• 著者: Dongyan Song, Jose M. Adrover, Christy Felice, Lisa N. Christensen, Xue-Yan He, Joseph R. Merrill, John E. Wilkinson, Tobias Janowitz, Scott K. Lyons, Mikala Egeblad, Nicholas K. Tonks
  • Corresponding author: Nicholas K. Tonks (Cold Spring Harbor Laboratory, 1 Bungtown Rd., Cold Spring Harbor, NY 11724, USA; tonks@cshl.edu)
  • 雑誌: JCI Insight
  • 発行年: 2022
  • Epub日: 2022-07-22
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 35866483

背景

急性肺障害 (ALI) は、急性呼吸窮迫症候群 (ARDS) を引き起こす致死的な病態であり、COVID-19 の世界的な主要死因の一つとなっている。ARDS は、ウイルス性または細菌性肺炎、敗血症、外傷、輸血関連急性肺障害 (TRALI) など、多様な原因から生じる。ALI の病原性メカニズムの理解が限定的であるため、治療選択肢が少なく、緊急の医療ニーズが存在する。TRALI は、リポ多糖 (LPS) でプライミングしたマウスに抗 MHC-I (主要組織適合性複合体クラスI) 抗体を投与することで前臨床的に再現されており、好中球の異常な活性化が ALI の特徴の一つである。好中球は自然免疫応答の主要なエフェクター細胞であり、病原体からの防御を提供するが、その炎症性作用は組織に有害となる可能性があるため、脱顆粒、活性酸素種 (ROS) 産生、NET (neutrophil extracellular trap) 形成、寿命の制御を通じて厳密に調節されている。

好中球の循環半減期はヒトで1日未満であり、骨髄からの絶え間ない補充が必要である。好中球の放出からクリアランスまでの表現型および機能的変化は、好中球の老化として記述される概日パターンを示す。最近、好中球の老化を支える細胞内在性プログラムが報告され、疾患との関連が示唆されている。分子時計の BMAL1 (brain and muscle arnt-like protein-1) は、CXCR2 を活性化するケモカイン CXCL2 の発現を制御し、好中球の老化を促進する一方、CXCR4 は CXCR2 シグナル伝達を拮抗する。好中球の老化は「プログラムされた武装解除 (programmed disarming)」として強調され、標的組織(例えば肺)に浸潤した後の組織損傷能力を低下させ、血管系への損傷リスクを減少させることが示されている Adrover et al. Immunity 2019。好中球の老化を調節する治療的介入が、組織を損傷性の過炎症状態から保護する可能性があると提案されたが、CXCR2/CXCR4 軸の下流経路は未解明な点が残されている。

Protein tyrosine phosphatase-1B (PTP1B) は、恒常性制御に極めて重要なシグナル伝達イベントを調節し、適応免疫細胞および自然免疫細胞のシグナル伝達の調節に関与している。B細胞における Ptpn1 (PTP1Bをコードする遺伝子) の特異的欠損は、B細胞数および総 IgG 濃度の増加を伴う全身性自己免疫を引き起こす。マクロファージにおける PTP1B の機能に関する研究は議論の余地がある。骨髄系細胞における PTP1B の欠損は、LPS 誘発性エンドトキシン血症に対する炎症の軽減と保護をもたらし、DC (dendritic cell) の成熟と遊走を障害することから、PTP1B の機能が細胞の文脈と刺激に依存することを示唆している。しかし、最も豊富な骨髄系細胞である好中球における PTP1B の機能は、依然としてほとんど特徴付けられていない。PTP1B のアロステリック阻害薬である MSI-1436 (trodusquemine) は、乳癌の細胞および動物モデルで PTP1B を標的とすることが示されており、肥満および転移性乳癌の臨床試験で評価されている。DPM-1003 は MSI-1436 とは構造的に異なる PTP1B 阻害薬である。これらの化合物が好中球の表現型可塑性、および TRALI および LPS 誘発性敗血症のマウスモデルにおける ALI の誘導に与える影響を評価する必要がある。特に、好中球における PTP1B の機能は未解明であり、ALI/ARDS の根本治療法が不足している現状において、好中球の老化を薬理学的に誘導する新たな治療戦略の開発が課題として残されている。

