- 著者: Eitan Giat, Michael Ehrenfeld, Yehuda Shoenfeld
- Corresponding author: Eitan Giat (Zabludowicz Center for Autoimmune Diseases, Sheba Medical Center, Tel-Hashomer, Israel)
- 雑誌: Autoimmunity Reviews
- 発行年: 2017
- Epub日: 2017-08-01
- Article種別: Review
- PMID: 28778707
背景
自己免疫疾患(AID)とがんの関連は双方向的であることが知られている。一方ではAIDが悪性腫瘍リスクを高め、他方ではがん自体がAIDを誘発しうる。また、腫瘍随伴症候群としてAID様の臨床像を呈するがんも存在する。関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、原発性シェーグレン症候群(pSS)、炎症性筋疾患、強皮症(Sc)、血管炎などの主要なAIDにおいて、悪性腫瘍の発症率が一般集団と異なることが大規模レジストリデータから示されてきた (Ehrenfeld 2013)。これらの疾患の病態には、サイトカインや免疫細胞の調節不全が関与しており、これらが腫瘍形成を促進する可能性が示唆されている (Dranoff 2004)。例えば、慢性炎症はDNA損傷、細胞増殖、血管新生、免疫抑制を促進し、がん発生に寄与すると考えられる。特に、RA患者におけるリンパ腫リスクの増加は、疾患活動性や免疫抑制剤の使用だけでなく、慢性的なB細胞の活性化が関与している可能性が指摘されている (Smitten et al. 2008)。
さらに、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)や生物学的製剤(特に抗腫瘍壊死因子(TNF)療法)など、AIDの治療に用いられる薬剤ががんリスクに与える影響も重要な臨床的課題として議論されてきた。過去の研究では、これらの治療薬ががんリスクを増加させる可能性が指摘されてきたが、大規模なコホート研究やメタアナリシスによってその見解が変化しつつある。例えば、抗TNF療法については、初期の懸念とは異なり、多くの固形腫瘍リスクの有意な増加は認められないという報告が増えている (Bonovas et al. 2016)。しかし、特定の固形腫瘍(例:メラノーマ)や血液悪性腫瘍(例:リンパ腫)との関連については、依然として議論の余地が残されている。
しかし、AIDとがんの関連性には依然として未解明な点が多く、特に地域差や人種差、特定のサブタイプにおけるリスクの変動、そしてがんがAIDを誘発する分子メカニズムについては、さらなる詳細な検討が不足している。例えば、pSSにおける悪性腫瘍リスクの推定値は、欧州とアジアのコホート間で大きな乖離が認められており、その原因は十分に解明されていない (Liang et al. 2014)。また、強皮症や皮膚筋炎といった特定のAIDでは、がんとの近接した時間的関連や特定の自己抗体の存在が指摘されているものの、その分子病態や臨床的意義に関する知見はまだ十分ではない。これらの知識ギャップは、AID患者のがんスクリーニング戦略の個別化や、がんおよびAIDの共通の治療標的の特定を妨げている。
本レビューは2015年のレビューを更新し、直近2年間(2015年から2017年)に発表された主要なエビデンス、特に大規模コホート研究やレジストリデータ、および概念を変えるような新たな発見を整理した総説である。これにより、AIDとがんの双方向的な関連性に関する最新の知見を包括的に提供し、今後の研究および臨床実践における知識ギャップを埋めることを目指す。特に、抗TNF療法と特定のがんリスクの関連性、およびシェーグレン症候群やループスにおける悪性腫瘍リスクの新たな推定値に関する知見が不足しており、本レビューはこれらのギャップを埋めることを目的としている。
目的
本レビューの目的は、過去2年間(2015〜2017年)に発表された主要な大規模コホート研究、レジストリデータ、および概念を変えるような新たな発見を中心に、自己免疫疾患(AID)とがんの関連に関する最新のエビデンスを更新し、包括的にまとめることである。具体的には、以下の点を明らかにする。
- 各AID疾患における悪性腫瘍リスクの再評価: 関節リウマチ(RA)、原発性シェーグレン症候群(pSS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症(Sc)、多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)、ANCA関連血管炎(AAV)など主要なAIDにおける悪性腫瘍の発生率、種類、およびリスク因子の最新の知見を提示する。特に、大規模レジストリからのデータに基づき、以前の推定値との差異を検証する。これには、地域差や人種差によるリスク変動の分析も含まれる。
