Methylation
一行要約
DNA methylation (DNA メチル化) は CpG ジヌクレオチドのシトシンへのメチル基付加によるエピジェネティック修飾で、遺伝子発現制御・がん抑制遺伝子サイレンシング・腫瘍分類・liquid biopsy の基盤となる。
メカニズム
DNMT (DNMT1 / DNMT3A / DNMT3B) がシトシンを 5-メチルシトシン (5mC) に変換し、プロモーター CpG island の高メチル化は転写抑制をもたらす。がんではゲノム全体の低メチル化 (染色体不安定化・Genomic-instability-cancer) と特定がん抑制遺伝子プロモーターの局所的高メチル化が並存し、後者は MGMT・CDKN2A・MLH1 などのサイレンシングを介して発がんに寄与する。CpG island の過剰メチル化はヒストン修飾を二次的にリクルートして安定したサイレンシングを確立し、小細胞肺癌では転写開始点近傍の過剰メチル化が遺伝子発現と負に相関し (差次メチル化の約 73% が発現低下と対応)、ヒストンメチル基転移酵素 EZH2 の極端な過剰発現 (正常肺比 約412倍) およびプロモーターメチル化量と強く相関する (Poirier et al. Oncogene 2015)。TET 酵素による 5mC → 5hmC の能動的脱メチル化、IDH 変異による 2-HG (2-hydroxyglutarate) 蓄積を介した DNA/ヒストン脱メチル化阻害 (CIMP, CpG island methylator phenotype) など、変異と相互作用した制御異常も重要である。メチル化パターンは細胞系譜を強く反映するため組織起源推定に利用でき、血中を循環する腫瘍由来 CfDNA (cell-free deoxyribonucleic acid) のメチル化プロファイルのみで、TP53/RB1 変異が普遍的な小細胞肺癌でも ASCL1・NEUROD1 などの転写因子サブタイプが分離する (Chemi et al. NatCancer 2022)。さらに環境曝露は CpG 部位特異的なメチル化変化として腫瘍エピゲノムに長期的な分子フットプリントを残し、これを曝露の代理指標として読み出すことができる (Maas et al. NatMed 2026)。
臨床位置づけ
メチル化はがん診断・分類・モニタリングに広く応用される。MGMT プロモーターメチル化はグリオーマの alkylating 剤感受性予測に、cell-free DNA のメチル化シグネチャは multi-cancer early detection (MCED) や組織起源推定として Liquid-biopsy-paradigm の中核技術となっている。治療面では DNMT 阻害薬 (azacitidine / decitabine) が骨髄系腫瘍で承認され、固形癌では ICI との併用 (Epigenetic-therapy-resistance 克服) が探索されている。メチル化プロファイリングは WES-WGS などゲノム解析と相補的に用いられる。
Open Questions
- cfDNA メチル化に基づく MCED の固形癌早期発見における感度・特異度の確立、および大規模独立コホートでの外部検証
- DNMT 阻害薬 + ICI 併用の最適スケジュールとバイオマーカー
- メチル化と連動した EZH2 阻害が小細胞肺癌サブタイプ別にもたらす臨床的有効性と患者選択指標
- メチル化ヘテロ性が治療抵抗性クローン選択に果たす役割、および cfDNA サブタイプ判定が治療経過中の lineage plasticity をどこまで縦断的に捉えられるか
- 曝露由来メチル化変化の可逆性・用量反応関係と、発がんへの因果性の実験的確立