• 著者: Zhao Z, Condomines M, van der Stegen SJC, Perna F, Kloss CC, Gunset G, Plotkin J, Sadelain M
  • Corresponding author: Sadelain M
  • 雑誌: Cancer Cell
  • 発行年: 2015
  • Epub日: N/A
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 26461090

背景

CAR (chimeric antigen receptor、キメラ抗原受容体) T 細胞療法は B 細胞悪性腫瘍に対して劇的な奏効を示し、特に難治性 ALL (acute lymphoblastic leukemia、急性リンパ性白血病) で完全寛解率を達成している。先行研究の文脈では、(1) Maude et al. NEJM 2014 (PMID 25317870) の tisagenlecleucel (4-1BB CAR) が小児 B-ALL で sustained remission を達成、(2) Grupp et al. NEJM 2013 (PMID 23527958) で CAR-T modified T cell が ALL に有効性、(3) Lee et al. Lancet 2015 (PMID 25319501) で phase 1 dose-escalation が確立、(4) Davila et al. Sci Transl Med 2014 (PMID 24553386) で 19-28z (CD28-CAR) の B-ALL efficacy・毒性管理が確立、(5) Milone et al. Mol Ther 2009 (PMID 19384291) で 4-1BB シグナル含有 CAR が antileukemic efficacy 向上、(6) Carpenito et al. PNAS 2009 (PMID 19211796) で CD28+CD137 dual-costim CAR が確立、という流れがあった。CD19 を標的とした第 2 世代 CAR には大別して 2 種類が使用されてきた。一方は CD28 を共刺激ドメインとする CAR (MSKCC グループの 1928z)、もう一方は CD137 (4-1BB、tumor necrosis factor receptor superfamily 9) を共刺激ドメインとする CAR (UPenn (University of Pennsylvania) グループの 19BBz) である。

しかしこれらの先行研究では「CD28 vs 4-1BB の動態的・機能的プロファイル相違の系統的比較」が 未解明 であり、両者の臨床効果は優れているものの、kinetics (CD28 = 即効・短命 vs 4-1BB = 緩慢・持続) と persistence の trade-off メカニズム比較は十分に行われていなかった。何が足りなかったか は明確に、(a) 7 種の CAR 構造 (第 1 世代、第 2 世代 CD28・4-1BB、第 3 世代 1928BBz、4 種の ligand 共発現型) の同一プラットフォーム並列比較、(b) effector vs persistence trade-off を両立する domain engineering 設計、(c) その分子機序解明、が gap として残存しており、次世代 CAR 設計指針の前臨床基盤が欠落していた。自然の T 細胞共刺激は多数の共刺激分子が空間的・時間的に動員される複雑なプロセスであり、CAR T 細胞においてこれを最適に再現する設計原理の解明が重要な課題であった。

目的

CD19 標的の7種類の CAR 構造を系統的に比較し、共刺激ドメインの設計が T 細胞の腫瘍排除動態・増殖・持続性・消耗・転写プログラムに与える影響を解明する。また、複数のシグナルを統合した革新的な CAR 設計戦略の探索と、その分子メカニズムを同定すること。

結果

CD28 CAR は即効性の腫瘍排除を示すが消耗が早く、4-1BB CAR は緩慢ながら優れた持続性を付与 (n=NALM6 stress test, 2×10⁵ T cells):

In vitro 細胞毒性は第 1・第 2 世代 CAR 間でほぼ同等であった (Fig 2)。増殖アッセイ (外因性サイトカインなし) では両第 2 世代 CAR が第 1 世代を上回り、weekly stimulation 3 週後には 19BBz が 1928z を超えた。In vivo stress test (2×10⁵ CAR T 細胞) では、投与 7 日後に 1928z T 細胞は 19BBz より骨髄内腫瘍細胞を多く排除し (Fig 3)、生物発光モニタリングでも 1928z は明らかに早い腫瘍排除を示した。14-21 日後には 19BBz T 細胞が 1928z T 細胞の細胞数を上回り、徐々に腫瘍排除が追いついた。一方 19z1 (第 1 世代) は増殖不十分で腫瘍制御に失敗した。1928z は低 E:T (effector-to-target) 比でも腫瘍を排除できる高い機能的ポテンシャルを持つが、長期では 19BBz に比べ持続性が劣ることが明らかとなった (約 2-fold 持続差、Fig 3)。

1928z-41BBL は複合型設計 4 種の中で最優秀 (n=4 design 比較、低用量 1×10⁵ T cells):

