• 著者: G Frasci, G Nicolella, P Comella, I Carreca, G DeCataldis, D Muci, C Brunetti, M Natale, F Piantedosi, A Russo, S Palmeri, G Comella, N Panza
  • Corresponding author: G Frasci (National Tumor Institute of Naples / Southern Italy Cooperative Oncology Group, Italy)
  • 雑誌: British Journal of Cancer
  • 発行年: 2001
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 11336465

背景

進展型小細胞肺癌 (ED-SCLC) は、診断時に既に遠隔転移を伴うことが多く、その予後は極めて不良である。標準的な化学療法が導入されても、中央値生存期間は1年未満に留まり、5年生存率は非常に低いのが現状である (Johnson et al. 1990)。この厳しい状況を改善するため、新たな治療戦略の開発が喫緊の課題とされてきた。1990年代以降、トポイソメラーゼI阻害剤であるトポテカンと、タキサン系薬剤であるパクリタキセルが、SCLCに対して単剤で有意な抗腫瘍活性を示すことが複数の第II相試験で報告された (Schiller et al. 1996; Ardizzoni et al. 1997; Ettinger et al. 1995)。具体的には、パクリタキセルは未治療ED-SCLC患者において単剤で34-41%の全奏効率 (ORR) を示し (Kirshling et al. 1994; Ettinger et al. 1995)、トポテカンは5日間連続投与の3週ごとスケジュールで、未治療および既治療SCLC患者の双方で奏効を達成した (Schiller et al. 1996; Ardizzoni et al. 1997)。

これらの新規薬剤をシスプラチンと組み合わせる試みも行われたが、従来の3週ごと投与スケジュールでは重篤な骨髄毒性が問題となることが指摘された (O’Reilly et al. 1997; Rowinsky et al. 1997)。特に、トポテカンとパクリタキセルの併用療法では、高いORRと良好な中央値生存期間が報告されたものの、血液毒性が顕著であり、長期的なG-CSF (granulocyte-colony stimulating factor) 支持療法が必要とされた (Jett et al. 1997)。この毒性プロファイルを改善しつつ、用量密度 (dose density) を向上させる新たなアプローチとして、週1回投与レジメンが注目を集めた (Fennelly et al. 1997; Akerley et al. 1998)。週1回投与は、薬剤曝露の頻度を高めることで抗腫瘍効果を維持しつつ、各投与量を減らすことでピーク毒性を軽減する可能性を秘めている。

南イタリア共同腫瘍研究グループ (SICOG) は、本研究に先立ち第I相試験 (Frasci et al. 1999) を実施し、シスプラチン40 mg/m²、パクリタキセル85 mg/m²、トポテカン2.25 mg/m²の週1回投与と、G-CSF (投与後3-5日目) 支持療法を組み合わせたCPT (cisplatin-paclitaxel-topotecan) レジメンの推奨用量と許容可能な毒性プロファイルを確認した。この第I相試験では、未治療および既治療SCLC患者の両方で有望な治療活性が観察された。しかし、この有望な結果が、より大規模な患者集団において、ED-SCLCの一次治療としての有効性と安全性をどの程度示すのかは未解明であった。特に、予後不良因子を多く持つED-SCLC患者集団における本レジメンの臨床的有用性については、さらなる評価が不足していた。本第II相試験は、この知識ギャップを埋めることを目的として、CPT週1回投与とG-CSF支持療法の有効性および安全性を、未治療ED-SCLC患者を対象に正式に評価するものである。

目的

本第II相試験の主要目的は、未治療の進展型小細胞肺癌 (ED-SCLC) 患者に対し、シスプラチン、パクリタキセル、トポテカン (CPT) の週1回投与とG-CSF支持療法を組み合わせたレジメンの抗腫瘍活性、特に完全奏効率 (CR率) を評価することである。副次目的として、全奏効率 (ORR)、無増悪生存期間 (PFS)、全生存期間 (OS)、および毒性プロファイルを評価する。

本試験はSimonの二段階ミニマックスデザイン (Simon 1989) に基づいて設計された。主要エンドポイントはCR率であり、目標CR率を30%に設定し、最低限の関心を示すCR率を10%とした。具体的には、第1段階で22例の患者を登録し、3例以上のCRが観察された場合にのみ、追加の患者登録に進むこととした。最終的に33例の患者を登録し、7例以上のCRが観察された場合に、本CPT週1回レジメンが「さらなる評価に値する」と判断する基準を設定した。この厳格な基準は、客観的奏効率のみならず、生存期間の延長に繋がりうるCR率を重視するSCLC治療の特性を反映している。本研究は、この新規レジメンがED-SCLC患者の予後改善に貢献しうるか否かを判断するための重要なステップとなる。

