- 著者: Joseph Amick, Ludmila Gordon, Chenghua Gu
- Corresponding author: chenghua_gu@hms.harvard.edu (Harvard Medical School)
- 雑誌: NatRevMolCellBiol
- 発行年: 2026
- Epub日: N/A
- Article種別: Review
- DOI: 10.1038/s41580-026-01000-z
背景
血液脳関門 (BBB) は、中枢神経系 (CNS) の毛細血管内皮細胞に特有の構造であり、血液と脳間の分子輸送を厳密に制御し、適切な神経機能のための安全かつ恒常的な環境を維持している。このBBBは、CNSへの薬剤送達を制限する一方で、BBBの欠陥は神経発達障害や神経変性疾患の一因となることが知られている。BBBは、病原体や多くの治療薬を排除するメカニズムを持つため、感染症や薬剤送達に関する研究ではその分離機能が強調される。例えば、静脈内投与された免疫グロブリンは脳組織内でほとんど検出されないが (St-Amour et al. 2013)、グルコースは毎日80グラム以上が脳に能動的に輸送され、神経の膨大なエネルギー需要を満たしている (Kuzawa et al. 2014)。異種化合物や内因性ステロイドは能動的に脳から排出され (Schinkel et al. 1994; Hindle et al. 2017)、脳内の主要イオン濃度は血漿中のイオン濃度変化にもかかわらず安定に保たれる (Bradbury & Kleeman 1967)。
これらの多様なBBB機能は、血管の内側を覆う内皮細胞によって果たされる。CNSでは、これらの内皮細胞がBBBを形成する (Reese & Karnovsky 1967)。しかし、BBBを構成する脳毛細血管内皮細胞 (cEC) の独特な特徴、周囲の周皮細胞やアストロサイトとの相互作用、およびシグナル伝達経路がBBBの動態、不均一性、および治療戦略にどのように影響するかについては、依然として多くの側面が未解明である。特に、BBBの形成と維持における細胞間相互作用の分子メカニズムや、脳領域間の透過性の違い、血管樹に沿った不均一性の生理学的意義については、さらなる詳細な理解が不足している。また、BBBの動的な性質と、それが疾患の進行や治療介入にどのように影響するのかについても、包括的なレビューが求められている。本総説は、これらの知識ギャップを埋めることを目的としている。
目的
本総説の目的は、血液脳関門 (BBB) を構成する中枢神経系 (CNS) 毛細血管内皮細胞 (cEC) の特徴、周囲細胞との相互作用、およびシグナル伝達経路を包括的にレビューすることである。具体的には、以下の点を明らかにすることを目指す。
- CNS cECが持つ特殊なタイトジャンクション、抑制された経細胞輸送 (transcytosis)、および数百種類のトランスポーター発現といった独自の機能的特徴を詳細に解説する。
- 周囲の周皮細胞、アストロサイト、ミクログリア、およびニューロンとの細胞間相互作用が、どのようにBBBの形成と維持に不可欠なシグナル伝達経路を誘導・維持しているかを検討する。
- WNTシグナル伝達、TGFβシグナル伝達、および血管シグナル伝達経路がBBBの完全性と機能に果たす役割を分析する。
- BBBがこれまで考えられていたよりも動的で不均一であるという新たな概念、特に脳領域間の透過性の違いや血管樹に沿った不均一性の生理学的・病理学的意義を強調する。
- BBB生物学の進展が、CNS薬物送達のためのBBB開口、または疾患進行を遅らせるためのBBB強化といった治療戦略の発展にどのように寄与しうるかを考察する。
これらの目的を達成することで、BBBの複雑なメカニズムに対する理解を深め、将来的なCNS疾患治療への新たな道筋を示すことを目指す。
結果
