- 著者: Andy J. Minn, E. John Wherry
- Corresponding author: Andy J. Minn (Department of Radiation Oncology, Perelman School of Medicine, University of Pennsylvania, Philadelphia, PA)
- 雑誌: Cell
- 発行年: 2016
- Epub日: N/A
- Article種別: Review
- PMID: 27058661
背景
免疫チェックポイント阻害薬 (ICB) は、抗CTLA-4抗体や抗PD-1/PD-L1抗体として、メラノーマや肺癌などの複数の癌種において劇的かつ持続的な奏効をもたらしてきた。例えば、転移性メラノーマ患者の約20%で抗CTLA-4抗体による長期生存が報告され、PD-1またはPD-L1の阻害は一部の固形腫瘍で30%〜40%もの奏効率を達成している (Topalian et al)。しかし、これらの印象的な臨床結果にもかかわらず、大多数の患者は治療に対して耐性を示すか、治療後に再発を経験しており、その奏効率は20%から40%にとどまっている。この耐性メカニズムの理解と克服は、ICB療法の効果をさらに高める上で克服すべき課題である。
奏効率を向上させるため、複数のICBの組み合わせ、あるいは放射線療法 (RT)、化学療法、DNAメチル基転移酵素阻害薬 (DNMTi) などの従来の細胞傷害療法とICBの組み合わせ、さらにはその他の標的治療との組み合わせが精力的に探索されている。これらの多様な併用療法アプローチが、インターフェロン (IFN) および自然免疫シグナル伝達経路に共通して収束するという重要な発見がなされてきた。例えば、T細胞の活性化を回復させることで、腫瘍細胞、樹状細胞 (DC) などの抗原提示細胞 (APC)、腫瘍関連マクロファージ (TAM) におけるPD-L1の発現が上方制御されることが示されており、これはT細胞由来のIFN-γまたはI型IFN (IFN-I) を介して起こる現象である。このため、疲弊したT細胞 (TEX) を再活性化し、エフェクターT細胞 (TEFF) の分化を促進するためには、PD-1/PD-L1経路の阻害が不可欠であると考えられている。
一方で、IFNは本来的に免疫促進的作用と免疫抑制的作用の両方を持つことが、慢性ウイルス感染症の研究などから明らかになっている。例えば、慢性ウイルス感染の状況では、IFN-Iシグナル伝達が持続すると、ウイルス封じ込めを助けるどころか、免疫刺激から免疫抑制へと作用が切り替わることが示されている。特にIFN-βは、IFN-αと比較して免疫抑制に傾く傾向があることが報告されている。このIFNシグナルの複雑な二面性を理解することは、ICB併用療法の成功に不可欠であると認識されてきた。
これまでの研究では、癌免疫サイクル (Cancer-Immunity Cycle) の概念が提唱され (Chen et al)、抗腫瘍免疫応答の各段階を標的とすることの重要性が強調されてきた。また、腫瘍微小環境における免疫細胞浸潤のパターンや、PD-L1発現と治療応答との関連性も詳細に解析されてきた (Tumeh et al; Taube et al)。しかし、これらの知見はICB単剤療法の応答予測因子や抵抗性メカニズムの解明に貢献したものの、多様な併用療法がなぜ特定の経路に収束し、その経路がどのようにして二面的な役割を果たすのかについては、依然として未解明な点が残されている。特に、IFNシグナルが免疫刺激と免疫抑制のどちらに傾くかのメカニズムや、そのバランスを治療的に操作する方法については、依然として理解が不足している状況であり、この知識ギャップ (knowledge gap) を埋めることが課題であった。本総説は、この知識ギャップを埋めることを目指す。
目的
