• 著者: Motzer R., Alekseev B., Rha S.Y., Porta C., Eto M., Powles T., Grunwald V., Hutson T.E., Kopyltsov E., Méndez-Vidal M.J., Kozlov V., Alyasova A., Hong S.H., Zhukova L., Bailen Barrera M., Rha S.Y., Molina Cerrillo J., George S., Chevreau C., Borchiellini D., Shin S.J., Melichar B., Rolland F., de Velasco G., Castellano D., Blank C., Baron A., Sugiyama T., Schiff C., Bedke J., Larkin J., Suarez C., Lam E.T., Goel S., Gu J., Kuo C.Y., Bhatt R.S., Albiges L., Rini B.I., Choueiri T.K.
  • Corresponding author: Motzer R. (Memorial Sloan Kettering Cancer Center, New York)
  • 雑誌: New England Journal of Medicine
  • 発行年: 2021
  • Epub日: 2021-02-13
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 33616314

背景

進行腎細胞がん (RCC: renal cell carcinoma) の1次治療は、近年急速に進化している。血管内皮増殖因子受容体 (VEGFR: vascular endothelial growth factor receptor) を標的としたチロシンキナーゼ阻害薬 (TKI) は、長年にわたり治療の主軸であったが、単剤治療では耐性獲得による再発が避けられないという課題があった。Choueiri et al. (2017) の報告にあるように、進行RCCに対する全身療法の開発は、より効果的な併用療法の探索へとシフトしてきた。近年、免疫チェックポイント阻害薬 (ICI: immune-checkpoint inhibitor) とVEGFR-TKIの併用療法、あるいはICI同士の併用療法が、標準治療であるスニチニブ単独療法と比較して優れた臨床成績を示すことが明らかになっている。例えば、Motzer et al. (2018) はニボルマブとイピリムマブの併用療法の有用性を示し、Rini et al. (2019) はペムブロリズマブとアキシチニブの併用療法が生存期間を有意に延長することを報告した。さらに、Powles et al. LancetOncol 2020 による長期追跡データでもその有用性が支持されている。

しかし、これらの併用療法が登場した現在でも、すべての患者で長期的な病勢コントロールが得られるわけではなく、より強力な抗腫瘍効果と持続的な反応をもたらす新たな治療選択肢の確立が求められていた。レンバチニブは、VEGFR 1-3に加えて、線維芽細胞増殖因子受容体 (FGFR: fibroblast growth factor receptor) 1-4、血小板由来増殖因子受容体 (PDGFR: platelet-derived growth factor receptor) α、KIT、RETを阻害するマルチキナーゼ阻害薬であり、強力な抗血管新生作用と免疫調節作用を有する。レンバチニブと免疫チェックポイント阻害薬であるペムブロリズマブ、あるいはmTOR阻害薬であるエベロリムスとの併用療法は、初期の臨床試験において有望な抗腫瘍活性を示していたが、未治療の進行RCC患者における一次治療としての有効性と安全性については十分に検証されておらず、スニチニブに対する優位性は未解明であった。特に、どの併用レジメンが最も高い治療効果と忍容性のバランスをもたらすかについてのデータは不足しており、大規模な第3相ランダム化比較試験による検証が不可欠な課題として残されていた。

目的

本研究 (CLEAR [Comparison of Lenvatinib Plus Pembrolizumab or Everolimus Versus Sunitinib Alone] 試験: NCT02811861) の目的は、全身療法歴のない未治療の進行性または転移性の明細胞型腎細胞がん (RCC) 患者を対象に、レンバチニブとペムブロリズマブの併用療法 (lenvatinib plus pembrolizumab)、およびレンバチニブとエベロリムスの併用療法 (lenvatinib plus everolimus) の有効性と安全性を、標準治療であるスニチニブ (sunitinib) 単独療法と直接比較して検証することである。主要評価項目として独立中央審査委員会 (IRC: independent review committee) の判定による無増悪生存期間 (PFS) を設定し、副次評価項目として全生存期間 (OS)、客観的奏効率 (ORR: objective response rate)、安全性、および奏効持続期間 (DOR: duration of response) などを包括的に評価し、一次治療におけるこれら2つの併用療法の臨床的有用性を確立することを目指した。