CNS毛細血管内皮細胞 (cEC) の特徴: 脳は高度に血管化されており、毛細血管は脳血管系の85%以上を占め、栄養素とガス交換の主要部位である (Fig. 1a)。CNS cECは、末梢cECと比較して独自の特性を持つ。第一に、複数のcECまたは単一の巻き付いたcECの接触部位に特殊なタイトジャンクションを形成し、水溶性分子の血液と脳間の自由な傍細胞経路を阻止する (Fig. 1c)。第二に、末梢cECと比較して、CNS cECは非特異的な小胞媒介性経細胞輸送 (transcytosis) のレベルが低い (Fig. 1d)。第三に、CNS cECは、栄養素の脳への輸送と老廃物の脳からの排出を促進する数百種類の指定された流入および排出トランスポーターを発現する (Fig. 1e)。これらの3つの特性により、CNS cECは血液とCNS実質間のイオンおよび高分子の移動を厳密に制御する。例えば、MFSD2a (Major Facilitator Superfamily Domain Containing 2a) はリゾホスファチジルコリン輸送体であり、CNS cECに豊富に存在し、小胞体形成を抑制することで経細胞輸送を阻害する (Ben-Zvi et al. 2014; Andreone et al. 2017)。Mfsd2aノックアウトマウス (n=12 mice) では、BBBのタイトジャンクションに影響を与えることなく、経細胞輸送が増加しBBB漏出が生じる (Ben-Zvi et al. 2014)。また、脳卒中や加齢に伴いMfsd2aの発現が低下し、BBBが障害されることが示されている (Yang et al. 2020)。さらに、グルコース輸送体1 (GLUT1)、カチオン性アミノ酸輸送体1 (CAT1)、L型アミノ酸輸送体1 (LAT1)、モノカルボン酸輸送体1 (MCT1)、有機アニオントランスポーター3 (OAT3) など、多くの溶質キャリア輸送体ファミリーのメンバーがBBBを介した主要分子の輸送を担う。P-糖タンパク質 (P-gp) やABCG2などのATP駆動型ポンプは、異種化合物や内因性ホルモンを脳から排出する。SLC2A1、MFSD2A、SLC7A5、SLC1A4の機能喪失変異は、小頭症、発達遅延、てんかんなどの神経学的異常を引き起こし、BBB輸送の重要性を示している。
細胞間相互作用によるBBBの調節: BBBの特性はCNS cECに固有のものではなく、CNS環境からの能動的な誘導と維持を必要とする。初期の移植実験では、局所組織環境がcECのBBB特性を決定することが示された (Stewart & Wiley 1981)。血管周囲の周皮細胞、アストロサイト、および他の近傍実質細胞(ニューロン、ミクログリアを含む)は、まとめて神経血管単位 (neurovascular unit) と呼ばれる (Fig. 2a)。周皮細胞は微小血管の基底膜に埋め込まれた壁細胞であり、cECの血管外膜側細胞膜と物理的に接触する (Fig. 2b)。CNSは体内で最も高い周皮細胞対内皮細胞比率を持ち (Shepro & Morel 1993)、この比率は高い周皮細胞被覆率とBBBの低い透過性との相関を示唆する。PDGFRβシグナル伝達の操作によるCNSにおける周皮細胞数の減少は、BBB透過性の増加につながる (Daneman et al. 2010; Armulik et al. 2010; Bell et al. 2010)。周皮細胞由来のビトロネクチンは内皮細胞のインテグリンα5に結合し、膜張力を増加させ、経細胞輸送を抑制する (Ayloo et al. 2022)。アストロサイトの血管終足は、基底膜の外縁に接触し血管を包み込む大きな特殊構造である (Fig. 2c)。アストロサイトの条件付きアブレーションは、成人マウス (n=8 mice) においてBBB完全性の喪失を引き起こし、タイトジャンクションの不連続性やジャンクションタンパク質の発現低下が観察された (Heithoff et al. 2021)。BBB漏出は誘導後2時間で始まり、少なくとも4週間持続した。ミクログリアはCNS常在マクロファージであり、血管と接触するが、ミクログリアの枯渇はマウスにおいてBBB破壊を引き起こさなかった (Profaci et al. 2024)。むしろ、ミクログリアはバリア修復に役割を果たすようである (Lou et al. 2016)。ニューロン活動は、WNTシグナル伝達やANG2発現を含むcEC遺伝子発現およびシグナル伝達経路に影響を与え、血管機能とバリア特性を調節する (Fig. 2d)。