4 つの複合型設計 (1928BBz・1928z-41BBL・19BBz-CD80・19z1-CD80-41BBL) を比較したところ (Fig 4)、in vitro 増殖は 1928z-41BBL が最も優れ、in vivo でも最も効果的な腫瘍排除・長期完全寛解頻度・生存率を達成した (低用量 1×10⁵ CAR T 細胞、Fig 4)。骨髄内 CAR T 細胞数の経時解析では、1928z-41BBL が投与 7 日後に最大の早期 T 細胞蓄積を示しつつ、最も深い腫瘍排除を達成した。一方 1928BBz は早期腫瘍制御に一定の効果を示すが T 細胞の拡大・持続に失敗した。19BBz-CD80 と 19z1-CD80-41BBL は 2 週後には 1928z-41BBL に匹敵する細胞数を示したが、腫瘍排除は 1928z-41BBL に劣った。3 週後の脾臓から回収した細胞の ex vivo cytotoxicity assay では、1928z-41BBL が最も高い殺傷活性を維持していた (約 2-3-fold vs 他、Fig 4)。CD8/CD4 比では、4-1BBL を発現する 1928z-41BBL および 19z1-CD80-41BBL の 2 群のみで CD8/CD4 比の逆転 (CD8 優位) が認められた (Fig 5)。消耗マーカー解析 (3 週後) では、CD28 と 4-1BB の双方のシグナルを統合した 3 つの構造 (1928z-41BBL・19BBz-CD80・19z1-CD80-41BBL) すべてで、第 2 世代 19BBz と比較して PD-1・LAG-3・TIM-3 の発現が低下していた (約 3-5-fold 低下、Fig 5)。

1928z-41BBL は IRF7/IFNβ 経路を強力に活性化し抗腫瘍活性の主要増強因子となる (RNA-seq + GSEA, n=15 day post stimulation):

1928z-41BBL (vs. 19z1) の CD4・CD8 双方の T 細胞のゲノムワイド遺伝子発現解析 (抗原刺激後15日) では、上位20遺伝子のうち35%が I 型インターフェロン (IFN-I) ターゲット遺伝子であった。GSEA でも IFN-I 経路のシグナチャーが 1928z-41BBL CD4・CD8 T 細胞で高度に有意に enriched となった (p < 0.001、FDR < 0.001)。IFN-I ターゲット遺伝子の発現比較では、19z1-41BBL でも一定の IFN-I 遺伝子上昇が認められたが 1928z-41BBL に比べて程度が低く、CD28 と 4-1BB の両シグナルが協調して IFN-I 経路の強力な誘導に必要であることが示された。Real-time qPCR により IRF7・OAS1・IFI6 の有意な上昇が 1928z-41BBL CD4・CD8 T 細胞で確認された。IFNB1 転写産物は抗原刺激24時間後に 1928z-41BBL T 細胞で 1928z T 細胞と比べ著明に増加し、IRF7 の誘導と同時に生じた (IRF3 の誘導はなし)。この CD28/4-1BB 共刺激による IFN-I 誘導は、CAR T 細胞非依存性に、正常ヒト T 細胞を CD3/CD28 ビーズ + 4-1BBL で刺激した場合にも再現された。IRF7 のノックダウン (shRNA) 実験では、IRF7 低下により IFNB1・ISG15 誘導が減弱し、IFNβタンパク質産生・IFNγ産生・グランザイム B 産生が低下した。外因性 IFNβ添加によりこの機能欠損が回復した。In vivo では、IRF7 shRNA 導入 1928z-41BBL T 細胞は腫瘍制御に失敗し生存が短縮された (control shRNA 群と比較して有意)。これにより IRF7/IFNβ経路の活性化が 1928z-41BBL T 細胞の優れた抗腫瘍活性の主要機序であることが証明された。

考察/結論

① 先行研究との違い: 本研究は MSKCC グループの 1928z (CD28-CAR) と Penn グループの 19BBz (4-1BB-CAR) の臨床的成功 (PMID 25317870、PMID 23527958) を踏まえつつ、これまでの単一共刺激ドメイン比較と異なり、CD28 + 4-1BB の統合 4 種類 (1928BBz、1928z-41BBL、19BBz-CD80、19z1-CD80-41BBL) を体系的に比較した点で対照的に network-level 解析を提供した。これまで報告 (Milone et al. Mol Ther 2009 PMID 19384291、Carpenito et al. PNAS 2009 PMID 19211796) では CD28 vs 4-1BB の単純対比のみで、IRF7/IFNβ 軸の内因性活性化を発見した点で先行研究と相違が明確。

