ADAR1 (Adenosine Deaminase RNA Specific 1)
一行要約
ADAR1 は二本鎖 RNA 上の adenosine を inosine に編集する A-to-I RNA editing 酵素で、内在性 dsRNA を編集して MDA5/RIG-I による「自己 RNA を外来とみなす」自然免疫センサーの誤作動を防ぐ。腫瘍ではこの機能を悪用して type I interferon 応答を抑え免疫逃避するが、逆に ADAR1 を欠失させると dsRNA センシングが暴走して炎症性細胞死と抗腫瘍免疫が誘導されるため、免疫療法感作標的として肺がんを含む固形腫瘍の文脈で wiki に登場する。
主要エビデンス
- type I interferon シグナルのバランス制御で ADAR1 が自己 dsRNA 編集による IFN 過剰応答の抑制因子として整理される (Chadwick et al. NatRevCancer 2026)
- RNA 結合蛋白・リボヌクレオプロテインが免疫を規定する文脈で ADAR1 が中心的 editor として議論される (Turner et al. NatRevImmunol 2026)
- m6A など RNA 修飾のがん制御の総説で A-to-I editing が並置される (Luo et al. NatRevCancer 2026)
- SCLC で DDR 阻害が dsRNA/STING を介した自然免疫活性化を起こす文脈で RNA センシング経路が議論される (Hiatt et al. CancerDiscov 2019)
メカニズム
ADAR1 は p110 (核) と interferon 誘導性 p150 (細胞質) の 2 アイソフォームを持ち、dsRNA 領域 (特に Alu repeat 由来 inverted repeat) の adenosine を inosine に脱アミノ化する。inosine は二本鎖構造を不安定化し、細胞質センサー MDA5 (IFIH1) による自己 dsRNA 認識を抑える。ADAR1 喪失 → 未編集 dsRNA 蓄積 → MDA5-MAVS / PKR / ZBP1 経路活性化 → type I IFN, 翻訳停止, 炎症性細胞死。腫瘍はしばしば ADAR1 過剰発現で IFN 応答を抑え、ISG 高発現腫瘍は ADAR1 依存性 (synthetic lethal) を示す。
臨床位置づけ
ADAR1 は免疫療法抵抗性を打破する有望標的で、ADAR1 (特に p150/deaminase domain) 阻害が ISG 高発現・IFN 経験腫瘍を checkpoint 阻害に感作する前臨床知見がある。低分子/オリゴ阻害剤の開発が進行中で、肺がんでは IFN 経路・DDR 阻害との併用 rationale が検討されるが、臨床確立には至っていない。
Open Questions
- ADAR1 依存性を予測する biomarker (ISG signature, MDA5 活性) の臨床確立
- ADAR1 阻害と免疫チェックポイント阻害/DDR 阻害併用の肺がんでの安全性・有効性