• 著者: Manegold C, Dingemans AMC, Gray JE, Nakagawa K, Nicolson M, Peters S, Reck M, Wu YL, Brustugun OT, Crinò L, Felip E, Fennell L, Garrido P, Huber RM, Marabelle A, Moniuszko M, Mornex F, Novello S, Papotti M, Pérol M, Smit EF, Syrigos K, van Meerbeeck JP, van Zandwijk N, Yang JCH, Zhou C, Vokes E
  • Corresponding author: Christian Manegold, MD (Medical Faculty Mannheim, University of Heidelberg, Heidelberg, Germany)
  • 雑誌: Journal of Thoracic Oncology
  • 発行年: 2017
  • Epub日: 2016-10-08
  • Article種別: Review Article
  • PMID: 27729297

背景

進行非小細胞肺癌 (NSCLC) の治療は、PD-1/PD-L1阻害薬 (nivolumab、pembrolizumab、atezolizumab) の登場により2015年から2016年にかけて大きく進展した。しかし、これらの免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) 単剤療法に対する奏効率 (ORR) は、バイオマーカー非選択集団において13.6%から23%程度に留まり、依然として多くの患者が治療の恩恵を受けられないという課題が残されている。特に、PD-L1陰性腫瘍や一次治療抵抗性の患者など、従来のICI単剤では効果が期待できない集団に対する新たな治療戦略の開発が強く求められていた。

一方、抗血管新生療法 (bevacizumab、ramucirumab、nintedanib) は、白金系化学療法との併用により全生存期間 (OS) を改善させた実績が報告されている。例えば、ECOG 4599試験ではbevacizumab併用群でOSのハザード比 (HR) が0.79 (95% CI 0.67-0.92, p=0.003) と有意な改善を示し、Sandler et al. NEnglJMed 2006。REVEL試験ではramucirumab併用群でHRが0.86 (95% CI 0.75-0.98, p=0.023) と改善し、Garon et al. Lancet 2014。LUME-Lung 1試験の腺癌サブグループではnintedanib併用群でHRが0.83 (95% CI 0.70-0.99, p=0.0359) と、いずれも有意な改善を示した。これらの抗血管新生薬は、腫瘍血管の異常な構造を是正し、腫瘍微小環境 (TME) への薬剤送達を改善する効果が期待される。

近年、血管内皮増殖因子 (VEGF) が血管新生促進作用だけでなく、腫瘍微小環境 (TME) における免疫抑制の中心的メディエーターとしての役割を果たすことが明らかになってきた。VEGFの過剰発現は、制御性T細胞 (Treg) や骨髄由来免疫抑制細胞 (MDSC) の増殖・蓄積を促進し、樹状細胞 (DC) の成熟を阻害することで、T細胞のリンパ節内での発達や腫瘍組織への浸潤を妨げることが示されている。さらに、VEGFは活性化内皮細胞への接着分子 (ICAM-1、VCAM-1) のクラスタリングを阻害することでT細胞の腫瘍内浸潤を妨げ、Fas ligandの腫瘍内皮発現増大によりT細胞をアポトーシスに誘導することも報告されている。これらのVEGFによる免疫抑制機構は、VEGF阻害により逆転し、腫瘍免疫が活性化されることが多くの前臨床エビデンスで示されている。例えば、sunitinibは腫瘍浸潤T細胞のPD-1発現を減少させ、CD4+・CD8+ T細胞の腫瘍内浸潤を有意に増加させることが示された。Voron et al. JExpMed 2015

このようにVEGFが腫瘍免疫逃避機構を助長するという知見は、「VEGF/VEGFR阻害とICIの併用」が相乗的な抗腫瘍効果をもたらす可能性を示唆した。この仮説は、抗血管新生薬がVEGFシグナルを阻害することで、腫瘍血管の正常化、T細胞浸潤の増加、免疫抑制細胞の減少を促し、ICIの感受性を高めるという前臨床的根拠に基づいている。しかし、この併用療法の最適な組み合わせ、用量、投与順序、および患者選択のバイオマーカーは未解明な部分が多く、今後の研究課題として残されている。特に、ICI単剤療法では効果が不足している患者群に対する新たな選択肢を確立する上で、この併用療法の可能性を深く掘り下げることが重要である。

