• 著者: Edwina R. Allen, Kaitlyn M. Whitefoot-Keliin, Ellen M. Palmatier, Andrew R. Mahon, Mallary C. Greenlee-Wacker
  • Corresponding author: Mallary C. Greenlee-Wacker (Department of Biology, Central Michigan University, Mount Pleasant, MI, United States; mcgreenl@calpoly.edu)
  • 雑誌: Frontiers in Immunology
  • 発行年: 2022
  • Epub日: 2022-07-29
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 35967325

背景

好中球は血中で最も豊富な白血球であり、その活性化状態に応じて、細胞外小胞 (EV) の放出と、好中球細胞外トラップ (NET) 形成 (NETosis) という2つの異なる産物を放出する。EVは20〜1000 nmの膜包含構造体であり、細胞間コミュニケーションを媒介する重要な役割を担うことが知られている Raposo et al. JCellBiol 2013。敗血症やその他の炎症性疾患において、好中球由来EVの増加が報告されており Prakash et al. J Trauma Acute Care Surg 2012、その機能的異質性が親細胞の状態を反映することが示されている Kolonics et al. Cells 2020。当初、好中球由来EVは抗炎症機能を持つと考えられていたが Gasser and Schifferli Blood 2004、その後の多くの研究により、免疫調節作用や炎症促進作用が明らかにされている Alvarez-Jiménez et al. Front Immunol 2018。例えば、結核菌で処理した好中球由来EVは、TLR2/6依存的な炎症性サイトカイン産生を誘導することが報告されている。しかし、無菌性炎症における好中球由来EVがパターン認識受容体を活性化するかどうかは、未解明の課題として残されている。

一方、NETは、脱凝縮したDNAにヒストンや顆粒タンパク質が結合した細胞外トラップであり、細菌捕捉機能を持つ一方で Brinkmann et al. Science 2004、血栓形成、自己抗体産生、臓器障害など、宿主への有害作用も知られている Wang et al. Sci Rep 2018。NETosisは細菌や特定の薬理学的薬剤に応答して起こり、炎症状態において増加する Daniel et al. Nat Rev Nephrol 2019。NETとマクロファージの共培養は抗菌応答を強化し Monteith et al. Sci Adv 2021、インフラマソーム活性化をプライミングするが Warnatsch et al. Science 2015、ヒトマクロファージへのNETの取り込みはNFκB活性化やI型インターフェロン産生を誘発しないという報告もある Farrera and Fadeel J Immunol 2013。細胞質二本鎖DNAセンサーであるcGAS-STING経路は、cGASによる2’3’-cGAMP合成、STING二量体化、その後の転写因子IRF-3 (I型インターフェロン誘導) およびNFκB (IL-6産生誘導) の活性化というシグナルカスケードを形成する Hopfner and Hornung Nat Rev Mol Cell Biol 2020。NET由来DNAをマクロファージにトランスフェクションするとcGAS-STINGが活性化することは示されているが Apel et al. Sci Signal 2021、EVを介した自然なDNA輸送経路がどのような免疫応答をもたらすかは未解明であった。

A23187はカルシウムイオノフォアであり、NOX非依存的かつ非溶血的なバイタルNETosisを急速に誘導する Douda et al. Proc Natl Acad Sci U S A 2015。EVとNETosisは同時に生じ得るが、NETosis中に産生されたEV (A23187-EV) がマクロファージのcGAS-STING経路を活性化する可能性は未検討であった。特に、EVの膜完全性、内腔DNAと表面DNAの寄与、およびマクロファージのミトコンドリアへの影響が炎症応答の性質を決定するメカニズムは明らかでなかった。これらの知見の不足が、好中球由来EVが炎症性疾患において果たす役割の全体像を理解する上で知識ギャップとして残されている。

