• 著者: Shrawan Kumar Mageswaran, Megan Gorringe Dixon, Matt Curtiss, James P. Keener, Markus Babst
  • Corresponding author: Markus Babst (Center for Cell and Genome Science and Department of Biology, University of Utah, Salt Lake City, UT, USA)
  • 雑誌: Traffic
  • 発行年: 2014 (published online 2013-10-22)
  • Epub日: 2013-11-14
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 24148098

背景

Multivesicular body (MVB) 経路は真核細胞が transmembrane protein を lysosome/液胞で分解する主要経路であり、lysosomal hydrolase の輸送も担う。MVB 経路への cargo sorting は概ね ubiquitination に依存し、endosome 上で ESCRT (endosomal sorting complex required for transport) 群が ubiquitinated cargo を認識し intraluminal vesicle (ILV) に取り込む。ESCRT は ESCRT-0, -I, -II, -III, Vps4 complex の 5 つからなる。Katzmann ら 2001 (ESCRT-I による ubiquitin 依存 sorting の発見、PMID 11511343) や Williams ら 2007 の ESCRT review (PMID 21763610) が確立した従来の epistasis モデルでは、ESCRT-0 → ESCRT-I → ESCRT-II → ESCRT-III → Vps4 という線形順序で、ESCRT-0/I/II が cargo 認識、ESCRT-III が膜変形・膜切断、Vps4 が ESCRT-III 脱重合を担うとされてきた。一方、Stenmark ら 2002 (FYVE-PI3P 局在、PMID 11493665) が示したように ESCRT 自身も endosome 膜に PI3P 結合で局在し、かつ自らも ubiquitinated されるにもかかわらず、ILV に取り込まれず細胞質に recycle されるという矛盾があった。Babst ら 1998 (Vps4 AAA ATPase の解析、PMID 9606181) や Hurley ら 2010 (membrane budding/scission の review、PMID 20588296) は ESCRT 各複合体の三次元構造や複合体間相互作用を精緻に決定したが、この「機械と cargo を分ける規則」は依然として未解明 (enigmatic) のまま残されていた。すなわち、cargo を ILV へ送りながら機械自身を取り込まずに recycle させる時空間的な仕組みの理解が手薄であり、何が cargo と machinery を区別するのかという根本問題に対する分子論的説明が不足していた。

目的

(i) ESCRT に結合する人工融合蛋白 (ESCRT-interaction domain [EID] + GFP + FYVE ドメイン) を構築し、結合する ESCRT complex (ESCRT-I, -II, -III) の違いによる局在 (machinery / cargo / non-interacting) の差を定量的に解析する、(ii) ESCRT への結合親和性が cargo と machinery の運命を決定するか検証する、(iii) ubiquitination 非依存的な MVB sorting が可能かを rsp5-1 変異株および Hse1-DUB 発現株で検証する、(iv) 計算機シミュレーションで柔軟な 2D lattice モデルが cargo/non-cargo の選別を再現できるかを検証する——ことを目的とする。

結果

ESCRT-III への強結合は machinery 様 recycling を駆動する:n=50 細胞の定量で、MIT-GFP-FYVE は >90% の細胞で late endosome にのみ局在し vacuolar membrane に到達しない machinery 表現型を示した (Fig 3A)。これは MIT-ESCRT-III 相互作用が FYVE-PI3P 相互作用を上回る強度であり、Vps4 依存的に ESCRT-III と共に膜から除去されるためと示された。CPY-invertase assay (n=3 実験平均) では MIT-GFP-FYVE の分泌は 6 ± 0.2% で、Vps4(E233Q) の 100 ± 4.8% に対し陰性対照 GFP-FYVE (6 ± 0.2%) と同等 (約 17 分の 1) であり、dominant-negative 効果はなく内在 ESCRT 機能を阻害しないことが確認された (Table 2)。MIM2 部位の I18D 単独変異 (分泌 10 ± 0.3%) では recycling が若干低下するが機械性を維持し、MIM1+MIM2 両方の二重変異 (I18D,L64D、分泌 9 ± 0.3%) では大半が non-interacting 表現型を示し ESCRT 相互作用の喪失を反映した (約 35% の細胞では弱い cargo 様 sorting を残した)。

ESCRT-III への弱結合は cargo 様 ILV 取り込みを駆動する:MIM1 部位単独変異 MIT(L64D)-GFP-FYVE は予想に反して efficiently に vacuolar lumen へ sorting され cargo 様表現型を示した (Fig 3A)。rsp5-1 変異株および Hse1-DUB 発現株で sorting は保持され ubiquitin 非依存的であることが確認された (Fig 3B)。vps4Δ 株では vacuolar lumen 送達が遮断されたため、ESCRT 機械全体の機能には依存する。既知の結合親和性順序 MIT > MIT(I18D) > MIT(L64D) > MIT(I18D,L64D) と表現型 (machinery → machinery → cargo → non-interacting) が一致し、結合強度が運命を決定することが支持された。

