• 著者: Horn L, Spigel DR, Vokes EE, Holgado E, Ready N, Steins M, Poddubskaya E, Borghaei H, Felip E, Paz-Ares L, Pluzanski A, Reckamp KL, Burgio MA, Kohlhaeufl M, Waterhouse D, Barlesi F, Antonia S, Arrieta O, Fayette J, Crino L, Rizvi N, Reck M, Hellmann MD, Geese WJ, Li A, Blackwood-Chirchir A, Healey D, Brahmer J, Eberhardt WEE
  • Corresponding author: Leora Horn, MD (Vanderbilt-Ingram Cancer Center, Nashville, TN, USA)
  • 雑誌: Journal of Clinical Oncology
  • 発行年: 2017
  • Epub日: 2017-10-12
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 29023213

背景

肺がんは世界的に最も一般的ながんであり、がん関連死の主要な原因である。非小細胞肺がん (NSCLC) は肺がんの85%から90%を占める。歴史的に、一次プラチナ製剤ベースの化学療法後に病勢進行した、ドライバー遺伝子変異のないNSCLC患者に対する効果的な治療選択肢は不足していた。腫瘍による免疫系回避ががん病態形成において重要な役割を果たすことが認識され、NSCLCを含む様々な悪性腫瘍の治療において免疫チェックポイント阻害薬の開発が促進された (Pardoll et al. NatRevCancer 2012)。

Nivolumabは抗PD-1抗体であり、複数の腫瘍タイプにおいて強力な有効性と管理可能な安全性プロファイルを示すことが報告されている。既報の2つの無作為化非盲検第III相試験であるCheckMate 017(扁平上皮NSCLC、n=272)とCheckMate 057(非扁平上皮NSCLC、n=582)において、nivolumabはドセタキセルと比較して全生存期間(OS)を有意に延長し、良好な安全性プロファイルを示した(Brahmer et al. NEnglJMed 2015Borghaei et al. NEnglJMed 2015)。これらの結果に基づき、nivolumabは既治療進行NSCLCに対して米国、欧州連合、およびその他の国々で承認された。

しかし、NSCLC患者における免疫チェックポイント阻害薬の長期的な有効性および安全性データは、特に無作為化試験においては化学療法と比較して限られていた。先行研究では、高度に前治療された進行NSCLC患者129名を対象とした第I相単群nivolumab試験の5年追跡調査で、16%の5年OS率という持続的な生存が示されたが、これは単群試験の結果であり、無作為化比較試験における長期データが不足していた。この生存利益が2年以上持続するかどうか、また長期的な安全性シグナルが新たに生じるかは未解明であった。免疫療法特有の「テールプラトー」現象(長期生存者の出現)がNSCLCでも確認されるか、また奏効の持続性についてのデータが求められていた。本解析はCheckMate 017およびCheckMate 057の2年最小追跡での更新された有効性および安全性を報告するとともに、2試験を統合したpooled解析を行った。これにより、既治療進行NSCLCにおけるnivolumabの長期的な臨床的ベネフィットと安全性プロファイルをより詳細に評価することが可能となる。

目的

本研究の目的は、CheckMate 017(扁平上皮NSCLC)およびCheckMate 057(非扁平上皮NSCLC)の2つの第III相試験における、最低2年間の追跡期間での更新された有効性(全生存期間[OS]、無増悪生存期間[PFS]、奏効持続期間[DOR])および安全性データを報告することである。さらに、両試験を統合したpooled解析を実施し、全患者集団におけるOSのハザード比(HR)およびPD-L1発現レベル別のOSを評価する。これにより、既治療進行NSCLC患者におけるnivolumabの長期的な臨床的ベネフィットと忍容性プロファイルを明確にすることが目的である。特に、免疫療法に特徴的な長期生存の「テールプラトー」現象がNSCLC患者においてどの程度持続するか、また長期治療における新たな安全性シグナルが発生しないかを確認することも重要な目的であった。

結果

2年全生存期間(OS)の長期有効性: 扁平上皮NSCLC患者を対象としたCheckMate 017試験では、nivolumab群の2年OS率は23%(95% CI 16-30%)であったのに対し、ドセタキセル群では8%(95% CI 4-13%)であった。非扁平上皮NSCLC患者を対象としたCheckMate 057試験では、nivolumab群の2年OS率は29%(95% CI 24-34%)であり、ドセタキセル群の16%(95% CI 12-20%)と比較して優位性を示した。両試験におけるnivolumab対ドセタキセルでの死亡リスクの相対的減少は、主要解析で報告されたものと同様であり、OSの優越性が2年追跡でも一貫して維持されていることが示された。中央値OSは、扁平上皮NSCLCでnivolumab群9.2ヶ月 vs ドセタキセル群6.0ヶ月(HR 0.62, 95% CI 0.47-0.80, p<0.001)、非扁平上皮NSCLCでnivolumab群12.2ヶ月 vs ドセタキセル群9.5ヶ月(HR 0.75, 95% CI 0.63-0.91, p<0.001)であった(図2A, 2B)。

