• 著者: Rosen LS, Gordon D, Tchekmedyian NS, Yanagihara R, Hirsh V, Krzakowski M, Pawlicki M, De Souza P, Zheng M, Urbanowitz G, Reitsma D, Seaman J
  • Corresponding author: Lee S. Rosen (Developmental Therapeutics, Cancer Institute Medical Group, Los Angeles, CA, USA)
  • 雑誌: Cancer
  • 発行年: 2004
  • Epub日: 2004-06-15
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 15197804

背景

骨は進行固形がんの主要な転移部位であり、肺癌、腎癌、甲状腺癌など多くのがん種で重篤な骨合併症 (SRE: skeletal-related events) を引き起こす。これらのSREには、病的骨折、脊髄圧迫、骨痛、悪性高カルシウム血症 (HCM: hypercalcemia of malignancy) などが含まれ、患者のQOLを著しく低下させ、しばしば外科手術や放射線療法を必要とする。剖検データによると、肺癌患者の最大52%に骨転移が認められ、進行甲状腺癌では47%、進行腎癌では30%に骨転移が臨床的に診断されることが報告されている (Woodhouse et al. 1997, Coleman 1997, Nottebaert et al. 1989, Zekri et al. 2001, Pittas et al. 2000)。骨転移は破骨細胞の活性化を介して骨吸収を促進し、骨代謝の破壊を引き起こす。ビスフォスフォネートは破骨細胞による骨吸収を抑制し、SREを軽減する重要な治療薬である。

当時、ゾレドロン酸は乳癌や前立腺癌の骨転移に対する有効性が確立されていたが (Rosen et al. 2001, Saad et al. 2002)、非小細胞肺癌 (NSCLC: nonsmall cell lung carcinoma) およびその他の固形腫瘍(乳癌・前立腺癌を除く)の骨転移患者における長期的な有効性と安全性に関するエビデンスは不足していた。著者らは以前、9か月時点の中間報告において、ゾレドロン酸4 mgがNSCLCおよびその他の固形腫瘍の骨転移患者においてSREを減少させることを示した (Rosen et al. JClinOncol 2003)。しかし、その報告では長期投与における有効性の持続性、特に21か月間の治療期間における腎毒性プロファイルは未解明であった。本研究は、この高リスク患者集団におけるゾレドロン酸の長期的な臨床的有用性を確立するために、中間報告の期間を延長し、より包括的な評価を行うことを目的とした。

目的

本研究の目的は、非小細胞肺癌および乳癌・前立腺癌を除くその他の固形腫瘍の骨転移患者を対象に、ゾレドロン酸4 mgまたは8/4 mgを3週毎に21か月間投与した場合の骨関連事象 (SRE) 予防効果、時間的推移、および長期的な腎安全性をプラセボと比較して評価することである。主要評価項目は21か月時点での1回以上のSRE (病的骨折、脊髄圧迫、骨への放射線療法、骨への手術) 発生患者の割合とし、副次評価項目として初回SREまでの期間、年間SRE発生率、多重イベント解析によるSRE発生リスク、ECOGパフォーマンスステータス、骨病変反応、骨代謝マーカーの変化、および全生存期間を評価した。特に、中間報告で除外されていた悪性高カルシウム血症 (HCM) を含めたSRE解析も実施し、ゾレドロン酸の全体的な治療効果をより臨床的に関連性の高い形で評価することを目指した。

結果

患者背景と治療継続: 登録された773例の患者背景は、各治療群間で同等であった。患者の年齢中央値は約63歳、男性が66%を占めた。約80%の患者が化学療法を併用しており、ECOGパフォーマンスステータスが2以下であった患者は84%であった。ベースラインで正常な腎機能(血清クレアチニン値1.4 mg/dL未満)を有していた患者は90%であった。悪性腫瘍の初回診断から骨転移までの期間は中央値で約18か月であり、患者の3分の2以上 (68.5%) が試験開始前にSREの既往を有していた。この高リスク患者集団の生存期間中央値はわずか6か月であった。9か月間のコアフェーズを完了したのは196例であり、そのうち101例が延長フェーズへの継続を選択した。最終的に21か月間の治療を完遂した患者は全群で26例(約25%)であった (Table 1)。治療中止の主な理由は、死亡および有害事象であり、中止率は治療群間で類似していた。