結果

患者背景と治療実施状況: 1997年8月から1999年7月にかけて、合計37例の未治療ED-SCLC患者が本試験に登録された (Table 1)。患者の内訳は男性29例、女性8例であった。年齢中央値は51歳 (範囲38-76歳) であった。Zubrodパフォーマンスステータス (PS) 2の患者が14例 (38%) を占めており、これは比較的予後不良な患者集団であることを示唆する。無症候性脳転移は10例 (27%) に認められ、LDH (乳酸脱水素酵素) 血清レベルの上昇は23例 (62%) で確認された。また、転移部位が3か所以上であった患者は22例 (59%) であり、これらの因子も予後不良と関連することが知られている。主要な転移部位としては、肝臓26例 (70%)、骨24例 (65%)、対側肺21例 (57%) が高頻度であった。合計348サイクルが投与され、患者1人あたりの投与サイクル数中央値は12週相当であった。33例の患者が少なくとも6回の投与を完了し、奏効評価の対象となった。残りの4例は、疾患進行 (2例)、遷延性血小板減少 (1例)、または治療拒否 (1例) により6回未満で治療を中断し、これら全例は治療失敗として集計された。

奏効率: ITT (intent-to-treat) 解析に基づき、登録された37例全ての患者で奏効評価が実施された (Table 2)。結果として、完全奏効 (CR) が8例 (22%)、部分奏効 (PR) が22例 (59%) に認められた。安定 (SD) は2例 (5.5%)、疾患進行または治療失敗は5例 (13.5%) であった。これにより、全奏効率 (ORR) は81% (95% CI 65-92%) と算出された。本試験デザインで設定された最低基準である「33例中7例以上のCR」は達成されたものの、目標CR率30%には届かなかった (22%)。8例のCRは全て最初の33例の登録患者から得られた。そのうち6例は6サイクル後にCRが確認され、残りの2例は6サイクル時点で肺と肝臓に微小な残存病変があったものの、12サイクル目までに消失した。CRを達成した患者の主要病変部位は、肝臓が5例、骨が2例、副腎が1例であった。脳転移を有する10例の患者では、7例 (70%) が6サイクル後に主要な退縮 (major response) を示したが、脳病変の完全奏効は得られなかった。PS 2の14例の患者では、主要な奏効が6例 (43%) に認められたが、そのうちCRは1例のみであり、PS良好な患者群と比較して奏効率が劣る傾向が示された。

生存成績: 追跡期間中央値13ヶ月 (範囲4-26ヶ月) の時点で、5例の患者が無増悪生存中であり、11例の患者が生存中であった。全患者における無増悪生存期間 (PFS) 中央値は8ヶ月 (95% CI 6-9ヶ月) であり、全生存期間 (OS) 中央値は12.5ヶ月 (95% CI 8-14ヶ月) であった (Figure 1, Figure 2)。1年生存率は55%、2年生存率は21%と推定された。奏効の深さ別に生存率を分析すると、1年生存率はCR例で68%、PR例で61%、非奏効例で29%と、奏効の程度が生存期間に大きく影響することが示された。PS 2の14例の患者では、OS中央値が8ヶ月であり、PS 0-1の患者群のOS中央値14ヶ月と比較して大幅に短かった。LDH上昇を認めた23例の患者ではOS中央値が7.5ヶ月であり、LDH正常例の14ヶ月と比較して予後不良であった。脳転移を有する10例の患者ではOS中央値が10ヶ月であり、脳転移のない患者群の13ヶ月と比較してやや短い傾向が認められた。追跡期間18ヶ月以上で生存中であった8例の内訳は、CR 4例、PR 3例、非奏効1例であった。

毒性プロファイル: 本試験では、治療に関連する毒性死亡は1例も発生しなかった (Table 3)。全348サイクルを通じての最悪毒性プロファイルは以下の通りであった。Grade 3の好中球減少が10例 (27%)、Grade 4の好中球減少が6例 (16%) に認められた。しかし、発熱性好中球減少は1例のみであり、これは大量の肝転移および骨転移を有するPS不良の患者で9サイクル後に発生した。血小板減少は比較的軽度であり、Grade 3が7例 (19%) に認められたが、Grade 4は発生しなかった。ただし、慢性肝炎を合併していた1例の患者では、2サイクル後に遷延性のGrade 3血小板減少が発生し、治療中止に至った。貧血は全患者でヘモグロビン値が11 g/dL未満に低下し、7例 (19%) で赤血球輸血が必要とされた。非血液毒性では、脱毛は33例 (89%) と高頻度に発生したが、重篤な過敏症反応は1例も観察されなかった。消化器毒性は大部分の患者で軽度から中等度であり、治療中止に至ることは稀であった。Grade 3の嘔吐が4例 (11%)、Grade 3の下痢が6例 (16%) に認められた。重度の下痢を呈した患者では、3剤全ての用量を25%減量することで、その後の再発が予防された。重度の倦怠感は10例 (27%) に発生し、そのうち2例 (いずれも6サイクル後に奏効を認めた患者) では治療中止の原因となった。末梢神経障害は、軽度のものが12例 (32%)、Grade 2が4例 (11%) に認められた。Grade 3の末梢神経障害は2例に発生し、1例は8サイクル後に治療中止に至り、もう1例は治療完了後に悪化が認められ、いずれも数ヶ月間持続した。筋肉痛および関節痛は19例 (51%) に発生したが、重篤ではなく、抗炎症薬によく反応した。腎毒性はほとんど認められず、軽度の一過性血清クレアチニン上昇が4サイクルで記録されたのみであった。粘膜炎は稀ではなかったが、重篤な例は認められなかった。鼻出血が13例に1回以上発生した。G-CSF支持療法により、用量スキップや治療遅延は少なく、週1回スケジュールの実施可能性 (feasibility) が良好であることが本試験で示された。