目的

本研究の目的は、A23187処理によりバイタルNETosisを誘導した好中球から分離したEV (A23187-EV) を詳細に特性解析し、マクロファージのcGAS-STING依存的IL-6産生を引き起こすメカニズムを解明することである。具体的には、A23187-EVsが好中球顆粒タンパク質、DNA結合タンパク質、DNAとどのように関連しているか、またEV表面DNAの関与、および好中球由来EVとマクロファージミトコンドリアの相互作用が、炎症応答の性質を決定する役割を明らかにすることを目指した。また、A23187-EVがI型インターフェロン産生を伴わないIL-6産生を誘導する非古典的なcGAS-STING経路の活性化メカニズムを特定することも重要な目的とした。この研究は、NETosis中の好中球由来EVがマクロファージの炎症応答に与える影響に関する理解を深め、敗血症や他の炎症性疾患における新たな治療標的の特定に貢献することを目指す。

結果

バイタルNETosisの確認とEVs産生: A23187 (4 µM) およびS. aureus (MOI 10:1) 処理した好中球は、LDH漏出を伴わずに細胞外DNAを放出し、バイタルNETosisが誘導されたことを確認した (Figure 1A, B)。PMA処理は2時間後に溶血性NETosisを誘発した。分離したEVはTEMによりカップ状形態を示し、直径200 nm未満のEVが優位であった (Figure 1C)。これらのEVはCD63およびフロチリン-1陽性、GRP94陰性であり、MISEV2018ガイドラインに準拠するEVであることを確認した (Figure 1D, E)。

A23187-EVの特性とDNA含有: NETosis中のA23187およびS. aureus処理から得られたEVは、自発産生EVやfMLF-EVと比較して、MPOおよび好中球エラスターゼ (NE) の発現量が高かった (Figure 2A)。A23187-EVおよびS. aureus-EVは、ヒストンH3およびTFAMを高発現していたが、シトルリン化ヒストンH3はS. aureus-EVのみで検出された。ddPCRによる18S rRNA (核DNA) コピー数定量では、A23187-EVは自発EVの5.3倍に増加したが、S. aureus-EVは28.6倍とさらに顕著な増加を示した (Figure 2C)。DNase I処理により核DNA表面結合コピー数が著明に低下し、核DNAの大部分がEV表面に存在することが示唆された (p<0.0001)。ミトコンドリアDNA (tRNA Leu) は自発EVに高い基礎レベルで存在し、各処理群でも増加傾向はあったものの、有意差は認められなかった (Figure 2D)。DNase I処理後もミトコンドリアDNAの大部分はEV内腔に存在した。

トランスフェクションDNAによるcGAS-STING活性化: A23187-EV由来DNAをDOTAPでマクロファージにトランスフェクションすると、IL-6およびIFNα2産生が濃度依存的に増加した (Figure 2E)。特に、1 µg/mL以上のDNA濃度で両サイトカインの有意な増加が認められた (p<0.05)。H151 (STING阻害剤) の前処理により、IL-6およびIFNα2産生は基底値まで抑制され (p<0.001、p<0.0001)、EV-DNAがcGAS-STING経路を介して両サイトカイン産生を誘導する能力が確認された (Figure 2F, G)。この実験では、n=3〜4の独立した実験が実施された。

A23187-EVのマクロファージ取り込みと選択的IL-6産生: A23187-EVはマクロファージに時間依存的に取り込まれ、3時間後には82.1%のCD14⁺マクロファージ (n=3 experiments) がPKH67⁺EVを取り込んだ (Figure 3A)。この取り込みはサイトカラシンD (8 µM) により2.2倍減少し、ワートマニン両濃度でも減少したことから、アクチンおよびPI3K依存的エンドサイトーシス/マクロピノサイトーシスが主要な取り込み経路であることが示唆された (Figure 3B, C)。A23187-EV処理 (1〜50 µg/mL) により、マクロファージのIL-6産生は対照群と比較して13.8倍増加した (p<0.001) (Figure 4A)。一方、自発EVやfMLF-EVではIL-6産生増加は認められなかった。TX-100 (0.05%) によるEV溶解はIL-6産生を2.6倍減少させ、EVの膜完全性が炎症応答に重要であることが示された (Figure 4B, C)。

