GPX4 (Glutathione Peroxidase 4)

一行要約

GPX4 は selenocysteine を活性中心に持つ glutathione peroxidase で、膜脂質過酸化物 (lipid hydroperoxide) を還元・無毒化する唯一の酵素として ferroptosis を抑制する中心因子。GPX4 を阻害/枯渇すると脂質過酸化が暴走して ferroptosis が誘導されるため、治療抵抗性・幹様性・転移細胞の脆弱性標的として、肺がんを含む固形腫瘍の ferroptosis 文脈で wiki に登場する。

主要エビデンス

  • 腫瘍内好中球の ferroptosis が GPX4 関連脂質過酸化を介して免疫抑制を引き起こす (Kim et al. Nature 2022)
  • ferroptosis の腫瘍学への翻訳の総説で GPX4 が中心的抑制酵素・治療標的として整理される (Kang et al. NatRevClinOncol 2026)
  • spermine が内因性鉄キレーターとして ferroptosis を抑制する文脈で GPX4-GSH 防御系が議論される (Li et al. Nature 2026)
  • ストレス顆粒が ferritin を隔離して ferroptosis を抑える文脈で GPX4 軸が並置される (Ge et al. NatCellBiol 2026)

メカニズム

GPX4 は GSH (還元型グルタチオン) を補酵素に膜リン脂質ヒドロペルオキシド (PLOOH) を対応するアルコールに還元し、脂質過酸化連鎖反応を停止させて膜の完全性を保つ。GPX4 活性は cystine/glutamate アンチポーター xCT (SLC7A11) による cystine 取り込み→GSH 合成、および selenium 供給に依存する。GPX4 阻害 (RSL3, ML162) や GSH 枯渇 (erastin による xCT 阻害) で PLOOH が蓄積し、鉄依存的に膜破綻・ferroptosis が起こる。FSP1-CoQ10 など GPX4 非依存の並行防御系も存在する。

臨床位置づけ

GPX4 は ferroptosis 誘導療法の主要標的で、治療抵抗性・上皮間葉転換・薬剤耐性 persister・転移開始細胞が ferroptosis 感受性を示すことから、これらを選択的に排除する戦略の基盤となる。直接的 GPX4 阻害剤は薬物動態・選択性が課題で臨床確立前だが、xCT 阻害・GSH 枯渇・免疫療法との併用 rationale が固形腫瘍 (肺がん含む) で活発に研究される。

Open Questions

  • 全身毒性を避けつつ腫瘍特異的に GPX4/ferroptosis 防御系を阻害できるか
  • 肺がんのどの治療抵抗性状態が ferroptosis 感受性を示し標的化可能か