統合解析(Pooled Analysis)におけるOSとPD-L1発現別の効果: CheckMate 017とCheckMate 057の統合解析(n=854)では、nivolumab群のOS中央値は11.1ヶ月(95% CI 9.2-13.1ヶ月)であったのに対し、ドセタキセル群では8.1ヶ月(95% CI 7.2-9.2ヶ月)であった。nivolumabはドセタキセルと比較して死亡リスクを28%低減し、ハザード比は0.72(95% CI 0.62-0.84, p<0.001)であった(図5C)。PD-L1発現レベル別の解析では、PD-L1発現が50%以上の患者群で最も大きなOSベネフィットが認められ、HRは0.42(95% CI 0.28-0.63)であった。しかし、PD-L1発現が1%未満の患者群においても、HR 0.78(95% CI 0.61-0.99)とnivolumabのベネフィットが観察された。特に、非扁平上皮NSCLCにおいてPD-L1発現が50%以上の患者では、nivolumab群の2年OS率は48%(95% CI 36-59%)と顕著な長期生存が示された(図5B)。

奏効持続期間(DOR)とDurable Responders: Nivolumab群で確認された奏効者(CR/PR)のうち、2年追跡時点で奏効が持続していた患者の割合は、扁平上皮NSCLCで27例中10例(37%)、非扁平上皮NSCLCで56例中19例(34%)であった(図3A, 3C)。対照的に、ドセタキセル群では2年追跡時点で奏効が持続している患者は1例もいなかった(図3B, 3D)。Nivolumab群における奏効持続期間の中央値は、扁平上皮NSCLCで25.2ヶ月(95% CI 9.8-30.4ヶ月)、非扁平上皮NSCLCで17.2ヶ月(95% CI 8.4ヶ月-推定不能)であり、ドセタキセル群の扁平上皮NSCLCで8.4ヶ月(95% CI 3.6ヶ月-推定不能)、非扁平上皮NSCLCで5.6ヶ月(95% CI 4.4-6.9ヶ月)と比較して有意に長かった。さらに、nivolumab群の5例の奏効者は、治療中止後も3.8ヶ月から20.7ヶ月にわたり奏効を維持しており、免疫記憶による治療後奏効持続の可能性が示唆された。

無増悪生存期間(PFS)およびEGFR変異例の解析: 2年PFS率は、扁平上皮NSCLCのnivolumab群で16%(95% CI 10-23%)であったが、ドセタキセル群では算出不能であった。非扁平上皮NSCLCのnivolumab群では12%(95% CI 8-16%)であった(図2C, 2D)。EGFR変異陽性患者では、nivolumabとドセタキセルで同等のOS成績が示され、EGFR変異NSCLCにおける免疫療法の効果減弱が2年フォローアップでも確認された。これは、EGFR変異陽性患者の数が少ないため、解釈には注意が必要である。

安全性プロファイル(2年統合解析): 2年間の最小追跡期間後も、nivolumabはドセタキセルと比較して良好な安全性プロファイルを維持した。治療関連有害事象(AE)の発生率は、nivolumab群で68%(任意グレード)に対し、ドセタキセル群で88%であった。特に、グレード3または4の治療関連AEの発生率は、nivolumab群で10%であったのに対し、ドセタキセル群では55%と顕著な差が認められた。治療関連AEによる治療中止率は、nivolumab群で6%(任意グレード)に対し、ドセタキセル群で13%であった。統合解析(n=418)におけるnivolumab群の主な免疫関連select AEは、皮膚(16%)、消化器(9%)、内分泌(9%)、肝臓(6%)、肺(5%)であった(表1)。これらのselect AEの大部分は治療開始後3ヶ月以内に発現した。1年を超えて新規に発現したselect AEは11例で、すべてグレード1または2であった。主要解析以降、新たな治療関連死は報告されなかった。

考察/結論

CheckMate 017およびCheckMate 057の2年追跡統合解析(n=854)は、既治療進行NSCLCにおけるnivolumabとドセタキセルの生存優越性が長期的に持続することを確認した。扁平上皮NSCLCにおける2年OS率23%対8%、非扁平上皮NSCLCにおける29%対16%という成績は、化学療法では達成困難な長期生存の実現を示している。

新規性: 本研究で初めて、nivolumabによる治療を受けた奏効患者の約3分の1(扁平上皮NSCLCで37%、非扁平上皮NSCLCで34%)が2年以上の奏効持続を示し、ドセタキセル群では2年時点で奏効患者がゼロであったことは、免疫療法によるdurable responseの概念を強力に支持する新規の知見である。さらに、治療中止後も奏効を維持する患者が複数例存在したことは、免疫記憶による治療後効果持続の可能性を示唆しており、これまでの化学療法では見られなかった現象である。

先行研究との違い: 従来の化学療法とは対照的に、nivolumabはPD-L1発現レベルに関わらず(特に扁平上皮NSCLCにおいて)、生存ベネフィットが観察された。これは、PD-L1発現が1%未満の患者でもHR 0.78(95% CI 0.61-0.99)という統計的に有意なOSベネフィットが示されたことからも明らかである。この結果は、PD-L1発現が1%以上の患者にのみ承認されている他のPD-1阻害薬(例:Herbst et al. Lancet 2016のペムブロリズマブやRittmeyer et al. Lancet 2017のアテゾリズマブ)とは異なる、nivolumabの幅広い適用可能性を示唆している。

