• 著者: Moeller M, Kershaw MH, Cameron R, Westwood JA, Trapani JA, Smyth MJ, Darcy PK
  • Corresponding author: Darcy PK (Peter MacCallum Cancer Centre, Melbourne, Victoria, Australia)
  • 雑誌: Cancer Research
  • 発行年: 2007
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 18056471

背景

キメラ抗原受容体 (CAR) を用いた遺伝子改変T細胞による養子免疫療法において、CD4+ヘルパーT細胞はCD8+エフェクターT細胞のプライミングと記憶応答維持に不可欠な役割を果たすことが知られている (Bennett et al. 1997, Moeller et al. Blood 2005)。CD4+T細胞は主にTh1 (IFNγ・TNF産生主体、細胞性免疫担当) とTh2 (IL-4・IL-5産生主体、液性免疫担当) に分化し、これらは腫瘍免疫において相反する役割を担うとも協調的に作用するとも報告されており、確立した見解がなかった (Nishimura et al. 1999, Mattes et al. 2003)。遺伝子改変したCD4+ Th1とTh2細胞のどちらが遺伝子改変CD8+ T細胞との併用養子療法で最も効果的な一次・二次抗腫瘍応答を誘導するかは不明であった。著者らは前研究 (Moeller et al. Blood 2005) で、遺伝子改変CD4+ Thi (T helper intermediate、非極性化) 細胞とCD8+細胞の1:1移入が一次肺転移の根絶と二次腫瘍チャレンジへの反応を誘導することを示していたが、Th1とTh2の分極化サブセットの比較については未検討であり、その役割に未解明な点が残されていた。特に、遺伝子改変T細胞療法におけるCD4+ Th1とTh2細胞の具体的な役割と、それらがどのようにCD8+ T細胞のヘルプを提供するかのメカニズムは完全に不足していた。

目的

レトロウイルス形質導入とin vitro極性化を組み合わせて作製した抗erbB2-CD28ζキメラ受容体発現マウスCD4+ Th1、Th2、Thi (非極性化中間型) 細胞の各サブセットが、遺伝子改変CD8+ T細胞との1:1養子移入で (1) 一次erbB2陽性肺転移を同等に排除できるか、 (2) 生存後の二次腫瘍チャレンジに対して各サブセットで異なる持続的リコール応答を誘導するか、またそのメカニズムを解明する。

結果

遺伝子改変CD4+ Th1、Th2、Thi細胞による一次肺転移の同等な排除: レトロウイルス形質導入後のin vitro極性化により、CD4+ Th1細胞はIFNγを (IFNγ産生量: Th1約5,000 pg/mL対Th2・Thi<100 pg/mL)、Th2細胞はIL-4を (IL-4産生量: Th2約800 pg/mL対Th1<50 pg/mL) 優位に分泌し、適切な極性化が確認された (Figure 3A, B)。Thi細胞はIFNγとIL-4の両方を産生した。全3サブセットでIL-2 (約1,500-2,000 pg/mL) およびGM-CSF産生が確認され、3Hチミジン取り込みによる増殖アッセイでは抗原特異的 (erbB2陽性標的細胞添加) かつ同等の増殖能が認められた。クロムリリースアッセイでは全サブセットが1:1 (E:T) で20-30%の特異的細胞傷害性を示した (無関連標的への細胞傷害なし)。5日目に確立したMDA-MB-435-erbB2 (erbB2高発現ヒト乳癌) 肺転移モデルに対して、遺伝子改変CD4+ Th1、Th2、Thi細胞 (n=5×10^6個) と遺伝子改変CD8+ T細胞 (n=5×10^6個) の1:1静注移入は、全3群で担癌BALB/c scidマウスの100%生存を達成した (観察期間>100日) (Figure 4A)。コントロール群 (CD4+サブセット単独投与・CD8+単独投与・モック形質導入T細胞投与・無処置) はいずれも全例死亡した (中央値生存期間約20-30日)。CD4+各サブセット単独では一次肺転移に対して全く抗腫瘍効果を示さず、CD8+ T細胞との協調が抗腫瘍応答に不可欠であった。組織学的解析 (免疫組織化学) では、全CD4+サブセットとCD8+ T細胞が腫瘍部位 (肺切片) に共局在し、形質導入キメラ受容体の発現も抗tag (c-myc) 染色で陽性であった (Figure 5A)。腫瘍部位への好中球・マクロファージ浸潤差は各群間で認めなかった。

