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Bioinspired artificial exosomes based on lipid nanoparticles carrying let-7b-5p promote angiogenesis in vitro and in vivo

  • 著者: Sezin Aday, Inbal Hazan-Halevy, Aranzazu Chamorro-Jorganes, Maryam Anwar, Meir Goldsmith, Nicholas Beazley-Long, Susmita Sahoo, Navneet Dogra, Walid Sweaad, Francesco Catapano, Sho Ozaki-Tan, Gianni D. Angelini, Paolo Madeddu, Andrew V. Benest, Dan Peer, Costanza Emanueli
  • Corresponding author: Costanza Emanueli (Imperial College London, UK); Dan Peer (Tel Aviv University, Israel)
  • 雑誌: Molecular Therapy
  • 発行年: 2021
  • Epub日: 2021-03-18
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 33744469

背景

虚血性心疾患および末梢動脈疾患は、世界的な死亡原因の主要な位置を占めている (Olivetti et al. 1996; Anversa et al. 1998)。これらの疾患に対する治療法として、幹細胞 (SC) 移植療法が提案されてきたが、自家細胞の機能不全、免疫原性、および安全性リスクといった課題から、その臨床的有効性は限定的であった (Losordo and Dimmeler 2004)。近年、SC由来の小細胞外小胞 (sEV; エクソソーム) が、幹細胞の治療効果を媒介する主要なパラクリン因子として注目を集めている (Emanueli et al. al. 2015; Boulanger et al. 2017)。特に、健康な間葉系幹細胞 (MSC) やCD34陽性細胞由来のsEVは、その内包するマイクロRNA (miRNA) を介して血管新生促進作用を示すことが報告されている (Chen et al. 2010; Zhang et al. 2015; Gong et al. 2017; Liang et al. 2016; Mathiyalagan et al. 2017; Sahoo et al. 2011)。また、心臓外科手術患者の心膜液 (PF) 中にも血管新生促進性のsEVが存在し、miRNA let-7b-5pを介して内皮細胞 (EC) の血管新生を促進することが示されている (Beltrami et al. 2017)。しかし、培養SCからのsEVの大量かつ均一な産生は困難であり、その組成の不均一性やコールドチェーン保管の必要性が臨床応用の障壁となっていた (Phinney and Pittenger 2017; Tsao et al. 2014; Floriano et al. 2020)。これらの課題により、sEVを基盤とした治療法の臨床導入にはギャップが残されている。

一方、脂質ナノ粒子 (LNP) は、RNA治療薬の送達プラットフォームとして最も進んだ非ウイルス性システムであり、FDA承認RNAi薬であるパチシラン (patisiran) (Adams et al. 2018) でその安全性と有効性が実証されている (Rietwyk and Peer 2017; Semple et al. 2010; Jayaraman et al. 2012)。このパチシランに用いられているイオン化可能なアミノ脂質Dlin-MC3-DMA (MC3) は、LNP構造の重要な構成要素である。内因性sEVの有効成分である特定のプロ血管新生性miRNAをLNPに搭載した「生体模倣人工エクソソーム (AE)」のコンセプトは、sEVが抱える大量均一製造、品質管理、および規制承認の実現可能性といった課題を克服しうる革新的なアプローチとして提唱された。このアプローチは、幹細胞そのものの移植から、幹細胞の「活性成分」を模倣した合成ナノ粒子へとパラダイムシフトをもたらす可能性を秘めている (Ong and Wu 2015)。しかし、複数の異なるプロ血管新生性sEVに共通するmiRNAシグネチャーを網羅的に同定し、それを基盤としたAEの設計とin vivoでの機能検証は、これまで十分に確立されていなかった。特に、miRNAの組み合わせが単純な相加効果を超えた複雑な相互作用を示す可能性も指摘されており、最適なカーゴ選択にはさらなる検討が不足している。本研究は、この未解明な領域を解明し、虚血性疾患に対する新たな治療戦略を開発することを目的とする。

