STAT1 (Signal transducer and activator of transcription 1)
一行要約
STAT1 は JAK-STAT 経路の中核転写因子で、type I (IFN-α/β) および type II (IFN-γ) インターフェロンシグナルを核へ伝達し、抗原提示 (MHC class I / II)、抗ウイルス応答、抗腫瘍免疫の遺伝子プログラムを制御する。腫瘍免疫では IFN-γ-JAK-STAT1 軸が T 細胞による腫瘍認識・PD-L1 誘導・免疫療法応答を規定する一方、STAT1 シグナルの欠損 (JAK1/2 変異等) や慢性活性化が ICB 耐性 / 免疫疲弊の双方に関与する。
主要エビデンス
- CAR-T / 免疫療法における IFN-STAT 応答: T 細胞療法の機能・有効性に STAT 経路が関与 (Chen et al. CancerCell 2026)
- SCLC の T-cell-inflamed 表現型: YAP1 陽性 SCLC が STAT1 を含む IFN 応答性 inflamed 表現型を示す (Owonikoko et al. JThoracOncol 2021)
- CAR 共刺激と下流シグナル: 共刺激ドメイン設計が STAT を含む下流シグナルと腫瘍排除動態を規定 (Zhao et al. CancerCell 2015)
メカニズム
IFN がそれぞれの受容体に結合すると会合した JAK (JAK1 / JAK2 / TYK2) が活性化し、受容体細胞質尾部および STAT1 をチロシンリン酸化する。リン酸化 STAT1 はホモ二量体 (GAF, IFN-γ 応答) を、あるいは STAT2 / IRF9 と ISGF3 複合体 (IFN-α/β 応答) を形成して核へ移行し、GAS / ISRE エレメントに結合して数百のインターフェロン誘導遺伝子 (MHC class I/II, antigen-processing machinery, chemokines, PD-L1 等) を転写する。腫瘍免疫では STAT1 経路が腫瘍細胞の抗原提示と T 細胞によるキリングを支える。JAK1/2 の loss-of-function 変異は STAT1 シグナルを遮断して MHC-I 発現と ICB 応答を喪失させ (primary / acquired 耐性)、逆に慢性 IFN-STAT1 活性化は PD-L1 などの adaptive 免疫抵抗と疲弊シグネチャーを誘導する。
臨床位置づけ
STAT1 は直接の薬剤標的ではないが、IFN-γ-JAK-STAT1 経路の完全性が ICB 応答の前提となるため臨床的に重要。JAK1/2 変異や antigen-processing machinery 欠損による STAT1 シグナル喪失は抗 PD-(L)1 一次・獲得耐性の機序であり、MHC-I / IFN シグネチャーが応答バイオマーカーとして研究される。一方、慢性 IFN シグナルが免疫抑制に転じる文脈では JAK 阻害剤による interferon シグナル調整が併用戦略として探索されている。
Open Questions
- IFN-γ-JAK-STAT1 シグナルの完全性 / 欠損を ICB 応答予測 biomarker として臨床実装できるか
- 抗腫瘍的な急性 IFN-STAT1 応答と免疫抑制的な慢性 IFN シグナルをどう治療的に分離するか