本レビューは、Post-WCLC 2015 Conferenceにおける国際エキスパートパネルの討議に基づき、この仮説を支持する前臨床および初期臨床エビデンスを包括的に整理することを目的とした。進行NSCLC治療におけるICI単剤療法の限界と、抗血管新生療法の既報の有効性を踏まえ、両者の併用による新たな治療戦略の可能性を深く掘り下げることが、現在の治療成績が不足している患者群に対する新たな選択肢を確立する上で重要であると考えられた。

目的

本レビューの目的は、進行NSCLC治療における抗血管新生療法と免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) の各単剤臨床データを統合的に評価することである。さらに、両者の併用療法が相乗効果をもたらす前臨床メカニズムを詳細に検討し、現在利用可能な初期臨床試験データを評価する。最終的に、これらの知見に基づき、進行NSCLC患者に対する将来の組み合わせ治療戦略の展望と課題について論じることを目指す。特に、血管内皮増殖因子 (VEGF) が腫瘍微小環境 (TME) において免疫抑制を促進するメカニズムを解明し、抗血管新生薬がこの免疫抑制を解除することでICIの効果を増強する可能性に焦点を当てる。これにより、ICI単剤療法では十分な効果が得られない患者群に対する新たな治療アプローチの理論的根拠と、その臨床的実現可能性を提示することが本レビューの重要な目的である。

結果

抗血管新生療法の主要臨床データ:NSCLC Phase III試験成績

Bevacizumab (抗VEGF抗体) の有効性: ECOG 4599試験 (Sandler et al. NEnglJMed 2006) (paclitaxel+carboplatin ± bevacizumab、非扁平上皮NSCLC、n=878) では、bevacizumab併用群でOSが有意に改善し、HR 0.79 (95% CI 0.67-0.92, p=0.003)、mOS 12.3 vs 10.3ヶ月であった。PFSもHR 0.66 (95% CI 0.57-0.77, p<0.001) と改善し、mPFS 6.2 vs 4.5ヶ月、ORRは35% vs 15% (p<0.001) であった。Grade 3以上の有害事象 (特に出血、高血圧、血栓) はbevacizumab群で増加したが、管理可能であった。BEYOND試験 (中国人集団、n=276) では、OS HR 0.68 (95% CI 0.50-0.93, p=0.0154)、mOS 24.3 vs 17.7ヶ月と、ECOG 4599より大きな効果量を示した。AVAiL試験 (Reck et al. AnnOncol 2010) (cisplatin+gemcitabine ± bevacizumab、n=1,043) ではOSの差は認められなかったが、PFSは改善した (HR 0.75, p=0.0003)。Bevacizumabを含む試験のメタ解析では、bevacizumab+白金化学療法 vs 化学療法単独でOS HR 0.90 (95% CI 0.81-0.99, p=0.03) と有意なOS改善が示された。

Ramucirumab (抗VEGFR2ヒト化モノクローナル抗体) の有効性: REVEL試験 (Garon et al. Lancet 2014) (docetaxel ± ramucirumab、1次治療後進行の全組織型NSCLC、n=1,253) では、OS HR 0.86 (95% CI 0.75-0.98, p=0.023)、mOS 10.5 vs 9.1ヶ月と有意な改善が認められた。PFSもHR 0.76 (95% CI 0.68-0.86, p<0.0001) と改善し、mPFS 4.5 vs 3.0ヶ月、ORRは23% vs 14% (p<0.0001) であった。Grade 3以上の出血増加は有意でなく、毒性は管理可能であった。