主要評価項目 (21か月SRE発生率) とSRE種別: 悪性高カルシウム血症 (HCM) を除外した場合、21か月時点でのSRE発生患者の割合は、ゾレドロン酸4 mg群で39%、プラセボ群で46%であり、統計学的有意差には達しなかった (p=0.127)。しかし、ゾレドロン酸8/4 mg群では36%であり、プラセボ群と比較して有意な差が認められた (p=0.023)。HCMを含めた解析では、ゾレドロン酸4 mg群で39%、プラセボ群で48%の患者がSREを経験し、ゾレドロン酸群で有意なSRE発生率の減少が認められた (p=0.039)。特に、プラセボ群では9例 (4%) の患者がHCMを発症したのに対し、ゾレドロン酸4 mg群ではHCMの発症は0例であり、HCMの完全な予防効果が示された (Table 2)。SREの種類別では、骨への放射線療法が最も多く、次いで病的骨折であった。ゾレドロン酸4 mg群では、骨への放射線療法 (29% vs プラセボ34%)、病的骨折 (16% vs プラセボ22%)、脊髄圧迫 (3% vs プラセボ4%) のいずれのSREもプラセボ群と比較して発生率が低い傾向を示した。

初回SREまでの期間と多重イベント解析: ゾレドロン酸4 mgは、初回SRE(HCMを含む)までの期間を中央値で236日と有意に延長し、プラセボ群の155日と比較して2か月以上の遅延を達成した (p=0.009) (Figure 1A)。初回病的骨折までの25%分位点も、ゾレドロン酸4 mg群で294日、プラセボ群で161日と有意に延長された (p=0.020) (Figure 1B)。年間SRE発生率は、ゾレドロン酸4 mg群で1.74件/年、プラセボ群で2.71件/年であり、ゾレドロン酸群で36%の有意な低下が認められた (p=0.012)。多重イベント解析(Andersen-Gill法)では、ゾレドロン酸4 mg群はプラセボ群と比較してSRE発生リスクを31%有意に減少させた (HR=0.693, 95%CI 0.542–0.886, p=0.003) (Figure 2)。ゾレドロン酸8/4 mg群も同様に、初回SREまでの期間延長 (中央値219日, p=0.017)、年間SRE発生率の有意な低下 (1.56件/年, p=0.001)、およびSRE発生リスクの有意な減少 (HR=0.676, 95%CI 0.524–0.873, p=0.003) を示した。

骨代謝マーカーとその他の副次評価項目: ゾレドロン酸4 mg群では、尿中N-テロペプチド/クレアチニン比が治療開始1か月目から有意に低下し、21か月間その効果が維持された (Figure 3)。尿中デオキシピリジノリンも同様に有意な低下を示した。骨形成マーカーである骨型アルカリホスファターゼは、プラセボ群で時間とともに増加したのに対し、ゾレドロン酸4 mg群ではベースラインレベル以下に維持された。ECOGパフォーマンスステータスの悪化は、ゾレドロン酸4 mg群で小さい傾向が認められた(研究終了時のECOGスコアの平均増加は4 mg群で0.99±1.20、プラセボ群で1.20±1.22、p=0.080)。骨病変の最良反応では、ゾレドロン酸4 mg群で8%が部分奏効を示したのに対し、プラセボ群では4%であった (Table 3)。骨病変進行までの期間中央値は、ゾレドロン酸4 mg群で145日、プラセボ群で109日であったが、統計学的有意差は認められなかった (p=0.415)。全生存期間中央値は、ゾレドロン酸4 mg群で202.5日、プラセボ群で183日であり、有意な差は認められなかった (p=0.929) (Table 4)。

