- 著者: Nathalie Baize, Isabelle Monnet, Laurent Greillier, Margaux Geier, Hervé Lena, Henri Janicot, Alain Vergnenegre, Jeannick Crequit, Roland Lamy, Jean-Bernard Auliac, Juliette Letreut, Hervé Le Caer, Radj Gervais, Eric Dansin, Anne Madroszyk, Pierre-Antoine Renault, Gwenael Le Garff, Laurent Falchero, Hugues Berard, Roland Schott, Pierre Saulnier, Christos Chouaid
- Corresponding author: Christos Chouaid (Service de Pneumologie, CHI Créteil, Créteil, France)
- 雑誌: Lancet Oncology
- 発行年: 2020
- Epub日: 2020-09-01
- Article種別: Original Article (多施設無作為化非盲検第3相試験)
- PMID: 32888454
背景
小細胞肺癌 (SCLC) は全肺癌の約13%を占め、米国の2008〜2014年診断例における5年相対生存率は6.2%という極めて予後不良の疾患である。一次治療としてプラチナ+エトポシドが標準であり高い初期奏効率を示すものの、大半の患者が再発する。再発後の応答性分類として、感受性再発 (一次治療完了から90日以上経過後の再発)・耐性再発 (90日以内)・難治性 (無効または増悪) が定義されており、再発までの期間は二次治療への応答を予測する重要な因子である。
感受性再発SCLC患者に対してはトポテカン (topoisomerase I阻害薬) が欧州唯一の承認二次治療薬であった。O’Brien et al. (2006) は経口トポテカン対最善支持療法 (best supportive care) のランダム化第3相試験で、トポテカン群のOS中央値25.9週対BSC (best supportive care) 13.9週と有意な生存延長を示した。一方、von Pawel et al. (1999) は静注トポテカン対 CAV (cyclophosphamide, adriamycin, vincristine) の第3相試験において両群でOS中央値が約25週と同等であることを示し、トポテカンの症状コントロール優位性を報告した。Owonikoko et al. (2012) は21試験のメタ解析で感受性再発例の方が耐性・難治性例よりも二次治療奏効率が高いこと (27.7% vs 14.8%、P=0.001) を示している。
臨床現場ではプラチナ感受性再発例に対してプラチナ+エトポシド再投与 (rechallenge) が広く実施されていたが、これを支持するエビデンスは1980〜1990年代の小規模研究のみであり、その有効性は未確立であった。Goto et al. (2016) はシスプラチン+エトポシド+イリノテカンの3剤療法対トポテカンの第3相試験 JCOG0605 (Japanese Clinical Oncology Group 0605) でOS改善を示したが、Grade 3-4好中球減少83%という重篤な骨髄毒性が問題となった。プラチナ+エトポシド再投与とトポテカンを直接比較したエビデンスは著しく不足しており (insufficient evidence)、本試験 GFPC 01-13 (Groupe Francophone de Pneumo-Cancerologie 01-13) はこのギャップを埋めることを目的に設計された。
目的
感受性再発SCLC患者の二次治療として、カルボプラチン+エトポシド再投与の経口トポテカンに対するPFS (progression-free survival) 優越性を無作為化第3相試験で検証する。
結果
