• 著者: Ramalingam SS, Pérol M, Reck M, Kowalyszyn RD, Gautschi O, Kimmich M, Cho EK, Czyzewicz G, Grigorescu A, Karaseva N, Dakhil S, Lee P, Zimmerman A, Sashegyi A, Alexandris E, Cuyun Carter G, Winfree KB, Garon EB
  • Corresponding author: Suresh S. Ramalingam, MD (Emory University School of Medicine / Winship Cancer Institute, Atlanta, GA, USA)
  • 雑誌: Clinical Lung Cancer
  • 発行年: 2018
  • Epub日: 2017-12-21
  • Article種別: Original Article (Phase III Trial Age Subgroup Analysis)
  • PMID: 29373274

背景

非小細胞肺がん (NSCLC) は世界最大の癌死原因であり、診断時に大多数が進行期を呈するため、白金製剤ベース一次治療後に進行した症例への二次治療確立が長年の課題であった。VEGFR-2 (vascular endothelial growth factor receptor-2) を選択的に阻害するヒトIgG1モノクローナル抗体ラムシルマブとドセタキセルの併用を評価したランダム化二重盲検第III相REVEL試験では、プラセボ+ドセタキセルに対してOS(median OS 10.5 vs 9.1か月、HR 0.86、95%CI 0.75-0.98、P=0.023)およびPFS(median PFS 4.5 vs 3.0か月、HR 0.76、P<0.0001)を有意に改善しFDA承認の根拠となった (Garon et al. Lancet 2014)。同様に二次治療を評価した第III相LUME-Lung 1 (nintedanib plus docetaxel trial)試験ではドセタキセル+ニンテダニブが腺癌サブグループでOS改善を示したが (Reck et al. LancetOncol 2014)、いずれの試験でも高齢者(65歳以上)の登録割合は著しく低く、登録患者の中央年齢は65歳未満にとどまり、年齢別の有効性・安全性データが手薄であった。

NSCLCの診断中央年齢は70歳であり罹患率は加齢とともに上昇するが、主要第III相試験への高齢者の代表性は不足している。高齢NSCLC患者の予後規定因子としてECOG PS (performance status)・診断時病期・コモービディティ (comorbidity)・臓器機能低下・前化学療法への反応性などが同定されているが、これらがラムシルマブの効果をどの程度修飾するかは不明であった。IFCT-0501試験では高齢者へのカルボプラチン+週1回パクリタキセルが単剤より有効と示されたが (Quoix et al. Lancet 2011)、抗血管新生薬を含むレジメンの高齢者への適用可否に関する gap in knowledge が存在した。欧州医薬品庁 (EMA) はREVEL承認審査においてクインタイル(5分位)年齢解析を明示的に要求しており、年齢連続変量と治療効果の関係を詳細に検討する必要性が生じた。

目的

REVEL試験(NCT01168973)において事前規定された年齢サブグループ(65歳未満/65歳以上、70歳未満/70歳以上)別のラムシルマブ+ドセタキセルの有効性(OS・PFS・ORR・DCR)および安全性・QoLを解析するとともに、EMA要請に応じたクインタイル解析により年齢連続変量と治療効果の関係を評価すること。

結果

65歳未満サブグループの有効性(n=798): 65歳未満患者ではラムシルマブ+ドセタキセルがプラセボ+ドセタキセルに対してOSを有意に延長した。median OSはラムシルマブ群11.3か月(95%CI 10.3-12.6)vs プラセボ群8.9か月(95%CI 7.4-10.2)で、未層別HR 0.74(95%CI 0.62-0.87、P<0.001)、予後因子調整後HR 0.72(95%CI 0.60-0.85)と明確なOSベネフィットを確認した(Fig 1A)。median PFSはラムシルマブ群4.8か月(95%CI 4.2-5.5)vs プラセボ群2.8か月(95%CI 2.6-3.0)で未層別HR 0.68(95%CI 0.59-0.79、P<0.001)、調整後HR 0.66(95%CI 0.60-0.76)と顕著な改善を示した(Fig 1C)。ORRはラムシルマブ群24.3%(95%CI 20.1-28.9%)対プラセボ群13.5%(95%CI 10.3-17.2%)(P<0.001)、DCRは66.2%(95%CI 61.3-70.9%)対48.4%(95%CI 43.5-53.4%)(P<0.001)と、ともに有意なベネフィットが認められた(Table 4)。Treatment-Age交互作用検定ではOS P=0.04、PFS P=0.03と65歳カットオフで統計的に有意な交互作用が示され、年齢が治療効果の修飾因子となりうることが確認された。

