- 著者: Choueiri T.K., Powles T., Burotto M., Escudier B., Bourlon M.T., Zurawski B., Oyervides Juarez V.M., Hsieh J.J., Basso U., Shah A.Y., Suarez C., Hamzaj A., Goh J.C., Barrios C., Richardet M., Porta C., Kowalyszyn R., Feregrino J.P., Zolnierek J., Pook D., Kessler E.R., Brooks M.B., Ravaud A., Tomita Y., Mizuno R., Bedke J., Gurney H., Stlimits E., Barber S., Mekki Q.A., Rao-Melacini P., Bhatt R.S., Yang Y., Albiges L. (CheckMate 9ER Investigators)
- Corresponding author: Choueiri T.K. (Lank Center for Genitourinary Oncology, Dana-Farber Cancer Institute, Brigham and Women’s Hospital, and Harvard Medical School, Boston) / Motzer R.J. (Department of Medicine, Memorial Sloan Kettering Cancer Center, New York)
- 雑誌: New England Journal of Medicine
- 発行年: 2021
- Epub日: 2021-02-15
- Article種別: Original Article (Phase 3 RCT)
- PMID: 33657295
背景
進行性腎細胞がん (RCC) の治療は近年大きく進展しており、特に免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) とチロシンキナーゼ阻害薬 (TKI) の併用療法が新たな標準治療として確立されつつある。これまでの研究では、ニボルマブとイピリムマブの併用療法を検証した第III相試験である CheckMate 214 試験や、アキシチニブとペンブロリズマブの併用療法、アキシチニブとアベルマブの併用療法などが、一次治療としてのスニチニブ単剤療法と比較して、無増悪生存期間 (PFS) や全生存期間 (OS) の有意な改善を示してきた。しかし、これらの併用療法においても、特定の患者群、特に国際転移性腎細胞がんデータベースコンソーシアムである IMDC (International Metastatic Renal-Cell Carcinoma Database Consortium) の好リスク患者におけるOSの改善は限定的であるなど、依然として治療効果のさらなる向上が求められるギャップが存在していた。
カボザンチニブは、血管内皮増殖因子受容体 (VEGFR) 1-3、MET、AXL、TAMファミリー (TYRO3、AXL、MER) など複数のチロシンキナーゼを標的とするマルチキナーゼ阻害薬である。カボザンチニブ単剤療法は、進行RCC患者においてOSの延長効果が既に確認されており、その有効性は確立されている。さらに、前臨床研究では、カボザンチニブが腫瘍微小環境における免疫抑制を解除し、PD-1阻害薬との相乗効果をもたらす可能性が示唆されていた。この免疫調節作用は、既存のICI+TKI併用療法とは異なるメカニズムで治療効果を高める可能性を秘めており、新たな治療戦略として注目されていた。
ニボルマブは、PD-1を標的とする免疫チェックポイント阻害薬であり、進行RCCを含む複数のがん種でその有効性が示されている (Motzer et al. NEnglJMed 2015)。カボザンチニブとニボルマブの併用療法は、先行する第I相用量設定試験において、カボザンチニブ40mg/日とニボルマブの組み合わせが、より高用量のカボザンチニブ60mg/日と同等の有効性を示しつつ、毒性が少ないことが確認された。この結果に基づき、未治療の進行淡明細胞型RCC患者に対するニボルマブとカボザンチニブの併用療法の有効性と安全性をスニチニブ単剤療法と比較する第III相試験 (CheckMate 9ER試験) が計画された。