Nintedanib (三重アンギオキナーゼ阻害薬) の有効性: LUME-Lung 1試験 (Reck et al. LancetOncol 2014) (docetaxel ± nintedanib、1次治療後進行NSCLC、n=1,314) では、全体ではPFS改善のみであったが、事前規定済みのサブグループ解析として、1次治療開始から9ヶ月以内に進行した腺癌 (n=405) ではOS HR 0.75 (95% CI 0.60-0.92, p=0.0073)、mOS 10.9 vs 7.9ヶ月と有意な改善が認められた。全腺癌 (n=658) でもOS HR 0.83 (95% CI 0.70-0.99, p=0.0359)、mOS 12.6 vs 10.3ヶ月と改善した。LUME-Lung 2試験 (pemetrexed ± nintedanib、非扁平上皮NSCLC 2次治療、n=713) ではPFS HR 0.83 (95% CI 0.70-0.99, p=0.0435) と有意改善したが、OSは差がなかった (12.2 vs 12.7ヶ月, HR 1.03, p=0.7921)。

ICI主要臨床データ:NSCLC Phase III試験成績

Nivolumab (抗PD-1ヒト化IgG4) の有効性: CheckMate 017試験 (Brahmer et al. NEnglJMed 2015) (扁平上皮NSCLC、2次治療、n=272) では、OS HR 0.59 (95% CI 0.44-0.79, p<0.001)、mOS 9.2 vs 6.0ヶ月と有意な改善が認められた。PFSもHR 0.62 (95% CI 0.47-0.81, p<0.001) と改善し、ORRは20% vs 9% (p=0.008) であった。Grade 3/4の治療関連有害事象 (TRAE) はnivolumab群で7% vs docetaxel群55%と毒性プロファイルで優位性を示した。PD-L1発現は予測バイオマーカーとして機能しなかった。CheckMate 057試験 (Borghaei et al. NEnglJMed 2015) (非扁平上皮NSCLC、2次治療、n=582) では、OS HR 0.73 (95% CI 0.59-0.89, p=0.002)、mOS 12.2 vs 9.4ヶ月と有意な改善が認められた。ORRは19% vs 12% (p=0.02) であった。PFS中央値はnivolumab群2.3ヶ月 vs docetaxel群4.2ヶ月でKaplan-Meier曲線のcrossoverが見られた (PFS HR 0.92, p=0.39)。非扁平上皮ではPD-L1発現と利益の相関が認められた (高発現でHR<0.5)。Grade 3/4 TRAEはnivolumab群10% vs docetaxel群54%であった。

Pembrolizumab (抗PD-1ヒト化IgG4κ) の有効性: KEYNOTE-010試験 (Herbst et al. Lancet 2016) (PD-L1陽性[TPS≥1%]2次治療以降NSCLC、n=1,034) では、pembrolizumab 2mg/kg群でOS HR 0.71 (95% CI 0.58-0.88, p=0.0008)、mOS 10.4 vs 8.5ヶ月、10mg/kg群でOS HR 0.61 (95% CI 0.49-0.75, p<0.0001)、mOS 12.7 vs 8.5ヶ月と、いずれもdocetaxel群と比較して有意なOS改善が認められた。TPS≥50%のサブセットで最大の利益が示された (2mg/kg: OS HR 0.54、10mg/kg: OS HR 0.50)。Grade 3〜5 TRAEはpembrolizumab群で13〜16% vs docetaxel群35%であった。

Atezolizumab (抗PD-L1ヒト化IgG1) の有効性: POPLAR試験 (Fehrenbacher et al. Lancet 2016) (Phase II無作為化、2/3次治療NSCLC、n=287) では、OS HR 0.73 (95% CI 0.53-0.99, p=0.04)、mOS 12.6 vs 9.7ヶ月と有意なOS改善が認められた。TC/ICスコア高発現でより大きな利益が示された (TC3/IC3でOS HR 0.49)。ORRは両群ともに17% vs 15%で差はなかった。

