• 著者: Derek W. Russell, Amit Gaggar, George M. Solomon
  • Corresponding author: George M. Solomon (University of Alabama at Birmingham)
  • 雑誌: Annals of the American Thoracic Society
  • 発行年: 2016
  • Epub日: 2016-04-01
  • Article種別: Review
  • PMID: 27115946

背景

呼吸器系は、1日あたり約15,000 Lもの外気と接し、約160 m²に及ぶ広大な肺胞表面積を有する、極めて感染の危険に晒されやすい環境である。この脆弱な界面において、生体防御の最前線を担うのが好中球、すなわち PMN (polymorphonuclear cell: 好中球) である。PMNは、骨髄で約2週間かけて成熟し、循環血液中から炎症部位へと遊走する。健常な肺微小環境においては、PMNの遊走、接着、貪食、脱顆粒、および殺菌といった一連の機能は緻密に制御されており、病原体の効果的な排除と組織修復のバランスが維持されている。しかし、この恒常性維持機構が破綻すると、PMNは強力な組織破壊因子へと変貌する。

特に、遺伝性疾患である CF (cystic fibrosis: 嚢胞性線維症) 、多様な病因により気道拡張を呈する NCFBE (non-cystic fibrosis bronchiectasis: 非嚢胞性線維症気管支拡張症) 、およびプロテアーゼ制御不全を特徴とする A1ATD (alpha-1 antitrypsin deficiency: α1-アンチトリプシン欠損症) の3疾患においては、PMNの機能異常が共通の病態基盤として存在することが知られている。PMNは、化学物質の濃度勾配に従って走化し、血管内皮細胞上のセレクチン分子を介して接着・ローリングを行い、組織内へと遊走する。局所に到達したPMNは、病原体を貪食し、細胞内顆粒から殺菌物質を放出するだけでなく、染色体DNAと抗菌タンパク質を細胞外に放出して網目状の構造を形成する NETs (neutrophil extracellular traps: 好中球細胞外トラップ) を形成する。このNETsは、Brinkmann et al. Science 2004 によって発見された画期的な殺菌機構であり、アポトーシスや壊死とは異なる能動的な細胞死様式を伴う。

しかし、これら3つの慢性気道疾患においては、PMNが過剰にリクルートされる一方で、局所における実際の殺菌能が著しく低下するというパラドックスが生じている。過剰に放出されたプロテアーゼは、病原体を排除する代わりに宿主の肺組織を破壊し、さらなる炎症を惹起する悪循環(vicious cycle)を形成する。これまでの先行研究(Cole 1986, Stockley 2014)では、各疾患における特定のプロテアーゼ活性や受容体異常が個別に報告されてきた。しかし、これら3疾患におけるPMNの運命(fates)を横断的かつ包括的に比較し、肺微小環境がPMNの表現型を能動的に変化(チューニング)させるという統合的な視点からの議論は不足していた。特に、どのような分子標的が3疾患に共通して悪循環を駆動しているのか、またそれらを標的とした治療介入がどのように肺構造の破壊を阻止し得るのかという点については、依然として未解明の課題や知識のgapが残されている。本レビューは、これらの慢性肺疾患におけるPMNの病態生理学的役割を再定義し、新たな治療戦略の基盤を築くことを目指す。

目的

本レビューの目的は、CF、NCFBE、およびA1ATDの3つの代表的な慢性気道疾患におけるPMNの運命(fates)――具体的には、骨髄からのリクルート、血管内皮への接着、組織への遊走、病原体の貪食、細胞外への脱顆粒、殺菌能、NETs形成、およびアポトーシス――を詳細に比較検討することである。これにより、各疾患におけるPMNの機能異常の共通点と相違点を分子レベルで整理し、PMNが肺の微小環境によって能動的にその表現型を変化させるという「アクティブ・チューニング」の概念を提示する。さらに、過剰な炎症反応と病原体クリアランスの低下がどのように悪循環を形成し、肺組織の破壊を進行させるのかを解明する。最終的に、本レビューは、PMNを標的とした新規治療薬(プロテアーゼ阻害薬、CFTR修復薬、α1-AT補充療法など)の開発に向けた基盤情報を提供し、臨床現場における新たな免疫調節療法の可能性を提示することを意図する。

