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Apoptotic Cell-Derived Extracellular Vesicles Promote Malignancy of Glioblastoma Via Intercellular Transfer of Splicing Factors

  • 著者: Marat S. Pavlyukov, Hai Yu, Soniya Bastola, Mutsuko Minata, Victoria O. Shender, Yeri Lee, Suojun Zhang, Jia Wang, Svetlana Komarova, Jun Wang, Shinobu Yamaguchi, Heba Allah Alsheikh, Junfeng Shi, Dongquan Chen, Ahmed Mohyeldin, Sung-Hak Kim, Yong Jae Shin, Ksenia Anufrieva, Evgeniy G. Evtushenko, Nadezhda V. Antipova, Georgij P. Arapidi, Vadim Govorun, Nikolay B. Pestov, Mikhail I. Shakhparonov, L. James Lee, Do-Hyun Nam, Ichiro Nakano
  • Corresponding author: Ichiro Nakano (inakano@uabmc.edu, Department of Neurosurgery, University of Alabama at Birmingham)
  • 雑誌: Cancer Cell
  • 発行年: 2018
  • Epub日: 2018-06-21
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 29937354

背景

膠芽腫 (GBM) は、その高い侵攻性と不良な予後により特徴づけられる脳腫瘍である。GBM組織内では、増殖する生存腫瘍細胞とアポトーシスを起こしている細胞が混在していることが病理学的特徴として知られている (Brat et al. 2004)。アポトーシス細胞が周囲の生存細胞に対して増殖促進や組織修復シグナルを送るという「phoenix rising」の概念は、他の癌種や組織修復の文脈で報告されていた (Huang et al. 2011; Obenauf et al. 2015) が、GBMにおいてアポトーシス腫瘍細胞が生存腫瘍細胞の悪性形質(治療抵抗性や侵攻性)を促進する具体的な分子メカニズムは未解明であった。GBMは、プロニューラル (PN)、古典型、間葉系 (MES) の3つのトランスクリプトームサブタイプに分類され (Phillips et al. 2006; Verhaak et al. 2010)、MESサブタイプは最も侵攻性が高く、治療抵抗性を示すことが知られている (Bhat et al. 2013)。臨床的観察では、化学放射線療法後にPN型GBMがMES型へ転換することが示唆されていたが (Mao et al. 2013; Ozawa et al. 2014)、その分子機序は明確に確立されていなかった。

細胞外小胞 (EV) を介した細胞間コミュニケーションは、タンパク質、DNA、mRNA、miRNAなどの分子を細胞間で輸送し、細胞の表現型を変化させることが知られている (Crescitelli et al. 2013)。特に、アポトーシス細胞から放出されるEV (apoEV) は、その組成や機能において通常のEVとは異なる可能性が示唆されていた (Crescitelli et al. 2013)。しかし、アポトーシスGBM細胞由来のapoEVが、生存腫瘍細胞のスプライシングパターンや表現型、治療感受性にどのような影響を与えるか、またその分子メカニズムについては知識が不足していた。選択的スプライシング (AS) の変化は癌の進行と関連することが報告されているが (Pradella et al. 2017)、スプライシング因子の細胞間移送が腫瘍間シグナリングの文脈で研究された例はこれまで報告されていなかった。本研究は、アポトーシス細胞が放出するapoEVが、スプライシング因子を介して生存腫瘍細胞の悪性度を促進するという、これまでの知見とは対照的なメカニズムを解明することを目的とした。本研究は、この細胞間シグナル伝達のメカニズムを詳細に解析し、GBMの治療抵抗性獲得におけるその役割を明らかにすることで、新たな治療標的の同定に貢献することを目指した。