目的

本研究の目的は、PTP1B のアロステリック阻害薬である MSI-1436 および DPM-1003 が、好中球の機能に与える影響を評価し、特に急性肺障害 (ALI) および敗血症モデルにおける治療効果とメカニズムを解明することである。具体的には、以下の点を検証する。

  1. 急性肺障害および敗血症モデルにおける保護効果の評価: 輸血関連急性肺障害 (TRALI)、盲腸結紮穿刺 (CLP) 誘発性多菌敗血症、および LPS (リポ多糖) 誘発性致死的エンドトキシン血症のマウスモデルにおいて、PTP1B 阻害薬が生存率、肺病理、CT スキャンによる肺水腫、および NET (neutrophil extracellular trap) 形成に与える影響を評価する。
  2. 好中球の表現型変化の解析: PTP1B 阻害薬が好中球の脱顆粒、表面マーカー (CD62L, CXCR2, CXCR4) の発現、および遊走能に与える影響を詳細に解析し、好中球の「老化」表現型 (aged-neutrophil phenotype) の誘導を検証する。
  3. CXCR4 シグナル伝達経路の解明: PTP1B 阻害が CXCR4 ケモカイン受容体下流の PI3Kγ/AKT/mTOR シグナル伝達経路に与える影響を、リン酸化状態の解析、PI3K アイソフォーム特異的阻害薬を用いた検証、および CXCR2 拮抗薬による効果の逆転実験を通じて明らかにする。
  4. mTOR 阻害薬との比較: mTOR 阻害薬が TRALI モデルにおける生存率改善および好中球の老化表現型誘導において、PTP1B 阻害薬と同様の効果を示すかを検証し、PTP1B 阻害のメカニズムにおける mTOR の役割を支持する。

これらの検証を通じて、PTP1B 阻害が好中球の生理的 aging (programmed disarming) を薬理学的に誘導し、ALI/ARDS の新規治療戦略となる可能性を確立することを目指す。

結果

TRALI モデルにおける生存率の劇的な改善と肺損傷の軽減: LPS プライミングと抗 MHC-I 抗体投与による TRALI モデルにおいて、生理食塩水投与群の2時間生存率が 40% (n=20 mice) であったのに対し、MSI-1436 10 mg/kg の前投与群では 100% の生存率 (n=20 mice, 2回の独立した生物学的繰り返し) を示した (Fig 1B)。5 mg/kg 投与群でも同様に 100% の生存率が観察された。DPM-1003 投与でも同様の用量依存的な保護効果が確認された (n=20-25 mice) (Fig 1C)。肺病理組織学的解析では、生理食塩水群で顕著な肺胞浮腫と硝子膜が認められたのに対し、MSI-1436 10 mg/kg 投与群では肺組織損傷スコアがほぼゼロであり、正常肺に近い状態であった (n=4 mice/group, p<0.0001) (Fig 1D)。BALF (気管支肺胞洗浄液) 中のタンパク質濃度も、生理食塩水群で有意に上昇したのに対し、MSI-1436 投与群では対照群と比較して有意な上昇は認められなかった (n=6 mice/group) (Fig 1E)。CT スキャンによる評価では、生理食塩水群で air-filled viable lung 容積の進行性低下が認められたが、MSI-1436 投与によりこの低下が阻止された (n=7-8 mice/group) (Fig 1F, G)。これらの結果は、PTP1B 阻害薬が TRALI モデルにおいて肺損傷から保護し、生存率を向上させることを強く示唆している。

CLP および LPS 敗血症モデルにおける延命効果: TRALI モデルでの観察を一般化するため、CLP (盲腸結紮穿刺) 誘発性多菌敗血症モデルおよび LPS 誘発性致死的エンドトキシン血症モデルにおいても PTP1B 阻害薬の効果を検討した。CLP 敗血症モデルでは、生理食塩水投与群のマウスは 96 時間以内に 100% 死亡したのに対し、MSI-1436 5 mg/kg の前投与群では 10 日時点で約 20% のマウスが生存した (p<0.05, n=18 mice/group) (Fig 1H)。LPS 15 mg/kg 誘発性エンドトキシン血症モデルでは、生理食塩水対照群のマウスは全て 50 時間以内に死亡したが、MSI-1436 投与群では 20% のマウスが生存し、残りのマウスの死亡も大幅に遅延した (Supplemental Figure 1E-G)。LPS 30 mg/kg 投与でも MSI-1436 は生存時間を有意に延長し、生存率を 20% に増加させた (Supplemental Figure 1C, D)。これらの結果は、PTP1B 阻害薬が異なる病因(無菌性 TRALI、多菌性敗血症、純粋なエンドトキシン血症)を持つ3つのモデル全てにおいて保護効果を示し、汎用的な ALI/ARDS 治療薬としての可能性を示唆している。