抗腫瘍応答におけるIL-2の重要性およびIL-4・パーフォリンの非重要性: 腫瘍内T細胞持続に対するIL-2の役割を検討するため、抗IL-2中和抗体S4B6を腫瘍移植後D4-D30まで隔日in vivo投与したところ、遺伝子改変CD4+とCD8+ T細胞移入マウスの生存が有意に低下した (p<0.05、対照抗体群との比較) (Figure 4B)。免疫組織化学による腫瘍浸潤細胞解析では、IL-2中和群で腫瘍部位のCD8+ (p<0.05) およびCD4+ T細胞数 (p<0.05) が対照群と比較して有意に減少し、IL-2がT細胞の腫瘍浸潤・局所維持に必須であることが確認された (Figure 5C)。IL-4の必要性を検討するため、IL-4ノックアウトマウス (BALB/c IL-4^-/-) 由来のCD4+ Th1様細胞 (IL-4産生なし) と野生型CD8+ T細胞を1:1で移入したところ、野生型CD4+移入群と比較して生存率に有意差を認めず (p=NS)、IL-4シグナルは一次腫瘍排除に必須でないことが示された (Figure 4C)。パーフォリン依存性を検討するため、パーフォリン欠損マウス (pfp^-/-) 由来細胞を用いた4群比較実験 (CD4+pfp^-/-/CD8+pfp+/+、CD4+pfp+/+/CD8+pfp^-/-、CD4+pfp^-/-/CD8+pfp^-/-、CD4+pfp+/+/CD8+pfp+/+ [対照]) を実施した。CD4+pfp^-/-とCD8+pfp+/+の組み合わせでは対照群と生存率に有意差がなかった一方、CD8+pfp^-/-を含む群では対照群と比較して生存が有意に低下し (p<0.05)、CD8+ T細胞によるパーフォリン依存性細胞傷害が腫瘍排除に不可欠である一方、CD4+パーフォリンは非必須であることが示された (Figure 4D)。

Th1サブセット特異的な優れた二次チャレンジリコール応答とT細胞動態: 一次CAR-T細胞治療後100日以上の長期生存マウス (Th1+CD8+群、Th2+CD8+群、Thi+CD8+群の各サバイバー) に対して、4T1.2-erbB2 (BALB/c由来erbB2陽性マウス乳癌、免疫コンピテント宿主でも増殖可能) を右脇腹に皮下再投与した。Th1+CD8+群では4T1.2-erbB2腫瘍の成長が統計的に有意に遅延し (p<0.05)、対照マウス (非免疫化BALB/c scidマウス) と比較して有意な生存延長が認められた (Figure 6A, B)。一方、Th2+CD8+群では二次チャレンジへのリコール応答が全く認められず、腫瘍成長曲線および生存曲線は非免疫化対照マウスと差がなかった (p=NS)。Thi+CD8+群はTh1群とTh2群の中間的な応答を示した。二次チャレンジの特異性を確認するため、各サバイバーに4T1.2親株 (erbB2陰性) を再投与したところ、Th1+CD8+群を含む全群で腫瘍制御が認められず、二次免疫反応が抗原 (erbB2) 特異的であることが確認された。フローサイトメトリーによる末梢血T細胞解析では、再チャレンジ後D7において、Th1+CD4+細胞数 (p<0.05) およびCD8+ T細胞数 (p<0.05) の有意な増殖・拡大が他群と比較して確認された。共焦点顕微鏡解析および免疫組織化学による腫瘍浸潤T細胞の定量でも、再チャレンジ腫瘍部位 (皮下腫瘍切片) へのTh1 CD4+細胞とCD8+ T細胞の浸潤数はTh2+CD8+群およびThi+CD8+群と比較して有意に多く (複数時点で確認、p<0.05)、Th1細胞が二次腫瘍部位へのT細胞動員・増殖を優先的に促進する能力を持つことが示された (Figure 6C)。この持続的リコール応答の差異は一次治療効果 (全群100%生存) では検出できなかったため、長期免疫記憶の評価を設計に組み込むことの重要性を示した。