65歳以上サブグループの有効性と予後因子調整後の変化(n=455): 65歳以上患者では非調整解析においてラムシルマブの明確なOSベネフィットは認められなかった。median OSはラムシルマブ群9.2か月(95%CI 7.6-10.3)対プラセボ群9.3か月(95%CI 8.5-11.0)で、未層別HR 1.10(95%CI 0.89-1.36、P=0.393)と有意差なし(Fig 1B)。しかし予後因子調整後はHR 0.96(95%CI 0.77-1.21、P=0.04)となりラムシルマブに有利な方向性が浮かび上がった。median PFSは4.4か月(95%CI 4.0-4.9)対4.1か月(95%CI 3.2-4.6)で未層別HR 0.98(95%CI 0.81-1.19、P=0.824)と差がなかったが、調整後HR 0.87(95%CI 0.71-1.05)と改善傾向が見られた(Fig 1D)。ORRは20.7%(95%CI 15.7-26.4%)対13.8%(95%CI 9.5-19.1%)(P=0.058)で有意差なく、DCRは60.3%対60.6%(P=0.94)と差がなかった(Table 4)。65歳以上のプラセボ群OSが若年層プラセボ群より良好(9.3 vs 8.9か月)であり、高齢群のベースライン予後特性の差が非調整解析の解釈に影響していた。70歳以上(n=251)でもmedian OS 8.8対9.0か月(未層別HR 1.07、調整後HR 0.86)、median PFS 4.4対4.0か月(未層別HR 0.94、調整後HR 0.82)と同様のパターンが観察された。

EMA要請クインタイル解析による年齢連続変量と治療効果の関係: 重要な予後因子を調整した上で全n=1253例を5年齢クインタイルに分割したところ、全群でOSおよびPFSのHRがラムシルマブに有利な方向を示した(Table 3)。最若年群(<53.29歳、n=251)ではOS HR 0.666(95%CI 0.487-0.912)・PFS HR 0.633(95%CI 0.488-0.821)と最も顕著な効果。53.29-<59.71歳(n=251)でOS HR 0.743(95%CI 0.547-1.010)・PFS HR 0.644(95%CI 0.496-0.837)。59.71-<64.32歳(n=250)でOS HR 0.781(95%CI 0.572-1.065)・PFS HR 0.733(95%CI 0.564-0.953)。64.32-<70.03歳(n=251)でOS HR 0.921(95%CI 0.682-1.243)・PFS HR 0.827(95%CI 0.638-1.072)。最高齢群(≥70.03歳、n=250)でOS HR 0.867(95%CI 0.640-1.174)・PFS HR 0.827(95%CI 0.634-1.079)。加齢とともにpoint estimateは1に近づくものの、全5クインタイルでHRが1を下回る方向を維持し、年齢のみでラムシルマブ非適応集団を特定することが困難であることを示した。

安全性と曝露の年齢群別比較: ラムシルマブの相対投与強度中央値は全年齢群で>97%と良好に維持された。治療持続期間中央値は65歳未満(17.9週)が65歳以上(12.0週)より長く、累積投与量中央値も65歳未満(50.0 mg/kg)が65歳以上(40.0 mg/kg)を上回った(Table 2)。Grade≥3 TEAE発現率は65歳未満でラムシルマブ群75.6%対プラセボ群68.8%、65歳以上でそれぞれ84.4%対77.6%と高齢群で全体的に高率(Table 5)。SAE(serious adverse event)は65歳未満でラムシルマブ群36.2%対プラセボ群43.3%であったが、65歳以上ではラムシルマブ群54.0% vs プラセボ群40.7%と逆転し高齢のラムシルマブ群でSAEが多かった。Grade≥3 febrile neutropenia (FN)は65歳未満でラムシルマブ群13.8% vs プラセボ群8.7%、65歳以上では19.4% vs 12.6%とより高率(Table 5)。Grade≥3好中球減少はラムシルマブ群で若年48.2%・高齢49.8%と年齢群間で同程度。TEAE起因死亡は65歳以上のラムシルマブ群18例(7.6%)対65歳未満13例(3.3%)と高齢群で高頻度。後続全身療法受療率は65歳以上のラムシルマブ群34.6%対プラセボ群44.5%と前者で低く、この不均衡が高齢者でのOS評価に影響した可能性がある。LCSSによるQoL評価では65歳未満の全11パラメータで悪化到達時間に治療間差はなく、65歳以上では9/11パラメータで差がなかったが、LCSS総スコアのみプラセボ群有利(HR 1.47、95%CI 1.02-2.12)であった。

考察/結論

本REVEL試験年齢サブグループ解析の主要な知見は、65歳未満ではラムシルマブ+ドセタキセルが明確なOS(HR 0.74)・PFS(HR 0.68)改善をもたらした一方、65歳以上では非調整解析でHR 1.10と一見ベネフィットが消失するように見えるが、予後因子調整後はHR 0.96へと変化し有利な方向性が維持されたことである。これまでの研究では年齢そのものが独立した予後因子とされてきたが、本解析においては予後共変量(PS・組織型・前治療最良奏効・人種等)の群間分布不均衡が非調整解析のHRに大きな影響を及ぼしており、既報の単純なカットオフ解析と対照的に、多変量調整後に治療効果の実態がより鮮明に現れることが示された。65歳以上のプラセボ群OSが若年層より良好(9.3 vs 8.9か月)であったことも、高齢群に予後良好なベースライン特性が集積した可能性を示唆し、生の交互作用検定の解釈には注意を要する。