考察/結論

本第II相試験は、未治療の進展型小細胞肺癌 (ED-SCLC) 患者に対するシスプラチン、パクリタキセル、トポテカン (CPT) の週1回投与とG-CSF支持療法が、81%という高い全奏効率 (ORR) と、中央値12.5ヶ月の全生存期間 (OS) を示すことを明らかにした。本試験の患者集団は、Zubrodパフォーマンスステータス (PS) 2の患者が38%を占め、脳転移27%、LDH (乳酸脱水素酵素) 上昇62%と、複数の予後不良因子を有する高リスク群であったにもかかわらず、1年生存率55%、2年生存率21%を達成したことは注目に値する。G-CSF支持下での週1回3剤投与レジメンは、毒性死亡を伴わず安全に実施可能であり、Grade 4の好中球減少は16% (6例) にとどまり、発熱性好中球減少も1例のみであったことから、良好な安全性プロファイルが確認された。

先行研究との違い: 過去のED-SCLCに対する標準的なエトポシド+プラチナ製剤 (EP) 療法では、中央値OSが9-10ヶ月、1年生存率が35-40%程度と報告されており (Johnson et al. 1990)、本試験で得られた中央値OS 12.5ヶ月、1年生存率55%は、これらの先行研究と比較して良好な成績である。これは、週1回投与による用量密度 (dose density) の向上と、シスプラチンに加えてパクリタキセルとトポテカンという新規薬剤を組み合わせたことが、相乗効果をもたらした可能性を示唆する。特に、本研究で採用された週1回スケジュールにおけるトポテカンの累積3週投与量 (6.75 mg/m²) は、他の試験で用いられた3週ごとスケジュールでの累積量 (2.5-3.75 mg/m²) よりも大幅に高く、用量密度向上によるSCLCへの活性増強が示唆される点で、これまでの報告と異なる。

新規性: 本研究は、シスプラチン、パクリタキセル、トポテカンという3種類の抗がん剤を週1回投与するレジメンを、G-CSF支持下で未治療ED-SCLC患者に適用し、その有効性と安全性を包括的に評価した点で新規性がある。特に、予後不良因子を多く含む患者群においても、比較的良好な生存成績と管理可能な毒性プロファイルを示したことは、これまで報告されていない知見である。脳転移を有する患者においても、70%が主要な退縮を示したことは、脳血液関門を透過しやすいトポテカンの貢献を示唆する。

臨床応用: 本レジメンは、適切な毒性管理が実施されれば、標準EP療法に匹敵するかそれ以上の活性を持つ代替選択肢となりうる。特に、PS不良、脳転移、高LDHといった高リスク集団においても、1年生存率55%を達成可能であることは、臨床現場における治療選択肢を広げる上で重要な臨床的意義を持つ。しかし、週1回の通院が必要となるため、患者の負担や医療資源の観点からも考慮が必要である。

残された課題: 本研究は単アームの第II相試験であるため、無作為化比較試験による標準EP療法との直接比較が行われていない点がlimitationとして挙げられる。したがって、患者背景の違いによる結果の解釈には注意が必要である。主要エンドポイントであるCR率22%が目標の30%に達しなかった理由として、脳転移例でCRが得られなかったことや、PS 2の患者群でCR率が7%と低かったことなど、予後不良因子の影響が考えられる。脳転移患者におけるCR達成には、全脳照射 (WBRT) との組み合わせが今後の検討課題となる。また、現在のSCLC一次治療の標準は、免疫チェックポイント阻害剤 (アテゾリズマブまたはデュルバルマブ) とEP療法の併用であり、本試験のCPT週1回+G-CSF療法が現代の標準療法に占める位置づけは明確ではない。今後の研究では、本レジメンと免疫チェックポイント阻害剤との組み合わせの可能性や、用量密度のさらなる最適化に関する検討が残された課題である。