PTP1B 阻害薬による好中球の老化表現型誘導: PTP1B 阻害薬投与後の好中球の挙動を解析したところ、MSI-1436 および DPM-1003 のいずれも末梢血好中球数を約 3 倍増加させた (n=5 mice) (Fig 2C)。TRALI 誘導後、MSI-1436 処置群では肺組織への好中球浸潤が増加したにもかかわらず、肺損傷は最小限であった (Fig 2B)。RNA-Seq 解析では、MSI-1436 処置により最も有意に変化した経路が好中球の脱顆粒であることが示された (Fig 3A)。MSI-1436 処置マウス由来の好中球では、MPO (ミエロペルオキシダーゼ) 顆粒の蛍光強度が顕著に低下しており、in vivo での顆粒放出を示唆した (n=4 mice) (Fig 3B)。フローサイトメトリーにより、MSI-1436 または DPM-1003 処置動物由来の Ly6G+ 好中球集団において MPO レベルが低下していることが確認された (Fig 3C)。さらに、MSI-1436 処置マウスでは、新鮮な好中球のマーカーである CD62L および CXCR2 の発現が低下し、老化好中球のマーカーである CXCR4 の発現が上昇しており、典型的な老化好中球表現型が薬理学的に誘導されていることが示された (n=5 mice) (Fig 3D)。これらのデータは、PTP1B 阻害薬が好中球の老化を促進し、炎症応答を減弱させることを示唆している。

NET 形成および遊走能の抑制: PMA (phorbol 12-myristate 13-acetate) 刺激による NET (neutrophil extracellular trap) 形成は、MSI-1436 処置動物由来の好中球 ex vivo でほぼ完全に阻害された (n=4 mice) (Fig 4A)。この阻害効果は好中球内在性であり、ヒト初代好中球においても確認された (Supplemental Figure 5B)。in vivo の TRALI モデルにおいても、MSI-1436 10 mg/kg 投与群の肺組織では NET 形成がほぼ完全に抑制された (n=4 mice) (Fig 4C)。また、CXCL12 刺激による Transwell 遊走アッセイでは、MSI-1436 および DPM-1003 の両方で好中球の遊走能が有意に低下した (n=3 replicates) (Fig 6A)。これらの結果は、PTP1B 阻害薬が好中球の NET 形成および組織浸潤能力を選択的に抑制することを示している。

PI3Kγ 選択的な CXCR4 下流シグナル伝達の抑制: CXCL12 刺激下での AKT (Thr308 および Ser473)、RPS6、ERK1/2 のリン酸化は、MSI-1436 および DPM-1003 によって抑制された (n=4 replicates) (Fig 5C)。これは、PTP1B 阻害が AKT 活性化を促進するという従来の知見とは異なる予想外の結果であった。PI3K アイソフォーム特異的阻害薬を用いた解析では、PI3Kγ 特異的阻害薬 Eganelisib が MSI-1436 と同様の AKT リン酸化抑制プロファイルを示した。一方、PI3Kα、β、δ 阻害薬では異なるプロファイルが観察された (Fig 5D)。このことは、G タンパク質 βγ 依存性の PI3Kγ 経路が PTP1B の標的経路であることを示唆している。MSI-1436 は HeLa 細胞では CXCL12 誘発性 AKT リン酸化に最小限の影響しか与えなかったが、HL-60 細胞および好中球では AKT シグナル伝達を抑制したことから、PTP1B 阻害薬が CXCR4 下流の PI3Kγ 媒介性 AKT シグナル伝達を障害することが示唆された (Fig 5E)。さらに、CXCR2 拮抗薬 AZD5069 は MSI-1436 による MPO 蛍光強度の低下を阻止し、好中球数の増加も抑制した (n=5 mice) (Fig 5A, B)。これは、PTP1B が CXCR4/CXCR2 シグナル伝達軸に刺激的な影響を与えることと一致する。興味深いことに、fMLP 受容体シグナルは PTP1B 阻害薬によって逆に増強され、PTP1B のコンテキスト依存的な脱リン酸化酵素機能が示された。