EMAが要請したクインタイル解析は、これまで報告されていない視点として5年齢帯全てでラムシルマブのベネフィット方向性が維持されることを示し、本研究で初めて系統的に年齢連続変量と抗VEGFR-2療法の効果の関係を多変量調整下で評価した試みとして重要な意義を持つ。単一カットオフ(65歳)による非調整解析では年齢と治療効果の関係に大きな落差があるように見えるが、適切な予後因子調整と5分位解析を組み合わせることで、年齢のみでラムシルマブ非適応集団を特定することが困難であるという結論が導かれた。この知見の臨床的意義は重大であり、65歳や70歳という年齢のみを根拠にラムシルマブ治療を控えるべきでないという実践的推奨を支持する。臨床現場での治療選択においては年齢よりもPS・臓器機能・コモービディティという機能的指標を重視した個別化判断が求められる。

安全性の観点からは、65歳以上では発熱性好中球減少(19.4% vs 若年13.8%)・SAE(54.0% vs 若年36.2%)・TEAE起因死亡(7.6% vs 若年3.3%)が若年層と比較して高率であり、高齢患者への投与に際してはG-CSF (granulocyte colony-stimulating factor) 予防投与・用量調整等の毒性管理戦略の事前策定が臨床応用上の重要な含意を持つ。さらに65歳以上のラムシルマブ群では後続全身療法受療率が対照群より低く(34.6% vs 44.5%)、この不均衡がOS改善を過小評価している limitation として認識すべきである。ただし原因別死亡の分布は若年・高齢で類似しており、高齢者に特異的な致死的毒性パターンは確認されていない。

今後の検討として、本REVEL試験はそもそも年齢別サブグループで統計的検出力を確保した設計ではなく、高品質なサブグループ推定に必要なサンプルサイズには達していない。高齢NSCLC患者を対象に検出力を確保した独立した無作為化試験、あるいはgeriatric assessment(包括的高齢者機能評価)を組み込んだ患者選択指標の開発が future research として残された課題である。なお、REVEL試験後の日本人を含む第II相試験(NCT01703091)でも同様の年齢別傾向が確認されており、PS・コモービディティ・global fitnessに基づく個別化選択アルゴリズムの構築が今後の研究課題として重要である。

方法

試験デザインと対象患者: REVEL試験(NCT01168973)は多施設無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験。対象は白金製剤ベース一次治療中または後に進行した、組織学的に確認されたステージIV NSCLC(扁平上皮癌・非扁平上皮癌を含む、年齢上限なし)の成人患者。本解析はその全登録n=1253例を対象とした事前規定サブグループ解析および事後解析である。プロトコルは各施設倫理審査委員会で承認され、ヘルシンキ宣言・GCP (Good Clinical Practice) 原則に従い実施。参加前に書面による同意を取得。

治療: ドセタキセル75 mg/m²(day 1)+ラムシルマブ10 mg/kg(day 1)またはプラセボを21日毎に静脈投与。病勢進行・許容不能毒性・撤回または死亡まで継続。ラムシルマブは最大2回の用量減少が許容され、ドセタキセルはラベル推奨に従い用量調整可。

解析集団: 主要サブグループは65歳未満(n=798; RAM n=391、PL (placebo) n=407)および65歳以上(n=455; RAM n=237、PL n=218)。追加として70歳未満(n=1001)・70歳以上(n=251)解析も実施。EMA要請クインタイル解析(事後解析)は全例を5群に分割: <53.29歳(n=251)・53.29-<59.71歳(n=251)・59.71-<64.32歳(n=250)・64.32-<70.03歳(n=251)・≥70.03歳(n=250)(Table 3)。

エンドポイントと統計: 主要エンドポイントはOS(overall survival)。副次エンドポイントはPFS(progression-free survival)・ORR(objective response rate)・DCR (disease control rate)(RECIST v1.1準拠)・QoL(LCSS: Lung Cancer Symptom Scale)・安全性(NCI-CTCAE v4.0準拠TEAE: treatment-emergent adverse event)。OSおよびPFSはカプラン・マイヤー (Kaplan-Meier) 法で推定しlog-rank検定で比較。ORR・DCRはCochran-Mantel-Haenszel検定で比較。Treatment-Age交互作用検定は両側α=0.10。予後因子調整には未層別多変量Cox比例ハザードモデルを使用し、白金製剤治療最良奏効・ECOG PS・組織型・前治療開始からの期間・性別・人種を共変量として投入。クインタイル解析はOS用に上記因子全て、PFS用にECOG PSと前治療開始からの期間を調整。LCSSは15 mm変化を臨床的に意義ある悪化の閾値とし、悪化到達時間をKaplan-Meier法とCox回帰で解析。