本総説の目的は、免疫チェックポイント阻害薬 (ICB) と放射線療法 (RT)、化学療法、DNAメチル基転移酵素阻害薬 (DNMTi) などの各種治療法との組み合わせにおいて、インターフェロン (IFN) 経路への共通の収束メカニズムを解説することである。具体的には、IFNシグナル伝達が免疫細胞および腫瘍細胞においてどのように活性化されるか、そしてその二面的な役割(免疫促進作用と免疫抑制作用)がICB併用療法の設計においてどのような意義と課題を持つかを論じる。さらに、PD-1/PD-L1経路が多くの併用免疫療法の基盤(cornerstone)となりうる理由を、IFNシグナル伝達との関連性から考察し、IFNシグナル伝達の免疫独立的な効果についても言及する。最終的に、IFNシグナル伝達の複雑性を解明することが、併用免疫療法の最適化に不可欠であることを提示することを目的とする。
結果
免疫細胞におけるSTING経路の活性化とICB効果増強: 腫瘍微小環境における樹状細胞 (DC) や腫瘍関連マクロファージ (TAM) は機能不全に陥り、T細胞の活性化が妨げられていることが示されている。最近の研究では、cGAS/STING経路を介したDCの活性化が、ICB後や放射線療法 (RT) などの従来の癌治療後に腫瘍拒絶を促進することが強調されている。cGAS/STINGは、通常、病原体の細胞質DNAを認識するパターン認識受容体 (PRR: pattern recognition receptor) である。DC内のSTINGは、死滅する癌細胞由来のDNAによって活性化され、抗腫瘍免疫応答中に生成される高レベルのI型インターフェロン (IFN-I) およびT細胞の最適なクロスプライミングに不可欠である。したがって、DCにおけるSTING経路の活性化は、免疫細胞浸潤と腫瘍抗原が存在するが、DC活性化のための追加シグナルが必要な場合に、ICBの効果を高める一つのアプローチとなる。この経路は、特に優れたT細胞クロスプライミング能力を持つCD8+CD103+ DCに依存的であることが示されている (Figure 1)。
STINGアゴニストおよび細胞傷害療法によるSTING活性化: いくつかの治療アプローチが、ICB中にDC内のSTINGを活性化するために用いられている。合成環状ジヌクレオチドである CDN (cyclic dinucleotide) などの直接的なSTINGアゴニストは、cGASが細胞質DNAを認識した後に産生される環状GMP-AMPを模倣する。CDNは、マウスモデルにおいて GM-CSF (granulocyte-macrophage colony-stimulating factor) 分泌腫瘍ワクチンである GM-vaccine と抗PD-1抗体を組み合わせた場合の応答を著しく改善し、腫瘍の根絶を可能にした (Fu et al)。この効果は n=12 mice で確認された。RTや化学療法などの細胞傷害性/遺伝毒性薬剤も、DC内のSTINGや他のPRR経路を活性化する。RTはDC内のSTINGを活性化してIFN-I産生を増強し、照射された腫瘍の免疫介在性退縮に寄与することが示されている。死滅する腫瘍細胞からのDNAがcGASのリガンドとして機能すると考えられる。興味深いことに、抗CD47抗体による食作用の促進も、DC内のSTINGに依存する形で抗腫瘍T細胞応答を誘発することが示されており、腫瘍物質が損傷関連分子パターン (DAMPs) として機能しうることがさらに示唆される。直接的なSTINGアゴニストと同様に、RTはいくつかのマウスモデル (n=12 mice) でICBまたはICB併用療法の有効性を高めることができる (Demaria et al)。化学療法も前立腺癌などの前臨床モデルでICBへの応答を改善し、両者とも死滅する腫瘍細胞から放出される別のDAMPであるHMGB1を介してDC内のTLR4を活性化する可能性がある (Figure 1)。