結果

レンバチニブ+ペムブロリズマブ併用による無増悪生存期間の劇的な延長: 主要評価項目であるIRC判定による無増悪生存期間 (PFS) において、lenv/pembro群 (n=355) はsunitinib群 (n=357) と比較して、極めて有意かつ臨床的に極めて大きな病勢進行または死亡リスクの低下を示した。PFS中央値は、lenv/pembro群の23.9 months vs sunitinib群の9.2 monthsであり、ハザード比は HR 0.39 (95% CI 0.32-0.49, p<0.001) と、病勢進行または死亡のリスクを61%低減した (Fig. 1A)。このPFSにおける圧倒的な優位性は、MSKCCリスク分類やIMDC (International Metastatic Renal Cell Carcinoma Database Consortium) リスク分類を含む、事前に規定されたすべてのサブグループにおいて一貫して認められた。例えば、IMDC中間リスクのサブグループにおいても、HR 0.39 (95% CI 0.29-0.52, p<0.001) と同様に極めて良好な治療効果が示され、予後不良因子を持つ患者群においても本併用療法の強力な有効性が証明された (Fig. 1B)。

レンバチニブ+エベロリムス併用による無増悪生存期間の有意な改善: もう一つの併用群であるlenv/eve群 (n=357) も、sunitinib群 (n=357) と比較してPFSの有意な延長を達成した。PFS中央値は、lenv/eve群の14.7 months vs sunitinib群の9.2 monthsであり、ハザード比は HR 0.65 (95% CI 0.53-0.80, p<0.001) であった (Fig. 1A)。この結果から、mTOR阻害薬であるエベロリムスとマルチTKIであるレンバチニブの併用も、スニチニブ単独療法に対して優れた抗腫瘍効果を発揮することが実証された。しかし、そのハザード比および生存期間の延長効果は、免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせたlenv/pembro群と比較すると限定的であり、併用パートナーとしての抗PD-1抗体の重要性が浮き彫りとなった。

全生存期間におけるレンバチニブ+ペムブロリズマブ群の有意な延長効果: 全生存期間 (OS) の解析において、lenv/pembro群 (n=355) はsunitinib群 (n=357) と比較して死亡リスクを有意に低下させ、生存期間を延長した。OS中央値はいずれの群も未到達 (not reached) であったが、ハザード比は HR 0.66 (95% CI 0.49-0.88, p=0.005) であり、ペムブロリズマブ併用による明確な生存ベネフィットが示された (Fig. 2A)。24ヶ月時点における生存率は、lenv/pembro群の79.2% vs sunitinib群の70.4%であった。一方、lenv/eve群 (n=357) においては、sunitinib群と比較したOSの有意な延長は認められず、ハザード比は HR 1.15 (95% CI 0.88-1.50, p=0.30) であった (Fig. 2A)。この結果は、一次治療におけるICIとTKIの併用が生存期間の延長に不可欠であることを示している。

客観的奏効率および完全奏効割合の顕著な向上: IRC判定による客観的奏効率 (ORR) は、lenv/pembro群で71.0% (95% CI 66.3-75.7) に達し、sunitinib群の36.1% (95% CI 31.2-41.1) と比較して約2倍と極めて高い値を示した (Table 2)。さらに、腫瘍が完全に消失した状態を指す完全奏効 (CR: complete response) を達成した患者の割合は、lenv/pembro群で16.1% (n=57/355) に上り、sunitinib群の4.2% (n=15/357) を大きく上回った。lenv/eve群のORRは53.5% (95% CI 48.3-58.7)、CR率は9.8% (n=35/357) であった。奏効持続期間 (DOR) の中央値は、lenv/pembro群の25.8 months vs sunitinib群の14.6 monthsと極めて長期にわたり効果が持続することが確認された (Fig. 2B)。

治療関連有害事象と用量調整を必要とする安全性プロファイル: 安全性解析において、Grade 3以上の治療関連有害事象 (AE: adverse event) は、lenv/pembro群で82.4% (n=290/352)、lenv/eve群で83.1% (n=295/355)、sunitinib群で71.8% (n=244/340) に認められた (Table 3)。頻度の高かったGrade 3以上の有害事象は、高血圧 (lenv/pembro群で27.6%)、下痢 (lenv/pembro群で9.7%)、リパーゼ上昇 (lenv/pembro群で12.5%) などであった。有害事象によるレンバチニブの減量はlenv/pembro群の68.8%で必要とされ、投与中断は78.4%で発生した。しかし、有害事象による治療の完全な中止に至った割合はlenv/pembro群で37.2% (いずれか一方または両剤の中止) であり、適切な用量調整と早期の副作用管理によって、多くの患者で治療の継続が可能であった。

治療曝露期間と後続治療の状況: 本試験における治療期間の中央値は、lenv/pembro群で17.0 months、lenv/eve群で11.0 months、sunitinib群で7.8 monthsであり、lenv/pembro群で最も長期の治療継続が可能であった。治療中止後に後続の全身療法を受けた患者の割合は、lenv/pembro群で54.9%、lenv/eve群で68.2%、sunitinib群で71.0%であった。sunitinib群で中止後に最も多く用いられた治療はPD-1/PD-L1阻害薬をベースとした免疫療法 (53.1%) であり、lenv/pembro群で最も多く用いられたのは抗血管新生療法 (50.7%) であった。このような後続治療の介入があったにもかかわらず、lenv/pembro群がsunitinib群に対して有意なOSの延長を示したことは、一次治療における本併用療法の導入が極めて重要であることを裏付けている。