既存のICI+TKI併用療法が確立されつつある中で、カボザンチニブの多標的阻害作用と免疫調節効果が、スニチニブと比較してどのような優位性をもたらすのか、また既存のICI+TKI療法と比較してどのような特徴を持つのかが未解明であった。特に、幅広いIMDCリスク分類の患者群において、一貫した有効性を示すかどうかが重要な課題として残されていた。このように、未治療の進行淡明細胞型腎細胞がんに対する最適な併用療法の確立に向けたエビデンスは依然として不足しており、治療選択肢の最適化における大きな課題となっていた。先行研究である Motzer et al. (2015) や Choueiri et al. (2016)、Choueiri et al. (2017) などの知見を踏まえても、一次治療におけるニボルマブとカボザンチニブの直接比較データは存在せず、臨床現場への導入に向けた確固たるデータが不足しているという明確な課題が存在した。
目的
本CheckMate 9ER試験 (NCT03141177) は、未治療の明細胞成分を有する進行・転移性腎細胞がん (RCC) 患者を対象として、ニボルマブとカボザンチニブの併用療法 (nivo/cabo) の有効性および安全性を、スニチニブ単剤療法と比較して評価することを目的とした。主要評価項目は、盲検下独立中央審査 (BICR) による無増悪生存期間 (PFS) の優越性の検証である。副次評価項目としては、全生存期間 (OS)、客観的奏効率 (ORR)、および安全性の評価が含まれた。さらに、探索的評価項目として、患者報告アウトカム (PRO) に基づく健康関連QoL (HRQoL) の評価も実施された。本試験は、ニボルマブとカボザンチニブの併用療法が、進行RCCの一次治療においてスニチニブ単剤療法を上回る臨床的ベネフィットを提供できるかを検証し、新たな標準治療としての可能性を確立することを目指した。
結果
主要評価項目である無増悪生存期間 (PFS) の有意な改善: ニボルマブ+カボザンチニブ群は、スニチニブ群と比較してPFS中央値を統計学的に有意に延長した。PFS中央値はニボルマブ+カボザンチニブ群で16.6ヶ月 (95% CI 12.5-24.9) であったのに対し、スニチニブ群では8.3ヶ月 (95% CI 7.0-9.7) であり、ハザード比 (HR) は0.51 (95% CI 0.41-0.64, p<0.001) であった (Figure 1A)。これは、ニボルマブ+カボザンチニブ併用療法が病勢進行または死亡のリスクを49%低減したことを示している。12ヶ月時点でのPFS率は、ニボルマブ+カボザンチニブ群で57.6% (95% CI 51.7-63.1)、スニチニブ群で36.9% (95% CI 31.1-42.8) であった。ターゲット病変の縮小は、ニボルマブ+カボザンチニブ群の94.7% (n=269/284) の患者で認められ、70.4% (n=200/284) の患者で30%以上の縮小を達成した。一方、スニチニブ群ではそれぞれ84.9% (n=220/259) および42.5% (n=110/259) であった。サブグループ解析では、IMDC好リスク (HR 0.62; 95% CI 0.38-1.01)・中リスク (HR 0.54; 95% CI 0.40-0.72)・不良リスク (HR 0.37; 95% CI 0.23-0.58)、PD-L1 ≥1% (HR 0.49; 95% CI 0.32-0.73)・<1%または不確定 (HR 0.52; 95% CI 0.40-0.67) を含む全ての事前規定サブグループにおいて、ニボルマブ+カボザンチニブ群が一貫して優れたPFSベネフィットを示した (Figure 2A)。
全生存期間 (OS) の有意な延長: OS中央値は両群ともにデータカットオフ時点では未到達であった。ニボルマブ+カボザンチニブ群は、スニチニブ群と比較してOSを統計学的に有意に延長し、死亡リスクのハザード比は0.60 (98.89% CI 0.40-0.89, p=0.001) であった (Figure 1B)。これは死亡リスクを40%低減したことを意味する。12ヶ月時点でのOS率は、ニボルマブ+カボザンチニブ群で85.7% (95% CI 81.3-89.1)、スニチニブ群で75.6% (95% CI 70.5-80.0) であった。OSのサブグループ解析では、IMDC不良リスク患者において特に顕著な生存延長が認められ (HR 0.37; 95% CI 0.21-0.66)、PD-L1発現が低い患者群 (<1%または不確定) でも有意なOSベネフィットが示された (HR 0.51; 95% CI 0.34-0.75) (Figure 2B)。