主要エンドポイント・PFS: (Fig. 1、Fig. 2A) 試験フロー (Fig. 1) では174例中164例が無作為化され、同意撤回各1例を除く最終 ITT (intention-to-treat) 集団 n=162 patients (各群81例) が解析された。CE (carboplatin etoposide) 群のPFS eventは79/81例 (98%)、トポテカン群は81/81例 (100%) で観察された。追跡期間中央値22.7ヶ月時点 (IQR 20.0-37.3) で、mPFSはCE群 4.7ヶ月 (90% CI 3.9-5.5) vs トポテカン群 2.7ヶ月 (90% CI 2.3-3.2) で、層別HR 0.57 (90% CI 0.41-0.73、P=0.0041) とCE群が統計学的に有意に優れていた (Fig. 2A)。6ヶ月時点の無増悪割合はCE群31% (95% CI 25-35) vs トポテカン群10% (95% CI 7-11) と顕著な差を示した。CE群の化学療法サイクル数中央値は5サイクル (IQR 1-4)、トポテカン群は3サイクル (IQR 1-3) であった。
サブグループ・多変量解析: (Fig. 3、Fig. 4) 事前規定サブグループでのPFS解析 (Fig. 3) では全てのサブグループでCE群の一貫した優越性が確認された。一次治療完了から180日以上経過した高感受性群ではHR 0.23 (95% CI 0.18-0.62) と特に顕著なPFS改善が得られ n=49 patients が該当した。一方、90-180日の群では HR 0.70 (95% CI 0.57-1.05)。PS (performance status) 0でHR 0.48 (95% CI 0.27-0.86)、PS 1-2でHR 0.60 (95% CI 0.41-0.89)、限局型でHR 0.40 (95% CI 0.22-0.71)、進展型でHR 0.67 (95% CI 0.41-0.99)、一次治療 CR (完全奏効) 例でHR 0.36 (95% CI 0.16-0.82)、PR (部分奏効) 例でHR 0.61 (95% CI 0.43-0.87)。胸部放射線照射歴ありでHR 0.42 (95% CI 0.26-0.66)、脳転移ありでHR 0.32 (95% CI 0.24-0.78)。多変量Cox回帰解析 (Fig. 4) ではCE群割り付け (HR 0.57) と予防的脳照射歴がPFSの独立した予測因子であり、性別・PS・年齢・一次治療完了から再発までの期間・一次治療応答・診断時病期はいずれも独立因子ではなかった。
副次エンドポイント・ORRおよびOS: 中央判定 ORR (objective response rate) はCE群 49% (95% CI 41-55) vs トポテカン群 25% (95% CI 16-35)、P=0.0024でCE群が統計学的に有意に高かった。奏効持続期間中央値はCE群5.4ヶ月 (95% CI 2.2-9.3) vs トポテカン群4.1ヶ月 (95% CI 1.8-10.2)。観察終了時にCE群77例 (95%)、トポテカン群79例 (98%) が死亡 (n=156 patients でデータ利用可能)。mOSはCE群 7.5ヶ月 (95% CI 5.4-9.5) vs トポテカン群 7.4ヶ月 (95% CI 6.0-8.7) で差なし (HR 1.03、95% CI 0.87-1.19、P=0.94; Fig. 2B)。トポテカン群の68% (55/81例) が三次以降の後治療としてCE等の化学療法を受けたクロスオーバーがOS差消失の主因と考えられた。
安全性: (Table 1、Table 2) 患者背景は両群で均衡しており (Table 1)、年齢中央値64歳 (range 37-84)。Grade 3-4の主要有害事象 (Table 2):好中球減少CE群14% vs トポテカン群22%、血小板減少31% vs 36%、貧血25% vs 21%、発熱性好中球減少6% vs 11%、全身倦怠9% vs 10%。CE群はほとんどの血液毒性でトポテカンより軽度であった。治療関連死はトポテカン群2例 (いずれも発熱性好中球減少+敗血症によるGrade 5)、CE群0例。Grade 3-4下痢はトポテカン群2%・CE群1%と同程度。末梢神経毒性 (感覚異常) Grade 1-2はCE群12% vs トポテカン群5%でやや高かったがGrade 3以上はなかった。重篤な有害事象による入院はCE群30例 (37%) vs トポテカン群35例 (43%)。CE群33例 (41%) が用量減量、40例 (49%) が用量延期を要した。CE群88%・トポテカン群85%がG-CSFによる支持療法を使用した。治療中断は毒性によるものがCE群17例 (17%)・トポテカン群10例 (12%) で、主に血小板減少によるものであった。
考察/結論
本試験 (GFPC 01-13) は感受性再発SCLCに対して、CE再投与がトポテカンよりもPFS・ORRに優れ、かつ安全性 (特に発熱性好中球減少と治療関連死) が良好であることを初めてRCTで示した点で重要な意義を持つ。CE再投与の優越性は全てのサブグループで一貫していた (Fig. 3)。
