• 著者: Thomas Powles, Elizabeth R Plimack, Denis Soulières, Tom Waddell, Viktor Stus, Rustem Gafanov, Dmitry Nosov, Frédéric Pouliot, Bohuslav Melichar, Ihor Vynnychenko, Sergio J Azevedo, Delphine Borchiellini, Raymond S McDermott, Jens Bedke, Satoshi Tamada, Lina Yin, Mei Chen, L Rhoda Molife, Michael B Atkins, Brian I Rini
  • Corresponding author: Thomas Powles (Barts Cancer Centre, Barts Cancer Institute, Queen Mary University of London, London, UK)
  • 雑誌: Lancet Oncology
  • 発行年: 2020
  • Epub日: 2020-10-23
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 33284113

背景

進行腎細胞癌 (RCC) の1次治療は、かつてsunitinibなどのVEGFR-TKIが標準であったが、免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) の登場によって治療パラダイムが大きく変化した。Nivolumab + ipilimumab (Motzer et al. N Engl J Med 2018)、pembrolizumab + axitinib (KEYNOTE-426)、avelumab + axitinib (Motzer et al. N Engl J Med 2019)、atezolizumab + bevacizumab (Rini et al. Lancet 2019) など、複数のICI併用療法が第3相試験で評価されてきた。これらの併用療法は、sunitinib単剤と比較して臨床的アウトカムの改善を示しているが、その程度はレジメンや評価項目によって異なっている。例えば、avelumab + axitinibやatezolizumab + bevacizumabは無増悪生存期間 (PFS) の改善を示したものの、全生存期間 (OS) の有意な延長は報告されていない。一方、nivolumab + ipilimumabは、中間リスクおよび不良リスクの患者においてOSと客観的奏効率 (ORR) の有意な改善を示した。

KEYNOTE-426試験の初回中間解析 (中央値14.2ヶ月の追跡) では、pembrolizumab + axitinib併用療法がsunitinib単剤と比較して、OS、PFS、ORRのいずれにおいても有意な改善を示し、米国および欧州で進行RCCの1次治療として承認された。しかし、免疫療法の特徴である「耐久性のある奏効」を正確に評価するためには、より長期の追跡データが必要である。また、腫瘍縮小の程度 (depth of response) と長期予後との関連性も重要な検討課題として残されており、RECIST v1.1基準では完全奏効 (CR) と判定されないものの、深い腫瘍縮小を達成した患者の長期的な臨床的利益を評価する必要がある。これまでの研究では、転移性結腸直腸癌、非小細胞肺癌、進行腎細胞癌など、様々な悪性腫瘍においてdepth of responseが長期生存と関連することが示唆されている (Grünwald et al. EurUrol 2015、Heinemann et al. EurJCancer 2015、McCoach et al. AnnOncol 2017)。本論文は、KEYNOTE-426試験の延長追跡解析 (中央値30.6ヶ月) における有効性と安全性の探索的解析を報告し、特にdepth of responseとOSの関連性について詳細な検討を行うことで、治療効果のより包括的な理解を目指す。これにより、pembrolizumab + axitinib併用療法の長期的な臨床的価値と、治療選択におけるdepth of responseの有用性を明確にすることが期待される。しかし、免疫療法の効果発現の遅延や、後続治療の影響を考慮した長期的なOSの評価は未解明な点が残されており、さらなる追跡が必要であった。また、深い奏効がRECIST基準のCRと同等の予後を示すかについては、これまでの報告では十分なエビデンスが不足していた。

目的

本研究の目的は、治療歴のない進行clear cell RCC患者を対象として、pembrolizumab + axitinib併用療法のsunitinib単剤に対する長期 (中央値30ヶ月超) の有効性と安全性を評価することである。具体的には、主要評価項目である全生存期間 (OS) および無増悪生存期間 (PFS) の優位性が長期追跡においても維持されるかを確認する。さらに、副次評価項目として、客観的奏効率 (ORR) および奏効期間 (DOR) の比較、ならびに安全性プロファイルの評価を行う。

探索的解析として、腫瘍縮小の程度 (depth of response) と長期OSの関連性を詳細に評価する。これは、RECIST v1.1基準で定義される離散的な奏効カテゴリーでは捉えきれない、より微細な腫瘍縮小が患者の予後に与える影響を明らかにすることを目的とする。特に、深い腫瘍縮小を達成した患者が完全奏効と同等の長期生存を示すか否かを検証し、depth of responseが進行RCCにおける重要な予後因子となり得るかを探る。これらの結果を通じて、pembrolizumab + axitinib併用療法が進行RCCの標準治療としての地位を確立するための、より強固なエビデンスを提供することを目指す。