ESCRT-III 結合の他の EID も同様の二元性を示す:Bro1(N)-GFP-FYVE と Doa4(C)-GFP-FYVE (Bro1 経由で ESCRT-III に結合) は cargo 様に vacuolar lumen へ sorting され、CPY-invertase 分泌はそれぞれ −6 ± 0.4% / −3 ± 0.6% で阻害効果はなかった (Table 2)。rsp5-1・Hse1-DUB 共発現下でも cargo 表現型を維持したため ubiquitin 非依存的であることが確認された (Fig 3D)。Doa4(C,AAFA) 変異 (Bro1 結合部位破壊) では sorting が消失し (Fig 3C)、Bro1 結合に依存することが証明された。Did2(N)-GFP-FYVE は machinery 様で、ESCRT-III への強結合が recycle を駆動したと解釈される。

早期 ESCRT (-I/-II) への結合も ubiquitin 非依存的 MVB sorting の signal となる:Vps27(PSDP)-GFP-FYVE (ESCRT-I 結合) と Vps28(C)-GFP-FYVE (ESCRT-II 結合) は cargo 様に MVB 経路へ sorting されたが、sorting 効率は poor cargo 相当であった (Fig 4A)。rsp5-1 変異・Hse1-DUB 発現下でも sorting は保持され ubiquitin 非依存的であった (Fig 4B)。対照の 2Ub-GFP-FYVE (ubiquitin 2 個融合) は CPY-invertase 分泌 18 ± 0.9% を示し、これは empty vector (0 ± 0.4%) や Vps27(PSDP) (−2 ± 0.5%)・Vps28(C) (−7 ± 0.2%) と比較しても poor sorting に留まり、これら ESCRT-I/II 結合ドメインが ubiquitin 自身と同等 (約 1 倍、すなわち差なし) の MVB sorting signal として機能することが示された。なお Ub-GFP-FYVE (ubiquitin 1 個) は non-interacting 表現型を示し ubiquitin が立体的にアクセス不能であったと解釈され、膜近位 C 末に 2 つ目の ubiquitin を追加することで sorting が回復した。Western blot で全融合蛋白が vps4Δ 株で full-length で存在し (Fig 4C)、プロテアーゼ切断によるアーチファクトは否定された。

膜結合様式に依存しない MVB sorting:MIT と Vps28(C) を type II transmembrane 蛋白 GFP-Dap2 に融合したところ、両者とも vacuolar lumen へ sorting された (Fig 4D)。FYVE 系と異なり、transmembrane 蛋白は膜から除去不可能なため、MIT-ESCRT-III 結合を持つ MIT-GFP-Dap2 は ESCRT-III との相互作用強度にかかわらず efficient に ILV へ取り込まれるという新たな機序を示す。rsp5-1・Hse1-DUB 下で sorting は僅かしか低下せず ubiquitin 非依存的であった。Vps28(C)-GFP-Dap2 は部分的に vacuolar membrane にも残り MIT-GFP-Dap2 より sorting 効率が低く、ESCRT-III 結合が早期 ESCRT 結合より効率的という FYVE 系の結果と整合した (Western blot で full-length 確認、Fig 4E)。一方、MIT-GFP (膜結合ドメインなし) は vacuole に送達されないため、ESCRT 結合に加え膜結合が ILV sorting に必須であることが示された。

In silico モデルが柔軟な 2D lattice sorting を支持:2D hexagonal grid 上で ESCRT (1 cargo-binding + 5 ESCRT-ESCRT sites)・cargo・non-cargo の拡散・結合・network 形成・vesicle 除去をシミュレートした結果、cargo と non-cargo を高い効率・高い fidelity で選別することが 20 回平均で示された (Fig 6A,B)。非 cargo の誤取り込みはまれで、cargo 濃度・non-cargo 濃度に依存しない頑健性が示された。単一 ESCRT 結合部位を持つ “EID-GFP-FYVE mimic” 様成分を追加しても network 形成は阻害されず、cargo と mimic 両方が効率的に sorting された。ESCRT-ESCRT 相互作用部位数を 5 から 4 または 3 に減らしても sorting 効率・fidelity は保持され、システムの頑健性と冗長性が示された。