目的

本研究の目的は、放射線・化学療法によって誘導されたアポトーシスGBM細胞から分泌される細胞外小胞 (apoEV) の組成と生物学的機能を詳細に解明することである。具体的には、apoEVが生存GBM細胞の選択的スプライシングパターン、表現型、および治療感受性に与える影響を明らかにすることを目指した。さらに、apoEV内に搭載される主要な機能因子としてRNA結合タンパク質RBM11を同定し、そのスプライシング変化誘導機序、特にMDM4およびCyclin D1の発がん性アイソフォームへのスプライシングシフトを介した腫瘍悪性度亢進のメカニズムを解明することを目的とした。最終的に、このapoEVを介したスプライシング因子の細胞間転送が、GBMの治療抵抗性獲得と予後不良にどのように寄与するかを評価し、新たな治療標的としての可能性を検討する。本研究は、アポトーシス細胞が放出するapoEVが、スプライシング因子を介して生存腫瘍細胞の悪性度を促進するという、新規のメカニズムを解明することを目指した。

結果

apoEVの特性と受取細胞への悪性表現型促進効果: 放射線またはシスプラチン (CP) 処理によりアポトーシスを誘導したGBM細胞 (主にPN型U87、U251) から回収されたapoEVは、CD63陽性であり、平均サイズが約100 nmのナノ粒子であった (Figure 1F)。これらのapoEVは、蛍光色素DiIで標識可能であり、生存PN GBM細胞に効率的に取り込まれた (Figure S1H)。apoEV処理を受けた受取細胞では、増殖促進効果が認められ (Figure 1G, 1H)、in vitroでN-cadherin、CD44、ALDH1A3、C/EBPβといったMESマーカーの発現が上昇し、Olig2などのPN遺伝子の発現が低下するというPNからMESへの表現型シフトが誘導された (Figure 2C, 2D)。さらに、細胞の浸潤能が有意に上昇し (Figure 2A, 2B)、グルコース消費が増加するWarburg効果の活性化が確認された (Figure 2E)。重要なことに、apoEV処理細胞はテモゾロミド、CP、γ線照射に対する治療抵抗性が増大した (Figure 2F)。これらの効果は非アポトーシス細胞由来のEVでは観察されず、apoEVに特有の機能であることが示された。apoEVのプロ増殖効果は、カスパーゼ阻害剤zVAD(OMe)fmkによる前処理で抑制された (Figure S2E)。in vivoマウスモデル (n=5 mice per group) では、apoEVの共注入により腫瘍増殖が促進され (Figure 1C, 1I, 1K)、マウスの生存期間が短縮した (Figure 1I, p < 0.01)。

apoEVプロテオームにおけるスプライソソームタンパク質の濃縮: LC-MS/MSによるapoEVのプロテオーム解析 (Table S1) では、アポトーシス誘導ありのEVに特異的に濃縮されたタンパク質が同定された。最も有意に濃縮されたカテゴリーは、スプライシングおよびRNA処理関連タンパク質であり (Figure 3A, 3B)、PRPF8、U2AF2、SF3A3、SF3B1、SNRNP70 (U1 snRNP 70kDa)、HNRNPU、HNRNPA2B1、HNRNPCなどのスプライソソーム構成要素が同定された (Figure 3C)。一方、マイクロベシクル分画 (2,000×g) ではスプライソソームタンパク質の濃縮は認められず、apoEV (エクソソーム様サイズ) に特有の搭載であることが確認された (Figure 3C, S4E)。小RNA-seq解析では、U2、U4、U5、U6 snRNAがapoEV内に有意に濃縮されていたが (U1は濃縮されず)、これは機能的U1を欠くスプライソソーム様複合体の存在を示唆する (Figure 3D, 3E)。GBM患者6例の血清を化学放射線療法前後で比較したところ、3例でスプライソソームタンパク質U2AF2の増加が観察された (Figure 3I)。

カスパーゼ依存的スプライシング因子の核から細胞質への移行とapoEVへの封入: カスパーゼ阻害剤zVAD(OMe)fmk処理により、apoEV内のスプライシング因子タンパク質が著明に減少し、その封入がカスパーゼ依存的であることが確認された (Figure 4E)。免疫蛍光およびウェスタンブロット解析により、PRPF3、HNRNPUなどのスプライシング因子が放射線処理後に核から細胞質へ移行することが示された (Figure 4A, S4G)。特に、HNRNPUはN末端DNA結合ドメインがカスパーゼにより切断され、C末端断片が細胞質へ移行し、その後apoEVへ封入されることが示唆された (Figure 4F, 4H)。これは、カスパーゼによるタンパク質プロセシングがスプライシング因子の「核捕捉解除」を引き起こし、apoEVへの封入を可能にする機序を示している。

