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Pan-cancer analysis of OSR2 with a focus on underlying mechanisms and therapeutic implications in lung adenocarcinoma

  • 著者: Liu S, Xiang X, Liu S, Peng W, Wang Z, Ye L, Zhou Q
  • Corresponding author: Qiong Zhou (zhouqiongtj@hust.edu.cn)
  • 雑誌: Frontiers in Immunology
  • 発行年: 2026
  • Epub日: 2026-04-24
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 42112349

背景

肺癌、特にLUAD (lung adenocarcinoma: 肺腺癌) は世界的に最も致死的な悪性腫瘍の一つであり、2023年の推定新規癌症例数は約1,850万例、死亡数は1,040万例に達する。近年の多モーダル治療戦略 (化学放射線療法・分子標的療法・免疫療法) により生存期間は改善しつつあるが、腫瘍発生・進展の分子機序は癌種間で著しく異なり、未解明の部分が多い。

OSR2 (Odd-skipped related transcription factor 2) はショウジョウバエodd-skippedファミリーの哺乳類ホモログで、染色体8q22にコードされた312アミノ酸・ジンクフィンガードメインを持つ転写因子である。生理的には骨格形成・歯牙発生に関与し、エピジェネティック制御を介して細胞静止と増殖に影響する。先行研究では、OSR2の低発現が習慣性流産と関連し (Venkatesh et al. 2023)、筋層浸潤性膀胱癌や子宮内膜癌での高発現が腫瘍進展と関連することが個別に報告されてきた (Wang et al. 2021、Zhang et al. 2022)。また、TME (tumor microenvironment: 腫瘍微小環境) の間質細胞であるCAF (cancer-associated fibroblast: 癌関連線維芽細胞; CAF) が腫瘍促進に重要な役割を担うことが複数のscRNA-seq (single-cell RNA sequencing: 単細胞RNAシーケンス) 研究で示されている (Biffi et al. 2019; Chen et al. 2021)。

しかし先行研究では、LUADを含む肺癌でのOSR2のTME詳細機能が不明であり、CAFとの関連も記述されていなかった。単一遺伝子・単一癌腫の個別解析に留まり、33癌腫横断パンキャンサー解析・scRNA-seq単細胞解析・免疫療法応答予測は未評価のままであった。すなわちこれまでの研究では、OSR2のTMEにおける機能的役割の全体像と、それを治療標的・免疫療法バイオマーカーとして活用するための体系的エビデンスが不足していた。

目的

TCGA (The Cancer Genome Atlas) およびGEO (Gene Expression Omnibus) の包括的データを用いてOSR2の発現パターン・予後的意義・TMB (tumor mutational burden: 腫瘍変異量)/MSI (microsatellite instability: マイクロサテライト不安定性)/免疫浸潤/免疫チェックポイント発現との相関を33癌腫にわたって系統的に解析し、LUADのscRNA-seq解析とin vitro機能実験でOSR2高発現CAFの腫瘍促進機能を検証する。

結果

OSR2発現の33癌腫横断異質性:TIMER2.0 (Tumor Immune Estimation Resource) 解析でOSR2 mRNA発現は胆管癌・食道癌・膠芽腫・頭頸部扁平上皮癌・肝細胞癌・LUAD (lung adenocarcinoma: 肺腺癌)・肺扁平上皮癌・胃癌で腫瘍組織が正常組織より有意に高発現し、膀胱癌・乳癌・子宮頸癌・大腸癌・嫌色素細胞癌で低発現した (Figure 1A/B)。対応ペアサンプル解析でも同様の傾向を確認した。CCLE (Cancer Cell Line Encyclopedia: 癌細胞株百科事典) データベースで癌細胞株横断のOSR2発現も確認した (Figure 1C)。UCSC (University of California Santa Cruz) Xena プラットフォームの全DNAメチル化データでは、全癌腫中LUADでOSR2発現と最も強い負の相関が認められた。