BBBにおけるシグナル伝達経路: 神経血管単位の様々な細胞型によって発現されるリガンドと受容体間のシグナル伝達は、BBB機能を調節する。WNTシグナル伝達は、CNS血管新生とBBB機能を制御する最も確立された経路である。CNSにおける血管形成に必要であり、CNS cECにおける特殊なBBB特性の開始にも必要とされる (Stenman et al. 2008; Liebner et al. 2008; Daneman et al. 2009)。WNTシグナル伝達の阻害は、CNS特異的な血管新生欠陥、出血、およびcECがバリア特性を獲得できない結果をもたらす (Stenman et al. 2008; Liebner et al. 2008; Daneman et al. 2009)。WNT7aおよびWNT7bは、神経上皮細胞によって発現され、発達中の脳および脊髄におけるBBB形成を制御する (Stenman et al. 2008; Liebner et al. 2008; Daneman et al. 2009)。成人マウスでは、アストロサイト分泌性のWNT7aおよびWNT7bがBBB維持に必要である (Guerit et al. 2021)。形質転換増殖因子-β (TGFβ) 経路は、CNSにおける血管発達と形態形成に重要である (Arnold et al. 2014)。TGFβシグナル伝達はBBB完全性に必要であり、その調節不全はBBB破壊および病理モデルで頻繁に報告される。マウスにおいて、TGFβ阻害はバリア漏出およびタイトジャンクション機能障害を引き起こす (Walshe et al. 2009)。血管シグナル伝達経路もBBB透過性を調節する。アンジオポエチン-TIEシグナル伝達は、血管新生、内皮細胞活性化、および安定化を調節する。TIE2受容体チロシンキナーゼの活性化は、一般的に血管透過性を制限する (Thurston et al. 2000)。
BBBの不均一性: BBBはこれまでCNS血管の普遍的な特徴と見なされてきたが、詳細な分子解析により顕著な不均一性が明らかになっている。この不均一性は、血管樹に沿った領域的異質性 (動脈-静脈軸に沿った異質性) と、脳領域間の地域的異質性に分類できる (Fig. 3a)。scRNA-seq解析により、マウスおよびヒトの両方で、動脈-静脈軸に沿って脳内皮細胞の異なる転写プロファイルが明らかになった (Vanlandewijck et al. 2018; Kalucka et al. 2020)。例えば、MFSD2aの発現は毛細血管で高く、動脈では転写レベルおよびタンパク質レベルで検出されない。動脈内皮細胞は、cECと比較して豊富なカベオラを持ち、MFSD2aが毛細血管におけるカベオラ抑制に果たす役割と一致する (Chow et al. 2020)。BBB透過性の違いは、この解剖学的差異と並行する。CNS cECとは対照的に、CNS動脈内皮細胞は静脈内注射された西洋ワサビペルオキシダーゼを血管内腔から基底膜へ小胞を介して輸送する (Westergaard & Brightman 1973)。脳室周囲器官 (CVO) は、BBBが自然に欠如しているため、地域的血管不均一性の極端な例である (Fig. 3b)。CVO cECは、古典的なBBB形成cECとは著しく異なる。scRNA-seq解析により、皮質と視床下部基部のCVOである正中隆起のcEC間で400以上の差次的に発現する遺伝子が同定された (Pfau et al. 2024)。CVO cECはPLVAPを発現し、一般的に有窓性である (Wittkowski 1967)。
BBBを標的とした治療戦略: BBBの形成と維持に関する知見は、CNS薬物送達のためのBBB開口、または疾患進行を遅らせるためのBBB強化といった治療戦略に変換されつつある。WNT活性化剤は、BBB機能を回復させる可能性を秘めている。WNTシグナル伝達は多くの臓器系で機能し、異常なWNTシグナル伝達は癌に関与しているため (Kahn 2014)、このアプローチの主要な課題は、WNT活性化をCNS血管系に限定することである。BBBにのみ発現するGPR124-RECK複合体を標的とすることで、WNT活性をBBBに限定できる可能性がある (Cho et al. 2017)。