EV表面DNA非依存的なcGAS-STING活性化機構の証明: γ140 (cGAS阻害剤) の前処理により、A23187-EV誘導のIL-6産生は基底値まで有意に減少した (p<0.001) (Figure 5A)。H151 (STING阻害剤) の前処理でも同様にIL-6産生が抑制された (p<0.001) (Figure 5B)。これらの阻害剤の特異性は、poly(I:C) (TLR3アゴニスト) 誘導IL-6産生がγ140およびH151により影響を受けなかったことで確認された。しかし、A23187-EVはIFNα2産生を誘導しなかった (Figure 5C)。さらに、DNase I処理したEV (n=3 experiments) でも対照EVと同等のIL-6産生が維持され、EV表面DNAがcGAS-STING活性化の主要な因子ではないことが示された (Figure 6A)。表面DNAは50 µg/mLのA23187-EVs中に0.81 µg/mL未満と定量された。

マクロファージミトコンドリア障害を介した非古典的機構: A23187-EV処理6時間後、マクロファージにおいて対照群と比較して1.8倍のミトコンドリア膜脱分極が確認された (JC-1アッセイ、p<0.01) (Figure 6B)。この脱分極は24時間後には基底値に回帰し、LDH漏出は認められなかった (Figure 6C)。自発EV処理群ではミトコンドリア膜脱分極は観察されなかった (Figure 6D)。デジトニン細胞分画実験では、A23187-EVおよびスタウロスポリン処理後に細胞質Baxの低下、およびミトコンドリア膜画分におけるシトクロムcの低下が確認された (Figure 6E)。これらの所見は、ミトコンドリア外膜透過性 (MOMP) の発生、Bax孔形成によるmtDNAの細胞質への漏出、それに続く細胞質内mtDNAによるcGAS活性化、そしてNFκBのみの活性化 (IRF-3非活性化) を介したIL-6産生 (IFNα2非産生) というシグナル連鎖と整合する。

考察/結論

新規メカニズムの意義: 本研究は、NETosis中の好中球由来EV (A23187-EV) がマクロファージに取り込まれた後、EV表面DNAとは独立してミトコンドリア機能障害を誘発し、非古典的cGAS-STING経路 (NFκB選択的活性化、IRF-3非活性化) を介してIL-6産生を引き起こすという、これまで報告されていない新規の炎症機構を初めて明らかにした。このメカニズムは、シスプラチン誘導急性腎障害モデルにおけるミトコンドリア損傷、mtDNA漏出、非古典的cGAS-STING活性化の報告 Maekawa et al. Cell Rep 2019 と類似しており、複数の炎症病態に共通する普遍的なメカニズムである可能性が示唆される。

先行研究との違い: NET由来DNAをトランスフェクションした場合はIL-6とIFNα2が共に産生されるのに対し Apel et al. Sci Signal 2021、本研究で示したA23187-EVによる自然な送達ではIL-6のみが産生された。この結果は、DNAの細胞内送達経路、局在化、およびSTINGへのアクセス様式の違いが、後続の転写因子 (IRF-3 vs. NFκB) の選択的活性化を決定するという重要な概念を示す。EV膜の完全性がこの選択的シグナリングに必要であること (TX-100溶解で応答が2.6倍減弱) は、EVが単なるDNA輸送ベクターではなく、細胞内シグナリングの質を制御する活性的な媒体として機能することを示唆しており、これまでの知見とは対照的である。

臨床的含意と臨床応用: 好中球由来EVsおよびNETsは、敗血症、自己免疫疾患 (全身性エリテマトーデスなど)、およびがん免疫において増加することが知られている。本研究が示したEV-マクロファージ相互作用を介した非古典的STING活性化は、これらの病態におけるIL-6を中心とした炎症増幅機構として機能する可能性がある。感染症、がん、自己免疫疾患におけるSTING媒介NFκBシグナリングの解明に向けたモデル系として、A23187-EVsが有用なツールとなり得る。cGAS-STING経路は現在、多くの治療標的として注目されており (H151などの阻害剤の臨床応用)、本研究の機構的知見はその治療戦略立案に貢献する臨床的意義を持つ。

残された課題: 本研究はin vitro一次細胞系 (ヒト健常ドナー由来マクロファージ) を用いており、in vivoでの複雑な免疫相互作用における検証が残された課題である。また、A23187-EVがマクロファージミトコンドリアに及ぼすシグナル伝達の上流機序 (好中球エラスターゼ、MPO、酸化リン脂質のいずれが主要因か) は未解明のままである。A23187-EV以外の刺激 (生理的病原体誘発NETosis) で産生されたEVが同様の機構を示すかの検証も、今後の重要な検討課題である。

