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Rab27A-binding protein Slp2-a is required for peripheral melanosome distribution and elongated cell shape in melanocytes

  • 著者: Taruho S. Kuroda, Mitsunori Fukuda
  • Corresponding author: Mitsunori Fukuda (RIKEN Fukuda Initiative Research Unit, Wako, Saitama, Japan)
  • 雑誌: Nature Cell Biology
  • 発行年: 2004
  • Epub日: 2004-11-14
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 15543135

背景

メラノサイト (melanocyte) におけるメラノソーム (melanosome) の輸送と配置は、皮膚の紫外線防御において極めて重要な生理機能である。これまでの研究により、微小管上を長距離移動したメラノソームが、細胞末梢のアクチンフィラメントへと受け渡される分子機構が明らかにされてきた。この受け渡しステップにおいては、スモールGTPase (small GTPase) であるRab27A、リンカータンパク質であるSlac2-a (synaptotagmin-like protein lacking C2 domains-a、別名 melanophilin)、およびアクチンモーターであるミオシンVa (myosin Va) からなる三者複合体が中心的な役割を果たすことが、既報の Wu et al. NatCellBiol 2002 や Fukuda et al. (2002) などの先行研究によって示されている。また、メラノソームの動態可視化解析を行った Wu et al. (1998) や、Rab27A遺伝子の変異がメラノソーム輸送異常を引き起こす ashen マウスの解析を行った Wilson et al. (2000) などの既報を通じて、Rab27Aがメラノソーム輸送の必須因子であることが確立されていた。しかしながら、メラノサイトにはSlac2-a以外にも、Rab27Aに直接結合可能なSHD (Slp-homology domain) を有する複数の Slp (synaptotagmin-like protein) ファミリータンパク質 (Slp1からSlp5) が存在することが知られている。これらのSlpファミリーは、C末端に脂質やタンパク質との相互作用領域とされる2つのC2ドメインを有しており、ミオシン結合ドメインを欠くという構造的特徴を持つ。メラノサイトにおけるこれらSlpファミリーの具体的な発現パターンや、メラノソーム輸送における機能的役割については、これまで全くの「未解明」であった。特に、Rab27AがSlac2-a以外のエフェクターを介して、メラノソームの末梢への最終的な定着やアンカリングをどのように制御しているのかという点については、情報が決定的に「不足」しており、分子生物学的な「課題」として残されていた。さらに、メラノサイトの樹状突起形態の維持とオルガネラ輸送の協調的制御メカズムについても、詳細な分子機構は「未確立」であり、これらを統合的に理解するための知見が「不足」していた。このように、輸送されたオルガネラがどのようにして細胞末梢に留まり、それが細胞全体の極性や形態維持にどう寄与するのかという根本的な問いに対する答えは得られていなかった。

目的

本研究の目的は、マウスメラノサイトにおいて発現しているSlpファミリータンパク質を網羅的に同定し、その中で最も優勢に発現している新規Rab27A結合タンパク質であるSlp2-a (synaptotagmin-like protein 2-a) の機能的役割を解明することである。具体的には、Slp2-aがメラノソームの細胞末梢への分布制御や、メラノサイト特有の細長い樹状突起形態の維持にどのように関与しているかを明らかにする。さらに、既知のエフェクターであるSlac2-aとの機能的な差異や、メラノソーム輸送における連続的な役割分担について、RNAi (RNA interference) 技術を用いたノックダウン実験および変異体を用いたレスキュー実験を駆使して、ドメインレベルでの詳細な分子メカズムを解明することを目的とする。既報の Wu et al. NatCellBiol 2002 で示された輸送経路との関連性を整理し、アンカリング機構の全貌を提示することを目指す。これにより、オルガネラ輸送と細胞形態制御の新たな接点を提示し、細胞生物学における新たな知見を確立することを目的とする。

結果

メラノサイトにおけるSlp2-aの優勢な発現とメラノソームへの局在: ウェスタンブロット解析により、マウスメラノサイト株である B16-F1 および melan-a において、Slpファミリーの中でSlp2-aのみが極めて優勢に発現していることが判明した (Fig. 1)。定量比較の結果、melan-a 細胞におけるSlp2-aの発現量は、既知のRab27A結合タンパク質であるSlac2-aの約5倍 (5-fold) に達しており、メラノサイト内で最も豊富なRab27A結合タンパク質であることが確認された。免疫共沈降実験において、Slp2-aはRab27Aと特異的に結合し、ミオシンVaやSlac2-aとは直接結合しなかった。しかし、抗Slp2-a抗体を用いた磁性ビーズによるオルガネラ精製では、メラノソームマーカーである TRP-1、Rab27A、およびミオシンVaが共精製された (Fig. 1)。免疫蛍光染色により、Slp2-aはSlac2-aとともに細胞末梢の成熟したメラノソーム上に共局在することが示された。これらの結果は、同一のメラノソーム上にRab27A-Slp2-a複合体とRab27A-Slac2-a-myosin-Va複合体が独立して同時に形成されていることを強く示唆している。