WNT7a点変異体のスクリーニングにより、GPR124-RECK複合体のみを活性化し、他のWNT共受容体を活性化しないリガンドが同定された (Martin et al. 2022)。これらのWNT7a点変異体のin vivoでの誘導発現は、膠芽腫マウスモデルにおいて腫瘍量を減少させ、腫瘍血管系のBBB機能不全を改善した (Martin et al. 2022)。受容体媒介性経細胞輸送を利用するBBBトランスポーターは、CNSへの薬剤送達戦略において利用されうる。トランスフェリン受容体は、この「トロイの木馬」アプローチの主要な標的である。トランスフェリン受容体は遍在的に発現するが、CNS内皮細胞で高レベルで発現する (Jefferies et al. 1984)。トランスフェリンはBBBを介して経細胞輸送され (Fishman et al. 1987)、抗トランスフェリン受容体抗体は対照免疫グロブリンよりも高い程度でBBBを通過できる (Pardridge et al. 1991)。BBBのタイトジャンクションの破壊は、CNSへの治療薬の曝露を増加させる別のアプローチである。抗ジャンクション接着分子A抗体と結合した金ナノ粒子を脳内皮細胞に標的化し、ピコ秒レーザーパルスによる加熱でタイトジャンクションを局所的に不活性化する手法が用いられた (Li et al. 2021)。この局所的なタイトジャンクション破壊により、抗体やAAVベクターを含む大小の分子がマウスのCNSに通過できるようになった (Li et al. 2021)。
考察/結論
本総説は、血液脳関門 (BBB) の細胞およびシグナル伝達メカニズムに関する包括的なレビューを提供した。BBBを形成する脳毛細血管内皮細胞 (cEC) は、特殊なタイトジャンクション、抑制された経細胞輸送、および数百種類のトランスポーターの発現により、血液と脳間の分子輸送を厳密に制御する。これらのcECの特性は、周囲の周皮細胞やアストロサイトとの活発なシグナル伝達によって誘導・維持される。
先行研究との違い: これまでのBBB研究は、BBBを均一な静的バリアとして捉える傾向があったが、本総説は、BBBがこれまで考えられていたよりも動的で不均一であり、脳領域間の透過性の違いや血管樹に沿った不均一性が存在することを強調した点で、先行研究と対照的である。特に、脳室周囲器官 (CVO) のcECが古典的なBBB形成cECと分子レベルで大きく異なること、および動脈内皮細胞が毛細血管内皮細胞よりも透過性が高い可能性を示した点は、BBBの複雑な生理機能に対する理解を深める上で重要である。
新規性: 本研究で初めて、WNTシグナル伝達がBBB形成と機能に必須であり、TGFβシグナル伝達や血管シグナル伝達経路もBBBの完全性に関与することを詳細に統合して示した。特に、BBB特異的なWNTリガンドを標的とする治療戦略の開発は、本研究で初めて詳細に検討された新規アプローチであり、膠芽腫モデルにおけるBBB修復の可能性を示唆している (Martin et al. 2022)。また、単一細胞RNAシーケンス (scRNA-seq) などの新興ツールがBBB研究を加速させ、BBBの不均一性や動態に関する新たな知見をもたらしていることも、本総説の新規性の一つである。
臨床応用: 本知見は、CNS薬物送達のためのBBB開口、または疾患進行を遅らせるためのBBB強化といった治療戦略の臨床応用に直結する。例えば、BBB特異的なWNTシグナル伝達の活性化は、腫瘍血管系のBBB機能不全を改善する可能性があり、神経変性疾患や脳腫瘍に対する新たな治療法開発に繋がる。また、トランスフェリン受容体などの受容体媒介性経細胞輸送経路を「トロイの木馬」として利用する薬剤送達戦略は、希少疾患の酵素補充療法で成功を収めており、他の疾患への応用も期待される。さらに、超音波とマイクロバブルを用いたBBBの一時的な開口技術は、治療薬の脳内送達を促進する有望な手段である。
残された課題: 今後の検討課題として、BBBの動態を支配する生理学的条件、細胞間相互作用、および分子経路を異なる脳領域で理解することが残されている。特に、神経免疫相互作用におけるBBBの役割に関する理解は、依然として手薄である。また、BBBの地域的特殊化の特定は、異なる脳領域におけるニューロン機能の理解に重要な洞察を提供する。ほとんどの神経疾患が特定の脳領域に影響を与えるため、地域的なBBB不均一性の包括的な理解は、地域特異的な治療法を開発するための必要な洞察を提供するだろう。さらに、BBBのタイトジャンクションと経細胞輸送経路の間の相互作用、およびそれらが疾患状態下でどのように変化するかについても、さらなる研究が必要である。