VEGF・免疫系の相互作用:前臨床的相乗効果の根拠

VEGFによる免疫抑制の分子メカニズム: 血管内皮増殖因子 (VEGF) は、リンパ球の腫瘍内トラフィッキング抑制と免疫調節細胞への全身的・局所的作用という2つのモードで免疫抑制を機能させる。第1のモードでは、VEGFが活性化内皮細胞への接着分子 (ICAM-1、VCAM-1) のクラスタリングを阻害することでT細胞の腫瘍内浸潤を妨げ、Fas ligandの腫瘍内皮発現増大によりT細胞をアポトーシスに誘導する。第2のモードでは、VEGFは制御性T細胞 (Treg) の誘導・増殖促進、骨髄由来免疫抑制細胞 (MDSC) の蓄積促進・機能強化、樹状細胞 (DC) の成熟阻害・機能障害、T細胞の胸腺発育阻害を介して免疫抑制を促進する。これらのVEGFによる免疫抑制機構は、VEGF阻害 (bevacizumab、sunitinib、cabozantinibなど) により逆転し、腫瘍免疫が活性化されることが多くの前臨床エビデンスで示されている。

抗血管新生療法による免疫活性化の前臨床エビデンス: Sunitinib (VEGFR2阻害チロシンキナーゼ阻害薬 [TKI]) は、Advanced tumor-bearing miceにおいて、腫瘍浸潤T細胞のPD-1発現減少、CD4+・CD8+ T細胞の腫瘍内浸潤有意増加、Treg・MDSC数の減少、MDSCの免疫抑制機能障害をもたらした。Cabozantinib (VEGFR2+他複数TKI標的) は、がんワクチンとの組み合わせでマウスMC38-CEA腫瘍の有意な成長抑制と持続的腫瘍退縮を示し、Treg・MDSC減少とCD4+・CD8+ T細胞浸潤増加を介した機序が示唆された。VEGF阻害による「血管正常化 (vessel normalization)」は、腫瘍血管の異常な透過性・圧迫を是正し、腫瘍内血流・酸素化を改善することで、T細胞や抗がん剤の腫瘍内到達を改善する。

NSCLC固有の前臨床エビデンス: 3つのin vivo NSCLCモデルにおいて、養子細胞免疫療法 (CIK [cytokine-induced killer] cell transfer) とrh-endostatin (抗血管新生薬) の組み合わせが腫瘍成長を有意に抑制した (単剤ではどちらも無効)。Bevacizumab+CIK cell therapyのin vivo肺腺癌モデルでも腫瘍成長の相乗的抑制と腫瘍内CIK細胞浸潤増加が認められた。PD-1+VEGFR2同時遮断 (モノクローナル抗体) のin vivo大腸腺癌モデルでは、単剤より有意な腫瘍成長抑制が確認された (Figure 1)。

その他固形腫瘍での前臨床シグナル: B16F10メラノーマ・CT26大腸癌モデルでのVEGF inhibition (chimeric VEGFR) +GM-CSF分泌腫瘍細胞免疫療法の組み合わせで動物生存率が有意に増加した。メラノーマでのipilimumab+bevacizumab (Phase I、n=46) では、ORR 19.6%・mOS 25.1ヶ月 (従来ipilimumab単剤の約2倍) が報告され、腫瘍生検でT細胞・単球浸潤の定性的増加と末梢血memory T細胞増加が確認された。

初期臨床データ (NSCLC)

CheckMate 012 (nivolumab+bevacizumab維持療法、NCT01454102): 1次白金化学療法後に進行なく移行した非扁平上皮NSCLCに対するnivolumab+bevacizumab維持療法 (Cohort D) を検討したPhase I多剤並行試験では、mPFS 37.1週という結果が得られた (nivolumab単独の非扁平上皮コホートmPFS 21.4週、扁平上皮コホートmPFS 16週と比較して良好な数値)。ORRはnivolumab+bevacizumab群8% vs nivolumab単独群10%とほぼ同等であった。Grade 3以上の治療関連有害事象 (TRAE) が低頻度で忍容性は良好であった。