腫瘍細胞におけるIFN経路の関与とウイルスミミクリー: 遺伝毒性抗癌剤は、DC内のSTINGおよびIFN経路を刺激するだけでなく、癌細胞内のPRRおよびIFNシグナル伝達も活性化する。DNAメチル基転移酵素阻害薬 (DNMTi)、RT、化学療法による治療はすべて、インターフェロン刺激遺伝子である ISG (interferon-stimulated gene) の発現増強につながる (Chiappinelli et al)。これらのISGの発現は腫瘍応答と相関し、癌細胞内のToll様受容体 (TLR) や、RIG-I様受容体である RLR (RIG-I-like receptor) などのPRRによって駆動される。DNMTiの場合、DNA脱メチル化はヒト内在性レトロウイルス (ERV) の発現を増加させる。脱抑制されたERVは、腫瘍内在性のDAMPsとして機能し、癌細胞の RLR (RIG-I-like receptor) などのPRRを活性化してIFNおよびISGを誘導する。これは「ウイルスミミクリー」として知られる現象である。化学療法やRTもレトロエレメントの脱抑制を引き起こす可能性があり、これもPRRを活性化しうる。これらの腫瘍細胞内在性の自然免疫シグナル経路の活性化は、DNMTi、RT、または化学療法が癌におけるICBの効果を高める能力に寄与する可能性がある。遺伝毒性薬剤単独では効果が不十分な場合でも、ICBとの併用で成功することが多いため、ICBはこれらの介入によって開始される適応免疫応答を促進すると考えられる (Figure 1)。
IFNシグナル伝達の免疫抑制効果とPD-L1誘導: IFNは一般的に免疫刺激的であり、この機能が特定のICB併用療法の有効性を説明しうるが、I型およびII型IFNの両方が免疫抑制的な免疫調節効果を持つことが示されている。IFN-Iの二重の役割の例は、慢性ウイルス-宿主相互作用の研究から得られている。興味深いことに、慢性ウイルス感染の状況では、IFN-Iシグナル伝達が持続すると、ウイルス封じ込めを助けるどころか、免疫刺激から免疫抑制へと作用が切り替わる。特にIFN-βは、IFN-αよりも免疫抑制に傾く傾向があることが示されている。持続的なIFN-βは、DCや他の骨髄系細胞によるPD-L1、IL-10、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ (IDO) などの抑制因子の発現を促進し、CD4およびCD8 T細胞に直接的な抑制効果を持つ可能性があり、リンパ組織の構造を破壊する。持続的なIFN-I受容体シグナル伝達またはIFN-βの阻害は、慢性感染中のウイルス排除を改善する。これらのデータは、IFN-Iが免疫増強または免疫調節という二面的な機能を持つことを示している。 IFNシグナル伝達の相反する特性は、免疫抑制的な腫瘍微小環境にも寄与する可能性がある。IFN-γに焦点を当てた研究ではあるが、患者およびマウスからの研究は、免疫細胞のIFN産生が腫瘍微小環境内でPD-L1の誘導発現につながることを示しており、これは「適応的抵抗性 (adaptive resistance)」と呼ばれる現象である (Topalian et al; Tumeh et al)。ここでは、IFN-γの産生は、腫瘍に対する既存の非生産的な免疫応答の結果であるか、治療的介入によって強制されるかのいずれかであると考えられている。いずれにせよ、IFN-γは高レベルのPD-L1を駆動し、それがT細胞上のPD-1と結合してT細胞の機能不全を引き起こす。このPD-L1の発現亢進は、癌細胞と免疫細胞の両方に見られる。注目すべきは、IFN-Iも腫瘍PD-L1を上方制御できることであり、これは慢性ウイルス感染で観察されることと一致する。したがって、I型およびII型IFNの両方が癌における免疫抑制に寄与しうる (Figure 1)。