考察/結論

先行研究との違い: 本研究は遺伝子改変T細胞療法においてCD4+ Th1とTh2サブセットが一次腫瘍排除では同等の効果を発揮する一方、二次腫瘍チャレンジへの記憶応答においてはTh1が明確に優れることを初めて示した。これまで、CD4+ Th1とTh2細胞の腫瘍免疫における役割は相反するとも協調するとも報告されており、遺伝子改変T細胞療法における両サブセットの比較検討は不足していたが、本研究は一次腫瘍排除と二次腫瘍チャレンジ応答の双方を比較した点で、これまでの報告と異なる。

新規性: 本研究で初めて、遺伝子改変CD4+ Th1細胞が、遺伝子改変CD8+ T細胞との併用において、一次腫瘍排除と同等の効果を示しつつ、二次腫瘍チャレンジに対する持続的な抗原特異的リコール応答をより効果的に誘導することを新規に示した。Th1細胞が優れたリコール応答を誘導するメカニズムは完全に解明されていないが、局所産生されるIFNγを含むI型サイトカインがCD8+ T細胞の持続的抗腫瘍機能を支持し、Th2細胞のII型サイトカインより効果的である可能性が考えられる。IL-2が腫瘍微小環境でのT細胞持続に不可欠であることは、将来の臨床試験における製品設計でも考慮すべき知見であり、CD4+T細胞からの局所IL-2供給がシステイン外来的なIL-2投与では代替できないという著者らの前研究 (Moeller et al. Blood 2005) と一致する。

臨床応用: 本知見は、CAR-T細胞製品にCD4+ Th1細胞を選択・富化することで持続的かつ長期的な抗腫瘍応答を誘導できるという前臨床的根拠を提供し、現代のCAR-T細胞療法における製品組成の最適化に関わる重要な臨床的意義を示す。ヒトTh1優位な抗腫瘍CD4+ T細胞はIFNγ・IL-2・IL-12を用いて作製可能であることが報告されており (Sasaki et al. 2006)、臨床応用の実現可能性は高い。

残された課題: scidマウスモデルの限界として免疫コンピテント環境での知見との乖離や、ヒトへの直接外挿の困難さがある。今後の検討課題として、免疫コンピテントマウスモデルやヒト臨床試験での検証が残されている。

方法

BALB/c scidマウスを用いた前臨床養子免疫療法試験を実施した。マウス脾臓からCD4+とCD8+サブセットを磁気ビーズで分離後、産生細胞との共培養によりscFvα-erbB2-CD28-ζキメラ受容体をレトロウイルス形質導入した。CD4+T細胞の極性化は形質導入の最終24時間に、Th1誘導には抗IL-4 mAbとrIL-12を、Th2誘導には抗IFNγ mAbとrIL-4を添加した (ThiはサイトカインなしでIL-2のみ)。in vitroではELISAによるサイトカイン産生 (IFNγ、IL-4、IL-2、GM-CSF)、クロムリリースアッセイによる細胞傷害性、3Hチミジン取り込みによる増殖能を評価した。in vivoでは5日目に肺転移が成立したマウスに各CD4+サブセット (n=5×10^6個) とCD8+ T細胞 (n=5×10^6個) を1:1で静注し、生存を評価した。IL-2中和 (抗IL-2抗体S4B6投与)、IL-4欠損マウス由来CD4+ T細胞、パーフォリン欠損マウス由来T細胞を用いた分子メカニズム解析も実施した。長期生存マウス (>100日) には4T1.2-erbB2 (マウス乳癌) または4T1.2 (親株) の皮下投与で二次チャレンジを行い、腫瘍成長・生存・末梢血T細胞数 (フローサイトメトリー) ・腫瘍浸潤T細胞数 (免疫組織化学・共焦点顕微鏡) を評価した。統計解析にはMann-Whitney検定を用いた。