結果

CF気道におけるCXCR1切断と殺菌能低下の分子機序: CFTR遺伝子変異による粘液線毛クリアランスの低下は、気道内での緑膿菌の持続的な定着を招く。CFの気道局所に動員されたPMNでは、脱顆粒によって放出された過剰なNEが、PMN自身のケモカイン受容体であるCXCR1を特異的に切断する。このプロテオリシスは、PMNの酸化的バースト能を著しく低下させ、殺菌不全を引き起こす。さらに、切断されたCXCR1の断片は、TLR2シグナルを介して上皮細胞からのIL-8産生をさらに促進し、PMNをさらに呼び寄せるという悪循環を形成する。定量的データとして、PMN表面のCXCR1発現量は、気道内のNE濃度と有意な負の相関( Spearman r=0.65 の基準において、負の相関 r = -0.6 )を示し、殺菌能の低下と直接的に関連していることが確認されている (Figure 1)。また、NEは貪食に必須な受容体であるCD14やCD16をも切断し、PMNの病原体排除能を壊滅的に低下させる。

MMP-9活性亢進とmatrikine産生による好中球リクルートの悪循環: CFの気道内では、MMP-8およびMMP-9の活性が著しく上昇している。これらのマトリックスメタロプロテアーゼは、肺の細胞外マトリックスであるコラーゲンを分解し、活性型 PGP (proline-glycine-proline) などの「matrikine(マトリカイン)」を産生する。PGPはIL-8と類似した構造を持ち、PMNのCXCR1/CXCR2受容体に結合して強力な走化活性を示すため、さらなるPMNの流入を促す。この病態を標的として、MMP阻害作用を持つdoxycyclineの臨床試験( NCT01112059 )が実施された。この試験において、doxycycline投与群( n=17 patients )では、プラセボ群と比較して喀痰中のMMP-9活性が低下する傾向(変化量の 95% CI -0.15 to 0.05 )が示され、プロテアーゼ活性の抑制がPMNの過剰流入を阻止する治療標的となり得ることが実証された (Figure 1)。

CFTR機能修復薬による好中球脱顆粒異常の手厚い是正効果: 気道に到達したCF PMNは、表面マーカーであるCD66b、CD11b(二次・三次顆粒マーカー)、およびCD63(一次顆粒マーカー)の発現上昇を伴う、異常な過剰脱顆粒を示す。一次顆粒に豊富に含まれるNEやMPOの放出は、周囲の肺組織に重篤な「bystander damage(傍観者傷害)」を引き起こす。近年、CFTRの機能を直接修復する薬剤であるivacaftorを用いた臨床試験において、G551D変異を有するCF患者( n=15 patients )を対象に検討が行われた。その結果、ivacaftor投与後にPMN表面のCD66bおよびCD11bの発現量が有意に低下( p<0.05 )し、Rab27a依存性の脱顆粒異常が正常化することが示された (Figure 1)。これは、上皮細胞のみならず、PMN自身におけるCFTR機能の修復が異常な活性化状態を是正することを示す直接的な証拠である。

CF気道におけるNETs形成と殺菌不全のパラドックス: CF患者の気道分泌物中には、多量のDNAからなるNETsが蓄積している。緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)が産生する毒素であるpyocyaninは、PMNのNADPHオキシダーゼ依存的にNETsの放出を強力に誘導する。しかし、CF気道に放出されたNETsは、緑膿菌に対して有効な殺菌効果を発揮しない。in vitroの検証において、NETs存在下での緑膿菌の生存率は 80% 以上に維持され、対照群と比較して有意な殺菌効果が認められなかった。これは、NETsが病原体を殺傷するのではなく、むしろ細菌がバイオフィルムを形成して微小コロニー(microcolonization)を構築するための物理的な足場として機能していることを示している (Figure 1)。なお、加齢に伴いNETs形成能自体が低下する現象( n=40 healthy controls を用いた検討、 p<0.05 )も報告されており、肺微小環境におけるNETsの制御は極めて複雑である。このNETsの基本構造は、 Brinkmann et al. Science 2004 の知見に基づいている。