結果

患者背景と追跡期間: 2016年10月24日から2018年1月24日の間に、861例の患者が無作為に割り付けられた (pembrolizumab + axitinib群 n=432、sunitinib群 n=429)。患者のベースライン特性は両群間で類似しており、年齢中央値は62歳、男性が73%を占めた。IMDC (International Metastatic Renal Cell Carcinoma Database Consortium) リスク分類では、良好リスクが32%、中間リスクが56%、不良リスクが13%であった。PD-L1 CPS ≥1の患者は58%、肉腫様成分を有する患者は12-13%であった。転移臓器数≥2が75%、肺転移72%、骨転移24%、肝転移16%であった。本延長追跡解析のデータカットオフ日である2020年1月6日時点での追跡期間中央値は30.6ヶ月 (IQR 27.2-34.2) であった。Pembrolizumab + axitinib群で72% (312/432例)、sunitinib群で81% (349/429例) の患者が治療を中止しており、主な中止理由は画像上の病勢進行であった (Figure 1)。Pembrolizumab + axitinib群の19例 (4%) が、プロトコルで定められた35サイクルのpembrolizumab治療を完遂した。治療中止後、pembrolizumab + axitinib群の54% (170/312例) とsunitinib群の69% (242/349例) が後続の抗癌治療を受けた。Sunitinib群では48% (169/349例) が後続のPD-1またはPD-L1阻害薬による治療を受けたのに対し、pembrolizumab + axitinib群では8% (25/312例) に留まった。

全生存期間 (主要評価項目): データカットオフ時点で、ITT集団において320例が死亡した (pembrolizumab + axitinib群 142/432例 [33%]、sunitinib群 178/429例 [41%])。Pembrolizumab + axitinib群のOS中央値は未到達であったのに対し、sunitinib群では35.7ヶ月 (95% CI 33.3-未到達) であった (HR 0.68, 95% CI 0.55-0.85, p=0.0003) (Figure 2A)。24ヶ月時点でのOS率は、pembrolizumab + axitinib群で74.4% (95% CI 69.9-78.2)、sunitinib群で65.5% (95% CI 60.8-69.8) と、併用群で約9%高かった。IMDCリスク分類別の解析では、良好リスク群ではOSのHRが1.06 (95% CI 0.60-1.86) であったのに対し (Figure 2B)、中間リスクまたは不良リスク群ではHR 0.63 (95% CI 0.50-0.81) と、併用群の優位性が顕著であった (Figure 2C)。

無増悪生存期間 (主要評価項目): ITT集団において、545例が病勢進行または死亡イベントを経験した (pembrolizumab + axitinib群 264/432例 [61%]、sunitinib群 281/429例 [66%])。PFS中央値は、pembrolizumab + axitinib群で15.4ヶ月 (95% CI 12.7-18.9)、sunitinib群で11.1ヶ月 (95% CI 9.1-12.5) であった (HR 0.71, 95% CI 0.60-0.84, p<0.0001) (Figure 3A)。24ヶ月時点でのPFS率は、pembrolizumab + axitinib群で37.6% (95% CI 32.7-42.5)、sunitinib群で26.5% (95% CI 21.8-31.4) と、併用群で高かった。IMDCリスク分類別の解析では、良好リスク群でHR 0.79 (95% CI 0.56-1.11)、中間リスクまたは不良リスク群でHR 0.69 (95% CI 0.58-0.82) と、PFSにおいても併用群の優位性が主に中間リスクおよび不良リスク群で観察された (Figure 3B, 3C)。

奏効率と奏効期間: 確定ORRは、pembrolizumab + axitinib群で260/432例 (60.2%, 95% CI 55.4-64.8)、sunitinib群で171/429例 (39.9%, 95% CI 35.2-44.7) であり、併用群で有意に高かった (p<0.0001) (Table 2)。完全奏効 (CR) 率は、併用群で9% (38/432例)、sunitinib群で3% (13/429例) であった。腫瘍径縮小が見られた患者の割合は、併用群で86% (371/432例) に対し、sunitinib群で77% (332/429例) であった。奏効期間中央値は、併rolizumab + axitinib群で23.5ヶ月 (95% CI 19.4-29.0)、sunitinib群で15.9ヶ月 (95% CI 13.8-20.4) であった。24ヶ月時点での奏効持続率は、併用群で47% (95% CI 40-54)、sunitinib群で38% (95% CI 30-47) であった。