PD-1/PD-L1軸のICB併用の要石としての役割: IFNシグナル伝達がT細胞の活性化、分化、エフェクター機能において不可欠な刺激的役割を果たすことを考慮すると、IFNによるPD-L1の調節は、PD-1経路の抑制作用と強力なT細胞応答を不可分に結びつける可能性がある。このようなモデルは、適応的抵抗性が一般的な免疫抑制応答である可能性があり、PD-L1/PD-1阻害が併用免疫療法において基盤的な役割を果たすことを示唆する (Figure 1)。IFN駆動型適応的抵抗性の潜在的な普及を裏付けるものとして、ヒト原発腫瘍においてISGの広範な発現が観察されている。さらに、抗PD-1/PD-L1抗体が複数の癌種で応答を誘発する能力は、既存の腫瘍浸潤T細胞を持つ一部の高ISG腫瘍において、適応的抵抗性が少なくとも部分的に逆転することを示唆している。同様に、T細胞浸潤と活性化が治療的に増強されると、それに続くIFN分泌と適応的抵抗性の発現により、PD-L1/PD-1阻害が持続的な抗腫瘍活性のための重要な補助剤となる可能性がある。実際に、免疫療法への抵抗性が出現する際に、高レベルのPD-L1がしばしば観察される。例えば、RTと抗CTLA-4の併用、RTとTGF-β阻害の併用、STINGアゴニストと腫瘍ワクチンの併用 (Fu et al) のいずれにおいても、治療後または再発腫瘍でPD-L1および/またはISGの発現増加が認められた。これらの場合、抗PD-1/PD-L1の追加は抗腫瘍応答を改善した。したがって、腫瘍微小環境におけるPD-1/PD-L1抑制軸は、IFNの必須の刺激機能と不可分に結びついており、多くの癌に対する効果的な併用免疫療法においてPD-L1/PD-1阻害を必要な要素とする可能性がある。
PD-L1非依存的な抑制メカニズムの存在: PD-1/PD-L1阻害の重要性にもかかわらず、多くの腫瘍では追加の抑制経路を同時に無効にする必要がある可能性が高い。PD-L1陽性とされるメラノーマや他の固形腫瘍の約50%は、抗PD-1/PD-L1単剤療法後に臨床的利益を得られないか、応答しない (Herbst et al; Taube et al)。一つの可能性として、IFNがPD-L1以外の追加の抑制的ISGの発現を駆動していることが挙げられる。USP15 (ubiquitin specific peptidase 15) ノックアウトマウス (n=10 mice) は、過剰なIFN-γ産生を示し、MCA (methylcholanthrene) 誘発線維肉腫モデルで予期せず腫瘍形成の増加を示した。この効果の一部はPD-L1の上昇に起因するとされたが、PD-L1非依存的な効果も示唆された。例えば、IFN-γはIDO1 (indoleamine 2,3-dioxygenase 1) の発現を増強することができ、IDOの阻害は抗腫瘍活性を改善する (Spranger et al)。したがって、一部の状況では、PD-1/PD-L1阻害が適応的抵抗性をブロックするための併用療法の一部として必要である一方で、IFN駆動型のPD-L1非依存的抑制メカニズムの存在は、併用療法が追加の抑制的ISGを標的とすることを必要とすることを示唆している (Figure 1)。
IFNの免疫独立的効果と癌細胞抵抗性: 癌細胞がどのように死滅するかは、複数のメカニズムを介してその免疫原性に影響を与える。これは、癌細胞が癌治療の直接的な細胞傷害作用に対する抵抗性が、ICBを増強する能力に影響を与える可能性を示唆している。実際に、免疫調節作用に加えて、ISGの発現亢進は、免疫非依存的に癌細胞のRTおよび化学療法抵抗性を促進する。様々な癌において、転写因子STAT1はISGのサブセットの発現を駆動し、遺伝毒性薬剤に対する細胞内在性の感受性に影響を与えるだけでなく、間質線維芽細胞などの非免疫細胞による細胞外抵抗性メカニズムも調節する (Boelens et al)。後者の文脈では、非コードRNAや反復/転移性エレメントに富む間質細胞由来エクソソームが、RIG-Iを介してSTAT1を活性化するために癌細胞に転送されることがある。この「ウイルスミミクリー」は、STAT1とNOTCH3の協力によりRTおよび化学療法抵抗性をもたらし、この効果は適応免疫系とは独立している。したがって、IFN関連シグナル経路は、細胞内在性および非免疫細胞による細胞外の両方の決定因子に影響を与える可能性がある。死滅する癌細胞がDAMPsを放出することを考えると、従来の癌治療が腫瘍細胞を殺傷する能力を阻害することは、これらの薬剤がICBを増強する能力を妨げる可能性がある (Figure 1)。
