と放射線療法併用に対する補助化学療法の追加効果: 手術と術後放射線療法を併用する群と比較して、手術と術後放射線療法に補助化学療法を追加した場合のOSへの影響を評価する。

これらの主要な目的に加え、化学療法の種類、その他の試験特性、および年齢、性別、組織型、病期、パフォーマンスステータスなどの患者サブグループにおける化学療法の効果の差異を探索的に分析することも目的とした。これにより、補助化学療法の最適な適用対象を特定し、臨床診療における意思決定を支援するためのより詳細なエビデンスを提供することを目指した。

結果

手術単独に対する補助化学療法の追加効果: 手術単独群に対する補助化学療法の追加に関する最初のメタアナリシスは、34の試験比較と8447名の患者 (死亡3323名) のデータに基づいて実施された。化学療法を追加することで有意な生存利益が認められ、ハザード比 (HR) は0.86 (95% CI 0.81–0.92, p<0.0001) であった。これは、5年生存率において絶対値で4%の改善 (95% CI 3–6) に相当し、生存率が60%から64%に向上したことを示す (Figure 1, Figure 2)。試験間の異質性は最小限であり (p=0.40, I²=4%)、結果の頑健性が示唆された。化学療法の種類による効果の差はわずかであったが (交互作用p=0.06)、これは主にOLCSG1b試験の結果に起因するものであった。感度分析では、この試験を除外しても化学療法の効果に大きな影響はないことが示された (交互作用p=0.30)。

手術と放射線療法併用に対する補助化学療法の追加効果: 手術と術後放射線療法併用群に対する補助化学療法の追加に関する2番目のメタアナリシスは、13の試験比較と2660名の患者 (死亡1909名) のデータに基づいて実施された。この解析でも化学療法を追加することによる有意な生存利益が認められ、HRは0.88 (95% CI 0.81–0.97, p=0.009) であった。これは、5年生存率において絶対値で4%の改善 (95% CI 1–8) に相当し、生存率が29%から33%に向上したことを示す (Figure 2, Figure 4)。このメタアナリシスにおける試験間の異質性も非常に低かった (p=0.95, I²=0%)。化学療法の種類や切除範囲による効果の差は認められず (交互作用p=0.45)、放射線療法との併用時期 (放射線療法前、同時併用) による効果の差も示唆されなかった (交互作用p=0.28)。

サブグループ解析による化学療法の効果の評価: 最初のメタアナリシスにおいて、年齢、性別、組織型、パフォーマンスステータス、または病期によって定義される患者サブグループ間で、化学療法の効果に有意な差は認められなかった (p≥0.10)。しかし、地域差や使用される化学療法の種類に違いがあるため、プラチナ製剤単独群とテガフール・ウラシルまたはテガフール併用群に分けて探索的サブグループ解析を実施した。プラチナ製剤単独群では、パフォーマンスステータスが良い患者ほど化学療法の相対効果が増加する傾向が認められた (傾向p=0.002) (Figure 3)。病期による相対効果の有意な差は認められなかった (傾向p=0.13)。全体HRを各病期の対照群生存率に適用すると、5年生存率の絶対改善は、病期IAで3% (70%から73%)、病期IBで5% (55%から60%)、病期IIで5% (40%から45%)、病期IIIで5% (30%から35%) と推定された。病期IAにおけるHR 1.19 (95% CI 0.84–1.68) は生存利益を示唆しないが、このサブグループのデータは少なく、信頼区間が広いため、有意な結果ではない (p=0.33)。テガフール・ウラシルまたはテガフール単独群では、パフォーマンスステータスが悪化するほど化学療法の相対効果が増加する傾向が示唆された (傾向p=0.02) (Figure 3)。病期による有意な差は認められず、全体HRを適用すると、5年生存率の絶対改善は病期IAで2% (80%から82%)、病期IBで3% (75%から78%)、病期IIで5% (45%から50%)、病期IIIで5% (25%から30%) と推定された。