先行研究として最も関連性の高いRCTはJCOG0605 (Goto et al. Lancet Oncol 2016) であり、プラチナ製剤ベースの化学療法 3剤 (シスプラチン+エトポシド+イリノテカン) がトポテカンに対してOS改善を示した (mOS 18.2 vs 12.5ヶ月、HR 0.67、P=0.0079)。本試験の結果は先行研究と異なり、CE群でOSの差が見られなかったが、この相違は先行研究がトポテカン群への後治療を制限したのに対し本試験では制限を設けず、トポテカン群68%がCEを三次療法として受けたクロスオーバーが生じたことが主因である。また、先行研究JCOG0605でのGrade 3-4好中球減少83%・発熱性好中球減少31%という重篤な毒性と比較して、本試験のCE群のそれぞれ14%・6%は著しく改善されており、カルボプラチンベースの2剤療法が耐容性の観点で優れていることが示された。これは感受性再発SCLCの二次治療における本研究の新規な知見であり、CE再投与が実臨床での治療選択として合理的であることを初めてRCT規模で証明した点で独創的である。
現在の診療では感受性再発SCLCの二次治療選択肢が多様化している。一次治療としてプラチナ+エトポシドに免疫チェックポイント阻害薬を加えた治療法 (アテゾリズマブ、デュルバルマブ; Paz-Ares (phase 3 randomized) Paz-Ares et al. Lancet 2019) が一次治療標準となりつつある中、免疫療法維持中に90日以上経過して再発した場合、CE再投与は依然として合理的な選択肢となり得る。本試験の主な限界として、5年間に及んだ長い登録期間 (2013〜2018年)、免疫療法を一次治療として受けた患者が含まれなかったこと、クオリティオブライフデータが22例分しか収集できず評価不能であったことが挙げられる。感受性再発SCLCの二次治療における今後の課題は、免疫療法を含む一次治療後の再発患者を対象とした新たなRCT、ならびにルルビネクテジンやタルラタマブ (DLL3 (delta-like ligand 3) 標的二重特異性T細胞結合抗体) などの新規治療薬との比較検討である。
方法
多施設共同無作為化非盲検第3相優越性試験 (フランス38施設、ClinicalTrials.gov NCT02738346)。
適格基準: 組織/細胞学的に確認されたSCLC、stage 4または局所再発、一次プラチナ+エトポシドにRECIST v1.1でCR/PRを示し最終サイクル初日から90日以上経過して再発 (感受性定義)、ECOG PS (performance status) 0-2、年齢≥18歳、体重減少<10% (直近3ヶ月)、クレアチニンクリアランス>45 mL/min、好中球>1.5×10^9/L、血小板>100×10^9/L。無症候性脳転移または予防的脳照射済みも適格。一次治療応答がSD (stable disease) のみ、または免疫療法を一次治療として受けた患者は除外。
174例がスクリーニングされ164例が無作為化 (各群82例)。各群1例が同意撤回し、最終ITT (intention-to-treat) 集団 n=162 patients (各群81例)。層別化因子:ECOG PS (0-1 vs 2)・一次治療応答 (CR vs PR)・施設。CE (carboplatin etoposide) 群:カルボプラチンAUC 5 mg/mL/min (day 1、IV (intravenous)) + エトポシド100 mg/m² (day 1-3、IV) 21日毎最大6サイクル。トポテカン群:経口トポテカン2.3 mg/m² (day 1-5) 21日毎最大6サイクル。両群ともG-CSF (granulocyte colony-stimulating factor) filgrastimの予防投与を推奨。腫瘍評価は6・12・18週にRECIST v1.1で実施し中央判定。
主要評価項目:中央判定PFS (無増悪生存期間)。優越性検定は片側α=0.05、検出力80%。Kaplan-Meier法でPFS・OSを推定し、PFSは層別log-rank検定、HRは層別Cox回帰で算出。ORRはFisher正確検定。多変量Cox回帰でPFS予測因子を解析。統計解析はSAS (Statistical Analysis Software) version 9.3。追跡期間中央値22.7ヶ月 (IQR 20.0-37.3)。