C2Aドメインを介したホスファチジルセリン結合能と細胞膜局在: Slp2-aのドメイン機能を解明するため、各種欠失変異体および点変異体を melan-a 細胞に発現させて局在を解析した。GFP融合型の野生型Slp2-aはメラノソームに局在したが、Rab27A結合能を欠く変異体 (GFP-Slp2-a-ΔSHD および GFP-Slp2-a E11A/R32A) はメラノソームに移行せず、細胞膜および細胞質に分布した (Fig. 2)。また、Rab27Aをノックダウンした細胞 (n=3 cells) でもGFP-Slp2-aはメラノソーム局在を失い、細胞膜に局在した。in vitro の脂質結合アッセイにおいて、GST-C2Aドメインは細胞膜に豊富なホスファチジルセリンである PS (phosphatidylserine) に対して強い結合活性を示した (Fig. 3)。C2AドメインはPSに加えて、PI(3)P、PI(4)P、PI(5)P、PI(3,5)P2に対しても弱い結合活性を示した。一方、C2Aドメインの塩基性アミノ酸5箇所をグルタミンに置換したC2AKQ変異体は、PS結合能を完全に喪失し、細胞内での細胞膜局在も消失した。これらの結果から、Slp2-aはSHDを介してメラノソーム上のRab27Aに結合し、C2Aドメインを介して細胞膜のPSに結合するという、メラノソームと細胞膜を繋ぐアンカリング分子として機能するモデルが提示された。

Slp2-aノックダウンによる末梢メラノソーム希薄化の誘導: RNAiを用いた機能欠損実験により、Slp2-aの生理的役割を検証した。melan-a 細胞においてSlp2-aを特異的 siRNA によりノックダウンしたところ、約70% (70%) の細胞において、細胞末梢 (外側25%の領域) のメラノソームが著しく減少する「末梢希薄化 (peripheral dilution)」の表現型が観察された (Fig. 4)。これに対し、Slac2-aをノックダウンした細胞では、90% (90%) 以上の細胞でメラノソームが核周囲に凝集し、末梢希薄化はほとんど観察されなかった。Slp2-aノックダウン細胞における末梢メラノソームの割合は、対照群と比較して50%以下に減少していた。この末梢希薄化は、siRNA抵抗性のSlp2-a (Slp2-aSR) を共発現させることで完全に回復したが、Rab27A結合能を欠く ΔSHDSR 変異体や、PS結合能を欠く SR/KQ 変異体ではレスキューされなかった (Fig. 5)。タイムラプス観察によるメラノソームの移動速度解析では、Slp2-a欠損細胞 (n=4 cells) と対照群との間で、微小管依存性およびアクチン依存性の移動速度に有意な差は認められなかった (p>0.15)。なお、Slp2-aノックダウンによる末梢希薄化は、2種類の異なる標的配列を用いたsiRNA実験において同様に観察されたため、オフターゲット効果ではないことが確認された。

Slp2-aによる細胞形態維持とRab27A非依存的なC2Aドメインの役割: Slp2-aのノックダウンは、メラノソームの分布異常だけでなく、細胞形態の劇的な変化をもたらした。通常の melan-a 細胞は細長く伸びた樹状突起形態 (長軸/短軸比が約5:1) を示すが、Slp2-aノックダウン細胞では細胞が円形化し、長軸/短軸比が約2:1へと著しく低下し、約2.5-foldの形態変化が生じた (Fig. 5)。この形態変化は、Slp2-a siRNA の導入量に依存して生じたが、Slac2-aノックダウン細胞では全く観察されなかった。レスキュー実験において、siRNA抵抗性の野生型 Slp2-aSR の導入により細長い細胞形態は完全に回復した。興味深いことに、Rab27A結合能を欠く ΔSHDSR 変異体の導入によっても細胞形態は完全に回復したのに対し、PS結合能を欠く SR/KQ 変異体では回復しなかった (p<0.01)。対照的に、Rab27A欠損マウス (ashen) 由来のメラノサイトでは細胞形態が正常であるという既報の事実とも完全に一致する。この結果は、Slp2-aによる細胞形態の維持が、Rab27Aとの相互作用には依存せず、C2Aドメインによる細胞膜脂質 (PS) との結合活性のみを必要とする独立したシグナル経路を介していることを示している。

考察/結論

先行研究との違い: 従来のモデルでは、Rab27Aは主にSlac2-aおよびミオシンVaと複合体を形成し、メラノソームを微小管からアクチンフィラメントへと受け渡す役割のみが強調されてきた。これに対し、本研究は、Rab27AがSlac2-aを介した動的な輸送ステップの後に、Slp2-aを介してメラノソームを細胞膜へ固定するという、連続的かつ段階的な制御機構を提唱した。この点は、既報の Wu et al. NatCellBiol 2002 などの先行研究「と異なり」、輸送の最終段階であるアンカリングに焦点を当てている。Slac2-aの欠損がメラノソームの核周囲凝集を引き起こすのとは「対照的」に、Slp2-aの欠損は末梢への最終的なアンカリングのみを阻害し、末梢希薄化を誘導するという明確な機能的差異が示された。