mTOR 阻害薬による同様の効果: PTP1B 阻害薬が AKT Ser473 のリン酸化を顕著に抑制したことから、mTORC2 (mammalian target of rapamycin complex 2) の関与が示唆された。mTORC1 および mTORC2 複合体の阻害薬である Palomid 529 (P529) は、CXCL12 刺激下での AKT Ser473 リン酸化を減弱させた (n=3 replicates) (Fig 6B)。P529 の TRALI 誘導2時間前の前投与は、2時間生存率を対照群の 50% 未満から 80% 以上に改善した (n=19 mice) (Fig 6C)。LPS 誘発性敗血症モデルでも、P529 は生存時間を有意に延長した (Supplemental Figure 7C)。PTP1B 阻害薬と同様に、P529 処置は CD62L および CXCR2 の下方制御、CXCR4 の上方制御を含む老化好中球表現型を促進した (n=6 mice) (Fig 6D)。これらの結果は、PTP1B 阻害薬が PI3Kγ/AKT/mTOR 経路を介した CXCR4 シグナル伝達の抑制を通じて好中球の老化を促進し、肺損傷から保護することを示唆している。

考察/結論

本研究は、PTP1B 阻害薬である MSI-1436 および DPM-1003 が、好中球の生理的 aging (programmed disarming) を薬理学的に前倒し誘導し、TRALI、CLP、LPS 誘発性敗血症といった複数の急性肺障害モデルにおいて肺損傷から保護し、生存率を改善する新規治療戦略を確立したことを示す。

先行研究との違い: これまでの研究では、好中球の老化が CXCR2 と CXCR4 の機能的拮抗によって制御される細胞内在性シグナル伝達モジュールを特徴とすることが示されている Adrover et al. Immunity 2019。本研究は、PTP1B 阻害が好中球における CXCR4 の欠損と類似した表現型(好中球増加症、顆粒内容物の進行性喪失、新鮮好中球マーカーのダウンレギュレーション、NET 形成の減少)を誘導することを示し、PTP1B が老化の阻害因子である CXCR4 の抑制を通じて作用するという新規メカニズムを提唱する。また、PTP1B がインスリン受容体やレプチン受容体関連キナーゼ JAK2 を脱リン酸化することで AKT 活性化を抑制するという従来の知見とは異なり、本研究では PTP1B 阻害が好中球において PI3Kγ 媒介性 AKT シグナル伝達を抑制することを示した。これは、PTP1B の機能が細胞および刺激のコンテキストに依存することを示す新たな証拠である。

新規性: 本研究で初めて、PTP1B 阻害が CXCR4/PI3Kγ/AKT/mTOR 経路の脱感作を介して好中球の老化表現型を誘導し、NET 形成、脱顆粒、遊走能を抑制することを新規に同定した。この「選択的武装解除 (selective disarmament)」プロファイルは、好中球の抗菌能を完全に消失させる抗好中球治療とは異なり、好中球の有害な炎症作用のみを抑制する点で新規性が高い。さらに、mTOR 阻害薬が PTP1B 阻害薬と同様に TRALI モデルでの生存率を改善し、老化好中球表現型を誘導することを示したことは、PTP1B 阻害のメカニズムにおける mTOR の中心的な役割を強く支持する。

臨床応用: MSI-1436 (trodusquemine) は、肥満、2型糖尿病、転移性乳癌の臨床試験で既に患者に良好な忍容性を示しており、安全性データが利用可能である。このことは、COVID-19 関連 ARDS、敗血症、TRALI などの好中球介在性肺損傷に対する既存薬再利用 (repurposing) の高いトランスレーショナルレディネス (translational readiness) を示唆する。本知見は、PTP1B 阻害薬が、好中球の過剰な活性化が病態に関与する多発性硬化症、乾癬、慢性閉塞性肺疾患 (COPD) などの慢性炎症性疾患への展開も期待される。臨床的意義として、MSI-1436 の TRALI、ARDS、敗血症に対する第II相臨床試験の実施、および COVID-19 重症 ARDS 患者における好中球過活性抑制療法としての適用が挙げられる。