臨床応用: 安全性面でも、グレード3/4の治療関連AE発生率がnivolumab群で10%に対し、ドセタキセル群で55%という圧倒的な差が2年時点でも維持されたことは、nivolumabの良好な忍容性プロファイルを裏付けている。この長期的な安全性データは、既治療進行NSCLC患者に対するnivolumabの標準治療としての確立をさらに強固にする臨床的意義を持つ。本解析は、二次治療NSCLCにおける免疫チェックポイント阻害薬の標準治療確立の根拠となった。

残された課題: 今後の検討課題として、EGFR変異陽性NSCLC患者における免疫チェックポイント阻害薬の効果が限定的であるという本研究の知見について、より大規模なコホートでの詳細な解析が必要である。また、免疫関連有害事象の長期的な管理戦略や、治療中止後の奏効持続メカニズムのさらなる解明も今後の研究方向性として重要である。

方法

本研究は、国際多施設共同無作為化非盲検第III相試験であるCheckMate 017(NCT01642004)およびCheckMate 057(NCT01673867)の長期追跡解析である。

患者: CheckMate 017では扁平上皮NSCLC患者272名、CheckMate 057では非扁平上皮NSCLC患者582名が対象とされた。両試験の適格基準は以前に報告されているが、簡潔に述べると、患者はステージIIIB/IVのNSCLCであり、プラチナ製剤ベースの化学療法中または後に病勢進行を経験している必要があった。年齢は18歳以上、ECOGパフォーマンスステータスは0または1、RECIST v1.1(Eisenhauer et al. EurJCancer 2009)に基づく測定可能病変を有することが求められた。CheckMate 057では、既知のEGFR変異またはALK転座を有する患者において、追加のチロシンキナーゼ阻害薬治療が許可された。主要な除外基準には、自己免疫疾患、活動性間質性肺疾患、過去14日以内の全身性免疫抑制(例:プレドニゾン10mg/日)、T細胞共刺激または免疫チェックポイント標的薬剤、またはドセタキセルによる前治療が含まれた。

試験デザイン: 各試験において、患者はnivolumab群(3 mg/kgを2週間ごとに静脈内投与)またはドセタキセル群(75 mg/m²を3週間ごとに静脈内投与)に1:1で無作為に割り付けられた。無作為化は、CheckMate 017では以前のパクリタキセル使用(あり vs なし)と地域(米国またはカナダ vs 欧州 vs その他の地域)によって層別化され、CheckMate 057では以前の維持療法(あり vs なし)と治療ライン(二次 vs 三次)によって層別化された。患者は病勢進行、許容できない毒性、またはその他のプロトコルで規定された理由により治療中止となるまで治験薬の投与を継続した。Nivolumab群の患者は、治験責任医師が臨床的ベネフィットがあると判断し、治験薬が許容される場合、初回病勢進行後も治療を継続することが許可された。

評価項目: 腫瘍評価は、ベースライン時、9週時、その後6週ごとにRECIST v1.1に従って治験責任医師によって行われた。安全性は有害事象(AE)の報告と臨床検査値に基づいて評価され、治療期間中および最終投与後100日以内の2回のフォローアップ訪問でモニタリングされた。AEの重症度はNCI-CTCAE v4.0に従ってグレード分類された。免疫学的機序が疑われる特定のAE(select AE)は、事前に指定されたカテゴリー(内分泌、消化器、肝臓、肺、腎臓、皮膚、過敏症/注入反応)に分類された。PD-L1タンパク質の発現は、アーカイブまたは最近の前治療腫瘍生検検体を用いて、検証済みの自動免疫組織化学アッセイ(PD-L1 IHC 28-8 pharmDx; Dako)により中央検査室で評価された。PD-L1発現は、事前に指定されたレベル(≥1%、≥5%、≥10%)および事後解析レベル(≥50%)に従って分類された。

統計解析: 有効性は無作為化された全患者で評価され、安全性は治験薬を1回以上投与された全患者で評価された。本更新解析(2016年2月18日データベースロック)は、CheckMate 017で追加の13.6ヶ月、CheckMate 057で追加の11.0ヶ月の最小追跡期間(最終患者の無作為化からデータベースロックまでの期間と定義)に対応する24ヶ月追跡解析である。時間-イベントエンドポイントは、各試験の層別化因子で調整された両側ログランク検定を用いて治療群間で比較された。ハザード比(HR)および信頼区間(CI)は、層別化Cox比例ハザード回帰モデルを用いて推定された。生存曲線および生存率はカプラン・マイヤー法を用いて推定された。PD-L1発現がOSに及ぼす治療効果の事後解析は、統合された扁平上皮/非扁平上皮NSCLC集団において実施され、非層別化HRおよび95% CIが算出された。安全性は統合された扁平上皮/非扁平上皮NSCLC集団で解析された。