方法

細胞単離と培養: ヒト健常ドナー (Central Michigan UniversityのInstitutional Review Board承認、文書同意取得) の静脈血から好中球およびマクロファージを単離した。好中球はデキストラン沈降、Ficoll-Paque密度勾配分離、低張溶解を経て純度95%以上で単離し、20×10⁶ cells/mLでRPMI 1640に再懸濁した。マクロファージはバフィーコートの末梢血単核球をTeflonジャー内で5〜8日間分化させ、RPMI 1640と20%自己血清を含む完全培地で維持した。細胞は6、12、または24ウェルプレートに5×10⁵ cells/mLで播種された。

NETosis誘導と好中球刺激: 好中球をfMLF (1 µM)、A23187 (4 µM)、PMA (100 nM)、または生きた黄色ブドウ球菌 (S. aureus、MOI 10:1) で37°C、20分間処理した。細胞膜完全性はLDHアッセイ (Pierce) およびSytox Green染色による細胞外DNA定量で評価した。PAD4阻害剤Cl-amidineを用いた実験も行われたが、A23187による細胞外DNA放出は抑制されなかった。

EVs単離と特性解析: 刺激後の好中球上清を4,000×gで20分間2回遠心分離し、その後160,000×gで51分間超遠心分離 (2回) してEVを単離した。EVは200 µl PBSに再懸濁し、分注して-80°Cで保存した。EVの特性解析はMISEV2018ガイドライン Thery et al. JExtracellVesicles 2018 に準拠し、透過型電子顕微鏡 (TEM、Hitachi 7700、ウラニル酢酸染色)、CD63およびフロチリン-1のウェスタンブロット、および小胞体 (ER) 汚染マーカーGRP94の陰性確認を行った。EVタンパク質濃度はBCAアッセイで測定した。

EV成分分析: ウェスタンブロットにより、ミエロペルオキシダーゼ (MPO)、好中球エラスターゼ (NE)、ヒストンH3、シトルリン化ヒストンH3、ミトコンドリア転写因子A (TFAM) などのタンパク質を検出した (各1〜9 µgタンパク質)。EV-DNAはQiagen DNeasy Blood and Tissue Kitで単離し、0.7%アガロースゲル電気泳動で解析した。ddPCR (Bio-Rad QX200) を用いて、18S rRNA (核DNA) およびtRNA Leu (ミトコンドリアDNA) のコピー数を定量した。表面DNAと内腔DNAの比較のため、DNase I処理を行った。

マクロファージ活性化アッセイ: マクロファージをEV (1〜50 µg/mL) または単離DNA (DOTAP脂質トランスフェクション) で18時間処理後、ELISA (BioLegend) でIL-6およびIFNα2の産生量を測定した。cGASおよびSTINGの阻害には、それぞれγ140 (cGAS阻害剤) およびH151 (STING阻害剤) を用いて前処理を行った。EVの膜完全性の影響を評価するため、TX-100 (0.05%) によるEV溶解実験も実施した。

EV取り込み実験: PKH67標識A23187-EVを0.5〜3時間マクロファージに添加し、フローサイトメトリー (CD14-APC共染色) で取り込み率を測定した。取り込み機構を評価するため、サイトカラシンD (アクチン重合阻害剤) およびワートマニン (PI3K阻害剤) を用いた。

ミトコンドリア機能評価: JC-1アッセイ (MitoProbe) によりミトコンドリア膜電位を測定した (CCCPを陽性対照とした)。デジトニン分画法を用いて細胞質画分とミトコンドリア画分を分離し、ウェスタンブロットでBax、シトクロムc、TOM20のレベルを評価した。

統計解析: 統計解析にはPrism v9.3.1 (GraphPad) を使用した。外れ値はGrubb’s outlier testで検出し、解析から除外した。多群間の比較には一元配置または二元配置ANOVAを用い、その後のDunnett’sまたはSidak’s post-hoc多重比較検定を実施した。