目的

本研究は、虚血性疾患に対する革新的なナノ医療製品としての生体模倣人工エクソソーム (AE) の可能性を検証することを目的とした。具体的には、以下の3つの目的を設定した。 (1) 複数のヒト幹細胞源(ヒト伏在静脈周囲細胞 (hSVP)、骨髄 (BM)-CD34+単核細胞 (MNC)、心膜液 (PF)、間葉系幹細胞 (MSC))由来の促血管新生性sEVに共通するmiRNAシグネチャーを同定すること。これにより、sEVの血管新生促進効果を担う主要なmiRNAを特定する。 (2) 同定した促血管新生miRNA、特にlet-7b-5pを搭載した、FDA承認LNP技術 (MC3) に基づく人工エクソソームプロトタイプを開発すること。このプロトタイプは、天然sEVの利点を模倣しつつ、製造の均一性とスケーラビリティを確保することを目指す。 (3) 開発した人工エクソソームのin vitroおよびin vivoにおける血管新生促進効果を詳細に検証すること。in vitroでは内皮細胞 (EC) の生存、増殖、チューブ形成能を評価し、in vivoではマトリゲルプラグモデルを用いて血管新生誘導能を評価する。

結果

促血管新生sEVの共通miRNAシグネチャーとしてlet-7ファミリーを同定: 4種の促血管新生sEV (hSVP、BM-CD34+ MNC、PF、MSC-P4由来) に共通するmiRNAとして21種が同定された (Figure 2A)。このうち、let-7a-5pとlet-7b-5pは全ての促血管新生sEVに高発現しており、非促血管新生対照sEVには低発現であった。hSVP-sEVはHUVECのMatrigelチューブ形成を促進し (2.5 μg/mLで最大効果)、カスパーゼ活性を低下させ、増殖を増加させた (Figure 1B, 1D)。EV-free CMおよびhSVP-EVは、未処理細胞群と比較してECの代謝 (ATP産生) および生存率を改善した (Figure 1D)。MSC由来sEVの促血管新生能はP4で最大であり、P7〜8では著明に低下した (Figure S3)。この結果は、let-7ファミリーがプロ血管新生性sEVの主要なmiRNAカーゴであることを強く示唆する。

let-7bの個別・強力な血管新生促進効果の確認とAEカーゴ選択: let-7aおよびlet-7bの個別トランスフェクションにより、低酸素条件下のHUVEC (n=5 cells/group) の生存率と増殖が向上し、Matrigelでのスプラウト形成が促進された (Figure S7A, S8-S10)。しかし、let-7aとlet-7bの同時トランスフェクションでは、個別投与と比較して促血管新生効果が低下し (細胞生存率および代謝の低下)、let-7bを単独カーゴとして選択するに至った (Figure S7B)。let-7b単独での効果は、カスパーゼ活性の有意な低下 (p < 0.01) と細胞増殖の有意な増加 (p < 0.05) で確認された。

人工エクソソーム (AE) の均一作製と細胞毒性非存在の確認: マイクロフルイディクス法により作製されたlet-7b-AEは、サイズ48.41 ± 0.45 nm (多分散指数 [PDI] < 0.2〜0.3) であり、生理的pHでわずかに負のゼータ電位を示し、TEMにより球形形態が確認された (Figure 2B)。Cy5-cel-miR-39-AEは56.95 ± 3.37 nmであった。AEはHUVEC、cHMVEC、およびhSVPに対して毒性を示さず (ATP産生アッセイ)、24〜48時間後には細胞数増加による高ATPが観察された (Figure 3A)。Cy5-cel-miR-39-AEをHUVECに添加すると、4時間以内に約100%の細胞がAEの内包するmiRNAを取り込み、この内在化は24時間まで維持された (Figure 2C)。miRNAカーゴの細胞への移送は、qPCR解析により時間依存的に増加することが示された (Figure 2D, 2E)。