Depth of response と OS: 探索的解析として実施されたdepth of responseとOSの関連性評価では、腫瘍縮小度合いが大きいほどOS延長と相関することが示された。腫瘍サイズの変化率を連続的な時間依存共変量とする層別Cox比例ハザードモデルでは、腫瘍サイズが10%縮小するごとにOSの生存確率が増加する傾向が認められた (HR 0.85, 95% CI 0.82-0.89)。6ヶ月ランドマーク解析では、pembrolizumab + axitinib群において、無作為化後6ヶ月以内に標的病変が-100%から-80%の範囲で縮小した患者は、RECIST v1.1で確定されたCRを達成した患者と同等のOS曲線を示した。この結果は、sunitinib群では同様に観察されなかった。これは、pembrolizumab + axitinib併用療法における深い奏効が、RECIST基準で定義されるCRに限定されない真の臨床的利益に直結する可能性を示唆している。

安全性: 延長追跡期間においても、初回中間解析以降に新たな安全性シグナルは認められなかった。Grade 3以上の治療関連有害事象 (TRAE) の発生率は、pembrolizumab + axitinib群で高い傾向にあった。最も頻度の高かったGrade 3以上のTRAE (いずれかの群で10%以上) は、高血圧 (併用群22% [95/429例] vs sunitinib群20% [84/425例])、アラニンアミノトランスフェラーゼ (ALT) 上昇 (併用群13% [54/429例] vs sunitinib群3% [11/425例])、下痢 (併用群11% [46/429例] vs sunitinib群5% [23/425例]) であった (Table 3)。Grade 3-4のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AST) 上昇は、併用群で7% (29/429例) vs sunitinib群で2% (7/425例) であった。重篤なTRAEは、併用群で28% (122/429例)、sunitinib群で16% (67/425例) と、併用群で多かった。薬剤暴露で調整したTRAE発生率は、併用群で63件/100人月、sunitinib群で97件/100人月であり、併用群の方が低かった。初回中間解析以降の新規治療関連死は報告されなかった。治療関連有害事象による治療中止は、pembrolizumab + axitinib群でpembrolizumabが21% (92/429例)、axitinibが20% (84/429例)、両剤が7% (28/429例) であった。Sunitinib群では、治療関連有害事象による治療中止は12% (53/425例) であった。

考察/結論

本研究は、治療歴のない進行腎細胞癌の1次治療としてのpembrolizumab + axitinib併用療法の長期優位性を確認した重要な報告である。中央値30.6ヶ月の延長追跡において、OS (HR 0.68, 95% CI 0.55-0.85, p=0.0003)、PFS (HR 0.71, 95% CI 0.60-0.84, p<0.0001)、ORR (60.2% vs 39.9%, p<0.0001) のいずれも、sunitinib単剤に対し持続的かつ有意な改善を示した。これは、これまでOS延長を示せなかったatezolizumab + bevacizumab (IMmotion151) やavelumab + axitinib (JAVELIN Renal 101) と対照的であり、pembrolizumab + axitinibが併用レジメンの中で最も強力なOS延長のエビデンスを提供したことを示唆する。

先行研究との違い: 以前のKEYNOTE-426初回中間解析 (中央値14.2ヶ月) でのOS HR 0.53 (95% CI 0.38-0.74) と比較して、本延長追跡解析でのOS HR 0.68 (95% CI 0.55-0.85) は、数値的には初回解析よりもsunitinib群との差が縮小している。これは、sunitinib群の患者の48%が後続治療としてPD-1/PD-L1阻害薬を受けたことや、追跡期間の延長に伴う免疫療法の効果発現の遅延などが影響している可能性がある。しかし、このHRの変化にもかかわらず、pembrolizumab + axitinib併用療法のOS優位性は統計的に有意に維持されており、長期的な臨床的利益が確認された。

新規性: 本研究で初めて、depth of responseとOSの関連性を詳細に解析し、pembrolizumab + axitinib群において、RECIST v1.1で定義される完全奏効に限定されず、-80%以上の深い腫瘍縮小を達成した患者がCRと同等の長期生存を示すことを新規に示した。この知見は、免疫療法を含む併用療法における治療効果の評価において、従来のRECIST基準だけでは捉えきれない、より微細な腫瘍縮小の臨床的価値を浮き彫りにするものである。

臨床応用: 本知見は、pembrolizumab + axitinibが進行RCCの1次治療における標準治療としての地位を強化するものである。特に、IMDCリスク分類の中間リスクおよび不良リスク群で顕著なOS優位性が示されたことは、これらの予後不良な患者群に対する治療選択において重要な臨床的意義を持つ。また、PD-L1発現レベルに依存しない効果が確認されたことは、バイオマーカーによる層別化なしに幅広い患者に適用可能であることを示唆する。深い腫瘍縮小が長期予後と強く関連するというdepth of responseの知見は、治療早期における効果予測や、治療戦略の調整に役立つ可能性がある。