残された課題: 今後の検討課題として、以下の点が残されている。(i) PTP1B floxed マウスを用いた好中球特異的 PTP1B 遺伝子欠損による遺伝学的検証が未完了である。(ii) PTP1B が PI3Kγ/AKT/mTOR 経路を制御する直接の基質(脱リン酸化酵素)が未同定である。(iii) MSI-1436/DPM-1003 のオフターゲット効果(高用量時)が完全に排除されていない。(iv) 内因性(概日制御)と外因性刺激によって駆動される好中球老化のメカニズム的分離が不完全である。(v) 複数のケモカイン刺激の階層的処理機構に PTP1B がどのように関与するか未検証である。(vi) マウス TRALI モデルからヒト輸血医学へのトランスレーショナルな距離が存在する。これらの限界を克服し、PTP1B 阻害薬の臨床的有用性をさらに確固たるものにするためには、さらなる詳細な研究が必要である。

方法

化合物: PTP1B のアロステリック阻害薬として MSI-1436 (trodusquemine) を 2 mg/kg、5 mg/kg、10 mg/kg の用量で腹腔内 (i.p.) 投与した。また、構造的に異なる PTP1B 阻害薬 DPM-1003 を用いて効果の検証を行った。mTOR 阻害薬として Palomid 529 (P529) を 25 mg/kg で投与した。CXCR2 拮抗薬 AZD5069 は経口投与した。

TRALI モデル: BALB/c マウスに LPS (リポ多糖) をプライミングし、その後、単回静脈内 (i.v.) 抗 MHC-I (主要組織適合性複合体クラスI) 抗体を投与することで TRALI を誘導した。MSI-1436 は抗 MHC-I 抗体投与の2時間前に前投与した。

追加の敗血症モデル: CLP (cecal ligation and puncture) 誘発性多菌敗血症モデルおよび LPS (15 mg/kg または 30 mg/kg) 誘発性致死的エンドトキシン血症モデルを用いた。CLP モデルでは、MSI-1436 を手術の2時間前に前投与した。

シグナル伝達解析:

  • ウェスタンブロット: CXCL12 刺激下での AKT (Thr308, Ser473)、RPS6、ERK1/2 のリン酸化レベルをウェスタンブロット法で評価した。
  • PI3K アイソフォーム特異的阻害薬: PI3K アイソフォームの寄与を調べるため、PI3Kα 阻害薬 HS-173 (1 μM)、PI3Kβ 阻害薬 GSK2636771 (10 μM)、PI3Kδ 阻害薬 Nemiralisib (100 nM)、PI3Kγ 阻害薬 Eganelisib (200 nM) を使用した。HL-60 前骨髄球性細胞株、マウス初代好中球、および HeLa 細胞 (PI3K WT および PTEN WT) を用いて実験を行った。

評価項目:

  • 生存率: Kaplan-Meier 生存曲線を作成し、ログランク (Mantel-Cox) 検定で統計解析を行った。
  • 肺損傷: 肺組織の組織学的評価、肺損傷スコアの算出、気管支肺胞洗浄液 (BALF) 中のタンパク質濃度測定、および CT スキャンによる air-filled lung 容積の測定を行った。肺損傷スコアは、損傷分布(多巣性、局所広範性、びまん性)、浮腫、硝子膜、肺胞および血管損傷の組み合わせを反映するように定義した。
  • 好中球表現型: フローサイトメトリーにより、末梢血好中球の CD62L、CXCR2、CXCR4 の表面発現、およびミエロペルオキシダーゼ (MPO) 顆粒の平均蛍光強度 (MFI) を測定した。
  • NET 形成: PMA (phorbol 12-myristate 13-acetate) 誘発性 NET 形成を ex vivo で評価し、DAPI/citH3/MPO 共染色による共焦点顕微鏡観察で NET を可視化した。in vivo では、肺組織のホールマウント免疫染色により NET 沈着を評価した。
  • 遊走能: Transwell アッセイを用いて、CXCL12 および fMLP (N-formyl-methionine-leucine-phenylalanine) 刺激下での好中球の遊走能を評価した。

統計解析: Prism ソフトウェア (GraphPad Software) を使用し、全てのデータは平均 ± 標準誤差 (SEM) で示した。2群間の比較には対応のない両側 t 検定を、3群以上の比較には1元配置 ANOVA (Tukey の多重比較検定または Dunnett の多重比較検定) を用いた。Kaplan-Meier 曲線の統計的有意性はログランク (Mantel-Cox) 検定で決定した。