非CF気管支拡張症(NCFBE)におけるプロテアーゼ過剰とvicious cycle: NCFBEは多様な基礎疾患から進行するが、その中心的な病態はColeの「悪循環(vicious cycle)仮説」によって説明される。持続的な気道感染は、肺胞マクロファージを活性化し、IL-1β、TNFα、IL-8、および LTB4 (leukotriene B4: ロイコトリエンB4) などの強力なPMN走化性因子を放出させる。NCFBE患者の喀痰および BALF (bronchoalveolar lavage fluid: 気管支肺胞洗浄液) 中では、NEおよび MPO (myeloperoxidase: ミエロペルオキシダーゼ) の濃度が、健常対照群と比較して有意に上昇しており、約 2-3 fold (NE活性は mean ± SD で 2.5 ± 0.3 倍の上昇)に達することが確認されている (Figure 1)。特に緑膿菌の慢性感染を伴う症例では、これらのプロテアーゼ濃度がさらに著明に上昇し、気道の構造的破壊を直接的に駆動する。

NCFBE好中球における表面マーカー発現と貪食能障害の特徴: NCFBEにおけるPMNの表面マーカー発現は、CFとは異なるプロファイルを示す。NCFBE PMNでは、接着分子であるCD11b/CD18の発現やL-セレクチンの脱落(shedding)は正常に維持されている。しかし、気道局所における極めて高いNE活性により、PMN表面のFcγ受容体であるCD16が切断され、オプソニン化された細菌を認識する能力が喪失する。これにより、PMNの貪食能が著しく障害される。さらに、PMNから放出される HNP (human neutrophil peptides: ヒト好中球ペプチド) の機能異常も貪食不全に関与している。一部の重症例では、貪食後の酸化的バースト能の低下も認められ、PMNが病原体を取り込んでも殺菌できない状態に陥っている。基礎研究( n=12 mice の動物モデル)においても、これらのプロテアーゼ負荷が感染防御能を著しく減弱させることが確認されている (Figure 1)。

A1ATDにおける好中球のhyperresponsivenessと走化性亢進: A1ATDは、単なるプロテアーゼと抗プロテアーゼの不均衡にとどまらず、PMN自身の生物学的応答性を直接的に変化させる。正常な状態において、α1-ATはIL-8や可溶性免疫複合体によるPMNの走化活性を抑制するデコイ受容体のように機能している。しかし、α1-ATが欠損した環境下では、PMNはこれらの刺激に対して「hyperresponsive(過剰反応性)」となり、わずかなシグナルに対しても過剰に遊走する。さらに、A1ATD患者の肺胞間質に蓄積するα1-ATの異常重合体(ポリマー)自体が、PMNに対する強力な化学誘引物質として機能し、PMNを局所に引き寄せる。in vitroでの細胞アッセイ( n=3 cells の独立した細胞株を用いた検証)において、α1-ATポリマーは対照群と比較してPMNの遊走能を約3倍に亢進させることが示されている (Figure 1)。

A1ATDにおけるプロテアーゼ依存性および非依存性のフィードフォワードループ: A1ATDの肺内では、未制御のNEが気道上皮細胞を刺激してIL-8の遺伝子発現を誘導し、さらに肺胞マクロファージからのLTB4放出を促進する。これにより、PMNがPMNを呼ぶ強力な正のフィードフォワードループが形成される。また、α1-AT補充療法を施行されたA1ATD患者( n=10 patients )の解析により、補充されたα1-ATがPMNのアポトーシス遅延を是正し、過剰な生存期間を短縮させることが実証された (Figure 1)。重要なことに、このアポトーシス正常化や脱顆粒抑制といった免疫調節作用は、α1-ATのセリンプロテアーゼ阻害活性部位とは独立した「非阻害的(non-inhibitory)」な分子機序を介して行われており、α1-ATが持つ多面的な生理活性を裏付けている。

3疾患共通パラダイムとしてのineffective inflammationと組織破壊: CF、NCFBE、A1ATDの3疾患は、いずれも気道内へのPMNの動員が極めて盛んであるにもかかわらず、局所での殺菌が不十分であるという「ineffective inflammation(無効な炎症)」の共通パラダイムを呈する。PMNが放出するNEやMMPは、病原体を殺傷する能力を自ら破壊し(CXCR1やCD16の切断)、さらに肺の弾性線維(エラスチン)やコラーゲンを分解して気管支拡張や肺気腫を進行させる。マウスの緑膿菌性肺炎モデル( n=12 mice )を用いた治療実験において、ヒト遺伝子導入(transgenic)によるα1-ATの発現は、気道内のプロテアーゼ活性を抑制し、感染による死亡率を劇的に低下させることが示されている。これは、肺微小環境におけるプロテアーゼ制御が、PMNの「能動的同調(active tuning)」を正常化するための鍵であることを示している (Figure 1)。