客観的奏効率 (ORR) と奏効持続期間 (DoR) の大幅な改善: ニボルマブ+カボザンチニブ群のORRは55.7% (95% CI 50.1-61.2) であったのに対し、スニチニブ群では27.1% (95% CI 22.4-32.3) であり、統計学的に有意な差が認められた (p<0.001) (Table 2)。完全奏効 (CR) 割合はニボルマブ+カボザンチニブ群で8.0% (n=26)、スニチニブ群で4.6% (n=15) であった。部分奏効 (PR) 割合はそれぞれ47.7%と22.6%であった。奏効までの期間中央値は、ニボルマブ+カボザンチニブ群で2.8ヶ月、スニチニブ群で4.2ヶ月と、ニボルマブ+カボザンチニブ群でより迅速な奏効が認められた。奏効持続期間中央値は、ニボルマブ+カボザンチニブ群で20.2ヶ月 (95% CI 17.3-推定不能)、スニチニブ群で11.5ヶ月 (95% CI 8.3-18.4) であり、ニボルマブ+カボザンチニブ群で奏効の長期持続が確認された。
安全性プロファイルと毒性管理: いずれかのグレードの有害事象は、ニボルマブ+カボザンチニブ群の99.7% (n=319/320) およびスニチニブ群の99.1% (n=317/320) の患者で発生した。グレード3以上の有害事象は、ニボルマブ+カボザンチニブ群で75.3% (n=241/320)、スニチニブ群で70.6% (n=226/320) に認められた (Table 3)。治療関連のグレード3以上の有害事象は、ニボルマブ+カボザンチニブ群で60.6%、スニチニブ群で50.9%であった。最も一般的な有害事象 (いずれかのグレード) は、下痢 (ニボルマブ+カボザンチニブ群63.8% vs. スニチニブ群47.2%)、手掌足底紅斑症候群 (40.0% vs. 40.6%)、高血圧 (34.7% vs. 37.2%)、甲状腺機能低下症 (34.1% vs. 29.4%)、疲労 (32.2% vs. 34.7%) であった。肝機能障害として、アラニンアミノトランスフェラーゼ (ALT) のグレード3または4の異常は、ニボルマブ+カボザンチニブ群で9.8%、スニチニブ群で3.5%に認められた。有害事象による治験薬の少なくとも1剤の中止は、ニボルマブ+カボザンチニブ群の19.7% (両剤中止は5.6%)、スニチニブ群の16.9%で発生した。
健康関連QoLの改善: FKSI-19総スコアは、ニボルマブ+カボザンチニブ群で治療期間を通じて維持または改善傾向を示した一方、スニチニブ群では一貫した悪化が報告された。疾患関連症状 (FKSI-DRS) スコアも同様に、ニボルマブ+カボザンチニブ群で改善傾向、スニチニブ群で悪化傾向を示した。ベースラインスコアおよびその他の共変量を調整した解析では、ニボルマブ+カボザンチニブ群はスニチニブ群と比較して、ほとんどの評価時点 (Week 7以降) で有意に良好なQoLを示した (p<0.05)。
考察/結論
CheckMate 9ER試験は、未治療の進行淡明細胞型腎細胞がん患者において、ニボルマブ+カボザンチニブ併用療法がスニチニブ単剤療法と比較して、主要評価項目であるPFS、および副次評価項目であるOSとORRの全てにおいて統計学的に有意な優越性を示した初めての第III相試験である。
先行研究との違い: 本研究は、先行するニボルマブ+イピリムマブ併用療法を検証した第III相試験 (CheckMate 214試験) がIMDC好リスク患者でOSの有意な改善を示さなかった (HR 0.84) のと対照的であり、好リスク群を含む幅広い患者層において一貫したPFSおよびOSの改善効果を示した点で大きく異なる。カボザンチニブのMET/AXL/VEGFR多標的阻害作用と免疫調節効果の相乗作用が、既存の免疫チェックポイント阻害薬単独や他のTKI併用療法とは異なる強力な腫瘍制御をもたらしていると考えられる。
新規性: 本研究で初めて、ニボルマブとカボザンチニブの併用療法が、スニチニブ単剤療法と比較して、未治療の進行淡明細胞型腎細胞がん患者においてPFS、OS、ORRの全てで有意な優越性を示すことが実証された。これは、カボザンチニブの多標的阻害作用と免疫調節効果が、PD-1阻害薬との併用において強力な相乗効果をもたらすという新規の知見を裏付けるものである。