安全性と腎機能: ゾレドロン酸4 mgの長期投与は、全体的に良好な忍容性を示した。最も頻繁に報告された有害事象(全グレード)は、骨痛 (ゾレドロン酸4 mg群51.2%、プラセボ群60.7%)、悪心 (48.8% vs 36.4%)、貧血 (38.2% vs 34.8%)、嘔吐 (37.8% vs 30.4%)、便秘 (35.8% vs 38.1%)、呼吸困難 (35.4% vs 30.0%) であった (Table 5)。骨痛の発生率は、ゾレドロン酸群でプラセボ群よりも低かった。ビスフォスフォネートの静脈内投与に関連する急性期反応(悪心、嘔吐、呼吸困難、頭痛など)は、ゾレドロン酸群でプラセボ群よりも頻度が高かったが、ほとんどが軽度から中等度であり、対症療法で管理可能であった。

腎機能の低下は血清クレアチニン値の増加に基づいて評価された。15分点滴へのプロトコール改訂後、血清クレアチニン値の増加を経験した患者の割合は、ゾレドロン酸4 mg群で10.9%、ゾレドロン酸8/4 mg群で12.7%、プラセボ群で6.7%であった。初回血清クレアチニン増加までの期間に関するKaplan-Meier解析では、ゾレドロン酸4 mg群でプラセボ群と比較して血清クレアチニン増加のリスクが中程度に増加する傾向が見られたが (HR=1.587)、統計学的有意差には達しなかった (p=0.228) (Figure 4)。8/4 mg群ではより高いリスクが関連していたが (HR=1.945)、これも統計学的有意差には達しなかった (p=0.070)。NCI Common Toxicity Criteria Grade 3または4の血清クレアチニン増加率は、ゾレドロン酸4 mg群で1.8%、ゾレドロン酸8/4 mg群で1.1%、プラセボ群で1.8%と、治療群間で同等であった。これらの結果に基づき、臨床使用には4 mg用量のみが推奨された。

考察/結論

本研究は、非小細胞肺癌およびその他の固形腫瘍の骨転移患者を対象としたゾレドロン酸の21か月間の長期投与における有効性と安全性を評価した大規模な第III相試験である。9か月時点の中間報告の結果を裏付け、ゾレドロン酸4 mgの3週毎の長期投与がSRE予防効果を維持し、許容可能な安全性プロファイルを示すことを明らかにした。

先行研究との違い: 本研究の主要評価項目(HCMを除外したSRE発生率)は統計学的有意差に達しなかったが、これは本患者集団の生存期間中央値がわずか6か月と極めて短く、またHCMを除外したバイナリ評価が保守的すぎたためと考察される。肺癌や腎癌で頻発し、致死的合併症となりうるHCMを含めた解析がより臨床的に妥当であり、その場合、初回SREまでの期間、年間SRE発生率、多重イベント解析といったすべての副次評価項目で一貫してゾレドロン酸の有意な優越性が示された点は、これまでのビスフォスフォネート研究とは対照的である。特に、ゾレドロン酸4 mg群でHCMの発症が完全に抑制されたことは、この高リスク患者集団における重要な臨床的意義を持つ。

新規性: 本研究で初めて、ゾレドロン酸が乳癌や前立腺癌以外の広範な固形腫瘍の骨転移患者において、長期にわたるSREリスクの有意な低減(31%のリスク減少)を達成し、その効果が21か月間持続することを示した。これは、ゾレドロン酸が「全がん種を横断する初のビスフォスフォネート」として位置付けられる新規な知見である。また、試験開始前にSRE既往を持つ高リスク集団においても、ゾレドロン酸が有効であったことも重要な発見である。

臨床応用: 本研究の知見は、骨転移を有する固形腫瘍患者の臨床管理に直接的な影響を与える。骨転移診断時点での早期ゾレドロン酸導入が、SREの予防と患者のQOL維持に有益であることが示唆される。特に、プラチナベース化学療法を併用している患者においては、15分点滴時間の厳守と腎機能の綿密なモニタリングが重要である。ゾレドロン酸の15分という短い点滴時間は、他の静脈内ビスフォスフォネートと比較して、患者と医療従事者双方にとって利便性が高い。本試験は、その後のNCCNガイドラインにおいて肺癌骨転移に対する骨標的治療の推奨の根幹となるエビデンスを提供し、後のデノスマブ非劣性試験のベンチマークともなった。