OSR2発現と多癌腫OS予後の双方向関連:Kaplan-Meier/単変量Cox回帰でOSR2は膀胱癌・腎明細胞癌・LUADを含む14癌腫でOS (overall survival: 全生存期間) リスク因子として機能し、子宮頸癌・びまん性大細胞型B細胞リンパ腫・頭頸部癌・肺扁平上皮癌では保護因子として作用した (Figure 1D/E/F)。独立したGEO (Gene Expression Omnibus) コホート5件においてLUADでの高発現が一貫して予後不良と関連し、OS中央値は高発現群で低発現群に比べて有意に短縮した (p <0.05) (Figure 1E)。

OSR2とゲノム不安定性・免疫療法抵抗性の関連:OSR2発現はMSI (microsatellite instability: マイクロサテライト不安定性) と複数癌腫で正相関し、TMB (tumor mutational burden: 腫瘍変異量) とも複数癌腫で正相関した。最も有意な相関はLUADで認められた (Spearman r = 0.41、p <0.001) (Figure 2C/D)。LUADにおいてOSR2高発現群は低発現群に比べてTMBが有意に高く (p <0.001)、CNV (copy number variation: コピー数変異) とも最も有意な正相関を示した (Figure 2H)。HRD (homologous recombination deficiency: 相同組換え修復欠損)・異数性・ネオ抗原負荷とも有意に正相関し、OSR2がゲノム不安定性 (ゲノム不安定性) の汎用マーカーとなり得ることを示した (Figure 2E/F/G)。

TISCH2横断scRNA-seqでのCAF優位なOSR2発現パターン:TIMER2.0解析でOSR2発現はCD4 (cluster differentiation 4)+ ヘルパーT細胞・B細胞浸潤と負相関し、マクロファージ・癌関連線維芽細胞 (CAF: cancer-associated fibroblast; CAF)・内皮細胞と正相関し、最も強い正相関はCAFとの間に認められた (Figure 3A)。TISCH2 (Tumor Immune Single-cell Hub 2) の75データセット横断のscRNA-seq解析ではOSR2はCAFで最高発現し、ついで悪性上皮細胞で高発現した (Figure 3B/C、n = 75 datasets)。GSEA (gene set enrichment analysis: 遺伝子セット濃縮解析) ではOSR2高発現群で33癌腫にわたってインターフェロン-α/γ応答・炎症応答の免疫関連経路と、EMT (epithelial-mesenchymal transition: 上皮間葉転換; EMT)・細胞周期チェックポイント経路が同時に濃縮された。

OSR2高発現LUADの免疫療法抵抗性バイオマーカーとしての機能:TIDE (tumor immune dysfunction and exclusion) スコアはOSR2高発現群で有意に高く (免疫回避傾向大)、IPS (immunophenoscore: immune phenotyping score) は有意に低かった (免疫原性低) (Figure 8A/B)。TIP (tumor immunogenicity profile) データベース解析でOSR2高発現LUAD群はがん免疫サイクルのStep 1 (腫瘍抗原提示)・Step 4 (細胞傷害性T細胞動員)・Step 6 (T細胞媒介腫瘍認識) の活性スコアが有意に抑制されていた (Figure 8C)。特にCD8 (cluster differentiation 8) 陽性細胞傷害性T細胞の動員スコアは高発現群で低発現群と比較して有意に低値であった (Figure 8C)。抗PD-1 (programmed death-1) 治療を受けたNSCLC (non-small cell lung cancer: 非小細胞肺癌) 患者 (n = 166 patients、複数独立コホート) の解析でOSR2低発現群がOSR2高発現群と比較して有意に長いPFS (progression-free survival: 無増悪生存期間) を示した (p <0.05) (Figure 8D)。