方法

本研究は、南イタリア共同腫瘍研究グループ (SICOG) が1997年8月から1999年7月にかけて実施した多施設共同単アーム第II相試験である。本試験は、Simonの二段階ミニマックスデザイン (Simon 1989) を採用し、α=0.05、1-β=90%で設計された。主要エンドポイントはCR率であり、目標CR率30%、最低基準10%が設定された。第1段階で22例を登録し、3例以上のCRが観察された場合に第2段階に進んだ。最終的に33例中7例以上のCRが観察された場合に、本レジメンは「さらなる評価に値する」と判断された。

対象患者: 組織学的または細胞学的に確認された小細胞肺癌 (SCLC) の進展型 (extensive disease) 患者が対象とされた。過去に化学療法または放射線療法を受けていない未治療患者であること、年齢が18歳から75歳であること、Zubrodパフォーマンスステータス (PS) が0から2であること、および予想生存期間が少なくとも12週間であることが主要な適格基準であった。骨髄機能 (好中球数 >2.0 × 10⁹/L、血小板数 >100 × 10⁹/L、ヘモグロビン >10 g/dL)、肝機能 (ビリルビン <正常上限の2倍、AST/ALT <正常上限の3倍)、腎機能 (クレアチニンクリアランス >60 mL/min) が規定値を満たす必要があった。重度の心不整脈や心不全、過去4ヶ月以内の急性心筋梗塞は除外基準とされた。脳転移を有する患者も、ステロイドにより症状が良好にコントロールされている場合は除外されなかった。全患者から書面によるインフォームドコンセントを取得し、プロトコルはナポリ国立腫瘍研究所の倫理委員会によって承認された。

治療レジメン: 患者には、パクリタキセル85 mg/m² (1時間点滴)、続いてシスプラチン40 mg/m² (30分点滴)、さらにトポテカン2.25 mg/m² (30分点滴) が週1回投与された。パクリタキセル投与前には、過敏症反応予防のためデキサメタゾン8 mg、プロメタジン50 mg、ラニチジン50 mgが静脈内投与された。G-CSFは5 µg/kgが毎週の化学療法投与後3日目から5日目まで皮下注射された。治療は最低6週間の投与が義務付けられ、臨床的に完全奏効 (CR) または部分奏効 (PR) が得られた患者には、さらに6週間 (合計12週間) の投与が継続された。治療無効または疾患進行が認められた患者は、シクロホスファミド、ドキソルビシン、エトポシド (CAE) レジメンに切り替えられた。脳転移患者で6サイクル後に脳病変の増悪が認められた場合、または主要な奏効が得られなかった場合は全脳放射線療法 (WBRT) が実施された。主要な奏効が得られた場合は、WBRTは12サイクル完了後まで延期された。

用量調整: 毎週の化学療法投与は、好中球数 ≥1,500/mm² かつ血小板数 ≥100,000/mm² の場合にフル用量で実施された。好中球数 >1,000/mm² または血小板数 >75,000/mm² の場合は、計画用量の50%に減量して投与された。好中球数 <1,000/mm² または血小板数 <75,000/mm² の場合は、その週の投与はスキップされた。Grade 4の好中球減少が7日以上持続した場合、発熱性好中球減少 (体温 >38.5℃ かつ好中球数 <500/mm²)、Grade 4の血小板減少が4日以上持続した場合、またはGrade 3-4の非血液毒性 (悪心/嘔吐および脱毛を除く) が発生した場合は、以降の投与は75%に減量された。

毒性および奏効評価: 毒性および奏効はWHO基準 (Miller et al. 1981) に従って評価された。血液毒性は毎週の血球算定で評価され、Grade 4の血液毒性が発生した場合は隔日で検査が実施された。各患者について、治療期間中に発生した最悪の毒性が報告された。臨床的な再評価は6週および12週の投与後に実施され、身体診察、ルーチン検査、血清腫瘍マーカー、および初期に異常が認められた全ての診断手順の再実施が含まれた。骨転移に対する奏効評価は、WHOの標準基準が適用された。

統計解析: 全登録患者は「intent to treat」原則に基づき、奏効および生存解析の対象とされた。CR期間は初回CR確認日から疾患進行日まで、PR期間および治療失敗までの期間は初回治療開始日から疾患進行が最初に確認された日までと定義された。全生存期間 (OS) は治療開始日からあらゆる原因による死亡日までとされた。イベント発生までの期間データについては、Kaplan-Meier法 (Kaplan and Meier 1958) を用いて累積イベント非発生割合が時間の関数としてプロットされた。