残された課題: 本研究にはいくつかのlimitationも存在する。全生存期間の改善は示されず、ゾレドロン酸の抗腫瘍効果は不明である。また、当時まだ十分に認識されていなかった顎骨壊死 (ONJ) のような長期的な有害事象や、より長期的な腎機能低下の評価は限定的であった。各がん種亜群(例:腎細胞癌、甲状腺癌)におけるゾレドロン酸の有効性を詳細に評価するには、検出力が不足している。今後の検討課題として、これらの特定のがん種におけるゾレドロン酸の有効性と安全性プロファイルをさらに明確にするための研究が必要である。

方法

本研究は、多施設共同、二重盲検、無作為化、プラセボ対照の第III相臨床試験として実施された。骨転移を有する固形腫瘍(乳癌または前立腺癌を除く)患者773例が登録された。患者はゾレドロン酸4 mg群 (n=257)、ゾレドロン酸8/4 mg群 (n=266)、またはプラセボ群 (n=250) に1:1:1で無作為に割り付けられた。ゾレドロン酸は3週毎に点滴静注された。当初、点滴時間は5分であったが、腎安全性への懸念からプロトコール改訂により15分に延長され、輸液量も50 mLから100 mLに増加された。また、8 mg投与群は安全性懸念のため、後に4 mgに減量された(8/4 mg群)。患者は腫瘍タイプ(NSCLCまたはその他の固形腫瘍)で層別化され、NSCLC患者が全体の約50%を占めるように調整された。全患者にカルシウム500 mg/日とビタミンD 400 IU/日のサプリメントが併用投与された。

主要評価項目は、21か月時点における1回以上のSRE(病的骨折、脊髄圧迫、骨への放射線療法、骨への手術)を経験した患者の割合であった。悪性高カルシウム血症 (HCM) は、ゾレドロン酸のHCM治療における有効性が既に確立されていたため、主要評価項目からは除外された。しかし、ゾレドロン酸の全体的な治療効果を評価するため、副次評価項目ではHCMを含むSREが解析された。副次評価項目には、初回SREまでの期間、年間SRE発生率(骨合併症発生率)、およびAndersen-Gill法を用いた多重イベント解析が含まれた。多重イベント解析では、イベントの数だけでなく、初回およびその後のイベント発生までの時間も考慮され、SREの臨床的影響の全体的な推定値が提供された。SREの重複カウントを避けるため、21日間のイベントウィンドウが設定され、21日以内に発生したイベントはカウントされなかった。その他の副次評価項目として、ECOGパフォーマンスステータス、骨病変の最良反応、骨病変進行までの期間、骨吸収マーカー(尿中N-テロペプチド/クレアチニン比、デオキシピリジノリン)の変化、全疾患進行までの期間、および全生存期間が評価された。全疾患進行は、SWOG (Southwest Oncology Group) 基準の改訂版を用いて、中央集権的かつ盲検化された第三者による放射線学的評価によって判定された。

統計解析は、ITT (intent-to-treat) 集団(無作為化された全患者)に対して実施された。主要評価項目は、肺癌およびその他の固形腫瘍で層別化されたCochran-Mantel-Haenszel検定を用いて比較された。初回SREまでの期間、骨転移進行までの期間、全疾患進行までの期間、および全生存期間は、Kaplan-Meier法とログランク検定を用いて比較された。年間SRE発生率、ECOGパフォーマンスステータスのベースラインからの変化、および骨吸収マーカーは、Cochran-Mantel-Haenszel検定を用いて比較された。すべての統計検定は両側検定であり、P値が0.05未満を有意とした。

腎機能の安全性評価は、ベースライン血清クレアチニン値に基づき、治験薬投与前に毎回モニタリングされた。ベースライン血清クレアチニン値が1.4 mg/dL未満を正常とした。プロトコールで規定された腎機能低下の基準は、ベースライン値が正常な場合は血清クレアチニン値が0.5 mg/dL以上増加、ベースライン値が異常な場合は1.0 mg/dL以上増加、またはベースライン値の2倍以上の増加であった。初回血清クレアチニン増加までの期間は、Kaplan-Meier推定とログランク検定、およびCox回帰分析を用いて解析された。