Ramucirumab+Pembrolizumab (NCT02443324): 進行NSCLC、胃/食道胃接合部 (G/GEJ) 腺癌、尿路上皮癌で前治療後に進行した患者を対象とした組み合わせ試験のNSCLCコホート (Cohort 3) では、初期の用量制限毒性 (DLT) 評価結果としてDLTは報告されず、予想外の安全性の懸念はなかった。

mCRC (転移性大腸癌) での atezolizumab+bevacizumab±FOLFOX: 難治性患者へのatezolizumab+bevacizumabでは、少なくとも1回腫瘍評価を受けた患者でunconfirmed ORR 8%であった。Oxaliplatin naive患者への atezolizumab+bevacizumab+FOLFOX (フルオロウラシル、フォリン酸、オキサリプラチン) では、unconfirmed ORR 36% (first-line subset 44%) であった。Atezolizumab関連Grade 3以上TRAEは、単独bevacizumab+atezolizumab群7% vs FOLFOX追加群20%であった。

mRCC (転移性腎細胞癌) での初期データ: Atezolizumab+bevacizumab 1次治療 (NCT01633970) では、少なくとも1回評価を受けた患者でpreliminary ORR 40% (3/4例confirmed) であり、atezolizumab関連Grade 3以上TRAEは0%と良好な忍容性を示した。Bevacizumab+pembrolizumab (NCT02348008) ではDLT・重篤なTRAEは報告されなかった。Nivolumab+pazopanib (NCT01472081) ではORR 45%、Grade 3以上関連AE 73%と高毒性であった。Nivolumab+sunitinib (first-line拡大) ではORR 52%、Grade 3以上60%であった。腎細胞癌 (RCC) でのICI+抗血管新生の組み合わせは有効性シグナルを示すが、nivolumab+pazopanib/sunitinibでは毒性が問題であった (atezolizumab+bevacizumabは忍容性が良好な対照的パターン)。

考察/結論

本レビューは、抗血管新生療法と免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) の組み合わせが、前臨床および初期臨床の両面でNSCLCに相乗効果をもたらす可能性を提示した。血管内皮増殖因子 (VEGF) 阻害による腫瘍微小環境 (TME) の免疫活性化、具体的にはCD8+T細胞の増加、制御性T細胞 (Treg) および骨髄由来免疫抑制細胞 (MDSC) の減少、血管正常化、T細胞トラフィッキングの改善といったメカニズムは、ICIの機能増強に理論的根拠を提供し、それぞれ単剤では得られない相乗的な腫瘍免疫賦活化が期待される。

先行研究との違い: 本レビューの重要性は、2016年当時まだPhase Iレベルの初期データしか存在しなかった「抗血管新生+ICI」組み合わせの理論的枠組みを包括的に整理し、その臨床展開の方向性を提示した先見的役割にある。Post-WCLC 2015 Conferenceにおける国際エキスパートパネルの討議に基づいた本レビューは、これまでの単一研究報告とは異なり、複数の視点からエビデンスを統合している。

新規性: 本レビュー発表後に報告されたIMpower150試験 (atezolizumab+bevacizumab+carboplatin+paclitaxel [ABCP群] vs BCP群) では、ABCP群でPFS HR 0.62 (95% CI 0.52-0.74)、OS HR 0.78 (95% CI 0.64-0.96) という成果が示され、NSCLCにおける「抗血管新生+ICI+化学療法」三種組み合わせの有効性が実証された。これは、本研究で初めてその理論的基盤が詳細に論じられた「VEGF阻害によるTME転換でICI感受性が付与される」という仮説を直接支持するものであり、これまでのICI単剤療法では効果が限定的であった患者群に対する新規の治療戦略として非常に重要な知見である。

臨床応用: 本知見は、NSCLC治療における新たなパラダイムシフトを促し、より多くの患者に治療の恩恵をもたらすための臨床応用に直結する。特に、PD-L1発現が低い、あるいは陰性であるためにICI単剤では効果が期待できない患者群において、抗血管新生薬との併用が免疫応答を誘導し、ICIの感受性を高める可能性は臨床的意義が極めて大きい。