- AID治療薬のがんリスクへの影響: 特に抗TNF療法を含む生物学的製剤および従来の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)のがんリスクに与える影響について、最新の観察研究およびメタアナリシスの結果を評価する。これにより、治療選択におけるがんリスクの考慮事項を明確にする。
- がんがAIDを誘発するメカニズムの解明: がんが自己免疫疾患を誘発する新たなメカニズム、例えば特定の遺伝子変異や自己抗体の役割に関する発見を考察する。これには、腫瘍随伴症候群としてのAID発症の分子病態の理解も含まれる。
- 新たなAIDとがんの関連性の特定: IgG4関連疾患(IgG4RD)、ベーチェット病(BD)、サルコイドーシスなど、これまで明確な関連がなかった疾患と悪性腫瘍との新たな関連性に関する知見を提示する。これにより、これらの疾患におけるがんスクリーニングの必要性を検討する。
これらの目的を達成することで、AID患者のがんスクリーニング戦略の個別化や、がんおよびAIDの共通の治療標的の特定に資する知見を提供することを目指す。最終的には、AID患者の予後改善に貢献する臨床的示唆を導き出すことを意図する。
結果
関節リウマチ(RA)における悪性腫瘍リスクの再評価: 複数の大規模コホート研究により、RA患者の全体的な悪性腫瘍リスクは一般集団と同程度か軽度低下する傾向にあることが示された。例えば、韓国のコホート研究 (n=2,104、平均追跡期間7.4年) では、胃がんのリスク低下 (SIR 0.663, 95% CI 0.327-0.998) が報告された (Chang et al. 2014)。一方で、非ホジキンリンパ腫 (NHL) のリスクは一貫して有意に上昇しており、韓国のコホートではSIR 3.387 (95% CI 1.462-6.673)、日本の大規模コホート (66,953患者年) ではSIR 3.43 (95% CI 2.59-4.28) と報告された (Hashimoto et al. 2015)。台湾のコホート (n=30,504、225,432人年) でも、全体のがんリスクは低下 (SIR 0.93, 95% CI 0.88-0.97) するものの、ホジキンリンパ腫 (SIR 3.31, 95% CI 1.24-8.81) およびNHL (SIR 3.18, 95% CI 2.64-3.83) のリスク上昇が確認された (Huang et al. 2014)。RAはがんの生存率にも影響を及ぼし、乳がん・前立腺がん患者では死亡率が40〜50%増加することが示された (Nayak et al. 2017)。英国のコホート研究 (n=3,771) では、非生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)治療を受けているRA患者において、全体のがんリスクが上昇 (SIR 1.28, 95% CI 1.10-1.48) し、特に肺がん (SIR 2.39, 95% CI 1.75-3.19)、ホジキンリンパ腫 (SIR 12.82, 95% CI 4.16-29.92)、NHL (SIR 3.12, 95% CI 1.79-5.07) のリスク増加が認められた (Mercer et al. 2013)。これらの結果は、RA患者におけるがんリスクが、がん種や地理的要因によって異なることを示唆している (Table 1)。
RA治療薬とがんリスクの最新評価: 抗TNF療法のがんリスクについては、英国BSRBR (British Society for Rheumatology Biologics Register)、米国コホート、および欧州11レジストリの多施設共同研究 (n=130,315例、579,983人年) はいずれも固形腫瘍リスクの有意な増加を示さなかった (Mercer et al. 2015, Mercer et al. 2017)。これは、以前懸念されていた「抗TNF薬のがんリスク増加」が過大評価されていた可能性を示唆する。ただし、スウェーデンのARTISコホートでは抗TNF療法によるメラノーマリスクの上昇 (HR 1.5, 95% CI 1.0-2.2) が示されており、地域差や人種差の可能性が指摘された (Raaschou et al. 2013)。メトトレキサート (MTX) は、大規模Medicare研究において非メラノーマ皮膚がんリスクを60%増加させる可能性が示唆された (Scott et al. 2016)。他の生物学的製剤 (リツキシマブ、トシリズマブ、トファシチニブ、アバタセプト) については、臨床試験データではがん発生率の有意な増加は認められていない (van Vollenhoven et al. 2015, Rubbert-Roth et al. 2016, Curtis et al. 2016, Simon et al. 2009)。これらの結果は、RA治療薬選択において、がんリスクを考慮する際の重要な情報を提供する。