apoEVによる受取細胞のスプライシング変化とMES関連AS景観の誘導: apoEV処理PN GBM細胞のRNA-seq解析 (rMATS) により、mRNAスプライシングにおける実質的な変化が同定された (Table S2)。apoEVによって誘導された代替スプライシングイベント (ASE) の30%以上が、より治療抵抗性の高いMES GBM細胞特有のASEと重複した (Figure 5A)。遺伝子オントロジー (GO) 解析では、DNA損傷修復およびストレス応答関連遺伝子群が有意に濃縮された (Figure 5B)。また、EMT関連遺伝子セット (CTNND1、SCRIB、ABI1、ITGA6、PARD3など) との重複も確認された (Figure 5C)。スプライシング全般を阻害するpladienolide B (SF3B1阻害剤) はPN GBM細胞の増殖を強く抑制したが、apoEV添加によりその阻害が部分的に回復した (Figure 5F, p < 0.01)。これは、apoEVが外因性のスプライシング因子を供給することで、内因性のスプライシング機構の阻害を補償する可能性を示唆している。

RBM11のMES促進機能と発がん性アイソフォームへのスプライシングシフト: MES GBM特異的スプライシング因子であるRBM11が、アポトーシス誘導後に放射線感受性PN GBM細胞で発現上昇することが確認された (Figure 6A, 6B)。GFP-RBM11をトランスフェクションした細胞由来のapoEVにGFP-RBM11が封入され、受取細胞内でGFP蛍光として検出されたことから、RBM11の直接的な細胞間移送が証明された (Figure 6C)。RBM11は、MDM4 exon 6のスキッピング (MDM4s産生促進) およびCCND1 exon 1のスキッピング (CyclinD1a産生促進) を誘導した (Figure 7C, 7D)。これらの発がん性アイソフォームは、GBM患者での発現上昇と不良予後との関連が報告されている (Figure 8A, 8B, p=0.0392 for Cyclin D1, p=0.0112 for MDM4)。さらに、外因性RBM11タンパク質が内因性RBM11 mRNAの転写レベルを上昇させる正のフィードバックループも確認された (Figure 6G, 6H)。MES細胞でのRBM11 KDは、PN表現型へのシフトと放射線感受性の回復をもたらした (Figure 6I)。RBM11のノックダウンは、apoEVの増殖促進効果をin vitroおよびin vivoで有意に減少させた (Figure 8C, 8D, 8E, 8F)。GBM患者の原発腫瘍と再発腫瘍のペア検体43例の比較では、再発GBMでRBM11タンパク質レベルが有意に上昇しており (Figure 8G)、RBM11の高発現は患者の不良な術後生存期間と相関することが示された (Figure 8H, p=0.0018)。

考察/結論

本研究は、アポトーシスを起こしたGBM細胞が、スプライソソームタンパク質およびsnRNAを搭載した細胞外小胞 (apoEV) を介して、生存する腫瘍細胞の悪性度と治療抵抗性を促進するという「逆説的」な細胞間コミュニケーションメカニズムを本研究で初めて明確に示した。この知見は、アポトーシス細胞が周囲の生存細胞に促増殖シグナルを送るという先行研究 (Huang et al. 2011; Obenauf et al. 2015) の概念を、スプライシング制御という新規の分子メカニズムで具体化した点で新規性が高い。

特に、放射線や化学療法後にPN型GBMがMES型へ転換するという臨床的悪性化パターンが、apoEVを介したスプライシング因子の転送によって説明可能であることが示唆された。apoEVはMDM4sやCyclinD1aといった発がん性アイソフォームへのスプライシングシフトを誘導し、これらのアイソフォームの発現上昇はGBM患者の不良予後と関連することが示された。RBM11がこのスプライシングシフトの主要なドライバーの一つであることが同定され、外因性RBM11が内因性RBM11の発現を正のフィードバックループで増強するというメカニズムも明らかになった。この発見は、腫瘍治療介入そのものが悪性化シグナルを生成するという逆説的な状況を示唆しており、臨床的意義は大きい。