無再発生存期間および再発部位別の効果: 無再発生存期間 (RFS) のデータは18の試験比較 (イベント2519件、患者5379名) で利用可能であり、化学療法群で有意な改善が認められた (HR 0.83, 95% CI 0.77–0.90, p<0.0001)。局所再発までの期間 (イベント936件、患者5226名) も化学療法群で有意に短縮された (HR 0.75, 95% CI 0.66–0.85, p<0.0001)。遠隔再発までの期間 (イベント1267件、患者5224名) も同様に化学療法群で有意な改善が示された (HR 0.80, 95% CI 0.72–0.89, p=0.0007)。これらは主にプラチナ製剤ベースの化学療法を用いた新しい試験からのデータであった。テガフール・ウラシルまたはテガフール単独を含む4つの試験比較を除外しても、同様の結果が得られた。

考察/結論

本研究のメタアナリシスは、切除可能非小細胞肺癌 (NSCLC) 患者において、術後補助化学療法が全生存期間を改善することを明確に示した。この効果は、化学療法が手術単独の補助として行われる場合でも、手術と術後放射線療法に加えて行われる場合でも一貫して認められた。5年生存率における絶対的な4%の改善は、控えめな数値に見えるかもしれないが、これは5年時点で約10,000人もの患者の命を救う可能性を秘めている (Datta and Lahiri, 2003)。本研究は、1995年の我々の先行研究 (Non-small Cell Lung Cancer Collaborative Group, 1995) と比較して、3倍以上のデータ (33試験、47比較、11,107患者) を集約しており、過去数十年にわたる補助化学療法の有効性を世界規模で評価する貴重な機会を提供した。

先行研究との違い: 以前のメタアナリシスでは、術後放射線療法と併用した場合の化学療法の効果は不明瞭であったが、本研究ではこの状況下でも化学療法が有意な生存利益をもたらすことを示した点で、これまでの知見と異なり、より包括的なエビデンスを提示した。また、特定のサブグループにおける化学療法の効果の差異についても詳細に検討し、特に病期IAの患者におけるデータ不足や、パフォーマンスステータスと化学療法の効果の関連性について新たな示唆を与えた。

新規性: 本研究で初めて、術後放射線療法の有無にかかわらず、補助化学療法の生存利益が同程度であることを大規模な個別患者データを用いて実証した。さらに、化学療法の種類による効果の大きな差がないこと、および放射線療法との併用時期が効果に影響しないことを示した点も新規の知見である。特に、プラチナ製剤ベースの化学療法において、パフォーマンスステータスが良い患者ほど相対効果が増加する傾向が認められたことは、今後の治療選択に影響を与える可能性のある新規な発見である。

臨床応用: 本研究の結果は、切除可能NSCLC患者に対する補助化学療法の臨床的有用性を強く支持するものである。特に、病期IB、II、IIIの患者では、再発リスクが高い場合にプラチナ製剤ベースの補助化学療法を考慮すべきであることが示唆される。現在のガイドライン (Pisters et al., 2007) では病期IAの患者に対する推奨は不十分とされているが、本研究では病期IAの患者においても生存利益の可能性が示唆された。ただし、病期IAのデータは依然として不足しており、さらなる試験結果が待たれる。また、パフォーマンスステータスが良好な患者で化学療法の効果が明確であったことから、患者の全身状態を考慮した慎重な治療選択が臨床現場で重要となる。

残された課題: 今後の検討課題として、病期IAのNSCLC患者における補助化学療法の真の有効性を確立するためのさらなる大規模試験が必要である。また、化学療法の種類による効果の差は小さいとされたものの、古いビンカアルカロイドやエトポシドを含むレジメンの効果は依然として不確実であり、現代の臨床診療に即したより効果的なレジメンの特定が求められる。テガフール・ウラシルまたはテガフール単独の化学療法については、主にアジア人集団の古い研究からのデータであるため、非アジア人患者への外挿性には限界がある。この点については、非アジア人集団における試験が必要である。さらに、本研究では治療の毒性効果を評価できなかったため、個々の患者における潜在的な利益と毒性のバランスを考慮する必要がある。長期的な生存データ、特に5年を超える追跡期間における補助化学療法の効果についても、さらなるデータ収集が残された課題である。