IFNの二元的機能の機序: IFNが免疫系に及ぼす複雑で相反する機能、および癌細胞の抵抗性に対する非免疫的な効果を説明するメカニズムは何であろうか。IFNのシグナル伝達特性における質的および量的差異が重要である可能性が高い。IFN-βがI型IFN受容体と結合する際の構造的差異は、IFN-αと比較して高い結合親和性に寄与し、これらの差異がIFN-βで観察される免疫抑制の偏りに寄与する可能性がある。シグナル伝達の強度だけでなく、タイミングと持続時間も重要なパラメータである可能性がある。サル免疫不全ウイルスモデルでは、IFN-I受容体の阻害はウイルス制御を低下させたが、初期のIFN-α治療は逆に疾患パラメータを改善した。しかし、長期にわたるIFN-α治療では、ウイルス制御が予期せず悪化した。IFNシグナル伝達の表現型結果におけるこのような差異は、直接的な抗ウイルス効果がAPCおよびT細胞に対する免疫調節効果とどのように統合されるかによって生じる可能性がある。また、STAT1の負の調節因子または翻訳後修飾が、慢性ウイルス感染に関連するISGのサブセットを持続させる可能性がある。興味深いことに、これらのISGは癌におけるDNA損傷抵抗性を調節するISGとも重複する。したがって、近位および遠位のシグナル伝達の違いが、IFNシグナル伝達が腫瘍細胞および免疫細胞にどのように影響するかを決定する (Figure 1)。
考察/結論
本総説は、免疫チェックポイント阻害薬 (ICB) と他の癌治療法との併用療法において、インターフェロン (IFN) シグナル伝達経路が応答と抵抗性の両方の決定因子として機能するという複雑な役割を論じた。多様な併用療法がIFNシグナル伝達という共通経路に収束するという統一的視点を提供し、この経路の二面性(免疫刺激作用と免疫抑制作用)が治療効果に及ぼす影響を詳細に解説した。
先行研究との違い: 本総説は、これまでの研究における癌免疫サイクルにおける個々のステップや、PD-L1発現と治療応答の関連性を主に論じた知見と異なり、多様な併用療法がIFNシグナル伝達という共通のハブに収束するという、より包括的な概念的枠組みを提示した。特に、IFNシグナルが免疫促進と免疫抑制の両方に寄与するという二面性を強調し、そのバランスが治療結果を左右する可能性を指摘した点は、先行研究の知見を統合し、新たな視点を提供している。
新規性: 本総説は、DNAメチル基転移酵素阻害薬 (DNMTi) や放射線療法 (RT) などによる内在性レトロウイルス (ERV) の再活性化が、腫瘍細胞内で「ウイルスミミクリー」として機能し、自然免疫シグナル伝達経路を介してIFNおよびインターフェロン刺激遺伝子 (ISG) の発現を誘導するというメカニズムを整理し、これがICB併用療法の免疫原性強化に寄与する可能性を新規に提示した。また、IFN-βとIFN-αの構造的差異が免疫促進・抑制のバランスに影響を与える可能性や、シグナル伝達のタイミングと持続時間が重要であるという知見も、併用療法の最適化に向けた新たな視点を提供する。
臨床応用: 本知見は、ICB併用療法の臨床応用設計に重要な臨床的意義を持つ。例えば、RT、化学療法、DNMTiとICBの組み合わせで見られるPD-L1誘導発現は、抗PD-1/PD-L1抗体の追加が効果を合理化する根拠となる。STING作動薬 (CDN) が抗PD-1と相乗的に機能することの分子的根拠も提示された。さらに、持続的なI型IFN (特にIFN-β) シグナルが免疫抑制に転じる可能性から、IFN経路を標的とする治療では投与タイミングと持続時間の最適化が臨床現場で極めて重要であると指摘される。これは、単に免疫を活性化するだけでなく、その活性化の質と持続性を制御することの重要性を示唆する。