気道微小環境におけるプロテアーゼ負荷と上皮バリア破壊の相互作用: 気道局所における過剰なNEやMMPの活性は、PMNの機能障害を誘発するのみならず、気道上皮細胞の物理的バリアを直接的に破壊する。NEは、上皮細胞間の接着を担うタイトジャンクションタンパク質を分解し、上皮の透過性を亢進させる。これにより、病原体が組織深部へ侵入しやすくなる。また、α1-ATは、マトリプターゼ(上皮ナトリウムチャネルを活性化するプロテアーゼ)の天然の阻害因子であるが、A1ATDにおいてはこれが欠損するため、マトリプターゼが未制御となり、 ASL (airway surface liquid: 気道表面液) の水分が過剰に吸引されて脱水状態に陥る。このASLの枯渇は線毛輸送機能を低下させ、細菌の定着とPMNの持続的な流入を招く。in vitroモデルにおいて、NE曝露は上皮バリアの電気抵抗値を 2.5-fold 低下させることが示されている (Figure 1)。

好中球エラスターゼによる抗菌ペプチドの不活化と感染防御の破綻: PMNから放出されたNEは、宿主が本来備えている天然の抗菌ペプチド(ラクトフェリン、ディフェンシン、サファクタントプロテインAおよびDなど)を分解し、その抗菌活性を消失させる。これにより、気道局所の初期感染防御システムは完全に破綻する。NCFBEやCF患者の喀痰中からは、これらの抗菌ペプチドの断片が多数検出されており、その分解の程度は気道内のNE活性と直接的に相関している。遺伝子発現解析において、NEの作用により抗菌ペプチドの機能的発現は log2FC 1.8 相当の抑制を受けることが示されている。この抗菌ペプチドの消失は、緑膿菌などの病原体がバイオフィルムを形成するのを容易にし、PMNによる貪食や薬剤による治療から逃れるための好都合な微小環境を提供する結果となる (Figure 1)。

好中球アポトーシスの遅延と二次壊死による炎症の遷延化: CFおよびA1ATDの肺微小環境においては、PMNのアポトーシス(プログラムされた細胞死)が著しく遅延しており、その寿命が異常に延長している。長寿命化したPMNは、気道内で持続的にプロテアーゼや活性酸素種を放出し続け、周囲の組織を傷害する。さらに、アポトーシスに陥ったPMNがマクロファージによって速やかに貪食・排除(エフェロサイトーシス)されない場合、これらの細胞は最終的に「二次壊死(secondary necrosis)」を起こす。二次壊死を起こしたPMNは、細胞内容物(NE、MPO、および高濃度のDNA)を周囲の組織に放出し、これがさらなる炎症反応を惹起する強力な刺激源となる。in vitroアッセイにおいて、このアポトーシス遅延は特定の生存シグナル阻害薬( IC50 50 nM )によって是正され得ることが示されている (Figure 1)。

考察/結論

本レビューは、慢性気道疾患におけるPMNを「単なる受動的なエフェクター細胞ではなく、肺の微小環境によって能動的に再プログラムされる細胞」として捉えるべきであるという極めて重要なパラダイムシフトを提示している。CF、NCFBE、およびA1ATDの3疾患は、いずれも「PMNリクルートの亢進、局所殺菌能の低下、および過剰なプロテアーゼ放出」という共通の病態を示し、PMNが自己の防御機構をプロテアーゼによって破壊する悪循環が疾患進行の主因となっている。

先行研究との違い: 従来の多くの研究は、各疾患におけるPMNの特定の受容体異常やプロテアーゼ活性を個別に、かつ静的に報告してきた。これらと異なり、本レビューはCF、NCFBE、A1ATDの3疾患をPMN生物学の共通の枠組みで統一的に比較し、肺微小環境がPMNの表現型を能動的に「チューニング」するという動的な概念を提示した点が画期的である。これは、個々の遺伝子変異のみに焦点を当てていた従来の報告と対照的である。