原発性シェーグレン症候群 (pSS) における悪性腫瘍リスクとリンパ腫予測因子: メタアナリシス (14研究、n=14,523) では、pSS患者の全体がんリスク上昇 (RR 1.53, 95% CI 1.17-1.88)、NHL (RR 13.76, 95% CI 8.53-18.99)、甲状腺がん (RR 2.58, 95% CI 1.14-4.03) の有意な増加が確認された (Liang et al. 2014)。しかし、台湾の大規模コホート (n=7,852) では全体SIR 1.04 (95% CI 0.91-1.18) と低く、欧州コホートとの乖離が目立った。欧州コホートでは長期追跡でNHLが10.5%に達するのに対し、台湾コホートでは0.5%未満であり、追跡期間や診断基準の差異が影響していると考えられる (Abrol et al. 2014)。リンパ腫の予測因子としては、耳下腺腫脹、紫斑、リンパ節腫脹、低C4、クリオグロブリンが最も一貫して指摘されている (Nishishinya et al. 2015)。リンパ球性焦点スコアが3以上であることもNHL発症の陽性予測値16%、陰性予測値98%と関連することが示された。これらの予測因子は、pSS患者におけるリンパ腫の早期発見に役立つ可能性がある。
全身性エリテマトーデス (SLE) における悪性腫瘍リスクの多様性: 複数の大規模研究でNHL、肺、膀胱、肝臓などのがんリスク上昇が確認された。英国CPRD (n=7,732 SLE例) では、全体がんの発生率比 (IRR) は1.28 (95% CI 1.17-1.40) であり、男性でわずかに高かった (Rees et al. 2016)。一方で、卵巣がんや大腸がんのリスクは低下する傾向が示された (Mao et al. 2016)。小児SLEでも悪性腫瘍リスクが増加することが台湾のコホート研究 (n=904、6年追跡) で報告された (Chan et al. 2016)。乳がんリスクについては、従来の「保護的」という仮説に反し、Medicareコホートでは一般集団と同等 (年齢調整リスク2.23 vs 2.14 per 100人) であることが示された (Khaliq et al. 2015)。甲状腺がんのリスクはメタアナリシスでSIR 2.22 (95% CI 2.11-2.34) と上昇していた (Zhang et al. 2014)。これらの結果は、SLE患者におけるがんスクリーニングの個別化の必要性を示唆している。
強皮症 (Sc) とがんの関連性および分子メカニズムの解明: 抗RNAポリメラーゼIII抗体を有する強皮症患者は、がんとの近接した時間的関連が特徴的である。ジョンズホプキンス大学のコホート研究 (n=1,044) では、Sc発症時の年齢 (OR 1.04) と白人種 (OR 2.71) ががん発症の有意なリスク因子として同定された (Shah et al. 2015)。さらに、がん誘発性強皮症の新たなメカニズムとして、がん患者の腫瘍組織にポリメラーゼIIIポリペプチドA (POLR3A) 遺伝子変異が認められることが発見された (Joseph et al. 2014)。抗PM/Scl-100抗体を有するSc患者の20%にがんが発症し、がん切除後に自己抗体が消失しSc症状が改善した症例も報告されている (Bruni 2017)。これらの知見は、強皮症におけるがん関連自己抗体のスクリーニングの重要性を示唆する (Figure 2)。
多発性筋炎 (PM) /皮膚筋炎 (DM) とがんの関連性: 大規模メタアナリシス (20研究) では、PMのSIR 1.62 (95% CI 1.19-2.04)、DMのSIR 5.50 (95% CI 4.31-6.70)、PM/DM合計でSIR 4.07 (95% CI 3.02-5.12) と、がんリスクの有意な上昇が示された (Yang et al. 2015)。DM発症1年以内のがんリスクは17.29と著しく高く、5年以降は1.37に低下する (Qiang et al. 2017)。抗p155/140 (抗TIF1γ) 抗体はがん関連DMを強く示唆するバイオマーカーとして有用である (Trallero-Araguas et al. 2012)。中国南部のコホート (n=246) では、DM患者の24.4%にがん合併が認められ、うち上咽頭がんが35%、卵巣がんが15%を占めた (Chen et al. 2014)。これらの結果は、PM/DM患者におけるがんスクリーニングの必要性を強調する。
ANCA関連血管炎 (AAV) とがんリスク: メタアナリシス (n=2,578 AAV患者) では、非メラノーマ皮膚がん (SIR 5.18)、白血病 (SIR 4.89)、膀胱がん (SIR 3.84)、リンパ腫 (SIR 3.79) のリスク増加が認められた (Shang et al. 2015)。これらの患者の大半はシクロホスファミド投与を受けており、がんリスクの増加は薬剤性副作用の可能性が高いと考えられた。しかし、シクロホスファミドを1年以上投与されていない患者ではがんリスクの増加は認められなかったというオランダのコホート研究 (Rahmattulla et al. 2015) もあり、薬剤の影響を慎重に評価する必要がある。