方法

本研究は、切除可能非小細胞肺癌 (NSCLC) 患者における術後補助化学療法の効果を評価するための2つの包括的な系統的レビューおよび個別患者データを用いたメタアナリシスとして実施された。本研究は、NCT番号は付与されていないが、複数の国際的な臨床試験を統合した大規模な共同研究である。

研究デザインと選択基準: 2つのプロトコルが事前に作成された。1つは手術単独に対する化学療法追加のメタアナリシス、もう1つは手術と放射線療法併用に対する化学療法追加のメタアナリシスである。対象となる試験は、1965年1月1日以降にランダム化が開始され、2群間で追加的な治療差がないランダム化比較試験 (RCT) とした。患者は根治的切除を受けた可能性があり、術前化学療法を受けていないことが条件とされた。最初のメタアナリシスでは、手術と補助化学療法を比較した試験が、2番目のメタアナリシスでは、手術と術後放射線療法に補助化学療法を加えた群と、手術と術後放射線療法のみの群を比較した試験が対象とされた。長期アルキル化剤を1年以上使用する試験は、現在使用されておらず有害であるため除外された。出版バイアスを制限するため、出版済みおよび未出版の試験、言語による制限なしに含められた。

検索戦略とデータ収集: MedlineおよびCancerLitの検索 (Cochrane Collaborationの最適検索戦略の修正版を使用) と、試験登録データベースの検索が行われた。これらは、会議録の手作業による検索、試験出版物およびレビュー記事の参考文献リストの確認によって補完された。共同研究者には追加の試験に関する情報提供が求められた。最初の検索は2003年に実施され、2009年9月まで定期的に更新された。データ収集では、1995年の以前のメタアナリシスに含まれた15試験については追跡期間の更新のみを求めた。新規試験については、ランダム化された全患者について、年齢、性別、切除範囲、病理学的病期、組織型、パフォーマンスステータス、治療群、ランダム化日、再発、生存、追跡期間のデータが収集された。データの欠損、妥当性、一貫性を確認するために標準的なチェックが行われた。

アウトカム指標の定義: 主要アウトカム (primary endpoint) は全生存期間 (OS) であり、ランダム化からあらゆる原因による死亡までの期間と定義された。生存中の患者は最終追跡日の時点で打ち切られた。副次アウトカムである無再発生存期間は、ランダム化から最初の再発またはあらゆる原因による死亡までの期間と定義された。局所再発までの期間および遠隔再発までの期間も同様に定義された。

統計解析: すべての解析は、プロトコルで事前に規定され、intention-to-treat (ITT) の原則に基づいて実施された。各アウトカムについて、ログランク検定の期待イベント数と分散を用いて個々の試験のハザード比 (HR) を算出し、固定効果モデルを用いて試験間で統合された。生存曲線はカプラン・マイヤー法を用いて提示された。中央値の追跡期間は逆カプラン・マイヤー法 (Schemper and Smith, 1996) を用いて算出された。化学療法の効果に対する試験および患者特性の影響を探索するため、事前に規定された試験群または患者サブグループごとに統合HRが算出された。治療効果の試験群間の差を調査するために交互作用のχ²検定が使用された。患者サブグループ間の治療効果の差を調査するために、試験内で関連する治療とサブグループの交互作用項を含むコックス回帰分析が実施され、交互作用係数 (HR) が試験間で統合された。試験間の治療効果または患者サブグループ交互作用の異質性を評価するためにχ²検定およびI²統計量が使用された。5年全生存期間の絶対差は、全体HRと対照群の生存率を用いて算出された。