新規性: 本研究は、同一のRab27A分子が異なるエフェクター (Slac2-aとSlp2-a) をシーケンシャルに使い分けることで、オルガネラの輸送とアンカリングを精緻に制御していることを「本研究で初めて」実証した。さらに、Slp2-aがメラノソームのアンカリング (SHDとC2Aドメインの双方が必須) と、細胞形態の維持 (C2Aドメインのみが必須、Rab27A結合は非関与) という、同一分子内の異なるドメインを介して独立した二重の機能を担っていることを「新規」に解明した。

臨床応用: 本研究で示された「C2Aドメインと細胞膜ホスファチジルセリン (PS) の相互作用を介したオルガネラアンカリング」という基本概念は、メラノサイトにとどまらず、様々な分泌細胞における顆粒ドッキング機構に共通する普遍的な原理であると考えられる。この知見は、Rab27A依存的なエクソソーム分泌や、免疫細胞における細胞傷害性顆粒の放出制御メカズムの解明に直結する。したがって、がん細胞における細胞外小胞 (エクソソーム) の分泌阻害薬の開発や、免疫不全症 (Griscelli症候群など) の病態解明および治療法開発といった「臨床応用」や「臨床的意義」において、極めて重要な学術的基盤を提供するものである。

残された課題: 「今後の課題」として、Slp2-aがRab27A非依存的に細胞形態を制御する下流のシグナル伝達経路の全貌は未だ「不明」であり、アクチン細胞骨格の再編成を誘導する具体的な分子メカズムの解明が「残された課題」として挙げられる。また、本研究における「limitation」として、Slp2-aのC2AドメインがPS以外のリン脂質 (各種ホスファチジルイノシトールなど) と結合する生理的意義や、他の組織におけるSlp2-aの機能的重複の有無については、さらなる詳細な検証が必要である。

方法

本研究では、以下の実験方法を用いてSlp2-aの機能解析を行った。

  • 細胞培養と遺伝子導入: マウスメラノサイト株である melan-a および B16-F1 (B16 melanoma F1) 細胞、マウス線維芽細胞株 NIH3T3、ならびにアフリカミドリザル腎由来 COS-7 細胞を使用した。遺伝子導入には FuGENE6 または Lipofectamine Plus 試薬を用いた。
  • 発現解析と免疫共沈降: melan-a および B16-F1 の細胞溶解液を用いて、抗Slp1から5および抗Slac2-a特異的抗体を用いたウェスタンブロッティングを行い、発現量を定量比較した。また、B16-F1 細胞の可溶性画分を用いて、抗Slp2-a抗体および抗Slac2-a抗体による免疫共沈降を行い、Rab27A、ミオシンVa、Slac2-aとの相互作用を解析した。さらに、抗体結合磁性ビーズである M-280 (magnetic beads 280) を用いてSlp2-a含有オルガネラを単離し、メラノソームマーカーである TRP-1 (tyrosinase-related protein 1) や Rab27A の共精製を検証した。
  • 局在解析と変異体作製: GFP (green fluorescent protein) 融合型の野生型Slp2-a、および各種欠失・点変異体 (SHD 欠失体: ΔSHD、Rab27A結合不能変異体: E11A/R32A、C2Aドメイン、C2Bドメイン、およびC2Aドメインのリン脂質結合不能変異体: C2AKQ) を作製し、melan-a 細胞に導入して共焦点レーザー顕微鏡下で局在を観察した。
  • 脂質結合アッセイ: GST (glutathione S-transferase) 融合型のC2A、C2AKQ、C2Bドメイン、またはGST単独を調製し、15種類のリン脂質がスポットされた PIP-Strips (phosphoinositide-protein interaction strips) メンブレンと反応させ、抗GST抗体を用いて in vitro での結合活性を検出した。
  • RNA干渉 (RNAi): マウスU6プロモーター駆動型の shRNA (short hairpin RNA) 発現プラスミド (pSilencer 1.0-U6) を用いて、Slp2-a および Slac2-a の特異的ノックダウンを行った。トランスフェクションマーカーとして pEGFP-C1 を共導入した。
  • レスキュー実験と形態解析: siRNA (small interfering RNA) 抵抗性のSlp2-a (Slp2-aSR) およびその変異体 (ΔSHDSR、SR/KQ) を作製し、ノックダウン細胞におけるレスキュー効果を検証した。細胞形態は Texas-Red 結合ファロイジンでF-アクチンを染色し、長軸と短軸の比率を測定して定量化した。
  • 統計解析: 各実験データは平均値 ± 標準偏差である mean ± SD で表し、群間の有意差検定には Student’s t-test (t検定) を用いた。