LUAD scRNA-seqでのCAF特異的OSR2発現とリガンド介在クロストーク機序:GEO accession GSE131907のLUAD患者n = 13 patients (原発腫瘍) のscRNA-seqから11クラスターを7主要細胞型に注釈した。各細胞型は固有の細胞型マーカー遺伝子により同定し、T/NK (natural killer) 細胞・B細胞・骨髄系細胞・線維芽細胞・内皮細胞・上皮細胞の7型に分類し、計4つの線維芽細胞サブタイプを同定した (Figure 9A/B)。線維芽細胞サブタイプ1型のCAFで特異的かつ高いOSR2発現をviolin・feature plotで確認した (Figure 9C/D/E)。このCAFサブタイプ1型は炎症応答・EMT経路が著明に濃縮され、CytoTRACEとMonocle2で最も高い幹細胞性・低分化状態を示した (Figure 9F/G/H/I)。擬似時間軸に沿ってOSR2発現が漸減し (Figure 9J)、線維芽細胞初期分化での役割が示唆された。CellChatによりCAFが上皮細胞と特に強い相互作用を形成し (Figure 10A/B/C)、NicheNetによるリガンド解析でTGFB1 (TGFB1: transforming growth factor beta 1)・FGF1 (fibroblast growth factor 1)・FGF2 (fibroblast growth factor 2) が上位シグナルとして同定された (Figure 10F)。In vitro機能実験では、siRNA (small interfering RNA) によるOSR2ノックダウンCAF由来CM (conditioned medium: 条件培地) で処理したLUAD細胞株 (A549・H1299) において、siNC-CAF由来CM対照と比較して、細胞増殖・遊走・浸潤アッセイのすべてが有意に抑制された (各p <0.05〜p <0.001) (Figure 11B/C/D/E)。CAFノックダウン群はsiNC対照と比べて増殖能を約30-50%抑制し (免疫回避)、TGFB1依存的EMT誘導の抑制が示された。

考察/結論

先行研究との比較と相違点:OSR2の個別癌腫での報告 (膀胱癌・子宮内膜癌での高発現、習慣性流産での低発現) は存在していたが、それらは単一癌腫の観察研究に留まっており、本研究とは異なり、33癌腫横断かつscRNA-seqによる細胞種分解・NicheNetによるリガンド-受容体-ターゲット軸の多層的解析を行っていなかった。先行研究がOSR2を腫瘍細胞固有の転写因子として扱っていたのと対照的に、本研究はOSR2がCAFに主要に発現しTMEを形成する間質コンポーネントであることを初めて明確に示した。OSR2が14癌腫でリスク因子、4癌腫で保護因子として作用するという文脈依存的二重性は、先行研究で他の転写因子でも報告された癌種特異的転写調節と一致する。

新規性:本研究が初めて示したのは、75データセット横断scRNA-seqの統合とNicheNet解析によりOSR2高発現CAFサブタイプ1型がTGFB1 (TGFB1)・FGF1・FGF2を主要リガンドとして悪性上皮細胞とクロストークし、EMT誘導 (EMT)・免疫抑制 (免疫回避) を媒介するという分子機序である。ICI (immune checkpoint inhibitor: 免疫チェックポイント阻害薬) 奏効予測においてTMB高値が必ずしも奏効を保証しないことは既知であるが、本研究はOSR2高発現LUADでTMBが高値にもかかわらずTIDE/IPS/PFS観点から免疫療法抵抗性を示すという新規な発見を提供した。これはCAFを介したTGFB1依存的免疫排除型TME形成が高TMBの免疫原性をキャンセルするというメカニズムの存在を初めて示唆する。

臨床応用:OSR2はLUADにおける予後不良バイオマーカーかつ抗PD-1応答予測因子としての臨床応用が見込まれる。抗PD-1治療を受けたNSCLCコホートでOSR2低発現群がPFS延長を示したことは、OSR2を層別化バイオマーカーとして用いた免疫療法適応選択の可能性を示す。さらにOSR2高発現CAFのノックダウンがLUAD細胞の腫瘍促進機能を有意に抑制したことは、OSR2をCAFにおける新規治療標的として開発する根拠を提供する。OSR2阻害薬とICIの組み合わせはTMB高値・OSR2高発現LUADサブグループにおいて免疫療法の有効性を回復させる戦略となりうる。

残課題と今後の方向性:本研究のlimitationとして、(1) 公開データベースへの依存・データ不均一性・バッチ効果、(2) より大規模な前向き独立コホートによる検証の必要性、(3) OSR2下流の転写ターゲットと詳細なEMT調節機序の未解明が挙げられる。今後の研究ではOSR2のCAFにおける転写プログラム全体をChIP-seq (chromatin immunoprecipitation sequencing: クロマチン免疫沈降シーケンス; ChIP-seq) で網羅的に解明し、in vivoマウスモデルでOSR2阻害の腫瘍退縮効果と免疫活性化を検証することが求められる。また前向き臨床コホートでOSR2発現と免疫療法奏効率の相関 (Spearman r等) を検証する translational研究が期待される。