残された課題: しかし、残された課題も多い。患者選択のバイオマーカー (VEGF/VEGFR発現、PD-L1、腫瘍変異負荷 [TMB] の組み合わせなど) の確立は今後の検討課題である。特にPD-L1陰性腫瘍が抗血管新生によるTME活性化でICIに応答するようになる可能性は理論的に最も期待されるが、その検証はまだ不十分である。また、高用量の抗血管新生薬は血管正常化ではなく血管破壊をきたし、T細胞浸潤が減少する逆効果の可能性があるため、最適な組み合わせ、用量、投与順序の決定も未解決の課題である。毒性管理の確立も重要であり、今後の研究でこれらのlimitationを克服する必要がある。本論文は、NSCLCにおける同戦略の臨床的成功を先取りした先駆的レビューとして位置付けられる。

方法

本レビューは、2015年11月5日にドイツ・ドレスデンで開催されたPost-WCLC 2015 Conferenceにおける国際エキスパートパネルの討議に基づいたナラティブレビューとして実施された。レビューの対象とした文献は、進行NSCLCにおける主要なランダム化比較試験 (RCT) および前臨床研究、ならびに抗血管新生療法と免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) の組み合わせに関する初期臨床試験データである。文献検索はPubMed、Embaseなどの主要な医学データベースを用いて実施された。

具体的には、抗血管新生療法に関する主要な第III相試験として、bevacizumabを用いたECOG 4599試験 (Sandler et al. NEnglJMed 2006)、BEYOND試験、AVAiL試験 (Reck et al. AnnOncol 2010)、ramucirumabを用いたREVEL試験 (Garon et al. Lancet 2014)、nintedanibを用いたLUME-Lung 1試験 (Reck et al. LancetOncol 2014)およびLUME-Lung 2試験が網羅された。ICIに関する主要な第III相試験としては、nivolumabを用いたCheckMate 017試験 (Brahmer et al. NEnglJMed 2015)およびCheckMate 057試験 (Borghaei et al. NEnglJMed 2015)、pembrolizumabを用いたKEYNOTE-010試験 (Herbst et al. Lancet 2016)、atezolizumabを用いたPOPLAR試験 (Fehrenbacher et al. Lancet 2016)などが含まれた。これらの試験は、OS、PFS、ORR、および安全性プロファイルに基づいて評価された。

さらに、抗血管新生薬とICIの組み合わせ療法に関する前臨床データ、特に血管内皮増殖因子 (VEGF) による免疫抑制メカニズム、抗血管新生薬による免疫活性化、およびNSCLC固有のin vivoモデルでの相乗効果を示す研究が詳細に検討された。初期臨床試験データとしては、NSCLCにおけるCheckMate 012試験 (nivolumab+bevacizumab維持療法、NCT01454102)、ramucirumab+pembrolizumab併用試験 (NCT02443324) のほか、転移性大腸癌 (mCRC) および転移性腎細胞癌 (mRCC) におけるatezolizumab+bevacizumab併用療法に関する初期データも評価された。これらの試験は、主に安全性と忍容性、および初期の有効性シグナルを評価する目的で実施された第I相試験が中心であった。安全性評価には、有害事象 (AE) の種類、頻度、重症度 (Grade 3以上) が含まれ、忍容性は用量制限毒性 (DLT) の発生状況に基づいて評価された。有効性評価には、ORR、PFS、OSなどの主要な臨床エンドポイントが用いられた。本レビューでは、これらの多岐にわたるエビデンスを統合し、抗血管新生療法とICIの併用療法の理論的根拠、臨床的実現可能性、および今後の研究方向性を提示することを目指した。本レビューの対象文献は、主要な医学データベース (PubMed, Embase) を用いて検索され、専門家パネルの意見に基づき選定された。エビデンスの質は、ランダム化比較試験 (RCT) を優先し、その結果は主要な臨床アウトカム (OS, PFS, ORR) および安全性プロファイルに基づいて評価された。