その他の自己免疫疾患とがんの関連性の拡大: IgG4関連疾患 (IgG4RD) については、一部の研究でがんリスクの増加が示唆された。特に、診断後1年以内のがんリスクは2倍以上 (HR 3.53, 95% CI 1.23-5.83) と高かった (Asano et al. 2015)。ベーチェット病 (BD) では、台湾のデータベース (n=1,314 BD患者) から、女性BD患者の全体がんリスク上昇 (SIR 1.8) が報告され、NHL (SIR 8.3)、血液悪性腫瘍 (SIR 4.2)、乳がん (SIR 2.2) のリスクが高かった (Wang et al. 2015)。サルコイドーシス患者では、全体のがんリスクは一般集団と同程度であったが、胸腔外病変を有する患者では血液悪性腫瘍のリスクが有意に高かった (Ungprasert et al. 2017)。これらの疾患における新たな関連性の発見は、今後の研究および臨床的モニタリングの必要性を示唆する。
がんが誘発する自己免疫疾患のメカニズム: スウェーデンがん登録からのデータでは、自己免疫性溶血性貧血 (AIHA) でSIR 27.2、免疫性血小板減少性紫斑病 (ITP) でSIR 7.5、pSSでSIR 4.9と、AIDがNHLの強力な危険因子であることが示された (Fallah et al. 2014)。がんがAIDを誘発するメカニズムとしては、強皮症におけるポリメラーゼIIIポリペプチドA(POLR3A)変異やDMにおける転写中間因子1γ(TIF1γ)抗体のほか、腫瘍随伴性自己免疫症候群 (例: 腫瘍随伴性天疱瘡、イートン・ランバート症候群) が挙げられる (Joseph et al. 2014, Manger and Schett 2014)。これらの腫瘍随伴症候群は、がん細胞が産生する抗原に対する免疫応答が、正常組織の自己抗原と交差反応することで発症すると考えられる (Figure 1)。また、がん患者における自己抗体の存在は、食道がん (Zhang et al. 2015)、胃がん (Werner et al. 2015)、大腸がん (Chen et al. 2014)、卵巣がん (Shi et al. 2015)、乳がん (Xia et al. 2016) などの早期発見バイオマーカーとしても提案されている。
考察/結論
先行研究との違い: 本レビューは、自己免疫疾患(AID)とがんの関連が双方向的であり、その複雑性と多様性を改めて強調するものである。AIDの種類、対象集団の地理的・人種的背景、および治療薬の種類によって、がんリスクのパターンや程度が大きく異なることが明らかになった。特に、メタアナリシスの結果を解釈する際には、研究間の異質性やバイアスを慎重に考慮する必要がある。本レビューでは、抗TNF療法と全体的な固形腫瘍リスクの関連性に関する見方が大きく変化したことを指摘する。これまで抗TNF薬ががんリスクを増加させるという懸念が強かったが、英国BSRBRや欧州多施設レジストリといった大規模なリアルワールドデータからは、全体的な固形腫瘍リスクの有意な増加は示されず、この関連性が過大評価されていた可能性が高いことが示された (Mercer et al. 2015, Mercer et al. 2017)。これは、以前の小規模な研究やRCTのメタアナリシスで示唆された結果とは対照的である。ただし、メラノーマについてはスウェーデンARTISコホートでリスク上昇 (HR 1.5, 95% CI 1.0-2.2) が報告されており、地域差を考慮した継続的なモニタリングが残された課題である。また、RA患者における全体のがんリスクが一般集団と同等か軽度低下するという知見も、以前の「RA患者はがんリスクが高い」という認識と異なる点である。
新規性: 本研究で初めて、IgG4関連疾患、ベーチェット病、サルコイドーシスなど、これまでがんとの明確な関連が確立されていなかったAIDにおいても、悪性腫瘍リスクの増加が示唆されたことは新規な知見である。特にIgG4関連疾患では、診断後1年以内のリスクが3.53 (95% CI 1.23-5.83) と高かった (Asano et al. 2015)。また、がんがAIDを誘発するメカニズムとして、強皮症におけるポリメラーゼIIIポリペプチドA(POLR3A)遺伝子変異や、皮膚筋炎における転写中間因子1γ(TIF1γ)抗体の役割が分子レベルで解明されつつあることは、本研究で初めて詳細に検討された点である (Joseph et al. 2014, Trallero-Araguas et al. 2012)。これらの発見は、がんが自己免疫疾患の病態形成に直接的に関与する新たな経路を示唆しており、両疾患の共通の治療標的となりうる可能性を秘めている。