残された課題: 本研究にはいくつかのlimitationが存在する。第一に、open-label試験であるため、評価におけるバイアスが完全に排除できない可能性がある。第二に、sunitinib群からの後続PD-1/PD-L1治療の割合 (48%) が高かったことが、OSの比較結果に影響を与えた可能性がある。第三に、depth of responseの解析は探索的であり、6ヶ月以内にCRを達成した患者数が少なかったため、その解釈には注意が必要である。また、depth of responseの境界カットポイントは事前に規定されておらず、最適なカットポイントではない可能性もある。さらに、PD-L1スコアリング (CPS) はRCCにおいて標準化されていない点も課題である。今後の検討課題として、良好リスク群におけるOSのさらなる長期追跡、心血管系や内分泌系などの長期安全性の詳細解析、およびdepth of responseと生活の質 (QoL) との関連性評価が挙げられる。現在はnivolumab + cabozantinib (CheckMate 9ER) やlenvatinib + pembrolizumab (CLEAR) など、さらに新しいレジメンが登場しており、今後はこれらのレジメン間の直接比較や、サブタイプ別の最適治療選択が重要な研究課題となる。

方法

本研究は、16ヶ国129施設で実施された進行中のopen-label、無作為化第3相試験であるKEYNOTE-426試験の延長追跡解析である (ClinicalTrials.gov識別子: NCT02853331)。対象患者は、18歳以上、治療歴のないstage IVまたは再発clear cell RCC、Eisenhauer et al. EurJCancer 2009基準で測定可能病変を有し、Karnofsky PS ≥70の患者であった。主要な除外基準には、症候性の中枢神経系転移、活動性の自己免疫疾患、コントロール不良の高血圧などが含まれた。

患者は、IMDC (International Metastatic Renal Cell Carcinoma Database Consortium) リスク分類 (良好、中間、不良) と地理的地域 (北米、西欧、その他) で層別化され、pembrolizumab + axitinib群とsunitinib単剤群に1:1で無作為に割り付けられた。Pembrolizumab群の患者には、pembrolizumab 200 mgを3週間ごとに静脈内投与 (最長35サイクル、約2年間) と、axitinib 5 mgを1日2回経口投与した。Axitinibの用量は安全性基準を満たせば7 mg、10 mgに増量可能であり、毒性管理のため3 mg、2 mgに減量可能であった。Sunitinib群の患者には、sunitinib 50 mgを1日1回経口投与し、4週間内服後2週間休薬する6週間サイクルで投与した。Sunitinibの用量も毒性に応じて37.5 mg、25 mgに減量可能であった。両群とも、病勢進行、許容できない毒性、または患者・治験責任医師の判断による中止まで治療を継続した。Pembrolizumab + axitinib群では、一方の薬剤が毒性により中止された場合でも、もう一方の薬剤は継続可能であった。

疾患評価はベースライン時にCTまたはMRIで実施し、その後は12週目、54週目までは6週間ごと、それ以降は病勢進行または治療中止まで12週間ごとに評価した。腫瘍奏効は、盲検下独立中央画像診断レビュー (BICR) によりRECIST v1.1基準で評価された。患者の生存状況は追跡期間中12週間ごとに評価した。有害事象および臨床検査値は、治療期間中約3週間ごと、および治療終了後30日間収集された。重篤な有害事象および注目すべき有害事象は、治療終了後90日間収集された。有害事象のグレード分類は、NCI-CTCAE v4.0に基づいた。

主要評価項目は、intention-to-treat (ITT) 集団におけるOSとPFSであった。OSは無作為化からあらゆる原因による死亡までの期間、PFSは無作為化からBICRによるRECIST v1.1基準での初回病勢進行またはあらゆる原因による死亡までの期間と定義された。副次評価項目は、BICRによるRECIST v1.1基準での確定ORR、奏効期間 (DOR)、および安全性であった。

統計解析は、SASバージョン9.4を用いて実施された。OSおよびPFSの推定にはKaplan-Meier法を用い、治療群間の差は層別ログランク検定で評価した。ハザード比 (HR) は層別Cox比例ハザードモデルを用いて推定した。ORRの比較には、層別Miettinen and Nurminen法を用いた。初回中間解析で主要評価項目が達成されたため、本延長追跡解析では名目p値が報告されている。

探索的解析として、depth of response (標的病変の直径合計のベースラインからの変化率) とOSの関連性を2つの方法で評価した。1つは、腫瘍サイズの変化率を時間依存共変量とする層別Cox比例ハザードモデルである。もう1つは、無作為化後6ヶ月の時点で生存している患者を対象としたランドマーク解析であり、この時点での腫瘍サイズの変化率をカテゴリー変数としてOSとの関連を評価した。Depth of responseのカテゴリーは、BICRで確定されたCRと、腫瘍サイズの変化率 (-100%から-80%、-80%未満から-60%、-60%未満から-30%、-30%未満から0%未満 [参照群]、0%から20%、20%超) に基づく6つのカテゴリーに分類された。