臨床応用: 本結果に基づき、ニボルマブ+カボザンチニブ併用療法は進行RCCの一次治療における新たな標準治療の一つとして確立された。臨床的意義として、PD-L1発現レベルやIMDCリスク分類に関わらず、幅広い患者集団に対して高い奏効率と生存ベネフィットを提供できることが挙げられる。また、患者報告アウトカムに基づくQoL評価において、スニチニブ群と比較して有意に良好なQoLを維持または改善したことは、臨床現場における本療法の有用性を強く支持する。
残された課題: 今後の検討課題として、より長期的なOSデータの蓄積、バイオマーカーによる治療効果予測および最適な患者選択、そして他の免疫療法+TKI併用療法との比較有効性の明確化が挙げられる。本試験のLimitationとしては、OSの追跡期間中央値が18.1ヶ月と比較的短く、特にIMDC好リスク患者におけるOSイベント数が少ないため、これらの患者群での長期的なOSベネフィットの解釈にはさらなる慎重さが必要である点が挙げられる。また、本試験が非盲検試験であったため、評価バイアスのリスクが完全に排除できない可能性も残された課題である。
方法
本試験は、国際多施設共同無獲得化非盲検第III相試験として実施された。世界18カ国125施設から、未治療の明細胞成分を有する進行または転移性RCC患者が登録された。主要な適格基準は、Karnofsky Performance Status (KPS) スコアが70以上であること、および任意の国際転移性腎細胞がんデータベースコンソーシアム (IMDC) 予後リスク分類に該当することであった。2017年9月から2019年5月にかけて、合計651例の患者が登録され、ニボルマブ+カボザンチニブ群 (n=323) とスニチニブ群 (n=328) に1:1の割合で無作為に割り付けられた。無作為化は、IMDC予後リスク分類 (0点 vs. 1-2点 vs. 3-6点)、地域 (米国/欧州 vs. その他)、およびPD-L1発現レベル (≥1% vs. <1%または不確定) で層別化された。
ニボルマブ+カボザンチニブ群の患者には、ニボルマブ240mgを2週間ごとに静脈内投与し、カボザンチニブ40mgを1日1回経口投与した。ニボルマブの投与期間は最長2年間とされた。スニチニブ群の患者には、スニチニブ50mgを1日1回経口投与し、4週間投与後に2週間の休薬期間を設ける6週間サイクルで投与した。病勢進行または許容できない毒性が認められるまで治療を継続した。治療群間の交差投与は許可されなかった。
主要評価項目は、盲検下独立中央審査 (BICR) によって評価されたRECIST v1.1に基づく無増悪生存期間 (PFS) であった。副次評価項目には、全生存期間 (OS)、独立中央審査によって評価された客観的奏効率 (ORR)、および安全性が含まれた。OSの解析には、O’Brien-Flemingアルファ消費関数を用いた階層的検定手順が適用された。健康関連QoLは、探索的評価項目として、がん治療機能評価尺度腎がん症状指数である FKSI-19 (Functional Assessment of Cancer Therapy-Kidney Symptom Index-19) およびその疾患関連症状サブスケールである FKSI-DRS (Functional Assessment of Cancer Therapy-Kidney Symptom Index Disease-Related Symptoms) を用いて評価された。有害事象は、NCI Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE) v4.0に基づき評価された。
統計解析では、PFSおよびOSの比較には層別ログランク検定 (log-rank test) が用いられ、ハザード比 (HR) の推定には層別コックス比例ハザードモデル (Cox regression model) が適用された。PFS、OS、および奏効持続期間の推定にはカプラン・マイヤー法 (Kaplan-Meier method) が用いられた。ORRの比較には、Clopper-Pearson法に基づく95%信頼区間が算出された。全体的な有意水準 (α) は0.05 (両側検定) とし、主要および副次評価項目に対しては階層的検定手順が適用された。データカットオフは2020年3月30日であり、OSの追跡期間中央値は18.1ヶ月であった。