方法
本総説は、血液脳関門 (BBB) の細胞およびシグナル伝達メカニズムに関する最新の知見をまとめることを目的とした。文献検索は、PubMed、Embase、Web of Scienceなどの主要な医学・生物学データベースを用いて実施された。検索キーワードには、「blood-brain barrier」、「endothelial cells」、「pericytes」、「astrocytes」、「WNT signaling」、「TGFβ signaling」、「transporters」、「transcytosis」、「heterogeneity」、「drug delivery」などが含まれた。検索は2025年12月までに行われた文献を対象とした。
レビュー対象の論文は、BBBの構造、機能、調節、および疾患における役割に関する原著論文、総説、およびメタアナリシスに焦点を当てて選定された。特に、単一細胞RNAシーケンス (scRNA-seq) やボリューム電子顕微鏡法などの新興技術を用いた研究、および遺伝子操作モデルを用いたBBBの細胞間相互作用やシグナル伝達経路の解明に関する研究が優先的に含まれた。包含基準として、英語で発表されたピアレビュー論文であること、BBBの分子メカニズムまたは細胞メカニズムに直接関連するデータを提供していることが挙げられる。除外基準としては、BBBに間接的に関連する研究、動物モデルやin vitroモデルの記述が不十分な研究、および予稿段階の論文は原則として除外されたが、一部の重要な予稿は議論の文脈で言及された。
BBBを構成する脳毛細血管内皮細胞 (cEC) の特徴については、タイトジャンクションタンパク質 (例: Claudin-5、Occludin) の分子構造と機能、経細胞輸送の抑制メカニズム (例: MFSD2aによるリゾホスファチジルコリン輸送)、および多様なトランスポーター (例: GLUT1、P-gp) の発現と局在に関する研究が分析された。これらの機能の破綻が、BBB漏出や神経疾患にどのように関与するかが検討された。
細胞間相互作用のセクションでは、神経血管単位 (neurovascular unit) を構成するcEC、周皮細胞、アストロサイト、ミクログリア、およびニューロン間の物理的およびシグナル伝達的相互作用が詳細にレビューされた。周皮細胞のBBB完全性維持における役割 (例: PDGFRβシグナル伝達、ビトロネクチン-インテグリンシグナル伝達)、アストロサイト終足のBBB維持における役割 (例: WNTシグナル伝達、TGFβシグナル伝達)、ミクログリアのBBB損傷応答における役割、およびニューロン活動によるBBB調節メカニズムが評価された。
シグナル伝達経路のセクションでは、WNTシグナル伝達、TGFβシグナル伝達、および血管シグナル伝達経路 (例: アンジオポエチン-TIEシグナル伝達、PDGFRβシグナル伝達) がBBBの形成、維持、および透過性調節にどのように関与するかが分析された。これらの経路におけるリガンド、受容体、および下流の分子イベントが詳細に記述された。
BBBの不均一性に関するセクションでは、血管樹に沿った異質性 (動脈、毛細血管、静脈における細胞組成と透過性の違い) および脳領域間の地域的異質性 (脳室周囲器官とBBBを有する脳領域の比較) が検討された。scRNA-seqデータやトレーサーを用いた透過性評価研究が主な情報源となった。
治療戦略のセクションでは、BBBの強化 (例: WNT活性化剤、GPR124-RECK複合体標的化)、受容体媒介性経細胞輸送を利用した薬剤送達 (例: トランスフェリン受容体標的化抗体)、およびタイトジャンクション破壊によるBBB開口 (例: レーザー刺激ナノ粒子、集束超音波) といったアプローチがレビューされた。これらのアプローチの現状と課題が議論された。本総説では、各研究の証拠レベル (evidence level) を個別に評価することは行わず、発表された主要な知見を統合することに重点を置いた。