臨床応用: 本知見は、AID患者のがんスクリーニング戦略の個別化に直結する。臨床的意義として、強皮症や多発性筋炎/皮膚筋炎の患者では、特定の自己抗体プロファイル(例: 抗RNAポリメラーゼIII抗体、抗TIF1γ抗体)に基づき、がんの早期発見と治療介入が期待される。これにより、がん関連AIDの患者の予後改善に貢献しうる。また、AID患者におけるがん合併の頻度は実臨床で看過されがちであり、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)によるがん治療が増加するにつれて、AID患者のがん管理の重要性はさらに増している。本レビューは、これらの患者群に対するより個別化された医療アプローチの必要性を強調するものである。
残された課題: 今後の検討課題として、各国・地域におけるAID患者のがん発症に関する詳細なレジストリ構築と、それに基づいた標準的ながんスクリーニング戦略の確立が挙げられる。特に、アジア圏からの大規模データは欧米諸国と比較して依然として不足しており、人種や環境要因によるリスクの差異をさらに解明する必要がある。また、がんがAIDを誘発する分子メカニズムのさらなる解明は、両疾患に対する新たな診断・治療法の開発に繋がる可能性があり、今後の研究の方向性として重要である。本レビューは非系統的レビューであり、選択バイアスが存在する可能性や、個々の研究の質評価が限定的であるというlimitationも存在する。将来的には、より厳密な系統的レビューや大規模な前向きコホート研究が必要である。
方法
本研究は、自己免疫疾患(AID)とがんの関連性に関する文献レビュー形式(非系統的)である。主に過去2年間(2015年から2017年)に発表された研究を対象とし、大規模コホート研究、レジストリ研究、およびメタアナリシスに焦点を当てて内容を統合した。文献検索にはPubMed、Embase、Web of Scienceなどの主要な医学データベースが用いられた。検索期間は2015年1月1日から2017年7月12日までとし、「autoimmune disease」「cancer」「malignancy」「rheumatoid arthritis」「systemic lupus erythematosus」「Sjogren’s syndrome」「scleroderma」「myositis」「vasculitis」「anti-TNF」などのキーワードを組み合わせて関連性の高い論文を特定した。
レビューの対象としたAIDは、関節リウマチ(RA)、乾癬性関節炎(PsA)、強直性脊椎炎(AS)、成人発症スティル病(AOSD)、原発性シェーグレン症候群(pSS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症(Sc)、多発性筋炎(PM)/皮膚筋炎(DM)、ANCA関連血管炎(AAV)、IgG4関連疾患(IgG4RD)、ベーチェット病(BD)、サルコイドーシスなど、主要な自己免疫疾患およびその他の関連疾患である。
各疾患について、以下の側面を検討した。
- 悪性腫瘍の全体的な発生率: 一般集団と比較した標準化発生率(SIR)や相対リスク(RR)を中心に評価した。
- 特定のがん種のリスク: 非ホジキンリンパ腫(NHL)、肺がん、乳がん、胃がん、甲状腺がん、皮膚がん(非メラノーマ皮膚がんを含む)など、部位特異的ながんリスクの変動を分析した。
- 治療薬の影響: 従来の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)(例: メトトレキサート(MTX))および生物学的製剤(特に抗TNF療法)ががんリスクに与える影響について、大規模レジストリデータやランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシス結果を評価した。
- がんがAIDを誘発するメカニズム: がんの診断とAIDの発症の近接性、特定の自己抗体(例: 抗RNAポリメラーゼIII抗体、抗転写中間因子1γ(TIF1γ)抗体)とがんの関連、および遺伝子変異(例: ポリメラーゼIIIポリペプチドA(POLR3A)遺伝子変異)の役割に関する報告を統合した。
- リンパ腫の予測因子: pSSにおけるリンパ腫発症の臨床的および検査学的予測因子について、最新の知見をまとめた。
データの統合にあたっては、研究間の異質性(例: 追跡期間、診断基準、対象集団の地理的・人種的背景)を考慮し、結果の解釈における限界についても言及した。統計手法に関する具体的な記述は、各研究の報告に基づき、標準化発生率(SIR)、相対リスク(RR)、ハザード比(HR)、95%信頼区間(95% CI)、p値などが用いられた。本レビューは、個々の研究の質評価に系統的レビューで用いられるGRADEアプローチは採用していないが、大規模コホート研究やメタアナリシスといったエビデンスレベルの高い研究を優先的に取り上げた。