総じて本研究は、OSR2がLUAD等の多癌腫で予後不良因子として機能し、TMEのCAFサブタイプ1型に高発現してTGFB1/FGF1/FGF2等のリガンドを介したEMT誘導・免疫抑制・腫瘍増殖促進を多層的に実証した。OSR2低発現がNSCLC患者の抗PD-1療法応答良好と関連するという新知見は、OSR2が免疫療法応答の信頼できる予測バイオマーカーおよび新規治療標的となり得ることを示唆する。

方法

データ収集: TCGAbiolinksパッケージでTCGA (The Cancer Genome Atlas) トランスクリプトームデータを取得し、UCSC (University of California Santa Cruz) Xena プラットフォームからDNAメチル化・生存データを取得した。GEO (Gene Expression Omnibus) コホート5件でNSCLC (non-small cell lung cancer: 非小細胞肺癌) の独立コホート検証を実施した。CCLE (Cancer Cell Line Encyclopedia: 癌細胞株百科事典) データベースで癌細胞株横断のOSR2発現を解析した。

差次発現・生存解析: TIMER2.0 (Tumor Immune Estimation Resource) でTCGA全癌種における腫瘍 vs. 正常組織のOSR2発現を評価し、対応ペアサンプルでも検証した。Kaplan-Meier法と単変量Cox回帰でOS (overall survival: 全生存期間)・DSS (disease-specific survival: 疾患特異的生存率)・PFI (progression-free interval: 無進行期間)・DFI (disease-free interval: 無病期間) の最適カットオフ値を決定して生存解析を行った。生存解析の統計検定はlog-rank testで実施した。

ゲノム不安定性解析: cBioPortalでCNV (copy number variation: コピー数変異)・SNV (single nucleotide variant: 一塩基多型) 頻度を解析した。magtoolsとComplexHeatmapでTMB (tumor mutational burden: 腫瘍変異量) を算出・可視化した。MSI (microsatellite instability: マイクロサテライト不安定性)・HRD (homologous recombination deficiency: 相同組換え修復欠損)・異数性・ネオ抗原負荷・CNVとの相関をSpearman法で評価した。

免疫浸潤・単細胞解析: TIMER2.0でTCGAパンキャンサー免疫・間質細胞浸潤との相関を評価した。TISCH2 (Tumor Immune Single-cell Hub 2: 腫瘍免疫単細胞データベース) で75データセットのscRNA-seq (single-cell RNA sequencing: 単細胞RNAシーケンス) OSR2発現分布を解析した。GEO accession GSE131907 (genome series expression dataset) でSeurat v5.1.0を用いた次元削減・クラスタリングを実施し、CellChat (cell communication analysis) v1.1.3による細胞間コミュニケーション解析、NicheNet (network-inferred ligand-target prediction) によるリガンド予測、Monocle2 (monotonic trajectory analysis) およびCytoTRACE (cytotoxic trajectory ranking and cell evaluation) による分化軌跡・幹細胞性評価を行った。

免疫療法応答予測: TIDE (tumor immune dysfunction and exclusion) スコア・IPS (immunophenoscore: immune phenotyping score)・TIP (tumor immunogenicity profile) データベースでLUADのがん免疫サイクル13ステップ活性スコアを評価した。抗PD-1 (programmed death-1) 治療を受けたNSCLC患者のPFS (progression-free survival: 無増悪生存期間) 解析を実施した。

In vitro機能実験: 悪性胸水からCD45陰性/FAP (fibroblast activation protein: 線維芽細胞活性化タンパク) 陽性/CD29 (cluster differentiation 29: インテグリンβ-1) 陽性でpurity >90%のCAFを単離した。siRNA (small interfering RNA) 1/siRNA2でOSR2をノックダウン後に条件培地を作製し、LUADの癌細胞株 (A549・H1299) に処理した。CCK-8 (cell counting kit-8) 法・コロニー形成アッセイで増殖、wound healing・transwellアッセイで遊走・浸潤能を評価した。統計解析はR 4.4.3でStudent t検定またはWilcoxon順位和検定を実施し、p <0.05を有意とした。