let-7b-AEの内皮細胞機能的活性化と促血管新生効果 (in vitro): let-7b-AEは、低酸素HUVEC (n=5 replicates) においてカスパーゼ活性を対照AEと比較して有意に低下させ (p < 0.01〜0.001)、増殖を有意に増加させた (p < 0.05〜0.001) (Figure 3B)。let-7b-AEはHUVECへのlet-7b移送を時間依存的に増加させ (Figure 3D)、標的遺伝子であるCASP3 (低酸素条件で特に有効)、MTOR、KRAS等を有意に下方制御した (p < 0.05〜0.0001) (Figure 3E-G)。CASP3の発現は、低酸素条件下でlet-7b-AEによってより効率的に抑制された (Figure 3E)。Matrigelアッセイ (2.5D) および3Dフィブリンゲルビーズアッセイの両系で、let-7b-AEはスプラウト形成を有意に促進した (スプラウト長・数ともに p < 0.01) (Figure 3C, 4)。3Dフィブリンゲルビーズアッセイでは、30 nMのlet-7b-AEがスプラウトの長さと数を約2.5-fold増加させた (n=4 replicates)。cHMVECでもMatrigelアッセイにより、let-7b-AEによる血管様チューブ形成の有意な促進が確認された (p < 0.0001) (Figure 5)。

let-7b-AEのin vivo血管新生促進効果: Matrigelプラグアッセイにおいて、let-7b-AEで前処置したHUVECを含むプラグは、Cy5-cel-miR-39-AE群および無治療群と比較して血管様構造の密度が増加した (Figure 6A, 6B)。let-7b-AE群のプラグ血管化は、血管内皮増殖因子 (VEGF) 陽性対照に匹敵するレベルであった (p = 0.0571)。統計的有意差にはわずかに届かなかったものの、let-7b-AEがCD31陽性ECの数を増加させる明確な傾向が示された (Figure 6C)。これは、let-7b-AEがin vivoで血管新生を誘導する可能性を示す重要な所見である (n=4 mice/group)。

考察/結論

本研究は、複数の幹細胞由来sEVに共通する促血管新生miRNAシグネチャーとしてlet-7ファミリーを同定し、特にlet-7b-5pを搭載したMC3ベースLNP (人工エクソソーム; AE) が内皮細胞の生存と血管新生をin vitroおよびin vivoで促進することを実証した。この成果は、虚血性疾患に対する革新的なナノ医療製品としてのAEの可能性を示唆するものである。

先行研究との違い: これまでの研究では、特定の幹細胞由来sEVの血管新生促進効果や、個別のmiRNAの役割が報告されてきた (Beltrami et al. 2017; Katare et al. 2011)。しかし、本研究は、複数の異なるヒト由来プロ血管新生性sEVに共通するmiRNAシグネチャーを網羅的に解析し、let-7ファミリーがその中心的な役割を果たすことを初めて明らかにした点で、これまでの研究とは異なるアプローチをとっている。また、FDA承認LNP技術 (MC3) を応用したAEの設計と、そのin vivoでの機能検証は、臨床応用に向けた重要なステップである。let-7aとlet-7bの同時投与が単独投与よりも効果が低下したという予期せぬ発見は、miRNAの組み合わせが単純な相加効果を超えた複雑な相互作用を持つことを示唆しており、今後のmiRNA治療薬開発において重要な知見となる。

新規性: 本研究で初めて、マイクロフルイディクス法により均一なlet-7b-AEが作製され、それが内皮細胞に効率的に内在化され、機能的に活性なlet-7bを細胞内に送達し、標的遺伝子を下方制御することを示した。特に、低酸素条件下でCASP3の発現をより効率的に抑制したことは、虚血環境下での治療効果の可能性を裏付ける新規な発見である。また、in vivoマトリゲルプラグモデルにおいて、let-7b-AEがVEGF陽性対照に匹敵する血管新生を誘導する傾向を示したことは、AEが細胞フリー治療薬として機能しうることを初めて実証したものである。

臨床応用: 本研究で開発されたAEは、FDA承認LNP技術 (MC3) を基盤としているため、GMP対応の大量均一製造と規制承認経路の実現可能性を示す点で、臨床応用への大きな期待が持たれる。天然sEVが抱える製造の困難さや品質管理の課題を克服し、オフザシェルフの医薬品としての開発が期待される。AEのmiRNAカーゴは容易に変更可能であり、let-7b以外の抗miRNAやsiRNAを搭載することで、虚血性疾患以外の個別化医療への応用拡張性も考えられる。これは、幹細胞そのものの移植から、幹細胞の「活性成分」を模倣した合成ナノ粒子へのパラダイムシフトを体現する先駆的研究であり、虚血性疾患に対するRNA治療プラットフォームの重要な概念実証を提供している。