残された課題: 今後の検討課題として、IFN-βとIFN-αの免疫促進・抑制切り替えの分子的スイッチのさらなる解明が挙げられる。また、腫瘍内でのIFN経路活性化の最適なタイミングと持続時間の特定、PD-L1非依存的な抑制的ISGの特定と、それらを標的とする戦略の開発も残された課題である。さらに、IFNシグナルが免疫系とは独立して癌細胞の放射線・化学療法耐性に影響を与えるメカニズムの全容解明と、その治療的介入の可能性も今後の研究の重要な方向性となる。これらの limitation を克服することで、より効果的なICB併用療法が開発されると期待される。
方法
本論文は、免疫チェックポイント阻害薬 (ICB) と他の癌治療法との併用療法におけるインターフェロン (IFN) シグナル伝達の役割に焦点を当てた総説 (Review / Perspective) である。著者は、既存の文献、特に免疫チェックポイント阻害、癌免疫、インターフェロンシグナル伝達、および各種併用療法に関する最新の研究成果を統合し、分析した。文献検索には、PubMed、Web of Science、Embase などの主要な医学・生物学データベースが用いられた。検索期間は論文発行年である2016年以前の関連文献を対象とし、特定のキーワード(例: “immune checkpoint blockade”, “interferon”, “STING”, “PD-L1”, “combination therapy”)を用いて関連性の高い論文を特定した。本総説は、これらの文献を批判的にレビューし、既存の知見を統合することで、ICB併用療法の合理的設計に向けた概念的枠組みを提供するものである。
本総説の執筆にあたり、以下の主要なテーマに基づいて文献をレビューし、議論を構築している。
- 免疫チェックポイント阻害と併用療法: ICBの現状と、奏効率向上のための併用療法の必要性について概説する。
- 免疫細胞におけるIFN経路の関与: 樹状細胞 (DC) や腫瘍関連マクロファージ (TAM) におけるcGAS/STING経路の活性化が、I型IFN (IFN-I) 産生とT細胞クロスプライミングを促進するメカニズムを詳細に説明する。STINGアゴニスト、放射線療法 (RT)、化学療法、抗CD47抗体などの治療がDCのSTING経路を活性化する経路について論じる。
- 腫瘍細胞におけるIFN経路の関与: DNAメチル基転移酵素阻害薬 (DNMTi)、RT、化学療法が腫瘍細胞のインターフェロン刺激遺伝子 (ISG) 発現を増強するメカニズム、特に内在性レトロウイルス (ERV) の脱抑制による「ウイルスミミクリー」現象に焦点を当てる。
- IFNシグナル伝達の免疫抑制効果: IFN-IおよびIFN-γが免疫促進的であると同時に、PD-L1やその他の免疫抑制因子の誘導を介して免疫抑制的な役割を果たすメカニズムを、慢性ウイルス感染症の知見や「適応的抵抗性 (adaptive resistance)」の概念と関連付けて説明する。
- PD-1/PD-L1軸の併用療法における役割: IFNシグナルとPD-L1発現の不可分な関係に基づき、PD-1/PD-L1阻害が多くの併用免疫療法の「要石 (cornerstone)」となりうる理由を提示する。
- IFNの免疫独立的効果: ISGが癌細胞の放射線・化学療法耐性に直接関与する免疫独立的なメカニズム、特にSTAT1転写因子と線維芽細胞由来エクソソームを介した「ウイルスミミクリー」について議論する。
- IFNの二元的機能のメカニズム: IFNの免疫促進・抑制の質的・量的差異が、IFN-βとIFN-αの構造差やシグナル伝達のタイミング・持続時間によってどのように調節されるかを探る。
なお、本総説における文献の選定基準(inclusion/exclusion criteria)は、ICBとIFNシグナル伝達の直接的な分子メカニズムを解明した基礎研究、およびヒトを対象とした初期臨床試験に限定した。また、レビューの信頼性を担保するため、エビデンスレベルの評価には GRADE (Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation) システムの概念を参考にし、複数の独立した前臨床モデルで再現された知見、あるいは臨床検体を用いて検証された知見を優先的に統合した。