考察/結論

本研究の核心的結論は、(1) ESCRT-I, -II, -III のいずれへの結合も MVB への cargo sorting を mediate できる、(2) ESCRT-III への結合強度が “machinery (recycle)” と “cargo (ILV 取り込み)” の運命を決定する、(3) 従来モデルで “cargo sorting 後に作用する” とされた ESCRT-III と Vps4 が cargo sorting と concurrently 機能する、(4) cargo を区別する唯一の要素は “結合強度” であり、ESCRT 間の厳密な空間・時間的階層は必須ではない、という点にある。先行研究との違いとして、本知見は Katzmann らの (Cell 2001 に相当する) ESCRT-I による ubiquitin 依存 sorting を中心とした従来の epistasis モデル (ESCRT-0/I/II が cargo 認識、ESCRT-III/Vps4 が膜変形/切断) とは対照的に、ESCRT 全体が柔軟な 2D 蛋白 network として機能し、各位置を cargo あるいは machinery のどちらでも占有可能とする点で根本的に異なる。本研究で初めて、結合親和性の連続的変化のみで「機械」が「cargo」へと変換されること (MIT > MIT(L64D)) を単一系で示し、ubiquitin が必須 sorting signal ではなく付加・除去で相互作用を制御する一時的 EID にすぎないというnovel な概念を提示した。これは ubiquitin 非依存 sorting を示す aquaporin AQP2 や G protein-coupled receptor PAR1 の先行知見 (LIP5/ALIX 経由) とも整合する。臨床応用の観点では、exosome (MVB 由来分泌小胞) における ubiquitin 非依存的な EV cargo loading 機構の分子基盤を与え、tumor-derived EV の選択的 cargo loading や exosome biogenesis を標的とした治療開発への橋渡しとなりうる。EV の sorting・分離技術や size exclusion chromatography による分画の議論 (Kaddour et al. Viruses 2021)、および EV による全身性の転移制御 (Wang 2022) とも接続する基礎機構である。残された課題 (limitation) は、(a) 酵母系の人工融合蛋白による解析であり哺乳細胞 ESCRT 系への外挿には実験的検証が必要、(b) ESCRT-0 との直接結合ドメインが解析に含まれない、(c) 2D lattice モデルは実際の膜曲率・ILV 成熟の動態を完全には表現しない、という点である。

方法

デザイン・実験系: 出芽酵母 (Saccharomyces cerevisiae、cell line に相当するモデル生物) を用いた合成生物学的アプローチ。PI3P (phosphatidylinositol 3-phosphate) 結合 FYVE (Fab1/YOTB/Vac1/EEA1) ドメイン (EEA1 C 末の FYVE + 二量体化ドメイン) と GFP を融合した endosome 局在骨格に、各 ESCRT complex と結合する EID (ESCRT-interaction domain) を N 末に連結した人工 ESCRT mimic を構築 (計 14 構築体、Table 1)。標準株 (cell line に相当する yeast strain) として BY 系野生株および vps4Δ・rsp5-1・pep4Δ prb1Δ 変異株を使用した。データは各群 n=50 cells の蛍光強度比を平均値で比較し、群間差は記述統計 (mean ± SD と分布の重なり ≥90% 範囲) で評価した (formal な log-rank/t-test 等の検定は適用せず descriptive な比較に留めた)。エンドポイント・定量: 標準蛋白として GFP-Dap2 (non-interacting 膜蛋白)、GFP-Cps1 (ubiquitinated cargo)、Ist1-GFP (ESCRT-III 結合 machinery) の 3 種の局在を蛍光顕微鏡で各 n=50 細胞分析し、“vacuolar lumen-to-vacuolar membrane” および “vacuole-to-total signal” の 2 つの強度比を定量。各 ESCRT mimic も同様に n=50 細胞ずつ撮影し、各標準蛋白を含む細胞の ≥90% を含む 3 領域 (non-interacting/cargo/machinery) を scatter plot 上に定義して分類した (membrane signal が lumen 以下の場合は membrane 値を lumen 値に設定、よって lumen/membrane 比は ≤1.0)。機能 assay: CPY-invertase secretion assay (n=3 実験の平均) で各融合蛋白の MVB 経路への dominant-negative 効果を測定 (Vps4(E233Q) を 100% 基準、empty vector を 0% 基準に正規化)。EID: MIT (Vps4 の ESCRT-III 結合ドメイン) とその変異 I18D (MIM2 interaction 弱化)・L64D (MIM1 interaction 弱化)・I18D+L64D 二重変異、Bro1(N) (ESCRT-III Snf7 結合)、Doa4(C) (Bro1 結合・脱 ubiquitin 化ドメイン) と Doa4(C,AAFA) 変異、Did2(N) (ESCRT-III 結合)、Vps27(PSDP) (ESCRT-I 結合)、Vps28(C) (ESCRT-II 結合)、2Ub (N 末+C 末 ubiquitin) を使用。Ubiquitin 依存性検証: rsp5-1 変異株 (cargo ubiquitination を担う E3 ligase enzyme 不活化) および Hse1-DUB (deubiquitinase 融合) 発現株、ESCRT 機能検証として vps4Δ 株。確認: Western blot (anti-GFP, Snf7 を loading control) で vps4Δ pep4Δ prb1Δ 株での融合蛋白の full-length 存在を確認。統計・モデル: gene knockout は PCR-based 法で構築し plasmid は Quikchange mutagenesis で作製。2D hexagonal grid の in silico Monte Carlo シミュレーション (確率的拡散・結合モデル) で ESCRT (1 cargo-binding site + 5 ESCRT-ESCRT interaction sites)・cargo・non-cargo の拡散・結合・vesicle formation を 20 回繰り返し平均し、sorting efficiency と fidelity を評価した。