本研究の知見は、apoEVの遮断やRBM11の標的化が、GBMの治療抵抗性獲得を抑制し、腫瘍の悪性度を低下させるための新規治療戦略となりうる可能性を示している。例えば、apoEVの放出を阻害するか、apoEV内のスプライシング因子の機能を標的とすることで、治療後の腫瘍再発や悪性化を抑制できるかもしれない。これは臨床応用への重要な一歩である。

しかし、本研究にはいくつかの残された課題とlimitationが存在する。第一に、患者検体を用いたin vivo検証は、血清中のU2AF2タンパク質データがn=6例に限られており、より大規模なコホートでの検証が必要である。第二に、apoEVの全身的な遮断がどのような全身毒性を引き起こすかは不明であり、その安全性プロファイルの評価が今後の検討課題である。第三に、RBM11以外のapoEV内に濃縮された多数のスプライシング因子の機能的寄与は未解明であり、それらの複合的な作用についても詳細な解析が求められる。また、apoEVがスプライシング因子を個別に輸送するのか、あるいは機能的なスプライソソーム複合体として輸送するのかについても、さらなる研究が必要である。本研究は、細胞外小胞を介したエピトランスクリプトーム制御という、腫瘍間コミュニケーションの新たな次元を提示した点で、これまでの知見と異なり、今後の研究の方向性を示す重要な論文である。

方法

GBM細胞株 (U87、U251、X12、L0など、PN/MESサブタイプ分類済み) を用いて、放射線 (5 Gy)、テモゾロミド (TMZ)、シスプラチン (CP) 処理によりアポトーシスを誘導した。アポトーシス誘導後、apoEV (apoptotic extracellular vesicles) を120,000×gの超遠心分離により回収し、CD63陽性、ナノ粒子サイズであることを透過型電子顕微鏡 (TEM)、ナノ粒子トラッキング解析 (NTA) 、フローサイトメトリーで特性解析した。in vitro実験では、apoEVを50 µg/mLの濃度で受取細胞に添加した。これは、癌患者血中のエクソソーム濃度が20-100 µg/mLの範囲であるという報告に基づき、臨床的に関連する濃度と判断された (Muller et al. 2014)。

apoEVのプロテオーム解析は、LC-MS/MSを用いてアポトーシス誘導あり/なしのEV間で比較し、apoEV特異的に濃縮されるタンパク質を同定した。特に、スプライシングおよびRNA処理関連タンパク質に焦点を当てた。小RNA-seqにより、apoEV内のU snRNA発現プロファイルを解析した。カスパーゼ阻害剤 (z-VAD-fmk) を用いて、スプライシング因子のapoEVへの封入がカスパーゼ依存的であるかを検証した。蛍光FISH (fluorescence in situ hybridization) およびウェスタンブロットにより、スプライシング因子の核から細胞質への移行およびapoEVへの移行を確認した。

apoEV処理後の受取PN GBM細胞では、RNA-seq解析 (rMATS) を用いて選択的スプライシング (AS) 変化を同定した。表現型評価として、MES (mesenchymal) /PN遺伝子マーカーの発現、細胞増殖、浸潤能、グルコース代謝 (Seahorse Bioanalyzerによる細胞外酸性化率 ECAR (extracellular acidification rate) 測定)、および放射線・化学療法に対する抵抗性を評価した。スプライシング依存性を検証するため、SF3B1阻害剤であるPladienolide Bを用いた実験を行った。RBM11 (RNA binding motif protein 11) の機能解析では、RBM11-GFP融合タンパク質をトランスフェクションした細胞からapoEVを回収し、その内封入および受取細胞への移送を追跡した。MES細胞におけるRBM11のノックダウン (KD) は、AS変化および表現型変化に与える影響を評価した。臨床的検証として、GBM患者6例の血清を用いて、化学放射線療法前後のU2AF2タンパク質レベルをELISAで測定した。統計解析にはStudent’s t-testおよびlog-rank testを用い、p < 0.05を有意差ありとした。