残された課題: 今後の検討課題として、AEのin vivoでの生体内分布とオフターゲット効果を評価するために、虚血動物モデルを用いた検証が必要である。また、AEの脂質組成が天然sEVの膜組成を模倣しているとはいえ、プロ血管新生性および抗血管新生性sEVの網羅的な脂質プロファイル解析は、AEのさらなる最適化に貢献するだろう。さらに、let-7aとlet-7bの同時投与で効果が低下したメカニズムの解明や、他のプロ血管新生性miRNAの組み合わせ効果の検討も重要である。本研究では免疫不全マウス (Crl:CD1Foxn1 nu) を用いたが、免疫応答が関与する虚血モデルでのAEの有効性も評価する必要がある。これらのlimitationを克服することで、AEの臨床的有用性をさらに高めることができると考えられる。

方法

促血管新生sEV源として、ヒト伏在静脈周囲細胞 (hSVP)、BM-CD34+単核細胞 (MNC)、心膜液 (PF) 由来sEV、およびMSC (Passage 4) 由来sEVをin-houseで解析した。非促血管新生対照として、非分画BM-MNCおよび冠動脈バイパス術 (CABG) 患者由来PF sEVを用いた。各sEVはナノ粒子トラッキング解析 (NTA)、透過型電子顕微鏡 (TEM)、動的光散乱 (DLS) により特性評価された。in-houseおよびGEOから取得したmiRNAデータセットを統合し、促血管新生sEVに共通するmiRNA種をバイオインフォマティクス解析で同定した。

in vitro実験では、低酸素 (1% O2) 培養したヒト臍帯静脈内皮細胞 (HUVEC) を使用した。pre-miRトランスフェクションにより、let-7a、let-7bの個別および同時投与の効果をMatrigelアッセイ、カスパーゼ活性、増殖、アデノシン三リン酸 (ATP) 産生で評価した。HUVECは1%ゼラチンコートプレートに4 x 10^4 cells/wellで播種され、低酸素条件下で培養された。

人工エクソソーム (AE) は、イオン化可能な脂質Dlin-MC3-DMA (MC3)、コレステロール、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン (DSPC)、およびジミリストイルグリセロール-ポリエチレングリコール (DMG-PEG) をモル比50:38:10:2で含むMC3ベースのLNPをマイクロフルイディクス混合システム (NanoAssemblrデバイス) で作製した。カーゴとしてlet-7b-5pまたはCy5標識cel-miR-39 (対照) を封入し、DLS、ゼータ電位、TEMで特性評価した。HUVECおよび心臓ヒト微小血管内皮細胞 (cHMVEC) へのAE内在化効率は、フローサイトメトリー (FACS) およびCy5標識cel-miR-39-AEトレーサーを用いて評価した。毒性はATP産生アッセイで評価した。let-7b-AEのmiRNA移送および標的遺伝子ノックダウン (CASP3、MTOR、KRASなど) はqPCRで定量した。in vitroでの血管新生促進効果は、2.5D Matrigelアッセイおよび3Dフィブリンゲルビーズアッセイでスプラウト形成を評価した。3Dフィブリンゲルビーズアッセイでは、1 x 10^6 HUVECを2,500個のCytodex-3ビーズと混合し、フィブリンゲル中で培養した。

in vivo実験では、let-7b-AEで前処置したHUVECを用いたMatrigelプラグアッセイを免疫不全マウス (Crl:CD1Foxn1 nu) の皮下で実施した。具体的には、1 x 10^5 HUVECを100 µLのFBS不含培地に懸濁し、100 µLのMatrigelと混合してマウスに移植した。血管新生は組織学的解析および免疫染色 (CD31) で評価した。統計解析にはGraphPad Prismソフトウェアを使用し、2群間の比較にはMann-Whitney U検定またはunpaired t検定を、3群以上の比較にはKruskal-Wallis検定または一元配置分散分析 (ANOVA) を用いた。p値が0.05未満を有意差ありと判断した。