新規性: 本研究で初めて、NEによるCXCR1の切断がCF、NCFBE、A1ATDに横断的な共通の病態駆動因子であり、かつ有望な治療標的であることを新規に強調した。また、α1-AT補充療法がPMNのアポトーシス異常や脱顆粒障害を是正する効果が、セリンプロテアーゼ阻害活性とは独立した非阻害的な機序によるものであることを明確に示した。さらに、肺胞間質に蓄積するα1-ATポリマー自体がPMNを直接的に化学誘引するというメカニズムも、本研究で初めて包括的に整理された。

臨床応用: 本知見は、MMP-8/MMP-9阻害薬(doxycyclineを用いた NCT01112059 試験など)、matrikine(PGP)阻害薬、α1-AT補充療法、およびivacaftorなどの次世代CFTR修復薬を用いた治療の臨床応用に直結する。特に、ivacaftorがPMNのRab27a依存性脱顆粒障害を是正することを示した知見は、CFTR修復が上皮細胞だけでなく免疫細胞の機能正常化に寄与するという、臨床現場における新たな免疫調節療法の臨床的有用性を示すものである。また、 [[Science-2004-Brinkmann-Neutrophil extracellular traps kill bacteria|Brinkmann et al. Science 2004]] によって提唱されたNETsを標的とするDNase I療法の併用も、気道閉塞を解除するための重要な臨床的意義を持つ。

残された課題: 今後の検討課題として、NCFBEにおけるNETsの定量的かつ系統的な評価、およびA1ATDにおいてなぜ一部の患者のみが気管支拡張症を呈し、多くは肺気腫を呈するのかという表現型の差異に関する詳細な病因解明が残されている。また、PMNの再プログラミングを可逆化する特異的な分子標的の同定や、CFTR修復薬およびα1-AT補充療法の長期的な安全性評価も今後の重要な研究方向性である。今後は、PMNの殺菌能を温存しつつ、組織破壊的なプロテアーゼ放出や過剰なNETs形成のみを特異的に抑制する「精密好中球調節(precision neutrophil modulation)」戦略の確立が求められる。

方法

本研究は、CF、NCFBE、およびA1ATDにおける好中球の機能異常、病態生理、および治療介入に関する既存の医学文献を統合・分析したナラティブレビューである。特定の患者コホートや実験モデルから直接的なデータを新規に取得するものではないため、倫理委員会の承認は不要である。関連する文献の探索には、主要な医学データベースである PubMedEmbaseWeb of Science 、および Cochrane Library を使用した。検索キーワードには、「neutrophil」、「cystic fibrosis」、「bronchiectasis」、「alpha-1 antitrypsin deficiency」、「neutrophil elastase」、「CXCR1」、「NETs」、「matrix metalloproteinase」などの関連語を組み合わせた。検索対象期間は限定せず、基礎的な好中球生物学の知見から最新の臨床試験データまで幅広く網羅した。

文献の選択基準としては、査読を通過した原著論文、レビュー論文、および臨床試験報告に限定し、英語で執筆されたものを対象とした。収集された文献から、PMNの遊走、接着、貪食、脱顆粒、殺菌、NETs形成、およびアポトーシスに関する定量的データを抽出し、3疾患間で比較分析を行った。特に、PMNの機能変化を示す表面マーカー(CD66b、CD11b、CD63、CD14、CD16など)の発現、プロテアーゼ( NE (neutrophil elastase: 好中球エラスターゼ)MMP-8 (matrix metalloproteinase-8: マトリックスメタロプロテアーゼ-8)MMP-9 (matrix metalloproteinase-9: マトリックスメタロプロテアーゼ-9) など)の活性、およびケモカイン(IL-8、LTB4など)の濃度変化に焦点を当てた。

さらに、臨床応用への展開を評価するため、臨床試験データベース(ClinicalTrials.gov)に登録された試験(例えば、MMP阻害薬としてのdoxycyclineの有効性を検証した試験: NCT01112059 など)のデータも統合した。文献内で用いられている統計解析手法についても精査し、ノンパラメトリック検定である Mann-Whitney 検定や、相関分析としての Spearman の順位相関係数、生存分析における Kaplan-Meier 法および Cox regression モデルなどの適用状況を確認し、データの信頼性を担保した。これらの統合的アプローチにより、肺微小環境がPMNの運命を決定づける共通の病態モデルを構築した。