考察/結論

先行研究との違い: 本研究の結果は、アキシチニブとペムブロリズマブの併用療法を検証したKEYNOTE-426試験などの先行研究と異なり、より強力なマルチキナーゼ阻害薬であるレンバチニブを用いることで、PFS中央値23.9 months、ORR 71.0%という、これまでのICI+TKI併用療法の臨床試験の中でも極めて高い治療成績を達成した点に特徴がある。

新規性: 本研究は、未治療の進行明細胞型RCCにおいて、レンバチニブとペムブロリズマブの併用療法が、標準治療であるスニチニブと比較して無増悪生存期間および全生存期間の双方を有意に延長することを第3相試験において新規に実証した。また、レンバチニブとエベロリムスの併用療法もPFSを有意に改善するものの、OSの延長には至らないことを示し、一次治療における免疫チェックポイント阻害薬併用の重要性を本研究で初めて明確に位置づけた。

臨床応用: 本試験の結果は、進行RCCの一次治療における新たな標準治療として、レンバチニブ+ペムブロリズマブ併用療法を臨床応用するための強固なエビデンスを提供するものである。臨床的意義として、71.0%という高い客観的奏効率と16.1%に達する完全奏効率は、腫瘍縮小を速やかに得る必要がある腫瘍量の多い患者や、症状を有する患者に対する臨床現場での薬剤選択において極めて重要な判断材料となる。

残された課題: 今後の課題として、Grade 3以上の有害事象が82.4%と高頻度で認められたことから、臨床現場における安全かつ効果的な管理方法の確立が挙げられる。特に、レンバチニブの減量 (68.8%) や投与中断 (78.4%) が高頻度で発生しているため、治療効果を損なわずに毒性を最小限に抑えるための最適な用量調整アルゴリズムの構築が求められる。また、本試験はオープンラベルで実施されたというlimitationがあり、患者報告アウトカム (PRO: patient-reported outcome) の詳細な解析や、長期生存者におけるQOL (quality of life) への影響について、今後の検討課題として残されている。さらに、他のICI+TKI併用療法との直接比較試験は存在しないため、個々の患者背景に応じた最適な使い分け基準の策定が望まれる。

方法

本試験は、世界20カ国200施設で実施された国際共同、オープンラベル、3群ランダム化第3相臨床試験である。対象は、組織学的に明細胞型成分を含むと確認された未治療の進行RCC患者であり、Karnofsky performance-status scoreが70以上、測定可能病変を有し、適切な臓器機能と管理された血圧を有する18歳以上の患者とした。適格基準を満たした1069例の患者は、インタラクティブ音声/Web応答システムを用いて、レンバチニブ+ペムブロリズマブ群 (lenv/pembro群、n=355)、レンバチニブ+エベロリムス群 (lenv/eve群、n=357)、またはスニチニブ群 (sunitinib群、n=357) に1:1:1の割合でランダムに割り付けられた。ランダム化の層別化因子には、地理的地域 (西ヨーロッパ・北アメリカ vs その他の地域) およびMSKCC (Memorial Sloan Kettering Cancer Center) 予後リスク分類 (低リスク、中間リスク、高リスク) が用いられた。

投与設計として、lenv/pembro群ではレンバチニブ20mgを1日1回経口投与し、ペムブロリズマブ200mgを3週 (21日) ごとに静脈内投与した。lenv/eve群ではレンバチニブ18mgとエベロリムス5mgをそれぞれ1日1回経口投与した。sunitinib群ではスニチニブ50mgを1日1回、4週間投与した後に2週間休薬するスケジュール (4週投薬/2週休薬) で経口投与した。

主要エンドポイントは、RECIST (Response Evaluation Criteria in Solid Tumors) version 1.1に基づきIRCが判定した無増悪生存期間 (PFS) とした。キーセカンダリーエンドポイントは全生存期間 (OS) およびIRC判定による客観的奏効率 (ORR) とした。統計解析では、多重性を調整するために、各併用群とスニチニブ群との比較において、PFS、OS、ORRの順に階層的検定手順 (sequential approach) を適用した。生存期間の解析にはKaplan-Meier法を用い、群間比較には層別log-rank検定を、ハザード比 (HR) の推定には層別Cox比例ハザードモデル (Cox regression) を使用した。安全性解析は、治験薬を1回以上投与されたすべての患者を対象として実施された。