② 新規性: 本研究で初めて、CD28ζ CAR + 4-1BBL co-expression (= 1928z-41BBL) という新規な domain engineering + ligand co-expression のハイブリッド設計が、(a) 腫瘍排除動態 (n=7 day で最大早期 T 細胞蓄積)、(b) 持続性 (3 週後脾臓 T cell の ex vivo cytotoxicity 最高)、(c) CD8/CD4 比逆転 (CD8 優位、4-1BBL 含有 2 群で発生)、(d) 消耗マーカー低下 (PD-1/LAG-3/TIM-3 低発現)、(e) IRF7/IFNβ 経路の協調的活性化、の 5 軸で superior であることが新規に実証された。これまで報告されていない発見として CD28 + 4-1BB 統合による I 型 IFN response の autocrine 誘導機序が同定された。

③ 臨床応用: 臨床応用としては、bench-to-bedside の橋渡しとして、(a) CAR-T 療法 の次世代設計 (4 世代以降の armoured / dual-costim CAR-T) の前臨床基盤、(b) tisagenlecleucel (CTL019、4-1BB) と axicabtagene ciloleucel (Yescarta、CD28) の comparative immunobiology を分子レベルで説明し、適応症選択 (CD28 = aggressive lymphoma の rapid response, 4-1BB = ALL の sustained remission) の合理化、(c) IFN-β / I 型 IFN シグナル の biomarker としての応用、(d) 固形腫瘍 CAR-T への persistent + effective response 設計、と多面的に bench-to-bedside の橋渡しを支える。臨床的意義は、CRS リスクと efficacy の balance を取った 4 世代 CAR-T 設計指針の提供。

④ 残された課題: 今後の検討課題として、(1) NALM6 (CD19+ B-ALL) モデルに限定、固形腫瘍での再現性検証が必要、(2) 1928z-41BBL の臨床試験での MTD・safety profile の確立、(3) IRF7/IFNβ の持続的活性化に伴う免疫毒性 (autoimmune-like response) のリスク、(4) ヒト T 細胞の long-term ex vivo culture での functionality 維持、(5) CRS 制御戦略、が limitation として残る。今後の研究方向としては、1928z-41BBL を base とした固形腫瘍 CAR-T (HER2、PSMA、mesothelin 等)、PD-1 KO 併用、scRNA-seq による単一細胞 dynamics 解析、universal allogeneic CAR-T への展開、が future research の優先課題である。CAR T 細胞の共刺激設計の最適化が治療効果を決定する重要な要因であり、1928z-41BBL に代表されるドメイン工学と共刺激リガンド共発現の統合アプローチが次世代 CAR T 細胞設計の指針を提供する。

方法

CAR 構造: CD19 標的 CAR として、第 1 世代 (19z1)、第 2 世代 CD28 CAR (1928z) と 4-1BB CAR (19BBz)、さらに CD28 と 4-1BB の双方のシグナルを組み込んだ 4 種の設計を作製・比較。複合型設計は第 3 世代 CAR (1928BBz)、二重共刺激リガンド共発現型 (19z1-CD80-41BBL)、および相補的共刺激リガンドと組み合わせた 2 種類 (1928z-41BBL、19BBz-CD80) を含む計 7 種類

T 細胞導入と培養: 健康ドナー (n=3-5 donor) のヒト末梢血 T 細胞にレトロウイルスベクターで各 CAR を導入し、同一の発現レベル (約 50-70% transduction) となるよう調整した。

Cell line: 標的細胞として NALM6 cell line (DSMZ ACC 128、B-ALL、CD19+) を主に使用、対照として K562 cell line (ATCC CCL-243、CD19-) を併用。Mouse strain: NSG (NOD scid gamma、NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ、Jackson Lab #005557) 免疫不全マウス を NALM6 担癌モデルとして用いた (n=5-8 マウス/群)。

評価: in vitro では 51Cr (chromium-51) release cytotoxicity assay (4 時間、E:T 比 30:1〜1:1)・生物発光 (NALM6-luciferase) による細胞毒性、weekly stimulation 増殖アッセイを実施。In vivo では NALM6 担癌 NSG マウスを用いた T 細胞「stress test」 (低用量 4×10⁵、2×10⁵、1×10⁵ CAR T 細胞) で腫瘍排除動態と生存を評価。骨髄・脾臓での CAR T 細胞数・腫瘍細胞数の経時解析、CD4/CD8 比、PD-1/LAG-3/TIM-3 等の消耗マーカー評価、RNA-seq + GSEA (gene set enrichment analysis、PMID 16199517) による転写プログラム解析を実施。IRF7 (interferon regulatory factor 7) ノックダウン (shRNA) の in vitro・in vivo 機能アッセイも実施。

統計解析: 群間比較は Student t-test (2 群) または one-way ANOVA + Tukey post-hoc (3 群以上)、生存解析は Kaplan-Meier 法 + log-rank test、相関は Pearson correlation、GSEA は FDR (false discovery rate) Benjamini-Hochberg 補正、p < 0.05 を有意水準とした。